64-12『待っているとキミは言った』

佐々木「悪いな。助かるよ佐々木。」
佐々木「まったくキミは、僕がいないと何もできないと言うんじゃないだろうね。」くっく

佐々木「…そうだな、おまえがいないと俺は困る。」「佐々木、俺とずっといてくれないか。それこそずっとだ!」
佐々木「キョン…///」


女子A「うわ。またブツブツ言ってるよ、キモ。」
女子B「ほんとヤバクね?アイツ。」

橘「……佐々木さん…。」


佐々木「学校で、みんなとあんま仲良くやれてないのか?」
佐々木「ん…まあ、それなりにだよ。」「それにキミとこうやって話をしているだけで僕は正直他なんてどうでもいいんだ。」

佐々木「…おまえらしいといえば、おまえらしいが、…あんま無理すんなよ?」
佐々木「くっく。相変わらずキミは優しいんだね。」「でもきっと僕以外にもそうなんだろうね、うん、そんなキミだから僕は…」

佐々木「違うぞ佐々木。」
佐々木「え?」

佐々木「ここ最近…ええい、恥ずかしいがここんとこお前のことしか考えてないんだ。お前の元気のない顔を見て、その、俺がなんとかしてやりたいとずっと考えていたんだ!」
佐々木「…キョ、キョン///」


男子A「始まったよあの独り言。顔はマトモなんだがな~」
男子B「確かに、もともとキモイ言動のプラマイゼロだったのに、あれはな~。」


橘「……。」


橘「…これが最近の佐々木さんの学校生活での日常です。」
藤原「…どこぞの頭のおかしい女、いや人間といったほうがいいか、たいして変わらんな。気味が悪い。」
九曜「ここ1週間__校内で他人との会話__ない。」

橘「もともと孤立していたのに、独り言を言うようになってさらに拍車がかかって…。」
藤原「自業自得だ。」

橘「! そんなことないです!悪いのは他の人たちです!」「女子の一部が佐々木さんの容姿に嫉妬して佐々木さんを教室で孤立させるようなことしたのが始まりで、男子は男子で最初はかばってたのに、一部が佐々木さんに振られた腹いせに色んな悪口をひろめて…。」

橘「そりゃ、佐々木さんの喋り方とか、立ち振る舞いとか、ちょっと他の人とは違うなーって思うけど、みんなから仲間はずれにされることはないのです!むしろ魅力的なのです!」

藤原「ふん。いつの時代も異質なものは集団から徹底的に疎外される、なんと変わらぬ愚かさだ。」
藤原「で?会話の内容から察するに、あの女が現在、学業以外に精神の拠りどころにしているのは例のあの…」

橘「はい。キョンくんです。」


キョン「よ、佐々木。」
佐々木「キョン?キョンじゃないか。久しぶりだね!」

キョン「佐々木はこれからどっかいくのか?」
佐々木「うん。これから塾にね。キミこそどこかにいくのかい?ふふ、その様子だとこの後何もやることも行くあてもなくブラブラしているようだけど?と、すまない流石に失礼だったかな?」くっく

キョン「うっせ。あー、悔しいがその通りだ。今日は暇でな。」
佐々木「くっく。その暇な時間を使って学業に精を出すというのもいいと思うんだが、キミはどう思う?」
キョン「いや、悪いがそれは遠慮しておこう。おまえみたいに進学校に行きながら塾に通うなんざあと百回生まれ変わっても俺には無理だろう。」

キョン「………そうだ、佐々木。塾までちょっと時間はないのか?」
佐々木「時間?んーそうだね、悪いが正直あまりないんだ。いつもは余裕をもって学校を出れるんだけどね、」

佐々木「……」

キョン「佐々木?」

佐々木「あ、いや、そのちょっと用事があってね、今日は学校を出たのが遅かったんだ。」「それより時間がどうしたんだい?」

キョン「いや、久々にお前に会った訳だし、何より俺は今日暇だからな。ゆっくりお前と話がしたかっただけだ。まあ、時間がないならしょうがないが…、また次の機会にするか。」

