68-327「佐々木さんのキョンな休日 梅雨の晴れ間に」

 雨が降り続いている。この時期だから仕方がないといえば仕方がないのだけど。キョンは今何をしているのかな。

 6月から、私は土曜日に塾に行くことになった。8月になれば水曜日にも行くことになる。塾に行っている国木
田君によれば、それぐらいから大学入試に向けて準備しておいたほうがいいとのことだった。
 将来のことは、まだどうなるか私にもわからない。確かな未来など存在しないし、世界は不安定なものなのだ。
 そこまで考えてふと、思う。私の未来は、私とキョンの未来はどうなるのだろう。

 明日は日曜日。天気予報は晴れマ-ク。予報通りなら、久しぶりの晴れ日になる。
 「キョン、もし、日曜日に晴れたなら、どこか出かけないか?」
 キョンにそう言ったのが金曜日の帰り道。
 晴れたなら、とキョンは答えた。明後日の天気予報は晴れだったよな。当たることを祈るけど。
 キョンの言葉が私の耳に残っている。

 土曜日の昼。塾の教室。窓の外は雨が降り続いている。空にも雨雲が立ち込める。 明日、晴れるといいな。
 いけない、集中しなきゃ。講義の途中だった。

 塾から帰る途中も、雨は降り続いている。一人で歩く帰り道。私の横にキョンの姿がない。
 二人で並んで歩くとき、キョンはいつも車道側を歩く。ごく自然に、いつものように。何気ない優しさで私を守る。
 妙に雨の音が大きく聞こえた。

 夕食はひとりきりだった。母親は明日にしか帰らない。県外に出張中で、泊りがけなのだ。
 中学校の時から、私には慣れた光景。母親の大変さを思えば、どうってことはない。
 キョンは時々自分の家の夕食に私を呼んでくれる。とても楽しい時間。暖かい、キョンと私の大切な時間。

 自分の部屋の窓から外を眺めても、まだ雨が降り続いているのが見える。
 窓にテルテル坊主がぶら下がっている。まるで子供みたいなおまじない。
 大人と子供の狭間で私たちは揺れている。空気の対流のせいか、テルテル坊主が少し揺らめいた。

 枕元に置いていた携帯が鳴り響く。めざましモ-ドが作動しているのかな。
 違う、この音は着信音。。
 「おはよう、佐々木。」
 元気そうなキョンの声。一瞬にして半分寝ぼけていた意識が覚醒する。
 「まだ、寝てたのか。」
 その通り。少し君が早すぎるんじゃないか。
 「窓の外を見てみろ。よく晴れているぞ。」
 携帯を持ったまま、カ-テンを勢いよく開く。
 青く澄み渡った空と、初夏の太陽の光が私の目に飛び込んできた。
 「さて、佐々木。今日はどこに出かけようか?」

  そうだね、今日は、、、、

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最終更新:2012年12月01日 17:13
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