Chronicle 2nd

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Chronicle 2nd
1st Story Renewal CD

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黒の予言書


幻想物語組曲…クロニクル世界
それは…歴史を辿る少女と世界の物語

詠いたい詩があるんだ…辿りたい途があるんだ…
守りたい丘があるんだ…誇りたい薔薇があるんだ…
収めたい戦いがあるんだ…聴かせたい歌があるんだ…
語りたい航海があるんだ…掲げたい右腕があるんだ…

どんな時でもボクらは諦めない 歴史の彼方 遠くて近いソラ
キミとの約束 受け継がれる想い 終わらないボクらの系譜(クロニクル)…

「<黒の神子>(ルキア)よ…私は悲しい…!
君ならば書の真理が理解できると思っていたのだがねぇ…
まぁ良い…歴史を変えられると思い上がっているのなら…
いつでも掛かって御出でなさい…」

<黒の予言書>(ブラッククロニクル)

物心付いた時 母は既に居なかった
仄かな哀しみは 優しい子守唄…

──ボクらの道はどこまでも往けそう

生まれてくる前に 父も既に居なかった
確かな憎しみは 激しい恋心…

──何処で見つかる何を裏切る

違う星を抱いて 生まれてきたボクらも現在(いま)は
同じソラに抱かれてる それなのに…それなのに…

あの頃ボクらが夢見てた 未来へ駆ける白馬を
追い駈ける影が在ることも 識らなかったボクらを乗せて
疾って往くよ…予言された終焉へと…

<黒の予言書>(ブラッククロニクル)

<黒の予言書>(ブラッククロニクル)それは「存在してはならない書物」
とある予言書崇拝(カルト)教団の施設より押収された
全二十四巻から成る黒い表紙の古書

そこに記されていたのは 有史以来の数多の記録
ある種の整合性を持つ 歴然とした年代記
それを史実と認めるならば
我らの肯定してきた歴史とは何なのだろうか?

書の記述は未来にまで及び 一つの相違(しゅし)に
複数の学説(は)を芽吹かせ 蟲惑の論争(はな)を咲かせる
その最大の論点は 近い未来(さき)この世界が
終焉を迎えるという<史実>…

何処までが味方で何処からが敵だ?
そこを見誤ると歴史に屠られる
各々で勝手に境界を敷いてる
白地図に刻むは争いの軌跡だ
嗚呼…狭い…ここは何て狭い世界だ…

──ジャスティス

敵は全部殺すんだ 盟友(とも)よそれで一時安心だ
(「幸セカイ? 嗚呼…シアワ世界? 死逢ワ世界? ソレデ…幸セカイ?」)
けれど味方も敵になるんだ ならば先手打って殺すんだ
(「幸セカイ? 嗚呼…シアワ世界? 死遭ワ世界? ホント…幸セカイ?」)
しかし敵は無くならないんだ だから怯えながら暮らすんだ
(「幸セカイ? 嗚呼…シアワ世界? 死逢ワ世界? ソレデ…幸セカイ?」)
されどそれを繰り返すだけだ それが幸せを掴む途だ
(「幸セカイ? 嗚呼…シアワ世界? 幸セヲ掴ム途ダ…」)

間違ってる そんな論理は 間違ってるんだ
この世界を 売ろうとしてる 奴らがいるんだ
気付くべきだ 気付いたなら 戦うべきだ
たった一羽 時風(かぜ)に向かう 白鴉のように

あの頃ボクらが夢見てた 未来へ託した地図を
描き換える影が在ることも 識らなかったボクらを超えて
疾って往こう…予言にない<ハジマリ>へと…

<黒の予言書>(ブラッククロニクル)

物心ついた時 母は既に居なかった…
病死だとボクに告げたのは
孤児であるボクを引き取り養育した組織だった
組織には似たような奴らが何人も居た
やがて組織に疑問を抱いたボクらは組織から逃亡した…

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詩人バラッドの悲劇


第七巻 168ページ…

最期の詩…

それはあまりにも素晴らしく
兵は街の恋人に詩って教えた
やがてその詩は 人から人へと伝わり
誰が綴ったかもわからぬ
その名もなき詩は やがて大陸中に広まった…

強く美しき時の女王
絶対的な権力の前に 誰もがひざまづく
来たる女王の誕生祭
その美貌を称える詩を捧げよと 一人の詩人に命じた…

女王は問う…
「この世で一番美しいのは誰じゃ?」
…しかし 彼は譲らない
「私の世界では、陛下は二番目にお美しい…」

「枯れてしまった花の美しさ…
それは、追憶という名の幻影…
朽ちることなく永遠に咲き続けられる庭園…
例え、気高く美しき薔薇でさえ…
花である以上、枯れてしまった花には及ばない…」

その詩に女王は激昂した
「そなた、余に枯れてしまえと申すのか!?」
宰相の合図一つで 兵達は詩人を取り囲んだ…

天才と謳われし詩人…彼の名はバラッド
今は冷たい地下牢の隅 最期の詩を綴っている…

処刑の刻が近づき 胸に薔薇の紋章を抱いた
牢番の兵は聴いてしまった 彼の綴った最期の詩を…

最後の鐘が鳴り終わり
処刑は厳かに執り行われる
最期の瞬間 思い出すのは…
故郷の空 風の匂い
今は亡き彼女と過ごした日々…

冷たい秋風が冬を導くように
旅の娘が一人 想い人を尋ねて流離う
どこか懐かしい その詩を口ずさみながら…

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辿りつく詩


第九巻 883ページ…

盲目の詩人 ルーナは 静かに唇を開いた…

これより歌うは…ある娘が 大切なモノに辿りつく迄の詩
苛酷な旅よ 困難な途よ それでも娘は決して諦めなかった
物語は運命を呪うより 苦しくとも詩い続ける途を選ぶ
いづれ歴史が全てを葬りさろうとも 今は唯…瞳(め)を閉じて聴いておくれ