佐々木「!?  いや、ちょっと待ってくれキョン。僕もキミと久々に会えたのにこのままハイまた次の機会にというのは少し、さ、寂しいよ。」「そ、そうだね、たまには塾を休んでも…」

キョン「あー、それには及ばん。終わるまで待ってるよ。少し遅くなっても平気だろ?いや、なに、言ったろ?俺は今日暇なんだ。」

佐々木「そ、そうかい///じゃあキョンのお言葉に甘えるよ、少し、いや大分待たせることになるけど終わったらまたここで待ち合わせしよう。」

キョン「おう。しっかり頑張って来い。」
佐々木「くっく、僕は塾で頑張った、とうことは一度もないのだけれどね。それじゃ、キョン、後で。」

キョン「あ、そうだ佐々木。」
佐々木「ん?何だい?」

キョン「……いや、何でもない、また後でな。」


塾の休み時間

佐々木(はあ、今日の講義はまったく耳に入ってこないな。これは帰って復習を完璧にしないとね。」
佐々木「……キョン。」

佐々木(キョン、キョン、キョン…///。久々にキミの声が聞けた。僕の目の前にキミがいた。)
佐々木(キョン…嬉しいよ。僕のために塾の終わりを待ってくれるなんて…、なんて優しいんだい。)
佐々木(…そ、それともキョンもそんなに僕と話をしたかったのかな。……ああ、キョン、キョン、…)

ブツブツ


男子C「おい、あれ、例の…。」ヒソヒソ
女子C「そうそうウチの学校で有名な頭のおかしい、佐々木って娘よ。」ヒソヒソ


佐々木「キョン、お待たせ。」
キョン「おう、終わったのか。お疲れ様。」

佐々木「この時間になると肌寒くなってきたね、キョン寒くなかったかい?すまない、こんな時間まで待たせて。」

キョン「いや、俺は一向に構わんぞ。待つといったのは俺だしな。」「それより佐々木こそ寒くないのか?飲み残しでよかったら飲むか?まだ温かいぞ、もちろんブラックだ。」

佐々木「あ、ありがとう、キョン。せ、せっかくの君のご好意だ、甘えようじゃないか。」

佐々木「……。」ズズ
キョン「…こうやってると昔を思い出すな。あのころと違って塾帰りってのはお前だけだが。」
佐々木「…そうだね。君は自転車を押しながら、二人で星を見ながら帰ったりしてたね。」

佐々木「……。」
佐々木「あの頃は、…楽しかったな。」

キョン「なあ、佐々木。」

佐々木「なんだい?キョン。」

キョン「…学校は楽しいか?」」

佐々木「ビクッ ……え、学校かい?…う、うん、まあそれなりといったところだね。」
   「君がいればもっと面白くなるのかな?くっく。」
   「でもせっかく進学校に入学したんだ、今は勉強に重きを置いててね、交友関係は多少おろそかになりがちかもしれないが、まあ、うん、それなり、だよ。それに一概に『学校が楽しい』といっても何に楽しさを見出すのかは人それぞれだしね。」

キョン「……。」

佐々木「……いや、でもここは素直に言うべきなのかな、うん、学校、すごく楽しいよ。」ニコッ
キョン「…そっか…。」(笑顔…。)

佐々木「キョンこそどうなんだい?まあ聞かなくても実に充実した学園生活を送ってそうだけど。涼宮さんだったかな、とキミたちの武勇伝がウチの学校にまで届いているよ。くっく」

キョン「ああ、お察しの通りだ。楽しいかどうかは、また別の話だがな。」(残酷なこと聞いちまったな…。)


