74-16「佐々木からのプロポーズ(驚愕If Bad End)

佐々木からのプロポーズ(驚愕If分岐 Bad End)

「あんた何言ってんのよ!一年後には五人でSOS団作るわよ!」
「残念だが…俺はそれに加わることは出来ない」
俺の言葉に一瞬にして静まり返ってしまった。長門が無口なのは言わずもがなだけどな。
やれやれ…場を大いに盛り下げてしまったが、朝比奈さんの合格祝いで盛り上がってもらえればいいだろう。
「ちょっとキョン!このままあんたがあたし達と競り合うような成績取り続けるなら
何の問題なく皆で合格出来るじゃない!」
しばしの間をおいて、ようやく俺の言わんとしていることに古泉が気がついた。
「まさか…朝比奈さんと違う大学を受けるとでもいうんですか!?」
「ああ。佐々木と同じ大学を受ける。これまでの勉強はそのためのものだ。無論これからもな。
 ハルヒや古泉と点数を張りあうようになっていたのは、単なる偶然だよ」
「キョン君…それ、本気で?」
「彼の言葉に嘘偽りはない」
「あんた、佐々木さんとは親友だって言ってたじゃない!別に大学まで同じにする必要ないわよ!
 それに佐々木さんの受ける大学なら更にレベルが高くなるのよ!?合格できると思ってるの!?」
「合格するために必死で勉強してきたんだ。朝比奈さんの受けた大学よりレベルが上なのは承知の上だ。
 俺はあいつと共に生活することにした。それにな…ハルヒ。もう親友じゃないんだよ」
「親友じゃないって……っ!!」
「お察しの通りだ。ハルヒと同様、佐々木も『恋愛感情なんて精神病の一種』と言っていた奴が、
 『キョンならそれでもかまわない。僕の存在意義がなくなってしまうからね』なんて言われたよ」
「キョン君、存在意義って…?」
「『人類の一員としていうならば、自分の遺伝子を残すこと。
子をなして自らの構成要素を後の世に伝える』だそうだ。
 要するに、俺と結婚して子供を産みたいって事。まったく、今になってもそう思う。
佐々木らしいプロポーズだとな。俺の18歳の誕生日に婚姻届を出しに行こうと思ってる。
結婚式は大学卒業後になりそうだがな。
朝比奈さんの煎れてくれたお茶が飲めなくなって残念だが、これが俺の決めた道だ」
「そんな…恋人どころか婚約しているっていうの?」
「ハルヒも俺みたいなただの人間をいつまでも部活に入れてないでおまえの求めているものを探せばいい。
 幽霊や妖怪、異世界人に未来人、宇宙人に超能力者を探すんだろう?
隠しているだけで実はすぐそばにいたなんてこともあるかもしれん。
鶴屋さん、朝比奈さん、折角の場の雰囲気を壊してしまってすみません。
朝比奈さんの合格発表の日は五人で盛大に盛り上がって下さい。俺はお先に失礼させてもらいます」
呆然としている五人をよそにスッと立ち上がり長門の部屋の玄関へと向かう。
「待ちなさいよ!!」
ハルヒが大声で叫んで立ち上がった。他のメンバーもハッとして俺を止めにかかる。
「どうかしたか?」
「あんたが…あんたがいなきゃSOS団は成り立たない。あんたがいなきゃ………意味がない…」
立ち上がってすぐに泣き崩れるハルヒにまわりのメンバーが心配そうに集まる。
「ハルヒ、ただの人間はいちゃいけないんだ。どうしておまえがそこまで泣く必要がある。
 恋愛感情なんて精神病の一種だっておまえも言ってただろう?」
「佐々木さんと一緒よ……。あんただけは…あんただけは精神病でもかまわない。
 あたしだって…あんたのことが好きなんだから…」
「すまないな、ハルヒ。たとえおまえが先にそれを伝えてくれていたとしても
 間違いなく俺は佐々木を選ぶ。あいつは俺にとって唯一無二の存在なんだ。……すまん」
「なんであんたが謝ってばっかりなのよ……」
それはな、ハルヒ。それ以外におまえにかけてやれる言葉がないんだ。すまない。
心の声でそう伝えて、長門のマンションを後にした。

