66-126 ルームシェア佐々木さんと春

「やぁ、キョン」
 ……できればもうちょいツンデレで素直になれない幼馴染みたいな調子で起こしてくれ。
「それは昨日やったじゃないか」
「す、すまん!」
 エプロン姿の佐々木の囁きに、一瞬で完璧に覚醒する。
 しまった。またコイツに甘えてしまった。

「すまんな、またお前に起こしてもらって」
「それは言わない約束だよ」
 くっくと笑いながら佐々木がカーテンを開ける。
「だがこれはこれで、ルームシェアし甲斐があったというものかもしれないね」
「まったく、俺は誰かに頼ってばっかだな」
 目覚まし時計を増やしてみるかね。

「なら、これはツケにしておくよ。いつかたっぷりと頼ってあげよう」
 カーテンから溢れた朝日に、静かな微笑みが浮かぶ。

 ――こいつは、ほんとに綺麗になったな――――

 何か妄言が浮かんだ気がした。覚醒が足りんようだ。ぶんぶんと頭を振る。
「悪い。掃除と晩飯は俺がやるからさ」
「期待しておくよ」

 髭剃り、着替え、四方山話。こいつとの話は途切れることは無い。
 そんな日常を過ごす内、そろそろ四月も終わろうとしていた。
「春ってのは過ぎるのが早いな」
「おや? キョン、まるで惜しんでいるような口振りじゃないか」

「確かキミは夏が好きだったろう? 暑さに文句を言いつつも、そんな夏が好きなんじゃないのかい」
「よく覚えていやがるな」
 その記憶力をもう少し俺に分けてくれ。早くも色々くじけそうなんだ。
「否定はしねえよ。でも春って奴に俺は四季の最高評価を与えてやっていいとも思っているのさ」
「そうかい」
 なんだ。なにがそんなに楽しいんだ佐々木。

「ああそうだ。キョン、まことに言いにくいのだが」
 どこかばつが悪そうにこちらを見る。どうした珍しい。

「僕自身はやぶさかではないのだが、キミはね、やはり自分でちゃんと起きられるようになるべきだと思うよ」
 起こすにはキミの自室に入らなければならないからね。
 と、言われて気付いた。

 昨日買って、自室に置きっぱなしのアレを見られたらしい。
 そう、SOS団三周年記念プレゼントと、俺と佐々木の四周年記念プレゼントが置きっぱなしだったのだ。

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最終更新:2012年04月19日 00:56
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