『よいではないか、よいではないか!収録が終わったら謝りますから、監督が!土下座もさせて頂きますから、監督が!』
「……まさかこんなところでこのネタを見るとはな」
ある日の事。映画館で見た予想外のシーンに、ふと俺の口から呟きが漏れ出でた。
隣にいる佐々木が怪訝そうな顔をする。
「キョン?」
いや。なんでもない。
映画館の暗闇の下、佐々木が小首を傾げる。
中学時代と同じ笑みがそこにあったはずだったが、傾げた拍子にさらりと漂った香りは、明らかに昔と違う趣があった。
するり、その拍子に、スクリーンのすっとんきょうな叫びが耳から脳へと侵入し
ガンガンと脳内で反響する。
『よいではないか、よいではないか!収録が終わったら謝りますから、監督が!土下座もさせて頂きますから、監督が!』
「なあ、親友」
「なんだい? 親友」
「もしも俺が………………」
先の言葉を続けようとしてピタリと俺の唇は止まった。
そりゃそうだ。
その先は、ありていに言えば良い子の時間には放送禁止な用語の類だったのだから。
その場の空気に流されるとはこの事か。
俺は一体何を考えていたんだ!?
「ねえ親友」
頭を振る俺の隣で、スクリーンを見つめたままの佐々木がぽつりと言った。
「僕はね、終わった後に土下座して貰うよりも、責任を取って貰う方が好ましいと考えるタイプなんだ」
「何の話をしているんだ親友」
「くっくっく」
さて、俺と佐々木が何を考えたのか。
それはまあ、お前に武士の情けって奴があるなら聞かないでおいてくれ。頼む。
)終わり
キョン「おいコラ、タイトルが変わってるぞ!」
佐々木「くくっ、まあ気にするほどの事じゃあないだろう親友? くっくっく」
最終更新:2013年06月07日 00:01