翌日、佐々木を高校に送り届けてハイキングコースを歩いていると、周囲の視線が俺に集まっている。
学校に到着して上履きに履き替えようと俺の下駄箱を見ると、大量のゴミが詰まり、靴には画鋲、
靴の裏にはガムがいくつも付けられていた。これだけで何が起こったか十分想像がつく。
あの女が自覚していなくとも力を行使して俺と…おそらく佐々木がいなくなればいいとでも願ったんだろう。
惚れた男にフラれたくらいでそこまで感情の起伏がある女だとは思っていなかったが、
なんにせよ、向こうも同じようになっているだろう。
俺はまだ良くても…あいつは生物学上は女だ。早急に対処する必要がありそうだな。
現状を確認するため、上履きには履き替えず下足のまま教室へと入る。
ハイキングコースを歩いていた時と同じく、クラスメイトの侮蔑のような視線が俺に集まる。
自分の席の後ろにあの女が座っている。一つ前の机には既に書くところがないほど落書きされており、
椅子には上履きと同じく画鋲。机の中の教科書やノートはズタズタに切り裂かれていた。
すぐに携帯を取り出し、佐々木に電話をかける。
「おい、なんでおまえがここに来てるんだよ!」
アホの谷口の声が聞こえてきたが無視だ。
「キョンかい?キミから連絡があったってことはそっちも同じ状況みたいだね。
 涼宮さんの力がマイナス方向に発動するとどうなるかようやく実感できた気がするよ。
 今、誰もいない屋上にいる。キョン…傍にいてくれないか」
そこまで言って涙を流し始めた。無視して一向に相手にしない俺に対して、谷口が俺の太股に蹴りを入れる。
「とにかく、すぐ迎えに行く。おまえがそこで見つかれば、
屋上では逃げ道がなくなるだろうから、校門前で待っていてくれ。なるべく誰とも視線を合わせるなよ」
そこまで指示を出して、さっきからうるさいアホに向き直った。
谷口に近づいて髪の毛を掴んで顔面を殴り、腹を蹴る。勢いよく後ろに吹っ飛び、尻もちをついた。
「がっ!!何しやがる!」
「相変わらずアホの谷口には変わりないらしいな。さっきからおまえが散々やってきただろう?
 そのお返しだよ。文句を言われる筋合いはない」
言い終わるとともにこめかみを蹴り、横に倒れたところで頭を上から思い切り踏みつけた。
歯が2,3本折れ、顎が外れたようだな。こんなアホにいつまでも付き合っている暇はない。
「さて、次はどいつだ?………答えろ!!!」
教室中に俺の怒号が響き渡る。国木田は急いで谷口に近づき、教室から出て行った。
「たった一人やっただけでこの程度とはな。おまえら全員あいつと同様アホな連中だよ…くそったれが」

それだけ吐き捨てて学校を飛び出した。最悪の事態が起こったと見てまず間違いない。
俺たち二人を周り全員から忌み嫌われるようにしたらしいな。朝の家族の様子もどこか変だった。
ハイキングコースを下り終え、自転車で佐々木を迎えに行った。
対処が早く済んだため、制服を強引に引っ張られたり切り裂かれたりはしていないらしいな。
「キョン…僕はこれから一体どうしたらいいんだい?」
「心配いらん。おまえと同じ大学に行くと誓ってから、こうなることもずっと考えていた。
 万全とまではいかないが、対策はすでに用意してある。今は俺に身を委ねてくれ」
何も言わずただ泣きながらコクリと頷く佐々木から携帯を借り、着信履歴が一番多いであろう人物に電話をかけた。
「佐々木さん!?あなたから連絡してくれるなんて嬉しいです。
 また、わたし達と一緒にいてくれませんか?」
「悪いが、佐々木じゃない。声で俺が誰か識別できるはずだ。要件だけ伝える。
『おまえたちの望みを叶えてやるから、藤原と九曜を連れて六人以上乗れる車で俺の家に来い』以上だ」
「待っ…」
橘の返事も待たずに通話終了ボタンを押した。
「キョン…今のは橘さんかい?僕はもう彼女たちとは………」
「心配いらん。以前はおまえがあいつらに利用されようとしていた。だが、
 今回は俺があいつらを利用するだけ利用してゴミのように捨て去るつもりだ。
顔も見たくないだろうが、おまえには絶対に危害を加えさせない。俺の言う通りにして欲しい」
すぐにでもここから立ち去りたいが…俺の最優先事項はコイツだ。何があっても俺が守る。
佐々木が抱きついてきたところで頭を撫で、自転車に二人乗り。
佐々木の腕は俺の腹部をギュッと抱きしめたまま離そうとはしなかった。