愛しい人よ アナタは何処に
手掛かりひとつなく
孤独な旅の 道連れの詩は
遠い空へ 霞んで消えた

天堕つる雨 手の平に
零れ落ちた雫(なみだ)…

幾つもの深い森を抜けて 険しい山を越え
町から街へ 知人(ひと)から他人(ひと)へと
想い人を 尋ね歩いた

天翔ける追想(ゆめ) 星空に
誓った接吻(やくそく)は…

「嗚呼…エンディミオ…」

虚ろな世界を 夕闇が包み込む
帰れぬ私は 独り何処へ往く

予言書が肯定する史実 争いの歴史
戦禍という名の爪痕 大地を灼き尽くす焔
家族…恋人…愛する者の消息も知れず
多くの者達が為す術もなく引き裂かれた時代

娘の旅は 道連れとなった詩を遡るように
とある城で牢番をしていたと言う男へ
そして…推測から確信へと辿りついてしまった
切なくも懐かしき調べ その詩を綴ったのは…

挫けそうな私をいつも支えてくれたのは
恋人(アナタ)が最期に遺してくれた この名も無き詩よ

「運命よ…例えお前が瞳から光を奪い去ろうとも、この唇からは詩を奪えない…」

辿りつく詩は 夕闇に陽を灯し
枯れてなお花は 凛と其処に咲く

嗚呼…吹き荒れる悲しみの…

嵐が訪れ 全て薙ぎ倒しても
大切なモノは 絶えず此処(ここ)に在る

──大切な人の 辿りつく詩…

君よ…大切なモノに辿りつく途を見つけたら もう迷うことなかれ

──大切な人の 辿りつく詩…

例え茨の途であろうとも 歌をくちずさめばそれもまた楽し

──大切な人の 辿りつく詩…

詩えない人生になど 意味はないのだから…

──大切な人の 辿りつく詩…

大切なモノへと…辿りつく場所へと…
白鴉が目指す地平…あの空の向こうへ…

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アーベルジュの戦い


第八巻 324ページ…

「…アーベルジュ」時代が求めた英雄
それとて満ち足りた事ではない
いや むしろ欠けてさえいる
大切な何かを置き忘れてきてしまった…

「…アーベルジュ」理由などに意味は無い
斬ってしまえば同じ 悪意なき剣など無し
身を寄せる場所もなく
ただ血の雨の中を駈け抜けた時代…

「…アーベルジュ」繰り返す痛み
願わくば 戻りたいとさえ想った
何も知らなかったあの頃に
何一つ歴史は変わらないとしても…

…最初の惨劇…

「若者よ臆するな、震える膝を鞭打って進め…
迫りくる敵軍は五千、何としてもこの森で食い止めろ…」

幼き日の思い出よ 泣き虫だった少年は
騎士の誇り 信念を胸に
絶望が渦巻く戦場へ…

その身朽ち果てようとも 守りたいものがあった…

母さんと木の実を拾った森…
父さんと釣りをした川…
君と約束を交わした丘…

幼き日の思い出よ あの夏の少年は
右手に剣 鈍い光を放ち
死神が招く戦場へ

その身朽ち果てようとも 守りたいものがあった…

彼は逃げない 運命は誰を選ぶ…
彼は逃げない 歴史は何を紡ぐ…

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約束の丘


第八巻 216ページ…

鬱蒼と生い茂る ウェルケンラートの森
その向うに約束の丘がある

瞬いた刹那 その闇の中に灼きつく風景
彼は生涯忘れえぬ夕陽を見た…

「何があろうと僕は必ず…君の元へ帰って来るよ…」
「…ええ信じてるわ…愛してるもの…忘れないでアルベール」

その日の空の色 哀しい程に朱く
(「離れても二人を 結びつける朱石」)
若い二人は甘い永遠(とわ)を丘に誓った…
(「の首飾りを架け誓った…」)

時が語り手を欠いたとしても 物語は紡がれ続けるだろう
白鴉が羽ばたいて往く途… 斜陽の空に何を求めて…

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薔薇の騎士団


第九巻 468ページ…

アヴァロン朝 プリタニア王国 時代を象徴する二人の女傑(ヒロイン)

<地上の月輝(つき)>と謳われた詩人 ルーナ・バラッド
苛酷な旅の果てに眼病を患い 光を失ってなお歌い続け
その詩を通して聴く者の心の闇に 希望の光を灯し続けた女性

<至上の薔薇>と謳われた女王 ローザ・ギネ・アヴァロン
暴君として知られた女王の姪であり 王位継承権第一位の姫であった
先王の治世下 その圧政に苦しむ民衆を解放した女性

「<権力者>(ばら)によって<思想、言論の自由>(うた)が弾圧されるような時代は、
もう終わりにしましょう…弱い自分に負けない為にも、
私は大切な人の名前を背負った…嗚呼…エンディミオ…
もうどんな嵐が訪れようとも、私は歌い続けられる…」

「皆にもう一度誇りを取り戻して欲しい!
祖国を愛する心を、この国は皆が愛した故郷に戻れるだろうか?
冬薔薇は枯れ、今遅い春が訪れた…
私は此処に誓う!光の女神(ブリジット)に祝福される薔薇になると!」

プリタニア暦627年
時の…フランドル国王 キルデベルト六世
国号を神聖フランドル帝国と改め帝政を敷き
聖キルデベルト六世として初代皇帝に即位
<聖戦>と称し プリタニアへの侵略を開始…

<薔薇の騎士団>(ナイツ・オブ・ザ・ローズ)

それは…長かった苦境の時代を引き摺っていた人々が新しい薔薇の下
一つに纏まってゆく情景を綴った ルーナ・バラッドの詩の一節…

誇り高き炎を纏い祖国(くに)を護る為に剣を取った
胸に気高き女王(クイーン)の薔薇を抱いた同胞(とも)を
称えよ我らの<薔薇の騎士団>(ナイツ・オブ・ザ・ローズ)を

嗚呼…光の女神(ブリジット)の祝福が在らんことを…
祈りの歌に見送られ 勇敢なプリタニアの息子達は戦場へと向かった…

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聖戦と死神 第一部「銀色の死神」~戦場を駈ける者~


第九巻 527ページ…

プロイツェン領オッフェンブルグ…
眩暈がする程の血の雨の薫に咽ぶことなくその男は笑っていた…

フランドル暦182年『アラゴンの戦い』
アルヴァレス将軍率いる フランドル軍五千
ピレネー山脈を越え カスティリヤ領に進撃
アラゴン平原にて カスティリヤ軍
北方防衛駐留部隊一万二千を相手に開戦

勇み歩を進める毎に 足元に死が絡みつく
研ぎ澄まされてゆく刃風(かぜ)に 敵兵は戦意(こころ)惑わす

猛る兵士と軍馬の嘶き「全軍突撃!我に続け…」
白銀の甲冑…<ベルガ人の将軍>(アルベルジュ)

──時は来た、見よ!ベルガの死神だ!(Chrono, Venies! Vidies! Velesa!)
──時は来た、見よ!ベルガの死神だ!(Chrono, Venies! Vidies! Velesa!)
──時は来た、見よ!ベルガの死神だ!(Chrono, Venies! Vidies! Velesa!)
──時は来た、見よ!ベルガの死神だ!(Chrono, Venies! Vidies! Velesa!)

