24-516「少年Nの悲劇」


修学旅行2日目午後9時20分。
待ち合わせの約束をしていたロビーに俺はいる。本当に彼女は来てくれるだろうか。
「…ふぅ」
俺は名も無き男子N。佐々木に惚れている男の一人。あの神秘的な雰囲気が好きだ。もちろん顔も大好きだぞ!

そんな自問自答をしながら待つこと5分。俺の女神はやって来た。

早めに来てて良かった。

「よ、よう!佐々木」
声が裏返ってるのが自分でもわかる。心臓もバクバクだ。

「なんだい、こんな時間に呼び出して。もしかして僕に告白でもするつもりかい?」

ちょ、先に言う!?それ言っちゃうぅ!?
出鼻を挫かれた俺は数秒間氷結する。
……はっ。
ダメだ。こんなところで諦める訳にはいかない。まだ俺はスタート地点にも立っていないじゃないか!

俺は足りない頭をフル回転させると同時に言葉を繰り出した。

→1 ツンデレ
 2 肯定して好きだと告白する(お薦め)
 3 君が好きだと叫ぶ


「ば、ばか。そんなわけねーだろ。お前自意識過剰じゃね?」

あぁあああぁあぁぁ。焦って選択肢ミスったあああぁぁあああああああぁぁああ!!!!

俺はこの一言で、初恋が終わりを告げたことを悟った。

しかし、そんな俺に佐々木は予想外の反応を返してきた。

「ふむ。僕が自意識過剰か・・・考えてみれば今まで自らのことを省みることはほとんど無かったように思う。
すまないが僕のどんな点が自意識過剰だと感じたのか教えてもらえないかな?」

うっそ。正解?

まるでエロゲで確実に失敗したと思う選択肢をスキップしまくって選んでしまったら正解だったような・・・
喜ぶ間も束の間、俺の脳は再び高速回転を始める。

 1 佐々木は自意識過剰ではない、と言う
→2 敢えて断ってみる
 3 君が好きだと叫ぶ

「嫌だよ。なんでお前に教えなくちゃいけねえの?」

ばかああああああぁあぁぁ。何でそれ選んだあああぁあああぁぁあ。

 4 佐々木の性格を説明しながら最終的に『それが佐々木のいいところなんだけどな』と言って告白


今ごろ選択肢増えても遅ええええぇえぇえぇぇえぇ!!!

案の定佐々木は
「すまない」
と言ったきり黙ってしまった。


このままでは――マズイ。


俺が次はどうするか、あれこれ考えていると

「あの・・・大変申し訳ないがこれ以上用事が無いのなら、僕は明日に備えるために戻――」
「ちちちぢちょっと待ってくれ!す、すぐに済むから!!」

いけない。何かネタを考えないと我が女神は帰還してしまう。
何か・・・何かないか!?

 1 じ、じゃあな!
 2 別に残ってくれなんて頼んでねえし。
 3 君が好きだと叫ぶ。


3・・・もう俺には3しか残されてないのか・・・・・・

→4 明日の予定を聞く。


脳内神降臨キター!!!これで明日佐々木と接近して――
考えるよりまず口に出せ。

「そ、そう言えば今佐々木明日がどうとか言ってたじゃん?」

「え?あ、あぁ。そうだったかな」

急に顔を赤らめる佐々木。


あれ?もしかしてこれフラグ立った?
俺は選択肢を考えることなく、間髪入れずに二の句を告げた。


「えー、佐々木。もしお前が明日暇なら俺と一緒に回――」
「すまない。予定が入っているから無理だ」

ですよねー

「そ、そっか。そりゃそうだよな!班の女子達と回るのか?」
「あ、いや・・・」

佐々木は頬をぽりぽり掻きながら恥ずかしそうに、しかしはっきりとこう言った。


「キ、キョンと」


脈なしかー


「じ、じゃあ僕はもう戻るよ!これから班のみんなに肌のケアの仕方や
おすすめスポットを教えて貰わないといけないからね!」

そう言って真っ赤な頬に両手を当てたまま走り去って行く――途中で立ち止まり、こちらを振り向いた。

だ、大どんでん返・・・

「あ、自意識過剰に関しては肝に銘じておくよ!ご忠告痛み入る!」


俺の初恋はこうして幕を閉じた。


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最終更新:2007年11月14日 02:03
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