家に辿り着いても橘に指示した車は止まってはいなかった。
藤原はまだ連絡がつきやすいだろうが、九曜はそうもいかないだろう。
高校から帰ってきた俺達を見て母親が怒号を上げたが、
「トラブルに巻き込まれた」とだけ伝えて後は何を言って来ようが無視で貫き通した。
部屋へと入り、着替えもせずに佐々木と二人でベッドに横になる。
「とりあえずこれで一安心だ。また嫌な場面を見せてしまう事になるだろうが、
 それまでの間はこうやって抱き締めていられる。これだけじゃ物足りないかもしれないが…な」
「十分だよ。私はキョンの傍にいられるだけでいい。一秒でも長くこうしていたい」
ようやく安心できたのか佐々木はしばらくしてから眠りに付いた。
だが、俺は橘からの連絡かインターホンが鳴るまで眠るわけにはいかん。
最悪の事態に陥った場合に備えておいたプランを反芻し、
ぼんやりとしか考えていなかった部分をどうするか検討をしていた。
昼を過ぎ、起きてきた佐々木と二人で弁当を食べ、これまで通り時間を忘れるような世間話。
今朝起こった出来事もこれで忘れてくれればいいのだが…
あたりが暗くなってきた頃、インターホンが鳴った。ようやく…と言うのが一番ふさわしいだろう。
俺の条件を満たすのにもう少し時間がかかるかと思ったが十分だ。これで今日決行することが可能だ。
台所から玄関に出てきた母親に「俺の客だ」と告げ、扉を開ける。
目の前には橘一人、藤原と九曜は車の中のようだ。
「あの…あなたは…」と橘が話しかけてきたが時間が無い。佐々木と二人で車に乗り込んだ。
「はっは、まさかあんたからアプローチがあるとは思わなかったよ、過去人。
 その上僕たちの望みをわざわざ叶えてくれるとは…滑稽だよ」
「おまえと世間話をしている程暇じゃないんだよ自称未来人。利害が一致しただけだ。
 これから俺の言う通りに動いてもらう。最初に言っておく。これは指示じゃない。命令だ」
「この僕に命令だと?ふざけるな!愚かな古代人の言う事を真に受けて成功するとは思えないね」
「その愚かな古代人の戦略に負けて自分の持っていた銃を突き付けられたのはどこの誰だったかな?
 それとも、おまえは別の時空平面上からきた藤原か?だったらすまんと言っておこう。
 与太話もこれで終わりだ。おまえはこの車が隠れられる場所を探して橘に伝えろ。
 朝比奈みくるもこのくらい簡単にできた。おまえに出来ないことはないはずだ。
 古泉たちの車が追ってくる。一瞬でもいい。隠れたところに入ったら、
九曜は機関の人間からは見えないようにステルスを張れ。これをしなかったからおまえらは失敗した」
ぐうの音も出ないらしい。しぶしぶ藤原が橘に触れて座標を伝えた。
「そろそろです」という橘の言葉に、
「――――まもなく実行する。我々への対抗手段を排除する」と九曜が答えた。
我々への対抗手段…ね。森さんたちが俺達を尾行しているということだろうな。
「九曜がステルスを張り次第、涼宮ハルヒを拉致する。時間も頃合いだ。
 SOS団がバラけたところで車に連れ込んでロープで縛れ。
あとはおまえらのアジトに向かって車を走らせればいい。
涼宮ハルヒの力を移したところであの女は用済みだ。ロープで縛った状態のまま投げ捨てる」

何か言いたげな素振りをしている藤原に、あの女の力が移されることに恐怖している佐々木。
心配いらん。あの女の力はおまえには移させない。
SOS団の解散場所近辺で涼宮ハルヒの来るのを待った。
長門、朝比奈さん、古泉の視線から見えなくなったところで藤原が車から降りてハルヒを拉致、
橘が勢いよく車を走らせる。ロープで固定されるまでは抵抗していたが、
自分の力ではどうにもならないと思ったところで抵抗しなくなった。
「あんたたち、あたしを一体どうするつもりよ!…キョン?
……なんでキョンがこいつらと一緒にいるのよ!佐々木さんまで…どうして!?」
「自分の惚れた男にフラれて、大方俺や佐々木がいなくなってしまえばいいとでも思ったんだろう?
 今朝の状況を見れば原因はおまえの力だとすぐに判明したよ。
嫌気がしたね。なんで俺は自分の恋路までおまえなんかに邪魔されなくちゃならないんだと思ったらな。
おまえのわがままに俺たちを巻き込むな!」
「……それは…でも、あたしがちょっと考えただけで、なんであんたにそこまで言われなくちゃいけないのよ!
 それにあたしの力って何のこと!?説明しなさいよ!」
既に古泉からの着信があり、朝比奈さんや長門は俺たちの行動や現在地まで掌握されているだろう。
とはいえ、この女にははっきり分からせないといけない。
「涼宮ハルヒ、おまえには世界を改変する能力が備わっている。
おまえがちょっと考えただけで今朝のような事態が起こる程な。
もう一つ例を挙げるとすれば、去年の映画の収録で秋なのに桜が咲いてしまったことくらいか。
もちろん、おまえが知らないだけでおまえの理不尽な力に振り回されていたけどな。
そして、その能力を監視するために長門や朝比奈さんが集まり、
おまえがイライラすると出現する閉鎖空間の怪物退治に古泉たちが駆り出されていた。
嬉しいお知らせを一つ教えてやろう。おまえが入学式の自己紹介で願ったことは、
すでに実現されていたんだよ。長門が宇宙人、朝比奈さんが未来人、古泉が超能力者だ」
どういう表情をしていいのかわからんらしいが、時間が無い。事を先に進めよう。
「ここにいる三人はお前のその理不尽な能力が目当てでこうやって拉致したり、
 朝比奈さんを誘拐しようとしたりした。どれも失敗に終わったが、今回は俺と利害が一致した。
 九曜、この女の力を俺に譲渡しろ!」

