68-357「佐々木さんのキョンな日常 星に願いを」

 「七夕の行事を鶴屋さんの家でやるそうだから、みんなで行かないか?」
 7月6日、期末試験に向けての勉強を、放課後の文芸部室で皆でやっているとき、国木田がそんな話を持ちかけてきた。

 中間試験の俺の成績は、中学校時代の俺の定位置からは随分急上昇していて、母親はえらく喜んでいた。これは佐々木
がいろいろ教えてくれたからであり、今では国木田や長門、朝倉からも教えてもらい、随分勉強がはかどるようになった。
 まだ、皆には追い付いていないが、それでも背中は追いかけている。中学時代のままだったら、俺はいまでも低空飛行
だったろう。やる気が出てきたのは佐々木がいてくれたからだと思う。期末試験は中間以上のものを、と佐々木はいったが
確かに目標にはなっている。

 「キョンも頑張っているようだし、期末試験は期待できそうだけど、少し息抜きにどうかな。」
 小学校の先輩だという鶴屋さんの家に、国木田はよくお邪魔しているようだ。鶴屋さんは昔から国木田をかわいがっていた
そうで、国木田も鶴屋さんのことは慕っていて、憧れの先輩であると言っている。
 「俺達もお邪魔していいのか?」
 「鶴屋さんはみんなでおいで、と言ってくれたからかまわないよ。」
 「でも、どんなことをやるの?」
 「なんか、”短冊祭り”とか、言っていたなあ。とにかく鶴屋さんの家はやることが大がかりだからね。前に花見に誘われた
時は、鶴屋さんの家の敷地内でだったけど本当に家の敷地かなて思うくらい桜が咲いていたから。」
 いったいどんだけでかい屋敷なんだ。想像もつかない。
 「いろいろ料理も出るそうだし、楽しそうだから、キョン、ぜひ行こうよ。」
 国木田の話を聞く限り、願い事を書いた短冊でもつるしたあと、宴会でもやるつもりのようだ。行ってみるのも悪くはない。
 「キョン。どんなことをやるのか、僕も興味があるな。お言葉に甘えて行ってみようじゃないか。」
 「賛成。みんなで行きましょう。」
 佐々木の言葉に長門と朝倉も賛成する。
 それじゃ決まったな。国木田、鶴屋さんによろしく伝えてくれないか。
 「うん。わかったよ。明日皆でお伺いしますと伝えておくね。」
 ああ。よろしくたのむよ。

 この時、俺達はあることをすっかり忘れていた。それは鶴屋さんが涼宮の作ったSOS団の部員であり、鶴屋さんが何か行うの
であれば、当然涼宮達もやってくるというわけで、そのことに気付いたのは、広大な鶴屋家の屋敷の馬鹿でかい正門の前でSOS
団の部員と鉢合わせした時だった。

 「あら、キョンじゃない。どうしたのこんなところで?」
 長い髪を後ろで束ねた、いわゆるポ二-テ―ルの髪型にした涼宮と、相変わらずの爽やかスマイルの古泉、いつみても小動物のよう
にかわいらしい朝比奈さんと、SOS団の部員達がそこに立っているのに気づき、涼宮から声を掛けられたときには少し驚いたが、
よくよく考えれば、SOS団がここにいるのは当然のことである。
 「鶴屋さんに国木田を通じて招待されたんだ。七夕の行事をやるから、ていわれてな。」
 「ふ-ん、そうなんだ。鶴屋さん、私達にもあんたたちが来るなんて一言も言っていなかったから、ちょっと驚いたわ。」
 その時、正門の重々しい扉がゆっくりと開き、中から現れたのは、どこの祭りにお出かけですか?と問いたくなるような浴衣姿の
鶴屋さんと国木田の姿だった。
 「やあやあ、いらっしゃい。ようこそ鶴屋家へ、SOS団と文芸部の諸君!」
 明るく、豪快さも感じられる笑顔で鶴屋さんは俺達を歓迎してくれた。