「時に…アルヴァレス卿の軍はまた勝利を収めたようですな…
倍数以上の敵軍を完膚なきまでに叩きのめしての大勝利とか」
「…銀色の死神、忌々しい<ベルガの亡霊>(アルベルジュ)め、
今や陛下よりも奴を崇拝する者まで出始めておる始末」

「丁度良い手駒もあることで御座いますし、機を見ていづれ、
目障りな英雄殿には、ご退場願うのが宜しいかと」
「手駒…ああプロイツェンで捕虜にしたあの男の事か?
…破滅を演じる歴史の舞台、今宵も面白い劇(ゆめ)が観れそうだ…」

「我ら<唯一神>(クロニカ)の名の下に…」

彼は誰が為に戦場を駈けるのか…護るべき女性(ひと)と祖国(くに)を失って尚…

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聖戦と死神 第二部「聖戦と死神」~英雄の不在~


愚者は問う…鉄壁の王城を捨て
女王は何処へ往くのかと…
賢者は識る…どれ程堅牢な守備を誇ろうと
陥落しない城など存在し得ぬことを…

プリタニア暦627年『カンタベリーの戦い』
ハーシファル騎士団長率いる第四騎士団
ドーバーより上陸した帝国軍第一陣を迎え討ち
カンタベリー平原にて開戦

どんな敵も恐れはしない祖国(くに)を護る為に剣を振るえ
胸に気高き女王(クイーン)の薔薇を抱いた同胞(とも)よ
進め我らは<薔薇の騎士団>(ナイツ・オブ・ザ・ローズ)だ

死をも恐れぬ薔薇の騎士達は彼に続く…
緋い戦場を駈け廻る一条の雷 パーシファルの雷槍(スピア)
進め我らが<薔薇の騎士団>(ナイツ・オブ・ザ・ローズ)だ

(「──時は来た!時は来た!(Chrono, Velesa! Chrono, Velesa!)」)
(「──時は来た!時は来た!(Chrono, Velesa! Chrono, Velesa!)」)
(「──時は来た、見よ!ベルガの死神だ!(Chrono, Venies! Vidies! Velesa!)」)
(「──時は来た!時は来た!(Chrono, Velesa! Chrono, Velesa!)」)
(「──時は来た!時は来た!(Chrono, Velesa! Chrono, Velesa!)」)
(「──時は来た、見よ!ベルガの死神だ!(Chrono, Venies! Vidies! Velesa!)」)

帝国暦元年『グラスミアの戦い』
アルヴァレス将軍率いる帝国軍第三陣
辺境の地 ホワイトへブンより上陸
疾風の如く馬を駆り敵陣の後背を突いた…

殺す相手を愛する者や 祈る者がいることは忘れろ
邪教の使徒は根絶やしにしろ 眼を背けるなこれが<聖戦>だ

燃え上がる山村 虐殺される人々
逃げ遅れた娘 追い駈ける男
馬上で弓を引き絞り 獲物に狙いを定める
放たれた火矢 細い娘の身を掠める

(「シャルロッテ!」)

転倒した娘 飛び出した男
娘に振り下ろされた白刃を弾き返す

動かない娘 向かい合う二人の男
此方…白馬のアルヴァレス
彼方…黒馬のゲーフェンバウアー

「武器を持たぬ者に何をするのだ…」
「小娘といえど邪教の使徒、情けを掛けてやる必要などありわせぬ…」
「道を踏み外すな目を醒ますのだ…」
「貴様にだけは言われたくないわ…偽善者、英雄狂、人殺し<ベルガの死神>(アルベルジュ)」

「親父はオッフェンブルグで死んだ…兄貴も…弟も…戦友も…皆…」

「待て…貴様、帝国を裏切るつもりか…まぁそれも良かろう…<ベルガの死神>(アルベルジュ)よ、
貴様を殺す男の名を忘れるな、その男の名こそ<ベルガの死神の死神>(ゲーフェンバウアー)だ!」

幾度も繰り返される過ち 歴史に何を学ぶ…
奪い奪われてはじめて 気付く闇がある…

(「──時は来た!時は来た!(Chrono, Velesa! Chrono, Velesa!)」)
(「──時は来た!時は来た!(Chrono, Velesa! Chrono, Velesa!)」)
(「──時は来た、見よ!ベルガの死神だ!(Chrono, Venies! Vidies! Velesa!)」)
(「──時は来た!時は来た!(Chrono, Velesa! Chrono, Velesa!)」)
(「──時は来た!時は来た!(Chrono, Velesa! Chrono, Velesa!)」)
(「──時は来た、見よ!ベルガの死神だ!(Chrono, Venies! Vidies! Velesa!)」)

狭い山道を風のように駈け抜ける白馬
馬上には白銀の甲冑の男
傷ついた娘を抱きかかえたまま南へと疾り去る…

「ゲーフェンバウアー…世界を憎み呪うかのようなあの眼…
あの男は私だ、私の過去だ…ロッテ…嗚呼…シャルロッテ…私は何と戦えば良い…」

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聖戦と死神 第三部「薔薇と死神」~歴史を紡ぐ者~


「此処は何処なのかしら?私は確か…追われ…矢を射られ…倒れたはずだったわ…」

「気付いて良かった、大丈夫かい?
私の名はアルヴァレス、君達の村を襲った軍隊の指揮官…
だったのだが…今ではもう追われる身だ…からと言っても…言い訳に過ぎぬ…私が憎いかい?」

「えぇ…憎くない…と言ったら嘘になるけれど…助けてくれた貴方のこと、私は信じたい…」

「私はベルガ人(ベルジュ)なのだよ…
亡国の仇を取る為、旧フランドルへ身を寄せた<異邦人>(アルベルジュ)
この意味が解るかい…お嬢さん?この手はもう取り返しのつかない程に汚れている…」

