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#image(sotto voce.png,width=596,height=447,title=Sotto Voce) #asciiart(blockquote){L:I=D・水竜の開発 = {  t:名称 = I=D・水竜の開発(イベント)  t:要点 = 一般性能要求{  水竜は地竜が自己進化して広大な海に適応した姿である。水陸両用であり、外装は複殻構造、水中にもぐって2週間ほどで、殻を形成して以後は潜水艦のように行動できた。 緊急時、あるいは上陸時は殻を放棄することが出来る。 }  t:周辺環境 = 水  t:評価 = なし  t:特殊 = {   *I=D・水竜の開発のイベントカテゴリ = 藩国イベントとして扱う。   *I=D・水竜の開発の位置づけ = 生産イベントとして扱う。   *その国用の水竜(乗り物)を作成できる。  }  t:→次のアイドレス = なし } } #image(水竜・完成版b.png,width=590,height=720,title=設定絵) 型式番号:SAA-2 機体名称:ソットヴォーチェ 設計者:須藤 鑑正     :鈴藤 瑞樹 艦種 :対RB戦闘用潜水艦 全長:43m 全幅:11m(胸びれ除く) 主機:パラジウムリアクター(イージス方式) ソーラー発電型電動機 最大速力:40kt 標準武装:533mm魚雷発射管×4 長距離魚雷『長槍』(ロングランス) 超高速魚雷『嵐』(テンペスタ) パイロット:1名 他にコパイロット2名を必要とする 所属:詩歌藩国作戦部 就航年月日:10808002 **■水竜開発に到った経緯(表) なぜ、水竜を開発するのか。 これにはひとつの厳然たる事実が関係している。 すなわち、帝國には水中専用機がなかったのだ。 その局所的すぎる使用用途ゆえに各国で開発を後回しにされ、ついにはシーズンオフとなっている。 しかし思い出していただきたい。無名世界観には水中を舞台とした戦いがあったことを。 絢爛舞踏祭である。 火星の海を戦場とした世界において、水中戦闘を得手とするラウンドバックラー(RB)が数多く存在している。 テラ領域においてはいまだ浸透していない技術であり、これを保有する藩国は限られる。 RBが敵として出現した場合、犬猫を合わせても対抗できる戦力はほとんどないのが現状なのである。 シーズン2の主戦場は宇宙とされている。 しかし、だからこその水竜開発とも言えた。 備えあれば憂いナシとは、たいていの場合に通用することわざである。 その『たいていの場合』にはNWの未来すらも含んでいるはずだと、私は思う。 ---- **■水竜開発に到った経緯(裏)  その日、詩歌藩国は珍しく暑かった。 太陽からふりそそぐ爽やかな光が、夏がやってきたことを告げていた。 冬の間は分厚い氷が張っていた湖も、今は水浴びをする人々でいっぱいだった。 そんなのんびりとした様子を、政庁の最上階にある一室から見守る一人の男がいた。 詩歌藩国を治める王、九音・詩歌である。 やたらと真剣な表情で、まっすぐに湖へと目を向けていた。 「藩王さまー、書類をお持ちしましたよ」 側近の一人が執務室へと入ってくる。 しかし詩歌は返事はおろか、振り向くことすらしなかった。 この人物、考え始めると際限なく思考の中へと没頭するクセがあり、ほっておくと黙ったまま何時間でも同じ体勢のままでいることがよくある。 そして、そんな時はたとえ地震がきて火事がおきて核を落とされてオーマが攻めてきて世界の危機がせまっていてもまったく気がつかないのであった。 またかぁ、とつぶやきながら側近は書類を机に置いた。 傍に仕えているだけあってこの人物の奇癖にも慣れっこだった。 そのまま退室しようとしたところで 「よし、決めた」 ちょうど考えがまとまったのか、詩歌が顔を上げて語り出した。 「キミ、竜の持っている適応能力のことを知っているかな?」 側近は、気づいてたなら声くらいかけてくれてもと思ったが口にしなかった。 言っても無駄であることはすでに学んでいた。 「はぁ、たしか竜が生活する環境にあわせて自分の体を作り変える能力のことだったと思います。砂漠に住むなら砂漠仕様といった具合に」 「その通り」 正解だ、というように小さく笑う詩歌を見て側近は、やっぱりきれいだなーと思った。 