 鶴屋さんのおうち、というか屋敷は、俺の想像をはるかに超えていた。何しろ、門の入口から家屋までの距離
が相当有り、庭が無茶苦茶広い。敷地の総面積はどれくらいあるんだ?
 長門や朝倉の住む高級マンションにも驚いたが、ここにはさらに驚かされる。ド肝を抜かされた、という表現を
使いたい。
 流石に佐々木や長門、朝倉も驚いていた。SOS団の部員でも、涼宮と古泉は初めて来たようで、感心することしきり
だった。
 国木田、お前すごい人と知り合いだな。人間としての器もでかいようだが、何となくわかるような気がする。
 それにしても、鶴屋さんと国木田がお揃いの浴衣姿でいるというのは、その、まあ、なんだ、じつにいい感じだな。
 「いい感じじゃないか、あの二人。キョン。そう思わないか?」
 佐々木がこっそり俺ににささやく。お前もそう思うか?
 二人で小さな声で話していると、
 「おんや、キョン君達。相変わらず仲がいいね!」
 鶴屋さんにでかい声で言われ、佐々木は顔が真っ赤になった。

 俺たち全員が通された部屋は、青い真新しい畳の張られた、これまたどこの旅館の大宴会場ですか、というくらいの
ただっ広い和室で、そこに文芸部とSOS団の人数分の座布団が敷いてあり、その前に五色の短冊と習字道具が並べてあった。
 「さて、SOS団と文芸部の諸君。本日は七夕だよっ。そんで古式ゆかしの伝統に習い、我が家の指定農場の芋の朝露で
砥いた硯と墨汁を使って、短冊に願い事を書き、竹に吊るし、天にかざす。字は上手くなる、願いは叶う。一石二鳥だね!」
 そう言えば、鶴屋さんと朝比奈さんは元は書道部だったな。しかし何で、そこをやめてSOS団に入ったのやら。本当に不思議
な人だ。

 とりあえず俺達全員、鶴屋さんの言うとおり朝露で砥いた硯と墨汁を使い、五色すなわち黄、青、赤、白、黒色の短冊に願い事
を書く。黒の短冊に書いたら、なんにも見えないようになるが、佐々木によれば、これは陰陽五行説に由来するもので、本家の
中国では用いることはないが、日本で五色といえばこの五つの色を指すそうだ。
 しかし書き初めをやっている気分だね。我が家じゃ妹が去年まではやっていたが、今年はやらなかったな。

 全員願い事をかいた後、墨汁が乾くのを待つ間、別の部屋へ移動し、そこで鶴屋さんが用意してくれた夕食をいただくことに
なった。
 女中さん(と言っていいのかね)が大皿に盛り付けた料理を運んできてくれ、それが卓に並べられる。コップに飲み物が注が
れて、俺たちの前に並べられる。
 「さあ、みんな。しっかり食べてね!」
 鶴屋さんの音頭で乾杯をした後、取り皿にそれぞれ好きな料理を取っていく。
 「キョン。これは美味しいよ。一つ食べてみるかい。」
 どれどれ。俺は佐々木の皿から一つもらい、それを口にいれた。うん、いい味付けだ。佐々木、これもうまいよ。皿貸せ。
とってきてやるよ。
 俺は佐々木の皿にいくつかお薦めのおかずを載せてやる。ん、コップが空だな。佐々木、烏龍茶でいいよな。
 俺と佐々木は、おかずを取り替えっこしながら、結構な量を頂いた。しかし、他の連中もよく食べるな。
 長門も朝倉もよく食べるが、涼宮はガツガツと貪るように食っていた。横で古泉が苦笑していたがな。
 「いえ、涼宮さんではなく、あなた方に対してですが」
 何を言っているんだ、コイツは。
 俺は首をかしげながらも、鶴屋さんにお礼を言った。すいません、こんなに一杯ご馳走になりまして。
 「いんや。こちらもいいもの見せてもらったさ。どうもごちそうさま!」
 そういう鶴屋さんは、フリマに行ったときに見せた、なんとなく邪悪な感じがするニヤニヤ笑いを浮かべていた。
 その横で、これまた国木田も笑っていた。