数日前

キョン「……佐々木がか!?」
橘「コクリ」

キョン「ちょ、ちょっとまってくれ、あいつは人に好かれることがあっても、嫌われるようなやつじゃないだろ。」

キョン「そうさ、あいつは男にだって気を遣わせないようにと口調を変えたりするくらい気のきくやつなんだ、お前らも知ってるだろ?」

キョン「しかもあいつと話してるとな、これまた話が面白いんだが、それだけじゃない、何か学んでる気になるんだ。あいつの頭の良さが言葉に滲み出てるんだと思うぞ。」

藤原「フン、その口調だがな、あの女の周りにいる低脳な女どもからすれば、男に媚を売っているようにしかみえないんだとさ。」

橘「…それに、佐々木さんの理知的なしゃべり方も一部の男子にとってすごく屈辱を与えるそうなんです。一応、進学校ですからね、プライドみたいなのがあるんでしょうか…。」
藤原「安いプライドだ、くだらん。やはりこの時代の人間は___」

キョン「…そんな…。」(あの、佐々木が…。)
橘「お願いですキョンくん。佐々木さんを助けてあげてなのです。」

キョン「助ける、ってたって、どうすれば…。」
橘「今度、一度でいいんです。佐々木さんに会って、そのときいっぱいいっぱい大切にしてあげて下さい!」

藤原「……それには賛同しかねるな。」

橘「ど、どうしてですか!?」キョン「…俺も聞きたい、どうしてだ。」

藤原「お前たちの思考は浅はかというしかないな。なるほど、あの女はお前に会い、自身で思い描いた状況を擬似的に過ごすことで一時の精神の安定を得るだろう。しかしな、そんなものは一時にすぎない。」

藤原「お前と別れた後、あの女に待っているのは日常という名の現実だ。」
藤原「お前と過ごしたひと時とのギャップに再び絶望し、むしろ会ったことによってますますお前への依存度が高くなるに違いない。あとは言わなくてもわかるだろう。」

九曜「彼女の__妄想は___閉鎖空間に___近い。」

橘「……う、確かに、…でも…。」
藤原「ふん。だがまあ、会う、ということについては賛成だ。」「だが、そこでお前がするのはあの女に中途半端な言葉をかけることじゃない。」

藤原「あの女と完全に決別するんだ!」

キョン&橘「…なっ!?」
藤原「簡単なことだ。今あの女が依存しているのは学業を除けばお前くらいだ。ふん、それこそ友情というものでは片付けられないくらいな。」

藤原「だったら、その拠り所をなくしてしまえばいい。もともと不安定な拠り所だ、あの女はずっとお前のことを思い続けてたらしいが、お前のほうはどうだ。」

藤原「あのいかれた女と忙しい毎日を過ごしてた間、一度でも我らが佐々木サマのことを思い出したことあるのか?ないだろう?」

藤原「だったら、できるだろう。何、今までと同じだ。きっぱりお前との関係、残念だがあの女が望むような関係はもうすでに実現不可能だということを教えてやったらどうだ。」

キョン「俺と佐々木はそんなんじゃない!!あいつと俺は親友なんだ、それこそ他のやつらとは比べ物にならんくらい大切な…」
藤原「あの女はそう考えてない。」

キョン「…っ!」

橘「で、でもでも、そんなことしたら、佐々木さん、壊れちゃいますよ絶対!もしかして、ショックで自分で…うう、」グスッ
藤原「その危険性もあるが、このままという訳にもいかんだろう。いい機会だ、個人的にはそろそろ別の『鍵』を探すべきだと思っていたんだ。」

藤原「何、おまえ自身にもメリットがある。今まで一瞬でも思い出さなかった『親友』など忘れて、今身近にいるやつらとの活動に専念できるだろう?こちらとしてももうお前たちとは関わりをもたないからな。」
橘「そんな、そんな… 」

キョン「俺は、俺は、……。」

キョン(俺はどうすればいいんだ。)
キョン(佐々木……)