「最初は怒りからプロイツェンを…
次に異国での居場所を確保する為ロンバルドを…
そして己の願望を満たすという目的の為に、カスティリヤを滅ぼした…」

「今でも目を閉じると、鮮やかに浮かんでくる風景がある…
私にはどうしても取り戻したい場所があったのだ…
そんな私に当時のキルデベルト六世陛下は約束してくれた…」

「国をあと一つ…例えばプリタニアの征服を条件に…
ベルガの独立自治権を許すと…私は他人(ひと)の国を売って…自分の国を買い戻そうとしたのだ…」

「私はそんな愚かな男なのだよ…」

「そう…そんな愚かな男なら、私がここで殺してしまっても構わないわね?」
「あぁ…好きにするが良い…私は取り返しのつかない過ちを犯してしまった…」

「馬鹿!それでは何も解決しないじゃない…貴方はそれで満足かも知れない…
でも貴方の仇を取ろうとする者が現れないとは限らない…その論理が繰り返し悲劇を生んでいるのよ…」

「取り返しのつく歴史なんて一つもないの、だから尊いの、だから私達は新しい歴史を創ってゆくの…
愚か者とは…過ちを犯す者のことじゃない…過ちと知ってなお、正そうしない者のことをいうのよ…」

「…ねぇ…そうでしょう?」
「お嬢さん…君は強いな…」
「えぇ…そうよ…私は強いわ、この国の未来を背負っているんだもの…」
「この国の未来?プリタニアの女王は若い娘だと聞いていたが…まさか…君が…!」

「ローザ・ギネ・アヴァロン…そう…私がこの国(プリタニア)の女王よ…
黙っていて御免なさい…でも解って欲しいの…アルヴァレス将軍…私は貴方を信じます…」
「これは…女王陛下とは露知らず、数々の非礼を…」
「お願い!畏まらないで、私はそういうの好きじゃないの、私のことはローザで良いわ…」

「それにしても貴方があの有名な「ベルガの死神」(アルベルジュ)とはね…
…想像していた像(イメージ)と随分違うわね、熊のような大男だと思っていたのに…」

「…でも<ベルガの死神>(アルベルジュ)はやめた方が良いわね…
この国では流行らないわ…プリタニア風に言うと…
そうね、<ベルガの暴れん坊>(アーベルジュ)かしら…
そっちの方がずっと素敵よ…ねぇ…そうしなさいな…?」

「何?さっきから女性(ひと)の顔をそんなに見つめて…」
「いや…最初に貴女(あなた)を助けた時、ある女性に似ていると思ったのだが…」
「思ったのだが?」
「…今にして思うと全然似ておらぬ…」
「なに!?」

ウインダミアの湖畔を白い風が駈け抜けて往く…
トリストラム騎士団長率いる第六騎士団が衛る地
ランカスターへと…

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聖戦と死神 第四部「黒色の死神」~英雄の帰郷~


アルヴァレス亡命の報は 帝国のみならず
ガリア全土に強い衝撃を響かせ疾った…

時代は英雄を求め 反撃の狼煙は上げられた
旧カスティリヤ領が 帝国に対し独立宣戦を布告
旧ロンバルド領 旧プロイツェン領がそれに続き
帝国内部で高まりつつあった聖戦への反感が遂に爆発

アルヴァレスを頼り 軍・民・問わず亡命者が殺到
更に熾烈な四正面作戦を強いられた帝国は
次第に領土を削られ 国力を疲弊していった…
そして…戦局の流転は 時代にひとつの決断を投げ掛ける…

それは…皇帝 聖キルデベルト六世より
プリタニア女王へと宛てられた一通の親書…

帝国暦四年『ベルセーヌ休戦協定会談』
帝国領イヴリーヌ ベルセーヌ宮殿
大理石の回廊を進む薔薇の女王
左にはパーシファル 右にはアルヴァレス
柱の陰には招かれざる客…

黒の教団より放たれし刺客…
死角より放たれし時(クロ)の凶弾…
嗚呼…歴史は改竄を赦さない…

凍りつく時間の中を 崩れ堕ちるアルヴァレス
パーシファルの雷槍(ヤリ)が閃き 崩れ落ちるゲーフェンバウアー

それは…歴史の流れが変わる瞬間だろうか?
それとも最初から全て決められていのだろうか…

「…先に逝ったのか…ゲーフェンバウアー…人間(ひと)とは全く…哀しい生物(もの)だな…」

彼を誘う最期の闇 その中にさえ…

「嗚呼…朱い…何て朱い夕陽なんだ…シャルロッテ…私は必ず…必ず帰って…」

ブリタニア暦630年 英雄アルベール・アルヴァレス
イヴリーヌ(ベルセーヌ)宮殿 にて暗殺者の凶弾に倒れる…
彼の墓碑銘にはルーナ・バラッドが捧げた詩の一節が刻まれた…

多くを殺し 多くを生かした 多くを悩み 多くを為した <ベルガの同胞>(アーベルジュ)ここに眠ると…

ガリア全土を巻き込んでなお停まらない大戦
その終結には…更に多くの血と涙 五年の歳月を要するのである…

夕陽に染まる丘 寄り添うように並ぶ二つの墓標
白鴉が凛と羽ばたいて往く 終わらない空の向こうへ…

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書の囁き


私は<書の意思の総体>(クロニカ)
アナタたちが<黒の予言書>(ブラッククロニクル)と呼んでいるモノの原典
つまらない昔話でも宜しければ お話ししてさしあげましょう…

(「我らは書に拠って 祝福を約束されし者…(I wish to failure by Chronicle...)」)
(「彼らは書に拠って 断罪を約束されし者…(Mere fates too were known by Chronicle...)」)

昔々ある所に一人の男がいました
彼は破滅の運命に囚われていましたが
苦難の末…その運命から逃れる道を見つけ出しました…

(「我らは書に拠って 祝福を約束されし者…(I wish to failure by Chronicle...)」)
(「彼らは書に拠って 断罪を約束されし者…(Mere fates too were known by Chronicle...)」)

しかし…彼がその運命から逃れることは 別の運命によって定められていました
その別の運命から逃れられたとしても 更にまた別の運命に囚われてしまいます

(「我らは書に拠って 祝福を約束されし者…(I wish to failure by Chronicle...)」)
(「彼らは書に拠って 断罪を約束されし者…(Mere fates too were known by Chronicle...)」)