この男なのか女なのかも判然としない藩王には、それゆえの不思議な魅力があった。 「この国の厳しい冬を体験した彼らが、寒冷地仕様へと自己進化したことは研究結果からも明らかだ」 指をくるくるとまわしながらゆっくりと歩き始めた。側近の経験からいえば、これはなにか面白いことを語りたくてしょうがない時のしぐさだ。 「もし、もしもだ。彼らが水中で生活することになったとしたら、どうなると思う?」 「それはやっぱり、おさかなみたいな体に進化するんじゃ」 その返事に満足したようにうんうんとうなずく詩歌。 「と、いうことだ。あとはわかるね?」 「……つまり、ちょっと見てみたいから研究部に連絡して水竜を開発せよと?」 「む。んー、まぁそういう面もたしかにあるが」 詩歌は腕を組んで上を見上げたあと、夢を見るようににっこりと笑った。 「せっかくの夏だ。彼らと一緒に海を泳げたら楽しいじゃないか」 側近は想像してみて、ちょっといいかもと思った。 #image(hikaku3.png,width=596,height=447,title=バカンス?) 竜のでっかい背中に乗って海へ出られるなんて、そうはできない経験だと考えた。 「で、開発したら輸送船にして使おう。輸送にかかる費用もばかにならんしな」 「何言ってんですか、そんなの議会じゃ通りませんよ」 詩歌はえー、という顔をしたが、側近の言葉は事実だった。 設定国民によって運営される国民議会。 できるだけ広い意見を取り入れられるようにと設立された組織である。 田舎にある国だけあって普段はけっして好戦的な人々ではなかったが、たび重なる戦争による不安から戦力の増強を求める声は多くなっていた。 水竜の開発についても、輸送船などではなく兵器として開発すべきだという意見がでるのは間違いなかった。 「まぁ、しかたがない。そのあたりは開発部に一任する。どうせ戦争が終われば不要になるんだし、シーズン2が終わったら武装解除すればいい」 開発した後の予定まで決めてすっかり笑顔の詩歌だった。 「またそんな適当なこと言って。その竜に国を滅ぼされかけてるのをお忘れですか」 ふと、詩歌は目を細めた。透き通った空のような瞳が側近をとらえる。 どきりとした。一瞬で藩王の雰囲気が変わっていた。 「この国には多くの神々がいる。精霊や妖精もだ。なぜかわかるかい?」 「えぇと、それは」 思わず目をそらす。冷や汗が噴出して止まらない。 心臓がバクバクと脈を打ってうるさいくらいだった。 「この国は、許容の国だからだ。この国に住みたいという意思がある者すべてを許す。門地、宗教、人種、歴史に関わり無く、争うことなく穏やかに過ごすことができる。私がそうさせる。この国にいるすべてのものは私の子であり、兄弟であり、友だ。例外はない」 ふいに重苦しい空気が消えた。 「だからね、竜は私の友人だ。敵ではない。話せばきっとわかってくれると、信じているよ」 顔を上げたそこには、さっきまでのにこやかな笑顔を浮かべた詩歌の姿があった。 **■開発コンセプト 水中専用機を開発するにあたり ・敵が行動を開始する前に、先手をとれること(高AR) ・移動にARを使わずに敵を攻撃する手段(超遠距離攻撃) 上記の二点は必須とされた。 これらは対RB戦闘を考慮した結果である。 ***■RBとは? RBとは、惑星上、中でも海中での戦闘を目的に開発された人型機動兵器である。 絶対物理防壁によって水抵抗を極減させ、反物質ジェットによって水中を時速500km以上のスピードで推進する。 航空機・潜水艦・あらゆる陸上兵器を上回る機動性と戦闘力を誇る、天地と海で最強の機動兵器だ。 弱点といえるのは ・絶対物理防壁のエネルギー限界のため、実用稼働時間2時間と極端に短いこと ・絶対物理防壁の性質上、光学系、電波系、磁場系、重力系、音波系のセンスをシャットアウトする必要があり、勘と先読みで敵の位置を予測するしかないこと 以上の2点である。 弱点がなくはない、とはいえ絶対物理防壁による絶大な防御力と機動力はおおきな脅威であるといえるだろう。 図書館藩国戦でNWに敵として出現したことからも、この脅威に対抗できる兵器の開発は必須といえた。 ***■対RB戦闘を意識した機体開発 『RBを倒すには、RBを当てるのが最善である』 ある意味で当然の結論である。 RBは絶対物理防壁によって水抵抗を極減させ、反物質ジェットによって水中を時速500km以上のスピードで推進する、化け物と呼べるシロモノである。 