1-582「女には戦わなければならないときがあるのだ」

「ふぅ」
ベッドに身体を投げ出すと、吐息が口をついた。
久しぶりに彼と喫茶店に入ったことで我知らず緊張していたようだ。
「結局、僕もただの女だってことか」
理性ではわかっていた、彼にもそう口にしたことがある。
しかし、それを実感するのは初めてだった。

彼と共にいて太陽のような笑顔を見せる彼女、
困ったような表情、
それでいて彼女を優しい眼で見る彼の姿が瞼を閉じると浮かんでくる。
微かに胸を刺す痛み。

「……」
彼の名前をそっと口に出してみる。
それは自分が彼を少しでも理解したという思い出。
思い出すのはその時の彼の表情。

神の力など欲しくはない。
そんなものをもらって何になる?
「でも」
自分が橘京子の誘いに乗ったのは別の理由。
どうしても諦めきれないものがあったこと、
大切なものがあったこと、
譲れないことがあること、
それに気付かせてくれたことを感謝しよう。

相手がたとえ神であったとしても、女には戦わなければならないときがあるのだと。

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最終更新:2007年11月15日 09:53
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