35-98「赤ちゃん製造機」

『赤ちゃん製造機』

夏休みのある日のことである。朝飯を済ますと、俺の部屋に変な機械があった。
家族に聞いたら、ずっと前からあるとのこと。

―――赤ちゃん製造機。これであなたの赤ちゃんを作って下さい。周防企画―――
材料は廃糖蜜3キログラム、脱脂粉乳1キログラム、食用油1リットル、岩塩200グラム、水20キログラム

何となく面白そうだから、作ってみることにした。
佐々木と一緒に作ろうと思って電話したら、午前中は用があるとのことなので、材料を用意して佐々木が来るのを待った。
良く見ると、クローンを作る映画で出てきた培養槽みたいな機械だ。


午後になって、佐々木がやって来た。
「すまない、キミからの折角の誘いなのに午前中は用があって。ところで、その奇妙な機械は何かな?」
「それは後で説明する。今日は今から二人で、素晴らしいことをしようと思って」

それを聞いて佐々木はパッと目を輝かせた。
「映画にでも同伴させてくれるのかな?図書館?それともプール?キミの誘いならどこでも行くよ」
ラブなホテルに行きたいと言えばそのままついてくる雰囲気、とまではいかないが、かなり乗り気だ。
「そうじゃなくて、二人で作ってみないか?そのー、何だ。アレを」
「わかった。先日買ったプラモだね。今から製作にとりかかろう」
そういや、プラモ買ったな。あの機械を見た瞬間にすっかり忘れた。
「プラモなんてものじゃなくて、実は」

「実は?」
「大声では言えないが、お前と一緒に赤ちゃん作りたいんだ」
「……」
ほとんど電波話だから、第三者に聞かれるとまずい話だ。
アレ?佐々木?

「えーと、キミが意味するのは3年後でなく、もしかして、今から?」
佐々木は顔じゅう真っ赤だ。
「3年も待てない。俺は今すぐ作りたい。今日暇なんだろ?」

―――殴られた
気がついたら、機械も佐々木も無かった。


次の日の登校日、「俺が佐々木を無理矢理押し倒そうとした」という根も葉もない噂が学校中に流れた。
佐々木からは、年齢と経済状況を考えろとネチネチ言われ、機嫌を直してもらうのに随分骨が折れた。
なお、佐々木と一緒に作ろうと思って買ったプラモは今でもそのまま。
代わりに、佐々木の親父が買った風力発電機を組み立てることになる。その風力発電機でいろいろ実験して、自由研究では銅賞を貰った。

あの変な機械は夢だったのだろうか?
どっちにしろ、軽い気持ちで子作りすると痛い目に会うということ。あの時作らなくて良かった。
(終わり)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年07月29日 20:39
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。