5-54「15498回目の8月31日」

高一の、15498回目の8月31日、と言えば説明は不要であろう。
そう、SOS団全員で俺の家で夏休みの宿題をやったあの日の事だ。

「キョン、何か読ませてもらうわよ」
学校の課題など7月中にすっかり終わらせ本日最もやる事を持たないハルヒがそう言って
俺の本棚を物色し始めた。勝手に何でも読みやがれ、俺は猛烈に忙しい。
「へぇー、そんな事言っていいのかしらねー?」
なに――
振り返った俺の視線の先、A3版くらいのハードカバーを覗き込んでいるハルヒの姿。
「待てハルヒ、そいつは危険過ぎる! お前の為だ、やめるんだ!」
「あたしの為? ハハーン、あんたには昔騙されたからね。そんなの通じないわ。
それにもう遅いわよ、見ちゃってるもの」
食らえ! と言わんばかりの表情でハルヒが俺たちに突き付けたその1ページは
アルバム編集委員どもの陰謀により、俺と佐々木とのツーショット写真で埋められていたのだ!
「だっ……だから見るなって言ったのに……」
恥ずかしくて顔から火が出そうだぜ。当時ですら同級生どもの格好の餌にされていたというのに
今またこうして辱めを受けるとは、何たる失態だ、俺よ。
「どう見てもこれはカップルとしか思えませんね。本当にありがとうございました」
相変わらずの微笑を貼り付けた表情でしれっと言ってのける古泉。ちくしょう、表に出ろ。
「わあ、キョン君の中学時代ですか? 見せて見せて」
あ、朝比奈さん、あなたまで――
「ふふ、隣の女の子、かわいいですね。中学時代のキョン君の彼女さんですか?」
だからそれは――ん、何か今ハルヒがビクっとしたような、気のせいか?
「――いや、ただの友達ですよ」
俺としては本当の事だ。あいつとは男女の立場ではなく友達として付き合っていたし、
あいつの方でもそれは同様だっただろう。
俺達の間で友情や信頼関係はあったが、恋愛感情を表す事はお互いに無かったしな。
「ふーん……でも、ただの友達じゃないですよね」
俺の顔を覗き込みながら朝比奈さんが尋ねてきた。どうしてそんな事を?
「すごく嬉しそうな表情をしていたもの、『友達』だって言った時のキョン君」


―――― 一方その頃。

ああ、キョン――やっぱりキミは素晴らしい、僕の大切な人だ。
キョンとのツーショット特集――くく、当時のアルバム委員を懐柔した成果はあったようだね。
卒業式の時のスナップショットも散々撮ってもらったし。
これは体育祭の二人三脚のか、よく見たらキョン、キミ顔を赤くしているじゃないか。
もしかしたら僕に女を感じていてくれたのかな? くっくっくっ

――キョン……キミに会いたいよ。キミと話をしたいよ……グスッ

「(トントントン)ちょっといい? お遣い行ってきてくれないかしら?」
「ははっはいいいぃぃいいぃいぃぃっ?!」

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最終更新:2013年02月03日 15:14
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