航空機・潜水艦・あらゆる陸上兵器を上回る機動性と戦闘力を誇る、最強の機動兵器なのだから。 だが水竜をRBとして開発することはゼッタイにできなかった。 なんともトホホな理由だが、詩歌藩にはRBを乗りこなせるパイロット系アイドレスがなかったのである。 この問題を解決するべく様々な研究がなされ、非RBかつ高AR、さらに遠距離攻撃可能な機体が開発されることとなった。 ***■遠距離攻撃能力の強化 水中戦で距離をとった攻撃となれば当然、魚雷である。 機動力で圧倒的に差のあるRBを倒すべく二種類の魚雷が搭載された。 ・長距離魚雷『長槍』(ロングランス)  第六世界で使用されていたものとほぼ同型の魚雷。 射程が伸びた分、破壊力が既存の魚雷より劣るものの 小型であるゆえに搭載数が稼げるため、SAA-2には多数装備されている。 ・超高速魚雷『嵐』(テンペスタ) SAA-2が持つ最大の武器。 ロケット推進で時速100ノット以上の速力を叩き出す大型魚雷。 強力ではあるが搭載数はロングランスの四分の一程度しかない。 対RB戦闘法として、先手をとり無数の長距離魚雷を打ち込む飽和攻撃策が採用された。 まずロングランスで敵の足を止め、テンペスタでとどめを刺す。 これがSAA-2の基本的な運用方法となる。 この固定砲台的運用は、シミュレーションではRBの絶対物理防壁でも防げない(全方位から衝撃波がくるため360度の展開ができない絶対物理防壁では防御できない)と出ており十分に有効であるとされていたが、問題もあった。 一度の攻撃で大量の魚雷を消費するため、2回ないし3回の全力射撃で撃ち止めになるという弱点があったのだ。 また近距離戦や側面からの攻撃は想定されていないため、先手を逃すともろい面がある。 撃ちもらした敵機を迎撃する迎撃機(インターセプト)の開発は、間に合っていない。 ***■高ARを確保するために はやい機体をつくればARは確保できるが、それでは攻撃力が落ちる。 けたはずれな量の魚雷搭載を前提としたことや、絶対物理防壁の使用を制限されたことから速度以外の部分で勝負する必要があった。 そうして考えられたのが航続時間の延長という発想である。 &bold(){・パラジウムリアクター} パラジウムをもちいた常温核融合炉。 高出力で静粛性の高い新機軸のジェネレータ(電源)であり、 既存の核分裂炉と違い連鎖反応がなく、安全性が高い。 また自然界に存在する重水素を活用するため安価に使用できる装備となっている。 &bold(){・酸素精製装置} パラジウムリアクターからの有り余る出力を生かして海水を電気分解し、 艦内へ新鮮な酸素を提供する装置。 これにより水中活動限界が大幅に伸び、長大な戦闘時間の確保に成功した。 &bold(){・ソーラー発電装置} SAA-2の外装には太陽電池素子が織り込まれており、ごく浅い水面下においては発電が可能となっている。 発電素子は腹部を除いた全身に存在し、可視光を吸収する性質上、黒く見える。 ちなみに水中で発電素子を長期間使用できるだけの技術はないため、約1~2ヶ月ごとに生え変わっている。 上記の技術を使用することにより、乗組員の食事などを度外視すれば100時間以上の戦闘航行が可能となっている。 ***■開発計画と外観設定について 竜の開発は通例として、動物をモチーフとして行われる。 これは竜が進化系統図上にある生物の形状を模倣する習性からきている。 何体かの地竜を水辺に放置し、自然に進化するのを待つ。 外殻を形成したものの中から最適なものを選び出してデータを解析、精製する。 そうして完成した成長プログラムを他の地竜へと埋め込むのである。 今回の水中機開発についてはクジラ型をもちいることとなった。 前述した要求性能を満たすための選択だった。 大型化が、必要だったのである。 膨大な量の魚雷を積み込むこと、そして開閉可能な発射口の確保。 これらを同時に満たそうとした時、クジラのもつ大きな胴と巨大な口腔は好都合だったのだ。 また複殻式の外装を採用したため、外殻と内殻の間にあるスペースに燃料等を積み込むことができ搭載量の増加に貢献している。 実際に開発された機体は、潜水艦と呼ぶよりは本物のクジラに近く見えた。 前面が太く、後ろにいくほど身が細くなる。 