「何ぃ!?ふざけるなよ貴様!そいつから器の佐々木に譲渡しなければ意味がない。
 やはり古代人だったか…愚かな策に便乗した僕が馬鹿だったよ」
「申し訳ありませんがその通りです。あなたではただの超能力にしかなりません。
 佐々木さんでないとわたしたちの願いを叶えることはできないのです」
自称未来人は飽きれ果て、橘は運転してはいるものの落胆を隠しきれないでいた。
「愚かなのはおまえたちの方だ。佐々木はこの受け渡しを全力で断ると言ったはずだ。
 ただでさえ、おまえたちとの接触を避けていたのに、それでも今はこうやって行動を共にしている。
 一旦俺に移し、佐々木と充分話し合った上でその女の能力を譲渡する。
 おまえらごときがいくら交渉しようと脅そうと佐々木は壁を作るだけ。
 焦らされる思いだろうが、もうしばらく待て。
佐々木が力の受け渡しを了承したところでお前らとコンタクトを取ればそれで済む」
「チッ!僕が古代人なんかに諭されるとはな。いいだろう、あんたの策に乗ってやる。
 九曜、その女から力を譲渡しろ!」
涼宮から金色のオーラがあふれ出し、俺へと移動を開始した。
車内から放たれた光のせいで前方が見えなくなり、橘が慌てて車を止める。
「何よ…これ……?」
「言ったはずだ。おまえは今まで全く自覚してなかった理不尽極まりない力だと…
 だがそれもあと少しで終わりを迎える。数日中にSOS団は解散するだろう」
「SOS団が解散って…一体どういう事よ!」
何とか縄をほどいて俺にくってかかろうとしたが、そのまま座席に上半身を預けるだけだった。
金色のオーラが全て俺に受け渡されたところで再度涼宮に話しかけた。
「長門と朝比奈さんはこの力の監視をすることが任務。おまえがただの人間に成り下がれば、
 二人とも自分の元いた場所へと帰るだろう。おまえがイライラするたびに怪物退治に追われた古泉は
 今頃喜んでいるだろうな。昼夜問わず駆り出され、おまえが少しでも苛立つことの無いように
 ニヤケスマイルでおまえのご機嫌取りをしていたんだからな。
さっきから古泉からの着信がうるさいんだ。ちょっと電話に出てどういう反応をするか話してみよう」
携帯の通話ボタンを押した。古泉の第一声、なんて言ってくるだろうな…。
「すみませんが、単刀直入に申し上げます。あなたは一体何をしたんですか!?」
「古泉、おまえが一番良く分かっているはずだろう?
涼宮ハルヒの気違いな能力が発動して、俺と佐々木は全世界から忌み嫌われるようになった。
 こいつの自分勝手な妄想になぜ俺たちが被害を受けなきゃならんのだ。
 お前も俺の机や椅子、下駄箱を見たはずだ。俺だけならまだしも佐々木までもこいつは巻き込んだ。
許せるわけがないだろう?理不尽な能力なら俺が貰い受けたよ。
おまえやエージェントの超能力も消えたはずだ。もうこの女に従う必要はない。
機関は解散になるだろうが…寝不足な日々を過ごすこともなくなるんだ。おまえの好きにすればいい」
「なるほど、そういう事でしたか。確かに僕やエージェントの超能力は消えました。
 閉鎖空間の出ることなく、神人も現れないのであれば願ったり叶ったりと言ったところでしょう。
 ですが、我々はいいとして、今後は情報統合思念体や天蓋領域、未来からの干渉もあるでしょう。
 あなたなら簡単に打ち破ってしまいそうですが、お気をつけて…
 これまで我々の使命に付き合っていただいてありがとうございました。それでは、失礼します」
…と言うわけだ、などと言う必要もなく力を失った女は縛られて倒れたまま泣き崩れていた。
「藤原からすれば、力の受け渡しが終わったおまえに用はないと始末するだろうが、
 俺達が受けた苦しみを十二分に味わってもらう。
 もう用済みだ。拉致しといて悪かったな。これで解放してやるよ」
涼宮の縛られたロープはそのままに車のドアを開け、涼宮を車外へと蹴り飛ばした。

橘がそれを見届けて車を急発進。あとは手筈通り、佐々木が了承したらこちらから連絡すると伝えて、
俺達はテレポートで俺の家へと戻った。二人分の夕飯を部屋へと運び、一緒に食事しながら話しだした。
「橘さんが言っていたけど、これでキョンも超能力が使えるようになったようだね。
 いきなりテレポートするから吃驚したよ。でも、彼らとの約束はどうする気だい?
キミも………僕がその力を引き継ぐことに…賛成……なのかい?」
一連のやり取りで最も恐怖を感じていたのはこいつに間違いはない。だが…
「心配するな。あいつらをその気にさせるために便乗しただけにすぎん。それより、
 あの女から力を譲渡したが、未だに俺もおまえも周りから忌み嫌われていることに変わりはない。
 おまえに力を与えて元に状態に戻すのが一番いい。だが、それが嫌だということも承知の上だ。
 明日からのことは俺が何とかするから、心配しないでくれ。
 橘たちも二、三日したところで始末しに行くつもりだ。これでおまえに危害を加える奴はいない。
 状況的に仕方が無かったとはいえ、苗字で呼んでしまって悪かった。すまない」
「嬉しいよ、キョン。明日以降、同じようなことが起きてもキミがなんとかしてくれるんだろう?
 それだけで十分満足だよ。高校は違っても、さっきのようにテレポートで来てくれる。
 僕はそれだけで安心していられる。キミがいてくれて本当によかったと思う。
 ところで…初めてテレポートを使ったはずなのに、どうしてこんなに正確にテレポートできるんだい?
 しかも移動中の車の中から…」
安心していられるならそれでいい。今日は…特にコイツは嫌な思いをしてばかりだったからな。
一緒に寝るときはギュッと抱きしめて寝ることにしよう。
しかし、超能力に興味を持ち始めたらしい…違う意味で寝かせてくれないかもしれん。とりあえず…
「あの女の力が俺に注がれてきた時に、この力をどのように使えばいいか、どんな能力があるのか、
 どうやって使えばいいかが全て知識として入ってきたんだよ。サイコメトリー能力というらしい。
 俺も実際に使ってみないことには実感がわかないだろうが、色々説明するより、明日以降見られる筈だ。
 百聞は一見に…ってやつだよ」
「明日が待ち遠しくてならない。周り中からいじめを受けているとは思えないくらいだ」

