66-418 「ところでキョン。紅茶かコーヒーかと言えばだ」

「ふむキミは紅茶か。では僕はコーヒーにしよう」
「で、また俺のを一口飲むつもりかお前は」
「くく、いいじゃないか」

「ところでキョン。紅茶かコーヒーかと言えばだ」
 なんだその嫌そうな顔は。
「キミは紅ヒーというものを飲んだことはあるかい?」
「コーヒーじゃなくてか」
「実はね。以前橘さんと喫茶店に行った時の話なのだが」


「という事があったのだよ」
「ほう」
「ってなんで省略されてるんですか!」
「いたのか橘京子」
 ウエイトレス姿とは新鮮だな。バイトか?

「うう……だから嫌だったんです。なのについ……」
「お前ってツッコミ似合いそうだもんな」
「そうですね。佐々木団じゃ常識人ポジションでしたから……って誰がツッコミですか!」
「ほれやっぱり」
 ん。どうした佐々木?

「キョン。もしかしてキミの中での僕は『ボケ』なのかい?」
「俺はむしろツッコミたいがな」
「ん?」
「ん?」

「佐々木は割と浮世離れした台詞が多いからな。常識人は常識人なんだが」
「それはまた微妙な評価だね。反応に困るよ」
「いや常識人は常識人だぞ。少なくとも俺の中ではトップレベルに常識人だ」
「やはり反応に困るよ。キミの周囲は奇人変人が多いのだろう?」
「無茶苦茶失礼だぞ佐々木。否定はせんが」
「しないんですね」
 いいから仕事に戻れそこのツインテール。

「あ、いいんですかそんな事言っちゃって? ポニりますよ? ポニーテールにしちゃいますよ?」
 俺は一向に構わん!
「橘さん?」
 おい佐々木。どうした佐々木? こっち見ろ佐々木?
「すまないねキョン。キミに笑顔以外を向けるのは僕の本意ではない」
「どんな顔をしてるんだ……」
「禁則事項だ」
 ああ橘京子が生まれたての子牛のように。

「子牛か。ふむ。ところでキョン。乳牛はまず子牛を産ませないと母乳を出さない訳だが
 その最初の分娩後5日間以内の乳、いわゆる初乳は、乳等省令によって人への食品利用は禁止されているそうだ。
 体細胞やたんぱく質が多く、食品としての規格を満たせないかららしいね」
「お前のそういうところがボケ気質なんだと思うぞ親友」
 後その話はどっかの漫画で俺も読んだぞ。
「そうかい? ふふ、やはりキミとの会話は僕に新鮮な喜びを提供してくれるよ」
「そんな良い顔で言うシーンかコレ」

「ならなんでキミは僕との会話に付き合ってくれるんだい」
「お前と会話するとなんか気がほぐれるんだよ」
「そうかい」
 ……だからそんな良い顔するシーンじゃないぞ、佐々木。

「ところでキョン。コーヒーと言えばミルクが付き物だね。ここで先程の乳牛の話に立ち返るのだが、僕の」
「佐々木その先を言うなら、俺は紅ヒーの話で返すぞ」
「なんだい?」
 と、返した佐々木の片頬が歪む。

「曖昧にしたい、という事かな?」
「そうしてくれ」
「そうかい」

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最終更新:2012年04月12日 00:44
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