真上から見ると水滴に胸びれと尾びれが生えたような形をしており、いわゆる涙滴型と呼ばれる水中航行に適した形をしている。 下顎を下げて大きく開いた口の中には4基の魚雷発射管。 実戦ではその口辺から盛大に水雷を吐き出すことだろう。 ソーラー光発電をする関係で全身が黒く、腹部のみが白い。 眺めている限りはのんびりと海を泳ぐシロナガスクジラそのものだった。 推進方式については、ハイスキュード・スクリューを装備してはいるが胸ひれと尾ひれのみを使った魚類式推進も可能であり 速度は半減するが静粛性に優れた移動も可能となっている。 上陸の際は生成した外殻を脱ぎ捨てて地竜形態へと戻ることができる。 逆に水竜形態へと戻るには外殻形成に2週間ほどの時間がかかるため、緊急時以外での外殻廃棄はしないように運用された。 サイズ比較用資料 #image(比較b.png ,width=591,height=489,title=比較絵)
#image(sotto voce.png,width=596,height=447,title=Sotto Voce) #asciiart(blockquote){L:I=D・水竜の開発 = {  t:名称 = I=D・水竜の開発(イベント)  t:要点 = 一般性能要求{  水竜は地竜が自己進化して広大な海に適応した姿である。水陸両用であり、外装は複殻構造、水中にもぐって2週間ほどで、殻を形成して以後は潜水艦のように行動できた。 緊急時、あるいは上陸時は殻を放棄することが出来る。 }  t:周辺環境 = 水  t:評価 = なし  t:特殊 = {   *I=D・水竜の開発のイベントカテゴリ = 藩国イベントとして扱う。   *I=D・水竜の開発の位置づけ = 生産イベントとして扱う。   *その国用の水竜(乗り物)を作成できる。  }  t:→次のアイドレス = なし } } #image(水竜・完成版b.png,width=590,height=720,title=設定絵) 型式番号:SAA-2 機体名称:ソットヴォーチェ 設計者:須藤 鑑正     :鈴藤 瑞樹 艦種 :対RB戦闘用潜水艦 全長:43m 全幅:11m(胸びれ除く) 主機:パラジウムリアクター(イージス方式) ソーラー発電型電動機 最大速力:40kt 標準武装:533mm魚雷発射管×4 長距離魚雷『長槍』(ロングランス) 超高速魚雷『嵐』(テンペスタ) パイロット:1名 他にコパイロット2名を必要とする 所属:詩歌藩国作戦部 就航年月日:10808002 **■水竜開発に到った経緯(表) なぜ、水竜を開発するのか。 これにはひとつの厳然たる事実が関係している。 すなわち、帝國には水中専用機がなかったのだ。 その局所的すぎる使用用途ゆえに各国で開発を後回しにされ、ついにはシーズンオフとなっている。 しかし思い出していただきたい。無名世界観には水中を舞台とした戦いがあったことを。 絢爛舞踏祭である。 火星の海を戦場とした世界において、水中戦闘を得手とするラウンドバックラー(RB)が数多く存在している。 テラ領域においてはいまだ浸透していない技術であり、これを保有する藩国は限られる。 RBが敵として出現した場合、犬猫を合わせても対抗できる戦力はほとんどないのが現状なのである。 シーズン2の主戦場は宇宙とされている。 しかし、だからこその水竜開発とも言えた。 備えあれば憂いナシとは、たいていの場合に通用することわざである。 その『たいていの場合』にはNWの未来すらも含んでいるはずだと、私は思う。 ---- **■水竜開発に到った経緯(裏)  その日、詩歌藩国は珍しく暑かった。 太陽からふりそそぐ爽やかな光が、夏がやってきたことを告げていた。 冬の間は分厚い氷が張っていた湖も、今は水浴びをする人々でいっぱいだった。 そんなのんびりとした様子を、政庁の最上階にある一室から見守る一人の男がいた。 詩歌藩国を治める王、九音・詩歌である。 やたらと真剣な表情で、まっすぐに湖へと目を向けていた。 「藩王さまー、書類をお持ちしましたよ」 側近の一人が執務室へと入ってくる。 しかし詩歌は返事はおろか、振り向くことすらしなかった。 この人物、考え始めると際限なく思考の中へと没頭するクセがあり、ほっておくと黙ったまま何時間でも同じ体勢のままでいることがよくある。 そして、そんな時はたとえ地震がきて火事がおきて核を落とされてオーマが攻めてきて世界の危機がせまっていてもまったく気がつかないのであった。 