70-520『突っ走る男女』

※クロスオーバー注意

石門高校ソフトボール部室――――
「ぜぇー……ぜぇー……」
「し、死ぬかと、いや、絶対に死んだと思ったお…………」
「あ、あれは機関の差し向けた刺客か?」
「こ、怖かった……!朝倉さんは、何であんなに怒っていたんだい?」
「あたしは知らないわよ……有希、あんた何かしたの?」
視線が長門に集まる。
「ブルペンに私の代役を置いてきた。朝倉涼子が退屈しないように。」
長門が小首を傾げる。
「代役?」
「部室にあったピッチングマシーン。私の名前を書いておいた。」
長門の言葉に、皆が頷く。そりゃ怒るわ。
「となれば解決法は早いな。」
キョンの言葉に皆が頷く。長門は部室の外に叩き出された。
「入れて。とても危険。私が。」
長門が部室のドアを叩く。暫くすると朝倉の声が響き、引き摺られていく音と共に長門の気配は無くなった……。
長門は、こう見えて悪戯好きだ。喜緑や朝倉から折檻を受け、暫くこの手の悪戯は無くなるが、また別の悪戯をしだす長門である。
被害が朝倉と喜緑とキョンに集中し、朝倉と喜緑の折檻に大体全員が迷惑を被るというオマケはつくが。
『チェシャ猫』。それが朝倉と喜緑からつけられた、長門の別称。悪戯が長門の心からの信頼の裏返しのベタ甘えだと理解はしているが、それと仕置きはまた別の話になるのだろう。

「ううむ……北高に偵察を送ると機関の刺客が来たうえに、北高生徒から我がラボへの侵入を許すとは……。」
白衣を着た石門高校の男。
「おい、顧問が偵察認めていいのか?」
キョン子の言葉に、男が分かりやすく落ち込む……。
「……マネージャーだお。こう見えても、高校二年生だお……」
……唖然とするキョン子達。無精髭を生やしたその姿は、どう見てもうらぶれたオッサンのそれだったからだ。
「ふ……フゥーハハハ!この狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真!17歳だ!」
1コ上で厨二かよ。佐々木、ハルヒ、キョン子、藤原の目が生暖かくなる。
「本名は?」
キョンが小肥りの男に話しかけた。
「岡部倫太郎だお。オカリンと呼ばれているお。僕は橋田至。ダルでいいお。」
「そうか。俺は○○。キョンって呼ばれている。」
演説をする岡部を生暖かく見守る皆。
こいつは真性の厨二病患者だ。そう考えると、このうざいまでのテンションも面白い。
「で、岡部さんとやら。ダルさんを偵察に差し向け、俺達の弱点を暴こうと躍起になっていたわけだな?」
「き、貴様、何故それを……はッ!貴様よもや機関の刺客……」
「ちげーよ。偵察もクソもあんな特徴のあるダルさんが近くにいれば、誰だって怪しむに決まっているだろ。」
キョンがため息をついた。


「ぬう……。今日は貴様らが偵察に来たというわけか。」
「もっと静かに来たかったんだがな……」
ハルヒがグラウンドに出ている。佐々木、キョン子、藤原が止めているが……

「県立北高校ソフトボール部、四番センター涼宮ハルヒ。ただのエースに興味はありません。あたしを抑えられるエースがいたら、あたしの前に来なさい。以上!」

……早速の宣戦布告である。これに色めき立つ石門高校のソフトボール部。
成り行き任せしていた佐々木、キョン子も、流石にこれはまずいとハルヒを引き摺る。
「じょーっとーじゃん?」
ハルヒによく似た声が響く。そこにいたのは、青髪の少女。
「喧嘩売りに来たわけ?いいわよ?お釣りくれてやるわ。」
赤髪の少女が、ずい、と出る。
四面楚歌。ああ、帰りたい。心の底からキョンは思った。トラブルメーカーのハルヒを連れて来れば、こうなるなんぞ理解していたはずだろ、と藤原を睨むが……
藤原も命が大事だ。
ハルヒに逆らい物理的に命を無くすか、佐々木に逆らい社会的生命を無くすか。キョン子にしてみたら、後者が願ったり叶ったりであるが……藤原には笑えない話になる。
「……キチ達の相手、乙。キョンくん、オカリンの奢りだお。」
ダルがキョンにドクターペッパーを差し出す。
「ダルさん……人生って何でしょうね……」
「巻き込まれる立場の、僕達には縁のない話だお……」
「……まずぅっ!」