 短冊の墨汁も乾いたので、俺達はそれを鶴屋さんが用意してくれた竹に吊るすことにした。
 竹はかなり大きく、短冊やその他の飾りつけの紙細工やモ-ルを取り付けて、古泉と二人で立てかけるのに
大分苦労した。何となく地元の商店街に飾られる七夕ツリ-を連想させた。
 紙よりで願い事を書いた短冊を吊るし、天の川が広がる美しい夜空に向かって何かを願う。なかなかロマン
チックじゃないか。

 ふと気づくと、涼宮が短冊を持ったまま、何か考え込んでいるようだった。
 どうした、涼宮。まだ何か書き足りないのか。
 「そうじゃないわよ。これでよかったかのか、最終確認しているのよ」
 一体、何を書いたのだろうか。俺が横から覗き込むと、短冊には『この世の不思議なことがあたしに来ます
ように』と、あとは分けのわからん記号のようなものが記されていた。
 おい、涼宮。この記号はなんだ。
 「私が考えた、不思議なものを呼び寄せる文字よ。メッセ-ジになっているわ」
 、、、訳がわからん奴だ。
 「ねえ、キョン。あんた、なんて書いてあるか、わかる?」
 わかるわけないだろう。お前の頭の中のことなんか読めるか。古泉だって不可能だろう。
 だが、答えを期待している涼宮の表情を見ると、無視するわけもいかず、少し考えて俺は答えた。

          ”私は、ここにいる”

 涼宮の表情が固まっていた。どうしたんだ、一体?
 「、、、何で分かったの?全くそのとおりよ。」
 なんてこった。単に思いついた答えが正解だったとは。
 「キョン、あんた、やっぱり天才よ!文芸部やめて、うちの団員になりなさいよ!」
 前にも言ったが、俺は文芸部をやめるつもりは毛頭ない。それより、なんだ、その団員ってのは。部員じゃ
ないのか?
 「うちは部員じゃなくて団員と呼んでいるのよ。ちなみに私は部長でなくて団長と呼びなさい」
 少年探偵団か、お前のクラブは。

 しつこく勧誘する涼宮を古泉に任せ、俺は佐々木のところへ行った。
 佐々木は長門や朝倉と、自分たちが吊るした短冊を一緒に見ていた。そこには俺の短冊も吊るしてある。
 みんな、何を書いたんだ。
 「私はね、『料理がもっと上手くなりますように』って書いたわ」
 朝倉の料理は充分うまいと思うんだが、その向上心はすごいな。いいお嫁さんになれるな。
 「僕は『未来が良いものでありますように』と書いたよ。どうなるかわからない世の中だけど、せめて希望の
一つぐらいは書いたっていいだろう」
 いかにも佐々木らしい。
 長門はどんなことを書いたんだ?
 「私は、、、その、、、ええっと、、、」
 何故か長門の顔が赤い。
 「長門さんはね、会いたい人がいるんだって」
 「あ、駄目!朝倉さん、それ以上言っちゃ」
 「あ-はいはい。分かりました。キョン君ゴメンネ。ここから先は女の子だけの秘密。これ以上は言えません」
 俺、仲間外れ?
 「キョン。君がいくら親友でも、こればかりは教えられないな」
 佐々木が楽しそうに笑っている。わかった。これ以上は聞かんよ。女には女の事情があるしな。
 「さすがキョン。物分りがいいな。」


 「キョン君、ちょっとお姉さんの手伝いをしてくれないかい」
 佐々木たちと話している俺に鶴屋さんが声をかけてきた。
 どうしたんだろうと思って振り返ると、いつの間に着替えたのか、何故か巫女さんの衣装を着込んだ鶴屋さんが俺の
後ろに立っていた。
 どうしたんですか、その格好は?
 「これから鶴屋家に伝わる七夕の儀式を行うわけよ。ちょいとキョン君に協力して欲しいんだな、これが」
 にこやかに笑顔を浮かべた鶴屋さんの横には、これまた神主の衣装に着替えた国木田の姿があった。コスプレの趣味
でもあるのか、この二人には。
 待てよ、まさか俺にもこの衣装を着れとか言うんじゃないでしょうね。
 「いやいや。ちょっくら荷物を運んでもらうだけだよ」