またかぁ、とつぶやきながら側近は書類を机に置いた。 傍に仕えているだけあってこの人物の奇癖にも慣れっこだった。 そのまま退室しようとしたところで 「よし、決めた」 ちょうど考えがまとまったのか、詩歌が顔を上げて語り出した。 「キミ、竜の持っている適応能力のことを知っているかな?」 側近は、気づいてたなら声くらいかけてくれてもと思ったが口にしなかった。 言っても無駄であることはすでに学んでいた。 「はぁ、たしか竜が生活する環境にあわせて自分の体を作り変える能力のことだったと思います。砂漠に住むなら砂漠仕様といった具合に」 「その通り」 正解だ、というように小さく笑う詩歌を見て側近は、やっぱりきれいだなーと思った。 この男なのか女なのかも判然としない藩王には、それゆえの不思議な魅力があった。 「この国の厳しい冬を体験した彼らが、寒冷地仕様へと自己進化したことは研究結果からも明らかだ」 指をくるくるとまわしながらゆっくりと歩き始めた。側近の経験からいえば、これはなにか面白いことを語りたくてしょうがない時のしぐさだ。 「もし、もしもだ。彼らが水中で生活することになったとしたら、どうなると思う?」 「それはやっぱり、おさかなみたいな体に進化するんじゃ」 その返事に満足したようにうんうんとうなずく詩歌。 「と、いうことだ。あとはわかるね?」 「……つまり、ちょっと見てみたいから研究部に連絡して水竜を開発せよと?」 「む。んー、まぁそういう面もたしかにあるが」 詩歌は腕を組んで上を見上げたあと、夢を見るようににっこりと笑った。 「せっかくの夏だ。彼らと一緒に海を泳げたら楽しいじゃないか」 側近は想像してみて、ちょっといいかもと思った。 #image(hikaku3.png,width=596,height=447,title=バカンス?) 竜のでっかい背中に乗って海へ出られるなんて、そうはできない経験だと考えた。 「で、開発したら輸送船にして使おう。輸送にかかる費用もばかにならんしな」 「何言ってんですか、そんなの議会じゃ通りませんよ」 詩歌はえー、という顔をしたが、側近の言葉は事実だった。 設定国民によって運営される国民議会。 できるだけ広い意見を取り入れられるようにと設立された組織である。 田舎にある国だけあって普段はけっして好戦的な人々ではなかったが、たび重なる戦争による不安から戦力の増強を求める声は多くなっていた。 水竜の開発についても、輸送船などではなく兵器として開発すべきだという意見がでるのは間違いなかった。 「まぁ、しかたがない。そのあたりは開発部に一任する。どうせ戦争が終われば不要になるんだし、シーズン2が終わったら武装解除すればいい」 開発した後の予定まで決めてすっかり笑顔の詩歌だった。 「またそんな適当なこと言って。その竜に国を滅ぼされかけてるのをお忘れですか」 ふと、詩歌は目を細めた。透き通った空のような瞳が側近をとらえる。 どきりとした。一瞬で藩王の雰囲気が変わっていた。 「この国には多くの神々がいる。精霊や妖精もだ。なぜかわかるかい?」 「えぇと、それは」 思わず目をそらす。冷や汗が噴出して止まらない。 心臓がバクバクと脈を打ってうるさいくらいだった。 「この国は、許容の国だからだ。この国に住みたいという意思がある者すべてを許す。門地、宗教、人種、歴史に関わり無く、争うことなく穏やかに過ごすことができる。私がそうさせる。この国にいるすべてのものは私の子であり、兄弟であり、友だ。例外はない」 ふいに重苦しい空気が消えた。 「だからね、竜は私の友人だ。敵ではない。話せばきっとわかってくれると、信じているよ」 顔を上げたそこには、さっきまでのにこやかな笑顔を浮かべた詩歌の姿があった。 **■開発コンセプト 水中専用機を開発するにあたり ・敵が行動を開始する前に、先手をとれること(高AR) ・移動にARを使わずに敵を攻撃する手段(超遠距離攻撃) 上記の二点は必須とされた。 これらは対RB戦闘を考慮した結果である。 ***■RBとは? RBとは、惑星上、中でも海中での戦闘を目的に開発された人型機動兵器である。 絶対物理防壁によって水抵抗を極減させ、反物質ジェットによって水中を時速500km以上のスピードで推進する。 航空機・潜水艦・あらゆる陸上兵器を上回る機動性と戦闘力を誇る、天地と海で最強の機動兵器だ。 