そのあと交互に風呂に入り、ゆったりくつろいでから部屋の明かりを消した。
超能力の話で盛り上がりながら、テレパシーで会話してみたり、俺たちの身体にコーティングを施したり。
佐々木の方のコーティングはサイコメトリー能力も付けておいた。
ナイフや銃弾でも跳ね返すコーティングのようだしな。
殴る、蹴るは当然のこと、バットや鉄パイプでもダメージを受けることはあるまい。
翌朝・・・当然家族からも忌み嫌われているのは変わりないが、
食事や弁当に毒を盛ったりすれば、サイコメトリー能力ですぐにわかる。
証拠は?と聞かれれば、実際に食べさせればいいんだからな。
食事と身支度を終えてから佐々木の高校へと向かった。今回は俺も校内に入る。
北高の制服のままだが教員が校舎をうろついているなどほとんどない。
まずは下駄箱。昨日の俺の下駄箱と同じ状態になっていた。
何をすればいいのか身体が分かっているかのように勝手に動き、右手をかざした瞬間、
佐々木の下駄箱が元通りになっていた。自分でもこれには驚いた。
「百聞は一見に…だったかい?まさか一瞬で解決するとは思わなかったよ。
どうやったのか教えてくれないか?」
やった本人も驚いているのに説明を求められても困るな…だが、
「下駄箱をサイコメトリーして、おまえの下駄箱に悪戯をしたやつを特定。
 テレポートでそいつのところに移動させた。ガムや画鋲を入れた奴は今頃どうしてるかな?」
勝手に口が動いている…ような気がする。とりあえず、教室の机も昨日の俺と同じ状態。
さっと一撫でしたところ、これ以上書くところが無いくらい描かれていた落書きが消え、
ズタズタにされていた教科書やノートが元通り。椅子に置いてあった画鋲もなくなり、
後ろから悲鳴が聞こえた。画鋲をおいた犯人らしいな。
安心して椅子にこしかけた佐々木と俺のところへ男子生徒が一人やってくる。
「この学校の生徒でもない奴が何の用だ!?」
「用?それなら見ていた通りだ。佐々木に対する嫌がらせを解消したまでだ。
 すでに犯人が名乗りをあげているようだがな」
悲鳴が聞こえた方向へと視線を移すと、スカートの上からお尻に画鋲が刺さっている女子がいた。
「てめぇ!」
と俺のところへやってきた生徒が俺の顔面を殴ってきた。
コーティングされた俺には何のダメージも無く、殴った方がダメージを受けている。
「痛っ!」
などと悲鳴をあげているが聞いていて気持ちがいいものでもない。いい機会だ、釘をさしておこう。
「これ以上佐々木に妙な真似をすれば俺がこうして現れる。嫌がらせをしたいのなら勝手にしろ。
 そのあとどうなるか…わかっているな?」
朝倉並の俺の殺気が教室を支配した。立っていた女子数名が腰を抜かし、悪戯の実行犯とおぼしき生徒は
「ごめんなさい、ごめんなさい…」と悲痛な声をあげている。
一週間ほどすれば問題ないだろう。そのまま北高の屋上へとテレポート。
自転車も同様に駐輪場へとテレポートした。