「フゥーハハハ!我がデータの有用性を確認すべき時が来たか!」
グラウンドでは、ノリノリの岡部。ついでにメンバーの紹介もするのが彼らしい。
赤髪の少女は、牧瀬紅莉栖。エースのようだ。レフトの椎名まゆり。セカンドの漆原るか。センターの阿万音鈴羽。キャッチャーのフェイリス(秋葉留未穂)、サードの桐生萌郁。以上、ラボメンと呼ばれる選手に……
控えピッチャー兼ショートの泉こなた。ファーストの柊かがみ。ライトの日下部みさお。控えメンバーの高良みゆき、柊つかさ、峰岸あやの。岡部の泣き落としに遭い、無理矢理参加させられた被害者達に分けられる。
「(本当に同好会みたいな感じだな。それでもウチと戦おうなんて、何か秘策でもあるのかね……)」
キョンが石門高校の選手達を見る。守備に散る石門高校の選手達。
「三球勝負だ。三球勝負で、ヒット性の当たりを飛ばせたらお前らの勝ち、抑えられたら負けでいい。助手よ、手筈は整っているな?」
「助手ってゆーな。」
少年漫画の王道だよなぁ。キョンはそんな事を思いながら展開を見守った。

結果のみを書く。

渾身のスッポ抜けがハルヒの頭スレスレを通過。怒ったハルヒと牧瀬が乱闘。
巻き込まれたルカ子が失神したところで、ハルヒを引き摺り出したキョンが、皆を連れてダッシュで逃げた。
こうして、何一つ遺恨がなかった両校に、遺恨は出来上がったのであった……。


ハルヒを送り、キョンは佐々木を送る。藤原にキョン子の送りを頼み、二人は帰路についた。
「変わらんな、あいつは!」
キョンが紅葉を貼り付けた頬を擦る。
乱闘からハルヒを引き摺り出す際、胸を掴んだという罪状だ。その実は胸を掴んでいたのはキョン子だったので、とんだとばっちりを受けたわけだが。
「柔らかかったかい?」
「俺は触ってない。」
「どうだか。」
佐々木がむくれる。
「……とりあえず、お前について調べられているかも知れん。長門に関しては丸裸だろう。」
キョンが佐々木を見る。
「……あのシフトかい?」
球を引っ張る、プルヒッターの傾向のあるハルヒ。あからさまにライトに寄った守備は、それを見越してだろう。
「案外、苦戦するかも知れんな。お前まで丸裸にされていたら、多分に危ない。」
隣を歩き、気難しい表情を作るキョン。
「(いつもこんなならいいのにね。)」
真剣な表情の彼も悪くない。
「……ん?すまん、考え事をしていた。」
キョンが佐々木を見るが、佐々木は穏やかに微笑むと
「構わないよ。君の思考にノイズが走らないならそれが一番いい。」
と言った。
それ以降……その日のキョンの思考にノイズが走りまくり、考えも纏まらなくなった事を、佐々木は知らない…。

一方……
「ハルヒって、胸でっかいんだよ!」
キョン子が興奮気味に藤原に語る。
「規定事項じゃないか。今更驚く話でも……」
「朝倉も同じ位かな?朝比奈さんはそれ以上だし、鶴屋さんはハルヒより大きいかな?」
「…………」

「今日も疲れましたね……明日の活力を買って帰りますか。」
古泉が本屋に入ったところ……
ひんぬー系の本を抱えた国木田……『ポニーテールと僕』
僕ッ子の官能小説を抱えたキョン……『ツンデレ僕ッ子の不思議ちゃん』
ロリ系の本を抱えた谷口……『天蓋まで導いて』
巨乳ものの本を抱えた藤原……『めがっさめがっさ』
四人に、古泉は咳払いをしながら自身の目当ての本を見せる。

『年上メイドさんの淫らな調教』

「「「「「友よ!」」」」」

レジの前で抱き合う5人。男達にしか分かり合えない連帯感。性的嗜好についてまで理解し合える親友……そう呼べる人間が、生涯何人と巡り会えるものか。
男達は勇んでレジへ向かった。が。
「18禁だ。あと二、三年経ってから来い。」
と、アルバイトの生徒会長から精算を断わられた。

「ふざけんな、眼鏡叩き割るぞ!」
「彼女ありだからって調子乗んな、リア充!」
「喫煙者!仮面優等生!」
「とんだボンクラ会長ですね!」
「ワカメ野郎が!」

五人の罵詈雑言に、会長は溜め息と共に言った。

「これだから童貞は。」

その日の会長の身に起きた不幸と、翌日に五人の身に起きた不幸については割愛する。
ただ、この五人がワカメを暫く見るのも嫌がった事だけは語っておく。

To Be continued

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最終更新:2013年06月02日 02:48
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