 鶴屋さんの言うとおり、俺が手伝ったのはその儀式に使う機材を運ぶことだけだった。
 短冊を飾った竹の前に祭壇を置き、そこにお供え物の酒やお菓子を並べ、その前に鶴屋さんが立ち、うやうやしく一礼
する。
 文芸部員もSOS団員(おかしな感じだが、ここは涼宮の呼び方にならっておく)も興味津々といった趣で、鶴屋さんの
動作を見つめる。
 鶴屋さんは懐から、何かを取り出した。全体が更紗布にくるまれていて、長さは10センチぐらいのものか。
 俺たちの目の前で、鶴屋さんが布を外すと、中から金属の棒が出た来た。
 サビ一つなく、それ自体が輝いているかのように、家屋から漏れる光を反射しているその棒の表面には、左右対称の
規則性を持った文様が刻まれている。
 何ですか、それは?
 「我が鶴屋家に伝わる家宝っさ。言い伝えによると、元禄15年、新暦の七夕に当たる日に鶴屋家の先祖、鶴屋房右衛門
が七夕の夜に空から降って来て手に入れたと伝えられているんだけどね。ご先祖はこれを『時非(ときじく)の星刀子
(ほしがたな)』と名づけ、家宝とした。それ以来、鶴屋家では七夕の夜にこれを短冊と飾り、お家繁栄の儀式として受け
継いでいるわけよ。不思議なことに、この儀式を行うようになってから、鶴屋家はトントン拍子にうまくいくようになり、
富豪になったんだわ」

 鶴屋さんの話に、一同唖然とする。
 本当の話なのか?まさか涼宮を面白がらせる、鶴屋さんのいたずらじゃないだろうな? 
 だが、鶴屋さんの表情は真剣だった。それはいつもの明るい高校の先輩である鶴屋さんの顔ではなく、次期鶴屋家当主
としての顔だった。
 「そんじゃ、儀式を始めるよ」
 鶴屋さんはそう言うと、鶴屋家に受け継がれてきた七夕の儀式に取り掛かる。

 「ちょっと待ってよ、鶴家さん!何でそんな不思議なことを私に教えてくれないのよ!」
 雰囲気をぶち壊すような大声を張り上げたのは、言うまでもなく涼宮だ。ま、多分こんな反応をするとは思っていたんだが。
 「後にしろよ、涼宮。今は大事な儀式の途中だ」
 俺が涼宮をたしなめると、古泉も頷いて涼宮を止めた。
 「キョンさんの言うとおりです。涼宮さん、後にしましょう。ちゃんと後で鶴屋さんは説明してくれますよ」
 俺たち二人の説得に、涼宮は渋々といった感じではあるが、従った。

 祭壇に火のついた小さな炉が並べられ、鶴屋さんの祈りの口上が述べられる。
 鶴屋さんによって、夜空に掲げられた『家宝』は、炉の光を反射して闇夜を切り裂くように輝く。
 その光が輝きを増し(たようにみえた)、俺の目を射抜いた時、俺は何故か体から力が抜けていく
ような感じに襲われた。
 鶴屋さんが祈りを終えると同時に、俺はその場に崩れ落ち、意識が遠のいて行った。

