25-312「女同士の会話」

Haruhi-Side

佐々木さんと二人で会うようになったのはつい最近の事だった。
初めの頃はキョンが惚れた(に違いない)女性のあれやこれやとか昔話を聞き出したり、あわよくばキョンの事を
諦めさせようと思って彼女に会うようになったわけ。
でも話し込んでいる内にだんだんとあたし自身が彼女の魅力に惹かれてしまったようで、普通の女の子同士がす
るような会話に変わったのはそれほど時間は掛からなかった。
ただ、最新ファッションとかテレビとか、あたし的にはどうでもいい話は彼女も好きじゃないみたいで、お互い
の考え方や色んな評論とかを話すようになった。
あたしも人の尻尾を追っかけるような話題には興味無いし、彼女との会話は知的な好奇心で心地よい疲労感を与
えてくれたから、それはそれで非常に有意義な時間だった。

キョンとの会話も楽しいけどあいつは突っ込み専門だし、古泉君はアタシには絶対反抗しないし、みくるちゃん
は・・・・ちょっと議論するのは難しそう。有希とはどうなんだろう?

そんなことを考えながらアイスコーヒーを飲んでいると、佐々木さんが大きく綺麗な瞳に喜色を浮かべ、あたし
の方に乗り出してきた。そう、彼女の場合はこれが会話のスタートなのよね。

「ねぇ、涼宮さん。私はこう思うんだけど・・・・」

英語で言えば"I think so too"になるんだろうけど、なんか反論の余地は許さない様な感じがして、あたしとし
てはあまり好きじゃない言い方なんだけど、佐々木さんの場合はここからが違うのよね。

「世の中の男の人って、女は男を、それも特定の誰かを想い続けないと心が壊れる、あるいは女性に対して女は
 そうあるべきだと思いこんだり勝手な理想論を持っている人が多すぎると思うのだけど、どう思う?
 女は男が考えている以上に肉体的にも精神的にもずっと強いと考えているし、歴史や人物伝を見ている限りそ
 うとしか考えられないのよ。
 例えばヘレン・ケラーの生涯を見ているとそんな気がするの」

ここまで一気に言い放った。
悔しい事にあたしの頭の中は一気に真っ白になってしまった。
あたしといえば中一の七夕の夜に一度だけ会ったジョンの事で何年も頭一杯になったし、時々だけど頭の中が
キョンだらけになってしまう。
あたしの行動や言葉で誰か幸せになったのだろうか?

女としての自意識をシッカリ持っている佐々木さんって凄いと思ったし、とても素敵な人だと羨望を感じた。


Sasaki-side


涼宮さんと一緒に喫茶店で話し込んだりする間柄になったのはつい最近の事だ。
きっかけはキョンからの伝言で、涼宮さんが私と二人で話をしたいと伝えてきたのが始まりだった。
キョンはしきりに「俺が参加しないでいいのか」と聞いてきたけど、二人で話をしたいと涼宮さんが言っている
のであれば正々堂々と一人で承けるのが礼儀だろうと思ったので、心配性のキョンは連れて行かない事にした。
結果としてはそれは大正解だった。
話をする前はキョンの事で最終決着を付けたがっている様に考えたりしたけど、話してゆくとキョンの中学時代
の話をしたり、SOS団におけるキョンの悪評を聞いたりと、お互いに情報交換をしている雰囲気になった。
やがてキョン談義が終わると、自然にお互いの事を話すようになった。
色んな話をしたけど、お互い外見はともかく内面的にはよく似ていると思った。

私の場合は中三になるまで積極的な他人との接触は避けていて、それを孤独だとは思ってもいなかった。
涼宮さんは中学に入ってから意図的に他人との接触は避けていて、それを孤独だとは思ってもいなかった。

涼宮さんは明確に言わなかったけど私と同じだと思う。私達の孤独の闇に光を差し込んだのはキョンだろうと。
私は運命とか神の存在を疑っているけど、きっとこれはキョンの天与の才なのだろうと思う。

ある日の事、涼宮さんとお茶を楽しんでいるとき、私の悪戯心が顔を出してしまって「女はかくありき」云々の
話をしてしまった。
一瞬キョトンとしたした表情で私を見つめた彼女はやがて顔を紅潮させて、両手で机を叩いて気持ちのいい音を
奏でた。

「そうよ、佐々木さんの言うとおりだわ!
 女って弱くは無いのよ。男なんかよりずっとずっと強いんだからね。
 あたしも佐々木さんを見習って行動するわ!」

おやおや、私とした事が涼宮さんに火を付ける結果になってしまったか。
私は少しばかりの後悔を感じ、羨望の気持ちを込めて彼女の瞳を見据えた。今の涼宮さんには一片の迷いがない。

誰だって知らない事はあるし、常に大層な認識を持ってはいない。
ただ彼女は私の考えに共鳴して、そして驚くべき事に即座に行動に移そうとしている。
涼宮さんには神の力があると橘さんは言うけど、それ以前に行動力の面で涼宮さんと私では歴然とした差がある。

涼宮さんにはいわゆる外見的な魅力が充分にあるし、奇妙なカリスマもあるのは私の認めるところ。
そして彼女には行動力もある。

とても素敵な人だと羨望を感じたし、私は彼女に勝ち得るだろうかと少し不安な気持ちになった。

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最終更新:2007年11月24日 07:39
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