「ふむキミは紅茶か。では僕はコーヒーにしよう」
「で、また俺のを一口飲むつもりかお前は」
「くく、いいじゃないか」
「ところでキョン。紅茶かコーヒーかと言えばだ」
なんだその嫌そうな顔は。
「キミは紅ヒーというものを飲んだことはあるかい?」
「コーヒーじゃなくてか」
「実はね。以前橘さんと喫茶店に行った時の話なのだが」
「という事があったのだよ」
「ほう」
「ってなんで省略されてるんですか!」
「いたのか橘京子」
ウエイトレス姿とは新鮮だな。バイトか?
「うう……だから嫌だったんです。なのについ……」
「お前ってツッコミ似合いそうだもんな」
「そうですね。佐々木団じゃ常識人ポジションでしたから……って誰がツッコミですか!」
「ほれやっぱり」
ん。どうした佐々木?
「キョン。もしかしてキミの中での僕は『ボケ』なのかい?」
「俺はむしろツッコミたいがな」
「ん?」
「ん?」
「佐々木は割と浮世離れした台詞が多いからな。常識人は常識人なんだが」
「それはまた微妙な評価だね。反応に困るよ」
「いや常識人は常識人だぞ。少なくとも俺の中ではトップレベルに常識人だ」
「やはり反応に困るよ。キミの周囲は奇人変人が多いのだろう?」
「無茶苦茶失礼だぞ佐々木。否定はせんが」
「しないんですね」
いいから仕事に戻れそこのツインテール。
「あ、いいんですかそんな事言っちゃって? ポニりますよ? ポニーテールにしちゃいますよ?」
俺は一向に構わん!
「橘さん?」
おい佐々木。どうした佐々木? こっち見ろ佐々木?
「すまないねキョン。キミに笑顔以外を向けるのは僕の本意ではない」
「どんな顔をしてるんだ……」
「禁則事項だ」
ああ橘京子が生まれたての子牛のように。
「子牛か。ふむ。ところでキョン。乳牛はまず子牛を産ませないと母乳を出さない訳だが
その最初の分娩後5日間以内の乳、いわゆる初乳は、乳等省令によって人への食品利用は禁止されているそうだ。
体細胞やたんぱく質が多く、食品としての規格を満たせないかららしいね」
「お前のそういうところがボケ気質なんだと思うぞ親友」
後その話はどっかの漫画で俺も読んだぞ。
「そうかい? ふふ、やはりキミとの会話は僕に新鮮な喜びを提供してくれるよ」
「そんな良い顔で言うシーンかコレ」
「ならなんでキミは僕との会話に付き合ってくれるんだい」
「お前と会話するとなんか気がほぐれるんだよ」
「そうかい」
……だからそんな良い顔するシーンじゃないぞ、佐々木。
「ところでキョン。コーヒーと言えばミルクが付き物だね。ここで先程の乳牛の話に立ち返るのだが、僕の」
「佐々木その先を言うなら、俺は紅ヒーの話で返すぞ」
「なんだい?」
と、返した佐々木の片頬が歪む。
「曖昧にしたい、という事かな?」
「そうしてくれ」
「そうかい」
最終更新:2012年04月12日 00:44