佐々キョン バカップル
『テイクアウト』
先週の日曜日、佐々木と図書館に行くために待ち合わせしていたのだったが、案の定遅刻した。
その日の彼女は虫の居所が悪かったらしく、後日、俺に恐怖の罰ゲームを科した。
『じゃがりこゲーム』
「…なんだ?その『じゃがりこゲーム』というのは…」
「なんだ、とはなんだ?勿論ポッキーゲームの改良版じゃないか」
改良版?どこがだよ。むしろ短くなってる分、劣化版と称すべきじゃないのか?
「これを両端から食べて行く、ただそれだけの事だろう?何も恥ずかしがることはないじゃないか」
そうだな。お前は気にしないかも知れんが、今は昼休みでしかも教室だ。当然クラスメートも大勢いるぜ。
男子の妬みの声がウザったいし、女子の爛々とした目が気になるな。
「さあキョン、始めようじゃないか」
そして佐々木はじゃがりこの5分の4を口に含んだ。
…5分の4?ほぼ全部じゃねぇかよ。
「ひょん、はやふひてふれ」
「わかった、わかったから落ち着け。このままだとお前の唇を食べかねん」
「はまわない」
こっちが構うんだよ、と…俺はジト目で佐々木を睨む。
しかし、効果が無いことは百も承知だ。
…もう、なるようになれ。
俺は覚悟を決め、じゃがりこをくわえている佐々木の唇に近付く。目の前の少女の瞼はトロンとしており頬も赤みがかっている…
って待てよ、コレってほぼ『キス』じゃねぇか。
教室の中、クラスメートが見ている目の前で淫行に及ぶなんてバカップルもいいとこだぜ。
…まあ、もうやめる気もないがな。
チュッ…
「んむっ!!」
だから俺はじゃがりこを無視し、佐々木の唇に直接食らいついた。
じゃがりこをくわえているためか、唇は普段より強張っているがそんな佐々木も可愛いぜ。
ペロッ…
「んんっ!」
さらに佐々木の唇を舐めた。
佐々木は抗議するかのように大きく目を見開き、その視線で俺を射抜くが…お前の体をがっちりと抱き締めてるんだ。俺の腕からは逃れられないぜ。
そして佐々木の背に回し拘束する手を右手のみにし、左手は脇腹を攻め、
「あぁ…」
吐息がこぼれたその隙に舌をねじ込んだ。
「ん…はぁ…」
それにしても…じゃがりこが邪魔だな。
逃げる佐々木の舌を追うといつも奴が居やがる。
・・・
教室で深いキスをする二人。
これ以上は自分自身、火が付きそうだなと思い佐々木を解放した。
「…酷い……」
教室での淫行、がか?
言うまでもないが、彼女の呼吸は荒い。
「酷いの公衆の面前で羞恥プレイを強要したお前じゃないか」
「…そうじゃない。あの様に熱いキス…なのに寸止めなんて、年頃の、か弱き乙女にする事じゃないんだと思うのだよ」
そう言いながら佐々木は俺の体に絡みついてきた。
どこがか弱いんだよ、などという無粋な反論はしない。
俺は火が付く寸前で止めたつもりだったが、どうやら手遅れだったらしい。
昼休みが終わり教師が入ってくる。
そこで俺たちは『具合が悪い』旨を伝え早退した。勿論、建て前だ。
『佐々木に火が付いたので持ち帰ります』
なんて言えるわけないだろう?
END
最終更新:2008年01月26日 23:36