結局はその枠を何処まで広げようと いづれは簡単に絡めとられてしまうのです
書の真理をご理解頂けるかしら? 黒の歴史は改竄を赦さないのです…

(「我らは書に拠って 祝福を約束されし者…(I wish to failure by Chronicle...)」)
(「彼らは書に拠って 断罪を約束されし者…(Mere fates too were known by Chronicle...)」)

アナタは永遠を信じますか? …そんなことはどうでの良いのです
さしたる問題ではありません 書の歴史は全てを識っているのですから

(「我らは書に拠って 祝福を約束されし者…(I wish to failure by Chronicle...)」)
(「彼らは書に拠って 断罪を約束されし者…(Mere fates too were known by Chronicle...)」)

幾度となく誕生と消滅を繰り返す世界 全ては予定調和の内
書の真理をご理解頂けたかしら? 黒の歴史は改竄を決して赦さないのです…

(「我らは書に拠って 祝福を約束されし者…(I wish to failure by Chronicle...)」)
(「彼らは書に拠って 断罪を約束されし者…(Mere fates too were known by Chronicle...)」)

結局彼は運命の手から逃がれられませんでした
…されど憐れむ必要はないのです
ワタシもアナタも誰ひとり逃がれられないのですから…

めでたし…めでたし…

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蒼と白の境界線


第十六巻 602ページ…

海の匂いが好き 心地良い潮風が頬を撫でる
ここから見える景色が好き 海と空が同じ蒼で出来きているから…

摇れる碧石の首飾り…

それは…愛しき日々 今でもよく覚えてる
いつも肩車してもらってたよね
パパの背中は 何て大きかったんだろう…

少女は父親が大好きだった
父親は勇敢な船乗りだった
いつも優しかった いつも笑っていた
海の向こうの話を聞かせてくれた
少女の小さな地図は
いつもその話でいっぱいだった…

覚えてるわ パパの話
白い鯨を見てみたい
双子島にも行ってみたい
潮風に揺られどこまでも…

大人達は皆 分かってはくれない
小さな身体には収まりきらない
大きな夢があるんだ
私は 絶対船乗りになるんだ…

覚えてるわ パパの話
歌う海鳥を見てみたい
珊瑚の樹海にも行ってみたい
潮風に揺られどこまでも…

こんな晴れた日は 白い紙鳥を飛ばそう
あの蒼い水平線の向こうまで…

何色にでも染まる<白>は 明日の私だ
<境界線>なんて何処にも無い
真っ直ぐ<蒼>に溶けこんでゆけ
どこまでも どこまでも…

その紙鳥は潮風に乗って翔んでゆく
どこまでも どこまでも…

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沈んだ歌姫


第十二巻 741ページ…

二人の歌姫 沈むのはいずれか…

紅の歌姫と称されし フィレンツァ領主 フィレンツァ公爵家の令嬢
ロベリア・マリア・デッラ・フィレンツァの手番(ターン)

遊戲盤(ばんめん)の上を駒が進む…
<聖都フィレンツァ及び南都ナポールタ → 赤の歌姫の後援都市>(Firenza Naporta Patrono de Roberia)
歌え!紅の歌姫(ロベリア) 目指す舞台は
優雅にして華美なる(Elegante e Sfarzoso)麗しの王都ロマーナ

蒼の歌姫と称されし ミラーナ領主 ビスコンティエ公爵家の令嬢
ジュリエッタ・シモーネ・デル・ビスコンティエの手番(ターン)

代わる代わる駒は進み…
<北都ミラーナ及び水都ヴァナラ → 蒼の歌姫の後援都市>(Milana Venera Patrono de Giulietta)
歌え!蒼の歌姫(ジュリエッタ) 目指す舞台は
優雅にして華美なる(Elegante e Sfarzoso)憧れの王都ロマーナ

紅く燃え上がる情熱の歌声と華やかな容姿(フィギュラ) 私こそが<最高の歌姫>(レジーナ)
(「蒼く湧き出づる清廉の歌声と穏やかな微笑(フィリフス) 私こそが<最高の歌姫>(レジーナ)」)

諸侯を巻き込んで 宮廷に蠢く影は 権謀の黒き獣(べスティア) 争いの宴(フェスタ)は続く…

田舎貴族の娘(ジュリエッタ)が望むには不遜な 至尊の寶冠(ティアラ)
(「色惚の年增娘(ロベリア)が望むには不遜な 至尊の寶冠(ティアラ)」)

頭上に戴くのは紅の歌姫(ロベリア)こそが相応しい…
(「頭上に戴くのは蒼の歌姫(ジュリエッタ)こそが相応しい…」)

…「王妃陛下万歳!(Viva! Evviva!)」

(「Ves, Viros, Wes, Lilis...」)
(「Eros, Vires, Eris, Viros...」)
(「Feno, Firis, Feris, Firos...」)

(「見なさいロベリア…今やナポールタの利がお前の手に落ちた、
後はビスコンティエの小娘さえ退けば…晴れてお前が王妃陛下だ…」)

時は…イタニア暦312年
国王モンテフェルトラーノ四世 突然の崩御
若き王太子アレッサンドロ
アレッサンドロ一世として即位

(「あんな田舎娘に、私が負けるはずありませんわ」)
(「おお、そうだとも。だが憂いは全て絶つに越したことはない…」)

イタニア<最高の歌姫>を
王妃として迎えるという勅令を発布
野心を抱いた地方領主/門閥貴族
各々に歌姫を立て王都を目指し進撃…

(「Eros, Vires, Eris, Viros...」)
(「Feno, Firis, Feris, Firos...」)

(「まぁ、お父様ったら…」)
(「下賎な歌姫など身分の卑しい売女も同じ、まして逆賊の娘など売女以下の面汚し…」)

駈ける駆ける獣(べスティア)…
高值で売れるなら娘でも売れ
売值は望む得る限り高く
猛る猛る獣(べスティア)…
敵を売れ 味方を売れ
他人の娘など底值で売りつけてやれ

(「可愛いロベリア…最高の歌姫はお前だよ…」)

咆える吼える獣(べスティア)…
弒逆を謀った逆賊として
デル・ビスコンティエ一門処刑

(「Eros, Vires, Eris, Viros...」)
(「Feno, Firis, Feris, Firos...」)

(「あら…頼りにしてますわ、お父様」)

