66-25 ルームシェア佐々木さんとホワイトデー

「ところでキョン」
「いいから人の背中から離れなさい」
 高校卒業後、何故か俺は佐々木とルームシェアしていた。
 提案者は佐々木だ。

『おいおい何言ってんだ親友。俺は遺伝子的に紛れもなく男なんだぜ?』
『これは心外だな。キミは僕を性差的な意味合いで見たことはないと常々公言していたじゃないか』
 何故か橘がブチ切れてバット振り回したこともあったな。
『それとも何かい? 僕はキミを性別を越えた親友と認識していたのだがそれは僕の勘違いだったのかい?』
『あのな、それとこれとは話は別だ』
 それからの事はもう言うまでもないだろう。
 俺は完膚なきまでに言いくるめられ、気が付けば母親までセットで言いくるめられていた。

 部屋を2人でワリカンで借り、共通の部屋と自室を割り振る。
 家事も分担できるし確かに便利だ。

「ただ何でお前はいつも俺の背中にだな」
「気にしないでくれたまえ。ここは僕の指定席なのだからね」
 それともやっぱりキミは僕を親友として以下略。とはこいつの弁である。
 なんだか親友って言葉の意味が解らなくなってきたぞ。
「それよりキョン。今日は3月14日だったと記憶しているのだが」
「ああ。確か第一次大戦でドイツ海軍の巡洋艦「ドレスデン」がチリ沖でイギリス海軍の攻撃を受け沈没した日だったか」
「キミもなかなか韜晦がうまくなったね……」
 お前と四六時中一緒にいればな。

「キョン。四六時中とは言わないよ。僕とキミとはそもそも大学が違うじゃないか」
「そりゃそうなんだが」
「だからキミはその時間分だけ僕に優しくすべきなのさ」
 いやそのりくつはおかしい。

「ところでキョン」
 人の耳を噛むのはおよしなさい。
「佐々木。いいからお前の部屋に帰りなさい」
「やだね。この居間は共有スペースなんだ。僕がいちゃいけない理由は無い」
 何故か「ホワイトデーのプレゼントはな、お前の部屋に置いてんだよ」。
 と言い出せない俺であった。

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最終更新:2012年04月19日 00:58
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