37-315「職場体験」

今の中学校には、授業の一環として生徒たちが様々な職場を訪れ、
実際に仕事を体験するという職場体験というものがある。
うちの学校でも毎年実施されており、今年は俺の学年の番だ。
そして今日がその初日というわけなのだが、何をどう間違ったのか
俺が担当する職場は市内の幼稚園なのである。

「全く、ただでさえ家で毎日幼稚園児同然なヤツの相手をしているってのに、
どうして家の外でまでそんなことをしなきゃいけないんだ…」
「くっくっ、いかにも君らしい発言だね。しかし僕は少々楽しみだよ、
幼い子供たちと戯れる機会というのはなかなかないものだからね。
子供たちの無垢な心と接することで、
現代社会の中で疲れてしまった僕たちの心を浄化するのもいいものさ。」
「そういうもんかね」
そこまで言うのなら今度俺の妹を一週間ほど
佐々木に貸し出してみてはどうだろうと真剣に考えているうちに、
俺たちは担当の幼稚園に到着した。


幼稚園の先生からは、今日は天気がいいから外で遊ぶので、
園児たちといっしょに遊ぶように指示された。
俺たちは学校の体育用ジャージに着替え、幼稚園のグランドに出た。
子供たちはサッカーをしたり遊具で遊んだり
砂場で泥遊びをしたりとそれぞれに好きなことをして楽しんでいる。
「邪気なもんだな」
「まあ、学業に悩まされることないというのは、確かに羨ましいものがあるね。」
俺たちがそんなことを話していると、ある男の子グループが俺たちの元に駆け寄ってきた。
「すげーなー、ちゅーがくせーだぜ。」
「でけーな~。」
「おにいちゃんたち、いっしょにあそぼーよ。」
「そうだね、何をして遊ぼうか?」
そう言うと佐々木はしゃがんでひとりの男の子の頭を撫でようとした
すると、
(ぱふっ)
「なッ!!」
あろうことかその子は、佐々木の胸を触っていた。
「このねーちゃん、せんせーのよりもちっちゃいぜー。」
「うわー、ぺちゃパイだー!」
「ぺちゃパイちゅーがくせーだー!」
子どもたちは口々に好き勝手なことを言い出した。
「こ、こら!君、やめなさい!」
俺も佐々木もとりあえずその子を引き離そうとしたが
今度は別の子が佐々木のズボンに手をかけていた。
「このねーちゃん、おっぱいないからほんとはおとこなんじゃねー?ちんちんついてるかみてみよーぜ!」
「ちょっ…!」
そういうとその子は佐々木のズボンを下ろし始めた。
「さ、佐々木!?」
「キョン!み、見ないでくれ!」
俺は咄嗟に目を逸らしたがこのままでは助けることができない。
「「「おとこおーんな!おとこおーんな!」」」
いつの間にかほかの遊びをしていた園児たちまでも集まってわけのわからないコールをしている。
俺はどうすることもできず、先生たちが駆けつけてくるまで
なすすべもない佐々木の悲鳴がただ秋の空に響いていた。

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最終更新:2008年10月15日 11:28
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