屠る屠る獣(べスティア)…
逃亡を図った国賊として
デル・ビスコンティエ令嬢を処断

(「ジュリエッタ…お前は最高の歌姫、我が一門の希望だ…
私の力が及ばないばかりに、すまなかったね…
せめてお前だけでも逃げなさい…」)

「騙し騙され…殺し殺され…よく飽きもせぬものだ…
全ては遊戯(ゲーム)に過ぎぬ…予を生み堕とした…
この世界に復讐する為のな…!」

逃げる乙女と 追い駆ける獣(べスティア)
紅糸で手繰る 操り人形(マリオネッタ)
繰り返される 歌劇(リーリカ) 悲劇(トラジェディア)
紅糸で手繰る 操り人形(マリオネッタ)

牙を剥いた獣(べスティア) 追い詰められた断崖
歌を奪われた歌姫 世界までも奪われ…

「ロベリア!ロベリア!(Roberia! Roberia!)」
「ロベリア王妃陛下万歳!(Viva! Roberia Evviva!)」

「──お父様!」

蒼い空 碧い海 飛び去りぬ白鴉 沈み逝く歌姫

歌姫ジュリエッタの沒後…王妃ロベリア在位僅か三年にして
寵妃ビアトリジェ宰相ガレアッツォらの共謀により 歴史の闇に沈む…

君よ驕ることなかれ 我等
歴史という大海に漂う小舟に過ぎぬ
盛者必衰 沈マヌ者ハナシ…

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海の魔女


第十三巻 509ページ…

私は馬鹿だ…そう沈んでから気付いた…私は
唯…歌いたかった
唯…この歌を聴いて欲しかった
唯…それだけだった…

蒼い波の雫 照らす…月は冷たく
大きな岩場の陰(シェイド) 庭舞台(テラス)…夜は冷たく
聴いて…嫌や…聴かないで 空を呪う歌声
恨み唄…いや…憾み唄 海を渡る歌声

楽しければ笑い 悲しければ泣けば良いでしょう
けれど今の私には そんなことさえ赦されぬ
私はもう人間(ひと)ではない 歌うことしか出来ぬ
悍しい化け物へと変わり果てていた…

(「Lu Li La Lu Lu Li Lu La Lu  Lu Li Lu Li La La Lu Li La La」)
(「Lu Li Lu Li La Lu Lu Li Lu La Lu Lu Li Lu Li La La Lu Li La La」)

生きることは罪なのだろうか…望むことは罪なのだろうか…
歴史よ…アナタの腕に抱かれた 彼女達は言うだろう
「アナタの愛は要らない…私はそんなモノを愛とは呼ばない」と…

(「Lu Li La Lu Lu Li Lu La Lu  Lu Li Lu Li La La Lu Li La La」)
(「Lu Li Lu Li La Lu Lu Li Lu La Lu Lu Li Lu Li La La Lu Li La La」)

嵐を導く哀しい歌声は 白鴉の途を遮るかのように…

Lu Li La Lu Lu Li Lu La Lu  Lu Li Lu Li La La Lu Li La La...

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碧い眼の海賊


第十七巻 84ページ…

「大変だお頭、前方に突然巨大な嵐が發生しやがった!」
「あ~ぁありゃセイレーンですぜお頭~!!」

「セイレーン如きでびびってんじゃないよ、情けないねぇ、
あっちが海の魔女なら、こっちは海の美女だっつうの!」
「”麗しき姿<美の女神>(ウェヌス)の如し”と謳われた、
この<海の女神様>(テティス様)を嘗めんじゃないよ…」

「そりゃ”猛き姿<戦の女神>(パラス・アテネ)の如し”の間違いじゃ…」
「ズィマー何か言ったかい?」
「ひぃ~!!!」
「いくよ野郎ども、びびってんじゃないよ!」
「そ~ら、おいでなすったぜ!」

「さあ、漕ぐぞ、漕ぐぞ!さあ、漕ぐぞ、漕ぐぞ、それ!それ!(Haw l'altero l'altero! Haw l'altero l'altero hoo! hoo!)」

…波間を漂う襤褸(ぼろ)い板切れ
若い娘を背に乗せ何処へ往くのか…

「よぉ…気が付いたかい?」
「ここは何処?…貴女(あなた)は?」
「此処は<地中海>(メディテラネオ)、
この船は<絶世の美女=海の女神号>(ウェヌス=レティーシァ)、あたいはこの船の船長レティーシァ」

「そっちの図体のデカイ野郎はヤスロー…筋肉馬鹿だ」
「宜しくな、嬢ちゃん」
「こっちの胡散臭い髭の野郎はズィマー…唯の馬鹿だ」
「がび~ん!」
「他にも馬鹿な野郎が大勢乗ってる…で、あんたは?」