今度は俺の番。先ほどと同様下駄箱を元に戻し、教室に入る。
クラスメイトが侮蔑の目で俺を見ているのは変わらんが、知ったことか。
机も元通りにして座席についた。俺の後ろの奴も登校してきたらしい。ついでにあのアホもな。
「谷口、もうやめときなよ!」
「うるせぇ!ここまでやられて黙っていられるか!おいキョン、てめぇ!」
「何か用か?」と谷口に向かって振り返りながら、俺の殺気で教室を埋め尽くす。
「丁度いい。俺に喧嘩を売るとどうなるか見せてやるよ」
透明な閉鎖空間を展開。手をかざして谷口の机と椅子を宙に浮かせ、窓ガラスを割ってグラウンドへ。
グラウンドの中央まできたところでかざした手を握り締めた。
爆音と共に机と椅子が爆発。見ていた全員が恐怖で身体がこわばる。
「だからどうしたってんだ!これでお前は割れた窓ガラスと、俺の持ち物を全て弁償してもらう。
 おい、さっさと金出せよ!」
足を震えさせながらよくもまぁ啖呵を切れたものだと思いながらアホの谷口の言い分に応じた。
「割れた窓ガラスってのはどのガラスのことだ?座席も全て揃っているだろう?」
「ふざけるな、おまえがさっき……え?…国木田、さっき窓ガラス割れたよな?…なぁ?」
閉鎖空間を解除して窓ガラスも机や椅子も元通り。
国木田も何が起きたかさっぱり分からず、谷口の問いかけに答えられずにいた。
教室に岡部が入ってきてHRがはじまった。
クラス全員、さっきの爆音を聞いていなかったのかという表情だったが、
岡部からその話は一向にでることはなかった。
教室にいる人間しか閉鎖空間の中に入れていないから当然だ。
あとで誰が何を説明しようが、そんなものは聞こえなかったで済まされる。
何事もなかったかのようにHRが終わり授業へと入った。
休み時間に教室にいるのは俺、谷口とそれを引き止めようとしている国木田、あと俺の席の後ろの女の四人。
あとは陰湿な嫌がらせをその都度排除していけばいい。
長門たち宇宙人も似たような能力を持っていたんだと今になって気付いた。
朝倉もナイフにこだわる必要もないと思うのだが…。そんなことを考えていると、
『今日の放課後部室に来て。話がある。朝比奈みくるも呼んである』
長門からのテレパシーが届いた。もはや俺も古泉もSOS団では無いのだが…
それにテレパシーで授業中でも会話できるのなら、わざわざ部室に呼び出さなくてもいいだろう。
まぁ、全員で話がしたいってところだろうな。

放課後、話の内容は大体想像がつく。佐々木も迎えに行きたいし早く帰って受験勉強をしたいのだが…。
今日であいつらと別れられるなら…しょうがない、今日で最後だ。
佐々木にテレパシーを送ってしぶしぶ部室へと向かった。
部室の扉をノックすると朝比奈さんの美声が聞こえてくる。
卒業した人間をその二日後に呼ぶのもどうかと思うのだが…意外な人物がそこにいた…
「古泉、なんでおまえがここに来ているんだ?」
「ええ、あなたのおっしゃる通りです。もはや僕がここに来る必要はありません。
 今日は、僕がここに持ってきたものを全て持ち帰ろうと思いましてね。
一人で全部運ぼうとしたんですが、何分数が多くて…
何度もここに足を運ばなくてはならないのかと思っていたところ、
新川さんが車で迎えに来てくれまして。…すみませんが校門前まで手伝ってもらえませんか?」
そんなことならお安い御用だ。さっさと運んでしまおう。
長机の二段目から古泉のボードゲームを全て取りだしたところで長門が俺達を引きとめた。
「待って。五人揃っていられるのもこれが最後かもしれない。時間はとらせない、座って」
「そんな……有希まで…」
「折角の新川さんの好意を無碍にしたくありません。手短にお願いしますよ?」
「情報統合思念体は涼宮ハルヒに元通り力を戻すことを望んでいる。朝比奈みくるの組織も同じ」
「そんな話なら、とっくに結論は出ている。古泉、新川さんのところに行こう」
「そのようですね。では、失礼します」
「ちょっと、あんた達!待ちなさいよ!」
いつもの定位置に座り落胆していた女がようやく立ち上がって叫んだ。
だからといって止まる奴も止める奴もいない。まったく…未だに理解できてないらしいな。
「誰に向かって命令しているんだ?団長ごっこなら一人でやってろ。
 もうおまえに関わろうとする奴は誰もいない」
「わたしからもお願いします!キョン君も古泉君も待って下さい!」
舌打ちと溜息が出てきた。朝比奈さんの頼みなら…と以前の俺なら従っただろうが……仕方がない。
「古泉、校門前へテレポートする。ボードゲーム持って新川さんのところに行こう。
 これ以上新川さんを待たせるわけにはいかない。
おまえにはまたここに戻ってもらうが…話が終わったら自宅まで俺がテレポートで送り届ける。
 このまま帰っても、こいつらはまた俺たちを集めるだろう。今回はそれで手を打たないか?」
「名案…とは言えませんね。それが我々の妥協案と言ったところでしょう。
 家までテレポートで送って頂けるとは思ってもみませんでしたよ。是非お願いします」
古泉の承諾を得て二人でテレポート、部室と校門前をボードゲームを持ったまま何度も往復していては、
どこで誰にみられているかわからんしな。案の定リムジンで校門前へきてくれていた新川さんに事情を告げ、
ボードゲームだけ乗せてハイキングコースを下っていった。
あいつらが俺達を引き止めなければ新川さんを使いっぱしりにしてしまうことも無かった筈だ。
古泉とアイコンタクトをして、くだらない話なら即刻帰ろうと伝えた。
向こうも同じ意見のようだ。あの女に振り回されてきた分、阿吽の呼吸でお互い動くことができる。
古泉とは今後も連絡を取り合ったりしたいもんだな。来年一年間は無理だとしても、
佐々木と同じ大学に合格することができれば、ボードゲームにも付き合っていられる。
アイツとも話が合うだろうしな。それに・・・
朝比奈さんも未来に帰るように言われていてもおかしくない。
もう朝比奈さんが受験した大学を志望する必要はない。古泉なら俺たちと同じ大学に行けるだろう。
さっさと話を切り上げて自宅に戻ろう。アイツが家で待っている。
二人で部室に戻りいつもの席にこしかけたところで長門の話が再開した。

