『縁』
「さて、聞かせてもらおうかしら?」
塾の初登校が終わった次の日。
昨夜は久方ぶりに脳みそをフル回転させたせいか倦怠感から心地よい眠りをすごした。
本日は塾が無い日なのでSOS団に参加できる。
部室での第一声ははハルヒの不機嫌な声だった。
聞かせるって何をだよ。
「塾の話しに決まってんでしょうが!あんたねぇ、いくら休暇を許したからってSOS団の本分は忘れちゃダメよ!
集まりに参加できない分、塾で不思議を探してきたんでしょうね?」
探すかそんなもん。俺は勉強しに行ったんだぞ。
強いて言うならあんなところに押し込まれて必死こいて勉強している奴らの心情が不思議だね。
まぁ俺も昨日その仲間入りをしたんだがな。
「なによ、まさか何にもないんじゃないでしょうねぇ……なかったら罰ゲームよ!」
ならば昨日の内に言っておけ。
……あーそうか、これは八つ当たりの一種か。
当然いえるわけが無いと思っているわけだな、そんで罰ゲームをさせる気か。
しかし俺もみすみすハルヒ考案罰ゲームなんぞという悪乗りした運動部の先輩命令より恐ろしげなものを受ける気は無い。
不思議なことね、不思議なこと。
適当にでっち上げて煙に巻くか?
いいや、下手なこといったら塾にまで調べに来られるな。
……よし、アレで行くか。
そーいえばな、塾に行って指定された席に座ったんだがな。
これが中学のとき通ってた塾の席とまったく同じなんだ。
それだけならたいした事無いが実はその隣の席の奴まで同じだったんだ、知ってるだろ?佐々木だ。
縁とは奇なもの味なものっていうがまさにそれだよな。
人の縁というやつはいつ何処でつながってるかわかんないもんだな。
帰りにコンビニに寄ったり昔話にかなり花が咲いたぜ。
そういえば知ってるか?袖すり合うも他生の縁ってな、勘違いしてる奴が多いが多少じゃなくて他生なんだよ。
袖がすり会っただけで前世やら来世の縁まで約束されるんだな。
こんな偶然があるとか佐々木とはどんだけ先の一生まで縁があるんだって感じだよな。
まぁこの豆知識もその佐々木からの受け売りなわけだが…………。
っとおい、古泉。携帯なってるぞ?
……長門、本が逆さだ。朝比奈さん?ポットと急須が逆です。
……ハルヒ?その蛙のきぐるみをどうする気だ?
……と、言うようなことがあったのは昨日。
本日は塾の日なのでSOS団をお休みし勉学に励む。
英文やら数式やらに3時間ほど悪戦苦闘し変える間際その話を佐々木にしていた。
やれやれ、ひどい目に会ったぜ。
「くっく、僕としては涼宮さんがきぐるみをどう使ったかを詳しく聞きたいね」
よせ、思い出したくない。
ったく、なんであんな目にあわなきゃならなかったのか。
「きっと昨日ぐらいのありきたりな話じゃ涼宮さんは満足しなかったんだろうね」
そうか?お前と此処で再会できたのは結構面白い偶然だと思うが。
「まぁ確かにそうだけど決して無い話じゃないしね。涼宮さん的にはもっと縁の強い話しじゃなきゃダメだったのさ」
もっと縁ねぇ……そんなもん早々無いぞ。
「まぁ僕としても親友が罰ゲームに晒されるのは忍びない、もっと縁強い話しで涼宮さんを満足させるようにしようじゃないか。
さしあたっては……こうかな?」
おいおい、いきなり俺の手なんか握ってどうした。
「袖すり合うも他生の縁だよキョン。袖がすりあっただけで足りないならいっそくっつけてしまおうと思ってね」
いきなり来世の話しかよ。今はいいのか今は。
「くっくっ、僕とて現世の君との縁だってまだ満足してないよ。コーヒーの美味しい喫茶店があるんだ。
さしあたっては今日はそこに寄り道して帰ろう」
コーヒーか、いいな。
……おい、自転車乗るんだろ?手はなさなきゃ乗れないぞ?
「くっく、その喫茶店は此処から近いけど駐輪スペースが無いんだ。自転車は此処に置かせてもらってとりあえず歩いていこう」
なんだ、そうなのか。
次の日その話しをしたら今度はトナカイを使われた。
最終更新:2011年06月10日 23:03