「助けて下さってありがとう、私はアニエス、
海の魔女(セイレーン)の嵐に巻き込まれてしまって…嗚呼…みんな今頃きっと昏い海の底に…」

「もう…海の女が泣くんじゃないよぉ…」

「…ってアナタ、その首飾りどうしたのよ?」

「うわぁ…立ち直りの早い娘だねぇ…
昔…溺れかけてたおっさんを助けた時に貰ったのさ、何でも命よりも大事なもんらしい…」

「そのおっさんって私の父(パパ)よ、間違いないわ!
生きてるの?生きてるのね?私の父(パパ)は、いーきーてーるーのーねー!!」

「うわぁ…あんたも生きてた…親父さんも生きてたんだ…
あんたの仲間にも、他に生きてる奴がいるんじゃないか?」

「船を出して、今すぐ出して、出して、出しなさい、ふーねーをーだーしーなーさーい!!!」

「どひゃぁ~!!!!!」

波を殴り倒しながら突き進む海賊船
それを導くかのように蒼穹を翔け抜ける白鴉
その白は 真っ直ぐ蒼に溶け込んでゆくように
どこまでも…どこまでも…

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雷神の左腕


第一巻 816ページ…

こんな嵐の夜は 傷痕が疼く
右腕を引き千切る様な 在るはずの無い痛み
誰に話すこともなく 男はひとり苦惱している
残った左腕で何を為すべきかを…

不吉な予兆は 日に日に影を色濃く落とす
確實に その時が近づいている
あの日と同じ嵐の夜 男は人知れず旅立った
覺悟は決まっている まだ左腕がある…

男は扉を必死で押さえていた
扉の向こうは闇 邪悪な力が溢れ出ようとしている
それを左腕で必死に抑えていた
もうダメだ…右腕…右腕さえあれば…

男が諦めかけたその時
薄れゆく意識の中 温かい光を感じた
右手に槍を掲げ 嵐の中幾千の人々が祈っている…

あの時の子供達は皆 大人になった
雷神は右腕を失い 世界は生まれ変わった
右手が蒔いた種を育てたのは左手
そして美しい花がさく 幾千の花が咲く…

彼には勇敢な左腕と 幾千の右腕がある
決して負けはしない そんな想いが歴史を紡ぐ…

…やがて時は流れ…

「ねぇおじいちゃん、どうして?雷神様には、右手が無いの?可哀想だよ…」

と街角の子供は問う…

子供の小さな手を取り 老人は微笑んで答える

「雷神様の右手は、今もここにあるよ…ほれ、その右のポッケの中にも…」

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雷神の系譜


第四巻 27ページ…

世界を救いし隻腕の英雄亡き後
邪神が封印されし地に街を築き
自らが結界の役割を果たし
永き平和への礎と成す…

誇り高き右腕に刻まれし雷の紋章(あかし)
彼の者達の名は 雷神の民
伝承の謎 紋章の秘密
少年が描く軌跡 雷神の系譜

弱い者ほど徒党を組み
身代わりの羊を捜す
愛を知らない幼き日々は
灼けた石の痛み

ひとり唇噤んだまま
膝を抱えて耐えていた
雨も宿ればいづれ過ぎ去る
嵐もまた然り

されど輝やかざる紋章(しるし)
本当の強さって何だろう?
差し出された少女の小さな手が
とても大きく見えた…

黙したまま何も語らぬ歴史の手の平の上で
出会ってしまった少年と少女の物語
十年の歳月も一閃の雷が如く
過ぎ去ってしまえば刹那
今…黒の歴史が再び動き出そうとしている…

遠い空見上げて この胸を焦がす
浮かぶのは彼女の 愛らしい笑顔だけ
適わぬ想いと 識っていながら…

麗しの君は何故 一族の長の娘
部族一強き者の許へ
嫁ぐこと定めしは 変えられぬ民の掟

嗚呼…雷(ちから)無きこの腕じゃ 君のこと護れない?
想いなら誰にも負けないと
叫んでもその言葉 虚しくも風に消えた…

期は満ちようとしていた 長の娘も今年で婚礼を定められし齢十六
その誕生の日が差し迫り 一族の猛者達は競って名乗りを上げた
期は満ちようとしていた 邪悪なる波動が街全体を包み込み
空に立ち込めたる暗雲は <三度目の嵐>の訪れを告げようとしていた…

(「どうなされました?お婆様…」)

「おぉ…何ということじゃ…!黒き法衣(ローブ)を纏いし者達の影が見える…
予言書の使徒、奴らを封印の深奥へ行かせてはならん、
邪神の封印を解こうとしておるのじゃ…!
いまや雷神様の血も薄れ、我らに扱えるは小さき雷のみ…
あぁ恐ろしいや…!天地を揺るがす強大な力じゃ…来るぞ…あぁ来るぞ…!」

地を割る咆哮 天を裂く爪牙 烈火の如く燃えさかる六対の翼
暗黒を宿した瞳に魅いられただけで 勇猛なる戦士が次々と倒れていった…

嗚呼…人間(ひと)とは神の前では かくも無力なモノなのだろうか…
誰もが深い絶望に呑まれかけていたその瞬間(とき)
一際眩い閃光が雷(ちから)無き青年の体を貫いた…

「覚醒めよ…勇敢なる右腕を持つ者よ…
直系の雷(ちから)を受け継ぎし者よ…
かつて私は邪神(やつ)を封印せし折、雷の槍を放ったが故右腕を失った…
今その雷(ちから)を開放すれば、右腕はおろか全身が吹き飛ぶやも知れぬ…
御主にその覚悟があるか?
…ならば今こそ覚醒めよ<雷神の右腕>よ!」

「ひとりでは耐え切れぬ、雷(ちから)でもきっと、ふたりなら大丈夫、私は信じる!」

暗雲を貫く雷 あの日出会った少年と少女は
今…二つの紋章(しるし)重ね合わせて 輝ける未来(とき)を紡ぐ…

「…ちゃん…ねえ…お婆ちゃん…お婆ちゃんったらぁ!」
「どうしたの?それからお話どうなったの?」
「おお…そうだったねえ、ごめんよ」
「その後、雷神様が邪神をやっつけたんだよね?ね?」
「さて、どうだったかねえ…昔の話だからもう忘れちゃったねえ…」
「えー、そんなのずるいよぉ」

…そう言って微笑んだ祖母の瞳(め)は とても優しい色をしていた
…その時の事は今でも印象深く覚えている
…私は信じているのだ 雷神の系譜は途絶えていないのだと…

受け継がれるモノ…受け継がれざるモノ…
暗雲を貫く光を翼に受け…その白鴉は羽ばたいて往く…

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書の魔獣


第二十四巻 1023ページ…

滅びゆく世界の果てに 誰を裏切る
煌く宝石(いし)を投げ込む愚行 其処は泥沼だ
其の滅びゆく世界の輪から 誰が抜け出す
今更助け合っても無駄さ 其処は底無しだ

ボクらは世界を識っていた…ボクらは歴史を識っていた…
ボクらは未来を識っていた…本当は何も知らなかった…
ボクらは世界を知りたいんだ…ボクらは歴史を知りたいんだ…
ボクらは未来を知りたいんだ…今からそれを見つけるんた…

我らは書に拠って 祝福を約束されし者…(I wish to failure by Chronicle...)
彼らは書に拠って 断罪を約束されし者…(Mere fates too were known by Chronicle...)
我らは書に拠って 祝福を約束されし者…(I wish to failure by Chronicle...)
彼らは書に拠って 断罪を約束されし者…(Mere fates too were known by Chronicle...)