佐々木「キョン?どうしたんだい、さっきから難しい顔して。」

キョン「…佐々木。言っておきたいことがあるんだ。」
佐々木「?なんだい?こんな時間に人気のない場所で言っておきたいこと…、僕もこれでも女の子だからね。少しは期待してもいいのかな?くっく」

キョン「お前の学校での噂を聞いたんだ。」

佐々木「……え?」

キョン「お前が学校で孤立していること、いやお前が望んで孤立している訳じゃない事はわかっている。周りの連中が明らかに悪い。」

キョン「だがな、俺のいいたいのはそこじゃない。お前の口からでてる俺の名前まで噂になってることだ!」
佐々木「あ…、そ、それは…」

キョン「はっきり言おう。俺はお前のことを親友だと思ってたがな、俺の知らないとこでそれ以上の関係だと噂されるのは迷惑なんだ。」
佐々木「キョ、キョン、ご、ごめん…ごめんない…」

キョン「もう二度とお前に会わないつもりだ。」

佐々木「!? そ、そんな、キョン!ごめんよ謝るよ!君に迷惑をかけたんだ、許してくれとは言わないが…。」
佐々木「そんなことは言わないでくれ!もう会わないなんて、……うっうっ、お願いだ、君にまでそんなことを言われてしまったら、僕は、…」

キョン「悪いが佐々木、もう決めたんだ。俺は知ってるぞお前は強い人間だ、確かに学校はつらいかもしれんが、俺なんぞに頼らなくてもお前ならやっていけるさ。」

キョン「俺が言いたかったのはそれだけだ、…じゃあな、佐々木、元気でな。」
佐々木「うっ、うっ、やめてくれ…お願いだ、…僕は強くなんかない、…キョン行かないでくれ、キョン…」

佐々木「…キョン、キョン…」

佐々木(…キョン、………く、くっくっくっく、……キョンまでいなくなってしまった…)
佐々木(ふふ、めでたい女じゃないか佐々木。自分の言動で周りから孤立し、たった今…大切なキョンまで自分の所為で失ってしまって…)

佐々木(おめでたい……ふ、ふふふ、……うっ、…うっ、うっ)

佐々木「うっ、ひっく、うああああん、うわあああああああ、___」


橘「さ、佐々木さん!」

ガシッ

橘「な!?何で止めるのですか!!」
藤原「落ち着け。今、お前が出て行ったところでどうにもなるものじゃないだろう。」

橘「で、でも佐々木さんをあのままにしておく訳には絶対いかないのです!」
藤原「だから落ち着けといっている。…そろそろ行くぞ。」

橘「ちょっと!?どこに行くっていうんですか!?あのまま佐々木さんを放置できるわけないでしょう!」
藤原「『だから』だよ。あのまま放っておくことの愚かしさはわかっている。だから行くんだよ。まったく、面倒くさい。」


キョン「……雪?こんな季節に雪か?」
佐々木「おや、ほんとだ珍しいね。ここ最近この国では異常気象が良く観測されているそうじゃないか、柄じゃないが、こういうのロマンティックなのは大歓迎だよ。」

キョン「そうだが、このままじゃ身体が冷えてしまうぞ。そんな重装備はしてきてないからな。」
佐々木「くっく、そうだね。じゃあこういのはどうだろう、お互いもうちょっと身体を近づければこの問題は解決されると思うんだが?多少、だけどね。くっく」
キョン「やれやれ、相変わらずお前は俺をからかうのが好きなやつだな。」

キョン「……。」
キョン(…なんだろう、さっきから佐々木としゃべってて、昔と同じ、自然に会話が進み、楽しいんだが、…何かがおかしい)

キョン(何だ、この感じ、違和感…、……、そうだ!何かおかしいと思ったんだが、靴!靴だ!)

キョン(最初にあったときこいつは革靴なんて履いてなかった、校内用の靴を履いてたじゃないか。鞄だってそうだ、なにか切り刻まれたような痕があって…)

キョン(今こいつの持っている鞄は新品といっても信じちまうくらい綺麗じゃないか!)

