23-486「佐々木さんの、子猫の目の甘い日々3 炬燵で触れ合う距離感、の巻」

佐々木さんの、子猫の目の甘い日々3
炬燵で触れ合う距離感、の巻

朝夕の冷え込みに秋の深まりを感じる今日この頃。
冬支度、というには少々早いかもしれないが、長門に手を回してもらい、自分の部屋用の小さな炬燵を入手してきた。
少々手狭にはなるが、これさえあれば色々と便利である。
「あれー、キョンくん、おコタなら居間のがあるじゃない?」
状況説明にぴったりな突っ込みありがとう妹よ。
確かに去年まではそれで済んだ。だが、今年はそうもいかん。
朝夕の冷え込みで、シャミの奴が俺が寝ている間に、布団に潜り込んでくる季節が来ようとしているのだ。
つい昨日も、珍しく妹が起こしにくる前に息苦しさを感じて目を覚ましたところ、
猫耳の佐々木が「うニャうニャ……」などと寝言を言いつつ俺に抱きついている、
そんな心臓に悪い覚醒をして以来、何とかせねばなるまいと心に決めたのである。
「猫としては暖かい寝床を求めるのは自然な行為じゃニャいかな。
 まあ君も健全な男子高校生である以上、そこで邪な思いを抱いてしまうのも仕方ないけれど、
その場合、僕の方も劣情を喚起した責任は取る所存だよ?」
おおお黙りなさい佐々木さん。何故お前はこの状態だと羞恥心とか全開になってしまうのだ。
「佐々木ではニャく、この状態のときはシャシャキと呼んでほしいのだね。くっくっ」
ぜんぜん応えないシャシャキである。ああくそ、この呼び方にも慣れてしまった自分が悲しい。
まあいい、古来より、猫の居場所と言えば炬燵と相場が決まっている。
寝ている間つけっぱなしというのは少々電気代が怖いが、これでシャミの習性上、
暖かい炬燵の中、もしくは上が奴の寝床となるだろう。俺は一人でベッドで寝る。
「そういえば、知っているかねキョン。今のような電気炬燵が普及する前は、
 炬燵では練炭を使用していたのだよ。練炭は一酸化炭素を発生させるものだから、
 暖かさを求めて入り込んだ猫が一酸化炭素中毒となり、死亡してしまうケースがままあったようだ。
 恐ろしい話だね」
何が言いたいシャ……、佐々木よ。
「現在とて、漏電や気密の問題上、猫にとって炬燵は必ずしも安全なものではニャいのだよ。
 君はよもやそうした危険なものをわざわざ部屋に持ち込んで、
 あまつさえ君の目の届かない深夜に稼動状態で放置し、僕の生命を脅かそうとはしないだろうね」
いや、だからお前そっちで寝てくれよ。
「せっかく隣に人肌の温かい存在が布団をかぶっているのだよ。
 それを有効に活用せず、電気代を浪費するだなんて、僕にはとてもできニャいよ、キョン」
活用すな。頼むからせんでくれ。
結局、半分猫だろうがなんだろうが、佐々木に口では勝てるはずもなく。
「お前の寝床はこっちだシャミ」作戦は実行されることなく終焉を迎えた。
まあ炬燵そのものに罪はないので、有効に利用させてもらっている。
思わぬ副次的効果として、妹が炬燵をやけに気に入って、俺の部屋に入り浸るので、
ちょうどいいシャ……佐々木への嫌がらせにもなっているしな。
「キョンくーん、炬燵と言ったら蜜柑だよねー」
まだ季節には早いと思うが、どこからもらってきたのだ妹よ。
「ハルにゃんがくれたー」
そうかそうか。もう好きにしてくれ。ヤツについては今更突っ込む気にもならん。
「シャミー、蜜柑むいてあげるねー、みかんみかん、みかん星人~♪ ……あれ」
「にゃぁぁぁ!!」
はっはっは。蜜柑の汁が目に入ったな。
「き、君という人間のSっ気を甘く見ていたようだニャ」
なみだ目でにらむと、シャ…佐々木は炬燵に潜り込んだ。
「シャミー、蜜柑ちゃんと剥けたから出てきてー」
妹よ、そもそも猫に柑橘系はいかんだろう……って、おおう。この下半身に走る微妙な感触は。
こ、こらシャシャキ、俺の脚で顔ぬぐうのはやめなさい。何というはしたないマネを!
「最近は膝にキスする漫画が一般向けとして流通するようだよ。良い時代にニャったものだね」
他誌さんのことをあげつらうんじゃありません。あと、俺のズボンで蜜柑の汁をぬぐうのもやめなさい。
「くっくっ。考えてみれば、炬燵の中なら色々としたい放題じゃないか。
 これは発想の飛躍と捉えるべきかな。それとも君の誘い受けの巧妙さをほめるべきかニャ」
どっちでもない。妹もいるんだぞシャシャキ!
「キョンくんなんかヘンー。シャミがいたずらしてるの?」
くそ、策士策におぼれるとはこの事か。
ええい、勘弁してくれシャシャキ。
                                 そんな秋の日常
猫の目の日々シリーズ
http://www10.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1293.html

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最終更新:2012年07月24日 00:22
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