「先刻の通り、あなたの今持っている力を涼宮ハルヒに戻してほしい。
 情報爆発が起こせるギリギリのラインまでで構わない」
「こっちも同じだ。すでに結論は出ている。この女に二度と力を戻すことはない」
「キョン君どうして…どうしてダメなんですか?」
相変わらず律儀な人だ…テレポートして届けて来るまでの間にメイド服に着替えている。
「簡単な話だ。ただでさえ、俺と佐々木は陰湿な嫌がらせを受けているにも関わらず、
この女の世界改変能力が再度使えるようになれば、次はいじめではなく殺害を計画するだろう。
不慮の事故に見せかけたり、遺書を残して部屋で首を吊っていたりな。
佐々木が死んでからこの女を殺したところで俺の気は晴れない。
今すぐ消し飛ばしてもいいくらいなんだ。同情の余地はない。
無自覚とはいえ、この女は俺たちの不幸を願った。いくらお願いされようが俺の考えは変わらない。
加えて、ようやく古泉がこの女のご機嫌取りから解放されたんだ。
その古泉を再度あの理不尽な生活に陥れようとするなんざ、俺にはできん」
「同感ですね。昨日ようやく解放されてエージェントたちと盛り上がっていたんです。
 夜中に何度も起こされながら学業に専念しなければならない生活なんて、
もう二度と御免被りたいですね」
「そんな……古泉君まで……」
「失礼、そんなに気安く僕のことを呼ばないでいただけますか?少なくとも、
 彼と同程度かそれ以上の憤怒をあなたに対して抱いているのですからね」
「あたしは……あたしは一体………一体どうしたらいいの…?」
馬鹿な女だ。取り返しのつかない事をやっておいて未だに助かる道を求めている。
この女の言葉で言うなら、
「反論があるなら、終わってからA4用紙にまとめて提出しなさい。一応見てあげるから」だな。
もう事は終わっている。いくら言葉を投げかけてこようが一応聞いてやる。だが俺たちの考えは変わらない。
「何も無ければこれで帰らせてもらうぞ。それに古泉。俺と一緒に佐々木の志望する大学受けないか?
 この部室のような部屋を抑えれば、ボードゲームで遊べるし、三人で会話もできる。
 来年一年間の我慢だと思えば悪くないと思うんだが、どうだ?」
「それは名案です。あなたの考えが変わらない限り、朝比奈さんがこの時間平面上にいても意味がない。
 いつ未来へ戻るか分からないのであれば、彼女と同じ大学でなくてもよいというわけですね。
 わかりました。あなたの提案に乗ることにしましょう」

