20-566「始業式にて、1」

「始業式にて、1」
今日は2学期始業式という学校のイベント中で展覧会と並ぶくらいどうでも良い日である。
いや、これはイベントじゃないのだろうか?
することと言ったら体育館に背の順で整列し、校長のありがたきお話を拝聴、あとは夏休み中に
あった運動部の大会の表彰くらいなもんだ。
無論、帰宅部の俺にはそんな表彰は関係無く、この間佐々木に聞いた話についての
理解を深めようと努力していた。
あー・・・なんだっけ?自律意識がどうとか言ってたな・・・
睡魔が華麗に参上したせで俺は早くも努力を放棄、今度はその力を気をつけしたまま眠るという曲芸の習得に
回すことにした。
すると、隣から佐々木が声をかけてきた。
「キョン、立ったまま眠るというのは人間としてかなり無理に近いんだ。
睡眠というのは体がもっともリラックスできる状況でしなくては意味が無い。
君の脳も、無駄なことを易々とするほど落ちぶれちゃいないはずだ」
無駄だと、失敬な。某青猫付眼鏡少年は通学中に眠っていたぞ。
第一、それを言うならこの時間の方が無駄だ。
何が悲しくて特に接点の無いバスケットボール部県大会3位の表彰を見ていなくてはならないのだ。
「キョン、よく考えなよ。
今日は始業式、授業は学活くらいのものだろう。
普段の君なら授業を睡眠に当てるかもしれないが、今日は午前中で帰れるんだ。
家に帰ってから睡眠した方がよっぽど有意義でないかい?どうせ友人との約束もないだろう?」
悪いが今日は国木田と遊ぶ約束をしているんでね。家で惰眠を貪っている暇はないんだ。
「キョン、君はどうも状況把握が苦手みたいだね?大事な能力だから身につけておいたほうが
今後の人生の糧となるだろう」
何のことだ、と聞こうとして異変に気が付いた。
いつもは斜め前に居る佐々木が横に来ているぞ。ということは、俺より背の低い男子が一名欠席していることになる。
「彼は今日は来ていないみたいだね?夏風邪かな」
くそっ、国木田の奴。
携帯に連絡くらい入れろよな―と思ったが、朝に携帯がブーブー言ってたのを思い出した。
急いでたから無視して出てきてしまったのだ。
「キョン、何も始業式の日からそんなに慌しい朝を過ごす必要性はないと思うんだが?
昨日は休みだ、今日の準備を整えて早く眠るくらいのことは出来たろうに」
お前はそうだろうが、俺は忙しかったんだ。社会科の新聞作りを眠る寸前まで忘却していたせいでな。
「ふむ。まぁそれについては良いだろう。今日以降の教訓として肝に銘じればいい」
ん?佐々木にしてはおかしな反応だな、またおかしな科学考証を開始すると思って身構えていたのに。
「・・・キョン」
何だ、急に。何か言いたげな顔だな、俺の顔に何か付いているのか?
もしや朝急いで喰ってきたのり玉が?
「・・・今日は、塾も休みだ」
だから国木田と約束をしたのだ。後に塾などがあると知っていたら羽根を伸ばせないだろう。
「・・・しかも、君が約束していた彼は休みだ」
だから何が言いたいんだよ、前話していた論理学か何かか?
「・・・つまり、君は今日フリーというわけだ」
あぁ、早くも家で妹に妨害されることなく5時過ぎまで眠ることの出来る計画を練っている。
それがどうかしたのか。
「・・・・・・僕も、今日はフリーなのさ」
お前は塾の無い日は大抵そうだろう。女友達ともあまり遊んでないしな。
「・・・最近、ちょうど見たい映画が近所の映画館で上映されていてね」
じゃあ観に行くと良い、明日感想を聞かせてくれ。
「・・・父親が何かの手違いでペアチケットを取ってきてしまって」
ならば父親と行け。
「・・・キョン、君はどうも洞察力というものが欠けているね」
やはり論理学か。
お、表彰が終わった。やっと帰れるぞ。
「・・・もういい」
あれ、なんか佐々木が怒り出したぞ。どういうことだ?

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-[[20-653「教室にて、2」]] につづく

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最終更新:2009年11月19日 07:44
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