キョン(あいつらから話を聞いてたから大体の想像はできた。あえて黙っていたが、それがどうして今変わっている?)

キョン(これは…違和感に気づいた途端はっきりとわかった…この感じ、俺は何度か経験している…)
キョン(これは…閉鎖空間!)


??「ふん、やっと気づいたか現地民。」
キョン(この声は、藤原か!?)

??「キョン君、私です。少ししか時間がないので手短に話しますね。キョン君のご想像通り現在、閉鎖空間が発生しています。」
??「創造しているのは、もちろん佐々木さんです。ただ今回いつもと違うのは同時に2つの閉鎖空間を生み出したことなのです。」

??「今、キョン君の目の前にいる佐々木さんは、キョン君が中学時代から知っている学校で孤立もしていない、『いつもの』佐々木さんです。」

??「ただ、はっきり言ってそれは現実とは違います。佐々木さんが、他の誰より、あなたにだけは絶対に自分の今の境遇を知られたくない、そんな思いから創り出したもう一人の佐々木さんです。」
キョン(……佐々木。)

キョン(…で?もうひとつの閉鎖空間ってのは…)
??「こいつが理解に苦しむとこでな、お前に惨めな自分を見られたくないと思えば思うほど、その恐れを現実のものとしてしまったらしい。」

??「破滅主義者とでもいうのか、まったく面倒くさい。向こうの世界で目の前に現れたお前は皮肉にも自分で想像してしまった通り、あの女をこっぴどく拒否したぞ。」

キョン「な、なんだって!?」
佐々木「!? び、びっくりしたな、どうしたんだキョン、さっきから黙りこくったと思えば突然…。」

キョン(そ、それで、向こうの佐々木はどうなってるんだ?)
??「さあな。一つだけ言えることはお前がそっちの世界を受け入れてしまえば向こうのあの女、いや、世界はなかったことになる。」

??「でもお前にとっても都合が良かったんじゃないのか?孤立している惨めな親友にどう声をかけていいのか困ってたじゃないか。それとも、どのみちはっきりと拒絶する気だったのか?」

キョン(俺は、俺は…)

??(向こうの佐々木さんは泣いていた。けど、これは言ってはいけないのです…、どちらにせよ佐々木さんの創り出した世界、『鍵』はあくまでもキョンくんだから…。)

??「時間が__きた」

??「キョン君、佐々木さんが望んだこと、恐れていること、どちらも佐々木さんの本当の気持ちなのです。どちらかが違うなんてことはない、…佐々木さんをお願いします…」

スッ


佐々木「キョン、キョン!、どうしたんだいまったく、さっきはいきなり大声をあげと思ったらまた黙って…、もしかして体調が良くないのかい?」

キョン「……。」(どっちかを選べだと、そんなことできる訳ないじゃないか。)
キョン「…佐々木。」(どっちかを受け入れる?受け入れなかったら拒絶?そんなんじゃないだろう。閉鎖空間が発生した以上、確かにどちらかの世界、佐々木は消えちまう。)
佐々木「…キョン?」

キョン「いいか、佐々木、突然だがな、言っておくことがある。」(だがな、どちらも同じ佐々木というなら俺の出す答えは決まっている。)

ガシッ

佐々木「は、はいっ、キョ、キョン!?ど、どうしたのさ…///」

キョン(俺はあっちの佐々木を待たせたままじゃないか、俺はあいつと約束したんだ、)

キョン「佐々木!ずっと言いたかったんだ!俺は、おまえのことが____!!!」


(お前を待ってるってな!!!)
 