「待って!この状態を維持してしまうと今度は急進派どころか主流派まで動いてしまう」
「だからどうした。力の受け渡しならおまえでも簡単にできるはずだ、長門。
 それをせずにおまえはこうやって俺たちを説得しようと試みている。
 たとえ主流派が動いたとしても今の俺には通用せず情報統合思念体が消される。
この女の持っていた力がどれほどのものかおまえらが一番よく知っているはずだ。そうだろう?
 おまえの親玉に伝えろ。『俺たちに危害を加えるなら全て滅ぼす』ってな」
「………わかった。そう伝える。でも、私個人としてはここに残ってあなたの傍にいたい。
 わたしもあなた達と同じ大学を受験する。朝倉涼子の使っていた部屋が空いたままになっている。
 あなた達で使ってもらって構わない。けど、少しでもいい…あなたと一緒にいさせて」
古泉ではないがこれは名案と言っていいだろう。狭い部屋で佐々木に申し訳ないと思っていたんだ。
これで長門の任務もなくなり宇宙人としての力もなくなってしまったとしても、
こいつなら難なく合格するだろう。ならばここに置いてある本も移動する必要がありそうだな。
超能力も使えるようになったことだしな。
「わたしも同じ大学を受けます!!」
いきなりで驚いた。朝比奈さんはもう合格発表を待つだけで落ちるわけがない。
その大学を蹴るというのか?一年間を棒に振るのか…?
「未来からの帰還命令が出ても戻りません!いえ、戻りたくありません!!
 指令が出た場合はこの時間平面上から行くことにします。
今の大学に合格してもわたし一人じゃ寂しいだけです!
皆さんと一緒にいられるのなら、一年くらい大したことはありません。
同じ大学一年生として一緒に居させて下さい!」
「決まりのようですね。佐々木さんを入れた五人で同じ大学を目指す。
 おそらく朝比奈さんも僕に続くと思いますが、
長門さん、これから一年間あなたの部屋に泊めてもらえませんか?
朝倉さんの部屋には彼と佐々木さんが住む。
佐々木さんは放課後すぐに彼が迎えに行ってしまいますから、
受験勉強をするのは長門さんの部屋になりそうですね」
「わたしからもお願いします!」
「問題ない。わたしも古泉一樹と同様ここにある本をわたしの部屋へと移す。
 帰ったら全員で引っ越し作業をすればいい。彼がテレポートしてくれる」
「有希……あたしも…あたしもそこに入れて!…お願い……お願いよ」
「不可能。故意ではないにせよ、あなたは彼の逆鱗に触れ力を奪われた。
 力を戻すとどうなるかも彼が既に予測を立てている。強引に戻そうとすれば真っ先にあなたが殺される。
 こうなってしまった以上、わたしも朝比奈みくるも情報統合思念体と未来へ帰らなければならない。
 でも、わたしたちはまだ彼らと一緒に行動がしたい。けれど、その中にあなたは入れない。
 文芸部部長の権限をあなたに譲渡する。予算も好きに使ってくれてかまわない。
 そのかわり、わたしたち四人がここにくることは二度とない」
長門がとどめを刺したらしいな。涙も枯れて呆然と椅子に座っていることしか出来ないでいる。
会議が終了した時点で四人が席を立った。長門、本棚の本、湯呑セットを長門の部屋へ。
朝比奈さんは制服にドレスチェンジ(テレポートの応用だ)して自分の部屋へ。古泉も同様だ。
最後に俺が自転車と一緒に自宅へと戻った。夕食を二人で食べながら、放課後の会議について話した。
「彼女に力を戻さず、そういう結果になっていたとは思わなかったよ。
 僕も話し相手が増えて嬉しい。是非参加させてくれたまえ」
それなら…と食事が済んだところで母親に連絡。
「あんたたちがこの家からいなくなるのならそれでいいわよ。勝手にしなさい」
相変わらずあの女の力が継続したままだが、俺たちはもはや四面楚歌じゃない。
頼れる仲間と対抗できる力を手にしたんだ。あとは引っ越しと事後処理をすればそれでいい。
それぞれの荷物をまとめた後、一旦佐々木を自宅へと帰した。
俺は先に505号室へと移動し、家具を情報結合。寝室には天蓋付きのダブルベッドを用意した。
長門の部屋ではないがさすがにカーテンをつけないわけにはいかない。
どのような部屋にするかはあとで佐々木と相談することにしよう。

翌日、長門の部屋に五人が集まり朝食を摂る。朝比奈さんの用意してくれた弁当を持って、
先に二人で佐々木の高校へと向かった。誰かが教員にチクったらしいな。
俺の侵入を阻む教員たちがいたが関係ない。100%の殺気で邪魔な連中を押しのけ、高校に入る。
下駄箱は昨日よりも酷くなっていたが、やることは変わらない。悪戯をした本人に返してやった。
殺気をそのままに教室へと出向き、机や椅子を元通りに。
「二回までは許してやる。次にコイツに何かすればどうなるか…わかっているな?」
逃げたくてもその場から動けないというのが適切らしい。その様子を見て全員に聞こえるように伝えた。
「明日から俺はもう校舎の中には入らない。だが、昨日今日と同じ事が起こっているなら話は別だ。
 その場合は俺に連絡してくれ。文字通り『すぐに』駆けつける」
「わかった。『すぐに』…だね?」
全員の見ている前でテレポートして見せ、どこへでも行けることを周りの生徒の頭に叩き込んだ。
俺の方も同様だ。画鋲でお尻や足の裏を刺された奴、教科書やノートをズタズタにされた奴が増えていく。
アホの谷口は毎日俺に挑んでは怪我をする箇所が増えていく。
俺の後ろの女は相変わらず登校してきているが、どんなアプローチをしようがもう何も変わらない。
長門の宇宙人的能力が失われる前に情報操作し、三年時のクラス編成を谷口とあの女を3-4に、
俺、長門、古泉、国木田が3-5となった。
あの事件以来、ようやく己の願望が果たせると俺からの連絡を心待ちにしていた橘と自称未来人は
九曜を含め、アジトに集まらせたところで閉鎖空間を展開。
九曜の力は未知数だったが、同位体二体を相手にすることはコイツは不利と判断する。
同位体とは違った力を起こす前に排除するまでだ。
アジトごと消し飛ばして閉鎖空間を解除、金庫の中に入れてあった現金を全て強奪した。
俺と佐々木の大学の授業料に結婚資金、婚約指輪と結婚指輪も買わなければならない。
俺が有効活用してやるよ。

その後、あの女が自宅で自殺したという連絡が入ったが俺たちには関係ない。
通夜にも告別式にも参加せず、パーティで盛り上がっていた。
情報統合思念体からも未来からの干渉も一切なくなり、長門や朝比奈さんは戻ることなく俺たちと生活。
五人で合格して俺と佐々木は結婚式を挙げた………


Bad End







おしまい

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最終更新:2014年12月06日 14:47
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