4-613「修羅場・涼宮ハルヒの驚愕」

今日は恒例の不思議探索ツアーなのだが、春の暖かい気候は冬の寒さにおける布団の温かみとはまた別の意味合いで俺の起床を見事に妨げ、結局いつも通りシャミセンと妹に叩き起こされることになった。財布の中身を見てため息をつきつつ玄関を開ける。

佐々木「やぁキョン、ご苦労だね。」

俺の家の前に佐々木が立っていた。

待て、何故お前がここにいる?

佐々木「僕もあの駅に用があるからね・・・くっくっ そんな顔しないでくれ。今日はあの3人は来ない。純粋に僕の用事さ。」

佐々木に言われて俺はほっとする。毎度毎度あの3人と鉢合わせることになんのでは俺の神経がもたない。もっともこの1年で俺の神経はある意味完全に狂ってしまったがな。
そうか、と佐々木はくっくっと笑う・・・。
ん? 待て佐々木。お前俺の質問に答えてないじゃないか。

キョン「なんであの駅に行くのに俺の家にいる?不自然じゃないか。」

俺の意見をもっともとして受け取ったのか、佐々木は偽悪的な笑みを浮かべた。

佐々木「なに、昔みたいにキミの自転車の荷台に乗ってみたいと思ってみただけさ。用事といってもたいしたことではないし、帰属本能かな?いや、なんでもない。忘れてくれ。
くっくっ。それとも、キミは家の前でキミを待ち続けていた僕を見捨て、駅で同じくキミを待つ涼宮さん達の所へ直行するのかい?それは白状というのではないかな?」

やれやれ、そんなことを言われたらNOとは言えないじゃないか。もっとも断る理由もないが。だが確かに言われてみれば久しぶりだ。受験が終わる前だから一年と2ヶ月ぶりだろうか。

佐々木「それぐらいだね。キミの後ろは中々居心地が良かったよ。」

そうかい。俺は良かったと言えたかどうかは今でもなんとも言えんが。
俺はチャリを道路に出して先に乗る。
すると昔と同じタイミングで同じ重量がチャリに掛かるのがわかった。

佐々木「キョン、乗ったよ」
キョン「あぁ」

昔と同じ掛け合いで俺はチャリを漕ぎ出し駅に向かった。

佐々木「どうだいキョン、キミ達の集団は。仲良くやっているのかい?」

聞いてどうする。悪いといったら戦国武将のように塩でも送ってくれるのか?
なら俺の財布の中身でも増やしてほしいもんだ。

佐々木「悪いがお断りするよ。キミがキミのお金を使うのはキミ次第だ。
つまり責任はキミにあるということだ。
それを減らしたくないのならそれに即した行動をとるべきだ。
もしくは慎むべきだね。
そんなに気になるのならバイトでもするべきだろうし、
社会経験にも繋がるし自力で稼いだそれは
親から頂戴するときとはまた別の感慨があるだろうからね。」

相変わらず昔と変らないやり取りだ。
なぜか俺が佐々木に言い返せないのもな。

佐々木「それに先ほどの僕の質問はいわゆる社交辞令だよ。
確かに2度会った仲ではあるがキミが彼等と仲良くやっているか、
僕が心配できるほどキミ達の集団を知っているわけでもないしね。」

そりゃそうだと思いながら俺はチャリのスピードを上げる。
今まで気付かなかったが、話に気を取られてスピードを緩めていたため
集合時間が結構ギリギリなのだ。

結局5分オーバーで自転車置き場まで着いたのは良かった。
だが問題はその後だった。
その問題とは集合時間に送れたことではない。

いや、当たらずとも遠からず、というべきなのだろうか?
ハルヒ「あんた達・・・何してんの?」
佐々木「おはよう、涼宮さん。」
キョン「・・・」

自転車置き場にハルヒがいたことだ。
当然俺が佐々木を荷台に乗せてチャリを漕いでいたところも、
今しがた俺がチャリを止めて、その後ろから佐々木が荷台から降りたのも、
ハルヒは夫の不倫相手を目撃したような驚愕したような顔で見ていたのだ。

ハルヒ曰く遅刻した俺に叱咤するためにわざわざここで待っていたらしいが、
ぜひ違う日にしてもらいたかったね。いや、特に理由なんてないが。
・・・ないはずなのだが、この空気はなんだ?
まるで冬の隙間風のような、痛々しい寒さを感じるのは気のせいだろうか?

佐々木「あぁ、二人乗りしていたの。私が無理を言ってね。」

さっきまで俺の後ろにいた佐々木は俺の横まで歩みを進めた。

佐々木「去年は塾の行きでいつも一緒に二人乗りをしていたからね。
なつかしくて。 だから彼の家で待ってたの。
そうだろう、キョン?」

何故俺に聞く?

ハルヒ「へぇ、そうなの?キョン?」

だから何故俺に聞く?

ハルヒは視力の悪い奴が遠くを見るような目つきで、
佐々木は被告人を見る裁判長のような目つきで俺を見る。

神に誓いたい。俺は何も悪い事はしていない。遅刻を除いてな。





修羅場・涼宮ハルヒの驚愕

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最終更新:2007年10月11日 21:52
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