書に刻まれし終焉の魔獣(ベスティア) 黒き秩序に従い
歴史を駈け堕りる審判の仕組(システィマ) 最後の書頁(ページ)めがけて…

(「我らは書に拠って 祝福を約束されし者…(I wish to failure by Chronicle...)」)
(「彼らは書に拠って 断罪を約束されし者…(Mere fates too were known by Chronicle...)」)
(「我らは書に拠って 祝福を約束されし者…(I wish to failure by Chronicle...)」)
(「彼らは書に拠って 断罪を約束されし者…(Mere fates too were known by Chronicle...)」)

美しく在ろうが 醜く在ろうも同じ…
賢く在ろうが 愚しく在ろうも同じ…
その闇に屠られてしまえば 存在など虚構も同じ…
数多の記憶 歴史を呑み込んで尚 その魔獣は止まらない…

ソラから舞い降りた白い翼は 消え去ることも恐れずに闇に向かって往く その頃ボクらは…

黒の教団 地下大聖堂…

「お帰り<可愛い我が娘達>よ…と言ってあげたい所だが
どうやら我々の同志に戻るつもりはないようだね…」

「残念ながらもう手遅れだ、書の魔獣は誰にも止められないのだよ…
終焉の洪水がこの旧世界を屠り、全の歴史を呑み込むまで…」

「養父(ノア)、アナタって人は…!」

「その眼を見ていると、嫌でも思い出す…
<反逆者の父親>(ルキウス)、<逃亡者の母親>(イリア)…やはり血は争えぬということか…」

「<黒の神子>(ルキア)よ、私は悲しい…!
君ならば書の真理が理解できると思っていたのだがねぇ…
まぁ良い…歴史を変えられると思い上がっているのなら…
いつでも掛かって御出でなさい…」

「聴こえないのかい?我々を新世界へと導くあの音が…!」

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キミが生まれてくる世界


黒い背表紙に黒い文字で記された物語…

今日はいっぱい話そう…
キミが生まれてくるこの世界のことを…

この世界には 終わりはないんだ
変わらぬ想い 数多の時代を
戦ってきたんだ そしてこれからも
戦ってゆくんだ ボクらの歴史を…

詩人は死してもなお歌い
新しい詩で世界を包む
海も大地も空も夕陽の丘も
全てキミの…キミの世界になる

詩人の詩 歌姫の歌
薔薇の紋章 雷の紋章
朱石の首飾り 碧石の首飾り
語り継がれてゆく 終わらない物語
歴史は次の地平線を探し流れてゆく…

クロは全てを裁き…全てを流すのだろうか?
ソラはこの世界を…この世界を包むだろうか?

美しきモノも…醜きモノも…
賢きモノも…愚かしきモノも…
強きモノも…弱きモノも…
変わりゆくモノも…変われざるモノも…

今日はいっぱい話そう…もうすぐ
キミが生まれてくるこの世界のことを…

キミは全てを赦し…全てを愛せるだろうか?
キミはこの世界を…この世界を望むだろうか?

さぁ早くでておいで…恐がらなくていいんだよ
ボクはこの世界を…ボクはキミを愛してるから…

もうすぐ生まれてくるキミと…ボクとの約束…
今度はボクがキミを…絶対ボクがキミを護るから…

歴史は次の地平線を探し流れてゆく…

(「我らは書に拠って 祝福を約束されし者…(I wish to failure by Chronicle...)」)
(「彼らは書に拠って 断罪を約束されし者…(Mere fates too were known by Chronicle...)」)

結局彼女は運命の手から逃がれられませんでした
…されど憐れむ必要はないのです
ワタシもアナタも誰ひとり逃がれられないのですから…

めでたし…めでたし…

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<ハジマリ>のクロニクル


ある抜け落ちたページ…

歴史を導く白い鴉と 歴史を呑み込む黒い魔獣
書の記述を真似したごっこ遊び
キミはいつも鴉で ボクは魔獣の役だった……

昏く永い闇を抜けて 新しい時代が来るよ
鎖ざされていた 物語たち 動き出すよ

何故キミは泣いているの 生きるのは哀しいかい?
そんな時こそ 大きな声で 笑うと良い

世界を優しく包む 大きな笑顔(はな)を咲かせよう
流した涙は 虹になる

キミを傷つけるモノ全てを ボクは絶対赦さないよ
キミを護るためボクは戦うよ ボクを最後まで信じて欲しい……

「そんな悲しい顔しないでおくれよ。
ねぇ…初めて会った日の事を憶えてるかい?
あの日、キミは小さな翼を震わせて泣いていたね。
でも…今のキミの翼は、とても大きくて力強い美しさに満ちている。」

「キミはいつも鴉で、ボクは魔獣の役だったね。
本当は、たまにはボクも鴉を演りたかったんだけど、
そうじゃなかった。鳥でも獣でもなかったんだ。
ボクは今、本当の自分の配役を知ったんだと思う……。」

小さき者と嘲笑う 残酷な歴史の時風(かぜ)
翼を広げて迎え討つ

キミが白い鳥になるのなら ボクは大きなソラになろう
キミは何処までも羽ばたいて往ける ボクは最期まで信じて逝こう……

「ボクのことは愛さないで欲しい。
ボクは、もうすぐキミの世界から消えてしまうから。
ボクのことなど忘れて生きてゆくんだ。
これから手にするモノを愛する為に、キミは生きてゆくんだ。
生き延びるんだ。どんなことがあっても生き延びてゆくんだ。」

「どんな困難が訪れようとも、絶対諦めたりはしないんだ。
<時を超え甦るハジマリの地平線>(クロニクル)
それがボクとキミとの、たったひとつの約束……。」

──哀しみの黒い幻想(ファンタジー) ここからハジマル ボクらの戦いの年代記(クロニクル)──

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<空白>のクロニクル


歴史は終わりはしない…
むしろ この瞬間にもハジマリ続けている

空白の<永遠>(十秒)…
君の<地平線>(世界)へと続く<物語>(クロニクル)……

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雷神の右腕


遥かなる 時の彼方
一人の英雄の物語…

混沌を纏し 邪悪なる神々
破壊の日々に戯れ
かつて 楽園と呼ばれた大地は
その輝きを 失った…

絶望が 呼び寄せた
吹き荒れる 嵐の中
勇敢な戦士が
神々に 戦いを挑んだ…

戦いは 壮絶を極め
天地は 揺れ動いた
戦士が 右腕と引き替えに
放った 雷の槍は
天を裂き 地を割り
遂に 神々を打ち倒した…

戦士は 英雄と呼ばれ
神と崇められた
戦士は その右腕を失い
神と崇められた…

やがて 時は流れ
街角の子供達は問う
雷神には何故
右腕が無いのかと…
ツールボックス

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