70-457『0:00の攻防』

4月1日。快晴。絶好の花見日和。
「佐々木、お前が嫌いだ。」
「悲しいね。僕もそうだから。」
エイプリルフール。だからこそ言える冗談。
「公園に0時に来るなよ?」
「言われなくとも。」
時計は11時。
「じゃ、俺は家に帰るからな。」
「あぁ、キョン。もう会う事はないだろう。」
ニヤケ顔を必死に抑える佐々木。俺も精一杯険しい顔を作る。
「キミの大嫌いなサンドイッチを持っていかないでおくよ。
全くこんな日和じゃ花見なんて出来やしない。」
「全くだ。桜も散ったし、最悪の日和だ。」
フン、とそっぽを向き、歩き出す。
さて。0時に公園、と。佐々木が『大嫌いな』甘いココアでも持って行くかね。

「た、大変な事になったのです……!」
たまたま会った佐々木さん達の不穏な会話なのです……!あくまで私がここにいるのはたまたまなのですよ?
決して、バスケット片手に鼻歌を歌いながら歩いていた佐々木さんの動向が気になって後をつけたのではないのです。
なので警察に通報は勘弁してください。お願いするのです。

「……規定事項にない、不穏当な動きだな。」
僕は公園にいたんだが、桜の美しさにみくる姉さんを重ね合わせていたところに、まさかの不穏当な会話。
佐々木め。あんなに執着していた現地人をどうしたいのだ?理解不能だ。
橘が佐々木をつけているが、僕も後をつけるか。いずれにせよ、真意を質さねばなるまい。
……しかし、橘よ。お前は何故段ボールを被りながら歩いているんだ?

退屈しのぎに、エイプリルフールの反転をしてみたんだけど、なかなか楽しい。
普段絶対に聞けない言葉と、普段見せない態度。キョンの表情は、険しい顔を無理矢理作っていた。全く傑作だね。
さて、一時間どうするかな?キョンが『大嫌いな』あの喫茶店のテイクアウトのコーヒーでも買っていくか。


道を歩いていると、好奇の視線に晒されている気がする……
未来人がつけている…たまたま方角が同じだけかも知れないけど…あの不自然極まりない段ボールは何だろう?未来人は、あの段ボールが気になるんだろうか?

あ、暑いのです……狭いのです……暗いのです……

……中腰で、よく佐々木の歩くペースに付き合えるな。佐々木が振り返った瞬間に段ボールを被って……。こいつも腐っても組織の一員というわけか。

……いい加減気持ち悪いな。振り切るか。未来人がいるなら、多分荒事にはならないだろうし。

は、走らないで欲しいのですよ、佐々木さん!走らないで!だ、段ボールが壊れてしまうのです!

……佐々木が走り出した。まぁ当然だろう。段ボールにストーキングされたら、誰だって気持ち悪い。

し、しつこい……まだ振り切れない……

佐々木さん佐々木さん佐々木さん佐々木さん佐々木さん佐々木さん佐々木さん佐々木さん

……段ボールが半壊していて、ツインテールが丸見えだ。しかし佐々木。いくら追い詰められているからとはいえ、友人なんだから気付いてやれ。あ。
橘は、段ボールを踏みつけて地面に派手に転んだ…………。受け身もへったくれもない転び方だ。顔面からダイブか。……見ている僕が痛くなる。
佐々木は、その隙に逃げ出した。

「びゃあああああああああああああああ!」

……こ、子ども泣き……!橘、お前は幾つだ……!

――――――――――――――――
「落ち着いたか?」
「なんとか……」
僕はやむを得ず、橘を近所の喫茶店に連れていった。僕は一言も奢ってやるとは言っていないんだが、橘はランチセットを制覇しやがった。
組織は資金難じゃないのか?僕は奢ってやるとは言っていないからな!
「……どうして佐々木さん達が、あんな喧嘩を……」
……確かにな。女性とは度し難い。しかし橘は本当に佐々木が大切なんだな。見ていて微笑ましい。
佐々木本人には欠片も理解されていないところなんか、特にな。


「いずれにせよ、何か理由はあるはずだ。佐々木を見失ったというなら、0時に公園に行ってみたらどうだ?現地人がいるかもしれん。」
「……そうするのです。時間はあと15分なのですね!走ればすぐなのです!」
橘は立ち上がると、喫茶店から走って出た。全く嵐のような奴だ。
セットのコーヒーに口をつけ、昼前の時間を優雅に過ごした僕だったが……

「すまん。領収書切ってくれ。これは規定事項だ。」
「甲斐性なしですね、全く。」

私は心肺機能の限界まで走りだしたのです。
佐々木団は(ry
――――――――――――――――
横っ腹が痛いのですよ、佐々木さん…………
――――――――――――――――

0時。
「よう、待ち合わせきっかりだな。」
公園。俺はベンチに座り、歩いてきた佐々木に軽く手を上げた。
「くっくっ。なかなか楽しめたね。たまにはこんな遊びも悪くない。」
佐々木はベンチに座ると、バスケットを開ける。色とりどりのサンドイッチ。
「絶好の花見日和だ。」
「そうだね。キョン、桜が綺麗だね。」
佐々木が桜を見上げる。
「いや、お前のほうが。」
軽口を叩く。
「くっくっ。エイプリルフールは終わったよ。」
そう言いながらも佐々木の頬は桜色に染まっていた。

……そのあとに来た橘から、佐々木共々えらい剣幕で叱られ、その橘が藤原に殴られて引き摺られて行ったんだが、一体何だったのかね?
「さて、来年は何をするかね?」
「くっくっ、気が早い。来年の話をすると鬼が笑うよ、キョン。」

END
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最終更新:2013年04月29日 13:29
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