   「キョン!」

 佐々木の悲鳴が俺の耳に聞こえた。


 ふと、気がついて目を開けると、そこには心配そうな顔で俺を覗き込む佐々木の顔が俺の間近にあった。
 「キョン、大丈夫?」
 佐々木の目には少し涙が滲んでいた。済まない、佐々木。心配させてしまって。一体何があったんだ?
 「鶴屋さんの儀式が終わったと同時に、キョンが倒れたんだよ。まるでヘタリ込むようにね。それから意識が戻らなくて、
とりあえずここの部屋に寝せて、鶴屋さん家のかかりつけ医に診せようかと相談していたところなんだ」
 国木田の説明を聞いて、とりあえず現状は把握した。
 「だけど、キョン君。何で倒れたの?疲れでも溜まっていたの?」
 朝倉の問いかけに、俺は首を横に振る。俺にもよくわからない。
 鶴屋さんの持つ『家宝』が反射した光が、俺の目を射抜いた時、まるで全身から力が抜けるような感じに襲われたのだ。

           ”あれは一体何なんだ?”

  「キョン」
 佐々木の声に、俺の思考は中断される。
 「すいません、皆さん、ちょっと、、、」
 古泉が佐々木以外の全員に声をかけ、何事かゴニョゴニョと囁くと、俺と佐々木を残して、みんな部屋を出ていってしまった。

 「キョン!」
 佐々木が飛びつくように俺に抱きつき、ギュッと握り締めてくる。
 「心配したよ、いきなり君が倒れるから、、わた、、、僕は、、、良かった、、、、」
 本当にすまない、佐々木。お前を驚かしてしまって悪かった。
 俺はそっと佐々木を抱きしめ返す。柔らかくて少し細身の体が小さく震えていたが、やがてそれは止まった。
 ゴメンな、佐々木。

 鶴屋邸を辞するとき、俺は鶴屋さんとSOS団団員、それと文芸部部員達に迷惑をかけたことを謝罪した。
 「気にしなくていいよ、キョン君。文芸部部員と一緒に、また遊びにおいで。歓迎するよっ」
 本当に気にしていない、嘘偽りのない笑顔で鶴屋さんはそう言ってくれた。
 「回復してくれて、ホッとしましたよ。僕も涼宮さんも安心しました」
 古泉、お前にも迷惑かけてしまったな。すまない。そういえば、涼宮の姿が見えないな。さっきまでいたのに。
 「涼宮さんは、鶴屋さんの話を聞くために、部屋に戻られました。今回の鶴屋さんの『家宝』の話は僕も興味があるので、もう少し
してから僕等は帰ります。」
 不思議大好き女に、格好の餌を提供したようなもんだ、今回の件は。
 俺達文芸部部員は、国木田を残してそれぞれの帰路につくことにした。

 長門と朝倉をマンションまで送り、俺は佐々木を家まで送り届けることにした。
 佐々木の表情は、いつものように微笑を浮かべた、俺がいつも見ていて安心できる普段の顔に戻っていた。
 「そういえば、キョン。君は短冊にどんな願い事を書いたんだい?」
 実を言うと、俺はかなり多くの願い事を書いたのだ。鶴屋さんが、好きなだけ願い事を書くといい、と言ってくれたので、結構書きまくった。
 「へえ、一体なんの願いなんだろう」
 まあ、自分でも言うのもなんだが、本当に大したことじゃない。思い出すと、かなり俗物的な願いばかりだ。
 「でも、たいていの人間はそうなんじゃないのかな。願い事って」
 あ、でも一つだけ大事な願い事を書いたぞ。
 「それはどんなことだい?」
 俺が一番強く願ったこと、一番叶えて欲しい願い。
 それは―

    ” 佐々木の側にいて恥ずかしくない人間になれますように”

 俺を親友と呼んでくれる佐々木に対して、俺がそう呼ばれるに値する人間になること。それが今の俺が一番願う事だ。
 ちょっと、格好つけすぎたかな。
 気恥かしさを隠すように、俺は夜空を見上げる。
 天の川に織姫と彦星。七夕の伝説の通り、星々が美しく煌めいていた。



 だが、この七夕の日に俺の身に起こった出来事は、心の奥底に妙な感じを残すことになった。
 それが、一体なんだったのか、その答えを知るのは、まだ当分先のことである。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2013年01月01日 20:48
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。