27-119「一人前の蕎麦定食」

中学時代の俺達は、塾に行く途中、蕎麦屋に寄って軽く食事することが多かった。
年蕎麦定食1人前を二人で分け合って。(店長がキョンの知り合いでなければ、荒らし認定されたと思う)
「一人前を二人で分けるなんて貧乏くさい事やめた方が良くないか?俺は別にかまわないが」
「僕はこれで十分だよ。君さえ良ければ、何も問題無いよ」
「いや、それだけでなく。クラスの連中にまた夫婦、夫婦と馬鹿にされるのだが。妹となら問題無いと思うが」
「僕は気にしないよ」
キョンは妹さん相手に時々こんな事をしているらしい。
本当は、気にしないというより、キョンと二人でそういうことをするのが好きだったのかもしれない。
子供の頃の幸せだったあの日、あれは遠い昔のよう。


去年の大晦日、君は涼宮さん達5人で過ごしたらしいね。楽しかったかね?
今年も、君はあの4人と過ごしているのかな?それとも涼宮さんと二人きりとか。
そんな大晦日の夜、偶然君に出会った。

「お前もお参りの帰りか?来年もよろしく」
「君はまた、SOS団か?」
「毎日、毎日大変だよ。明日も初日の出を拝むんだ。やれやれ」
そうか、明日も涼宮さん達と一緒か
「そうだ、キョン。昔よく行った蕎麦屋に行こう」
そこで昔のように蕎麦定食1人前を二人で分け合う僕達。
キョン、明日も早いのに僕に付き合ってくれるなんて、君は優しいんだね。
君は誰にでも優しいけど、本当は僕だけに優しくしてほしいんだ。

どうしたらキョンを独占できるのだろうか?
それに、未だに涼宮さんとも他の女の子とも恋人どうしにならないのは何故?
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何だ、簡単なことじゃないか。ただ、必ず成功するとは限らない賭けなだけで
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その夜、大晦日の晩、僕は溜め込んでいた溢れ出す思いを伝えた。
やらなくて後悔するよりやって後悔する方が良い。それとも、遅すぎてもやらないよりはまし。かな?

僕達の行きつけの蕎麦屋で蕎麦定食1人前を二人で分け合うと、知り合った男女は恋人になり、別れたカップルもよりを戻し、離婚寸前の夫婦が再び愛し合う
こんな噂が世界中に流れたのは、僕の名前が変わった頃だったろうか、それとも僕達の二人目の娘が生まれた頃?
(終わり)

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最終更新:2007年12月31日 18:43
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