71-123『たまには正統派ラブコメを。』

塾の帰り道。私はキョンに飴玉を貰った。聞けば妹さんに貰ったらしい。
「気に入ったんだが、妹が袋を無くしちまってな。メーカーがわからねぇ。」
確かになかなか美味しい飴玉だ。彼がこうした甘い香りの飴玉を舐める姿を考えたら、些か滑稽でもあるが。
「あら?あんたもその飴食べてたの?」
「貰ってさ。だけどメーカーがわからないの。お母さん知ってる?」
「あー、それは……」

この飴玉は割と人気のある飴玉で、あまり売っていないという。母にねだると、袋ごとくれた。持つべきは、身内だね。
早速飴玉をひとつ口に入れ、居間のソファーに寝転がり、電話を持つ。

「キョンかい?僕だよ。」
『佐々木か。』
何か落ち着かず、私は髪を弄っていた。
「あの飴玉についてなんだが。」
受話器越しに、ころり、と音がする。
『ああ。今、妹が買ってきた。で、今食べているところだ。』
「だね。音で分かるよ。」
今、彼も同じ味が口にある……そう考えると、急に気恥ずかしくなった。
「まぁいい。僕も母から同じ飴玉をもらってね。」
『そうかい。』
――――――――――――――――――
「おっと、つい話し込んでしまった。ではまた。」
『おう。』
私は思考にかかるノイズを存分に堪能し、電話を切った。
電話のあと、落ち着かず暫くソファーで足をパタパタさせていると、父が泣いていた。一体なんだろうね、気持ち悪い。

「ま、ま、満面の笑み……!に、憎い……娘につく悪い虫め……!」
「あの子もお年頃ですから、お父さん。」

END

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最終更新:2013年07月01日 00:43
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