佐々木(……どれくらい時間がたっただろう、…もう寒いという感覚もないよ……、…もう、疲れたな。何もかも…)
佐々木(ねえ、キョン、僕はもう疲れたよ…、キミは迷惑だったんだろうけど、僕の妄想の中でしかキミに甘えることしかできなかったんだ)

佐々木(ねえ、キョン、最後の僕のわがままだ。最後にキミに優しくしてもらっていいかい?……これが最後だ…ほんとうに、これが最期…」

佐々木(そう、そうやって僕を抱きしめてくれて…、頭も撫でてくれるんだ、くっく、何故だろうね、ほんとうに温かいよ…、…うっ、うっ、」ポロポロ

佐々木(もう涸れたと思ったのに、ああ、またキミに迷惑をかけたね、…ありがとう、キョン、もう十分だよ…)

佐々木(キョン…愛しているよ、世界で一番キミが好きさ、……遠慮なく言ってくれ、…怖いけど、これ以上なく自然で、残酷な言葉…)


サ  ヨ  ナ  ラ


キョン「…佐々木。」
佐々木「……っ!!」


キョン「悪い。待たせちまったな。」


佐々木「……え?」

キョン「ほんとうに悪かった。待つと約束したのに逆にお前を待たせてしまったな。」

キョン「ちょっと近くで面白そうなゲーム見つけてな、それでちょっと時間のたつのを忘れちまったんだ、あ~、いや怒ってるよなやっぱ、スマン!」

キョン「こんなに冷えて…、ずっと待っててくれたのか、佐々木、ほんとうにスマン!」ギュッ

佐々木「あ、あ、キョン?…、????」

キョン「なあ、佐々木、俺気付いちまったんだ。俺は今までずっとお前のことを親友だと思っていた、それは今でも変わりない。」
キョン「だがな、お前の気持ちを知ってしまって気づいたんだ、そりゃ最初は戸惑ったさ、でも今ならはっきり言える。」

キョン「佐々木、俺はお前が好きだ。お前さえ良ければ付き合ってくれ。毎日学校終わりに迎えに行かせてくれ、塾もだ。昔みたいに自転車でお前を送らせてくれ。」

キョン「佐々木!愛してるぞ!」

佐々木「え、あ、あ、キョン?ああ…本当にキョンなのかい?…でも、さっき…、でも、これは妄想じゃ…、」

ガバッ
佐々木「!?んっ、んんっ…」

キョン「佐々木、親友なら頼みは断れないはずだぞ、今日は俺がお前をやり込める番だ。」
佐々木「ホントに?ホントにキョンなんだね?…ああ、キョン!今の話は嘘じゃないだろうね、うっ、うっ、ホントにこんな僕のことを…ううっ」ポロポロ

キョン「『こんな』とはなんだ、佐々木だからいいんじゃないか。ほら泣くなよ、もう顔ぐしゃぐしゃだぞ、それで?答えはくれないのか?」

佐々木「うっ、ひっく、…ふふ、こういうときは泣いてても女性に好きにさせるものだよ、キョン、僕の答えかい?」
佐々木「も…もう一度してくれたら答えてあげるよ。…さあ、君はどうする?」

キョン「やれやれ、どうしても俺がやり込められることになる訳か、佐々木、」

(長いこと待たせちまってたんだな、俺は。)


橘「さ、佐々木さん、よかったのです。う、ううっ。」
藤原「ふん。見てられんなくだらん。あの古泉、だったかな、連中の苦労がわかるな。…まあ、これも規定事項だがな。」
九曜「数秒後__雪が__降る」「これは__異常気象による__ほんとうの__」


佐々木「雪だ。」
キョン「!? こんな季節に雪?ちょっと早すぎやしないか。」
佐々木「くっく、ほんとうだね。」


ねえ、キョン

なんだ?

僕は今、幸せだよ

…そっか、俺もだ

ねえ、キョン

なんだ?

明日から、学校も楽しみだよ

…そうか、そりゃよかった

ねえ、キョン

なんだ?

 

愛してるよ、ずっとそばにいてね

--『待っているとキミは言った』

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最終更新:2012年03月10日 21:20
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