弱点といえるのは ・絶対物理防壁のエネルギー限界のため、実用稼働時間2時間と極端に短いこと ・絶対物理防壁の性質上、光学系、電波系、磁場系、重力系、音波系のセンスをシャットアウトする必要があり、勘と先読みで敵の位置を予測するしかないこと 以上の2点である。 弱点がなくはない、とはいえ絶対物理防壁による絶大な防御力と機動力はおおきな脅威であるといえるだろう。 図書館藩国戦でNWに敵として出現したことからも、この脅威に対抗できる兵器の開発は必須といえた。 ***■対RB戦闘を意識した機体開発 『RBを倒すには、RBを当てるのが最善である』 ある意味で当然の結論である。 RBは絶対物理防壁によって水抵抗を極減させ、反物質ジェットによって水中を時速500km以上のスピードで推進する、化け物と呼べるシロモノである。 航空機・潜水艦・あらゆる陸上兵器を上回る機動性と戦闘力を誇る、最強の機動兵器なのだから。 だが水竜をRBとして開発することはゼッタイにできなかった。 なんともトホホな理由だが、詩歌藩にはRBを乗りこなせるパイロット系アイドレスがなかったのである。 この問題を解決するべく様々な研究がなされ、非RBかつ高AR、さらに遠距離攻撃可能な機体が開発されることとなった。 ***■遠距離攻撃能力の強化 水中戦で距離をとった攻撃となれば当然、魚雷である。 機動力で圧倒的に差のあるRBを倒すべく二種類の魚雷が搭載された。 ・長距離魚雷『長槍』(ロングランス)  第六世界で使用されていたものとほぼ同型の魚雷。 射程が伸びた分、破壊力が既存の魚雷より劣るものの 小型であるゆえに搭載数が稼げるため、SAA-2には多数装備されている。 ・超高速魚雷『嵐』(テンペスタ) SAA-2が持つ最大の武器。 ロケット推進で時速100ノット以上の速力を叩き出す大型魚雷。 強力ではあるが搭載数はロングランスの四分の一程度しかない。 対RB戦闘法として、先手をとり無数の長距離魚雷を打ち込む飽和攻撃策が採用された。 まずロングランスで敵の足を止め、テンペスタでとどめを刺す。 これがSAA-2の基本的な運用方法となる。 この固定砲台的運用は、シミュレーションではRBの絶対物理防壁でも防げない(全方位から衝撃波がくるため360度の展開ができない絶対物理防壁では防御できない)と出ており十分に有効であるとされていたが、問題もあった。 一度の攻撃で大量の魚雷を消費するため、2回ないし3回の全力射撃で撃ち止めになるという弱点があったのだ。 また近距離戦や側面からの攻撃は想定されていないため、先手を逃すともろい面がある。 撃ちもらした敵機を迎撃する迎撃機(インターセプト)の開発は、間に合っていない。 ***■高ARを確保するために はやい機体をつくればARは確保できるが、それでは攻撃力が落ちる。 けたはずれな量の魚雷搭載を前提としたことや、絶対物理防壁の使用を制限されたことから速度以外の部分で勝負する必要があった。 そうして考えられたのが航続時間の延長という発想である。 &bold(){・パラジウムリアクター} パラジウムをもちいた常温核融合炉。 高出力で静粛性の高い新機軸のジェネレータ(電源)であり、 既存の核分裂炉と違い連鎖反応がなく、安全性が高い。 また自然界に存在する重水素を活用するため安価に使用できる装備となっている。 &bold(){・酸素精製装置} パラジウムリアクターからの有り余る出力を生かして海水を電気分解し、 艦内へ新鮮な酸素を提供する装置。 これにより水中活動限界が大幅に伸び、長大な戦闘時間の確保に成功した。 &bold(){・ソーラー発電装置} SAA-2の外装には太陽電池素子が織り込まれており、ごく浅い水面下においては発電が可能となっている。 発電素子は腹部を除いた全身に存在し、可視光を吸収する性質上、黒く見える。 ちなみに水中で発電素子を長期間使用できるだけの技術はないため、約1~2ヶ月ごとに生え変わっている。 上記の技術を使用することにより、乗組員の食事などを度外視すれば100時間以上の戦闘航行が可能となっている。 ***■開発計画と外観設定について 竜の開発は通例として、動物をモチーフとして行われる。 これは竜が進化系統図上にある生物の形状を模倣する習性からきている。 何体かの地竜を水辺に放置し、自然に進化するのを待つ。 外殻を形成したものの中から最適なものを選び出してデータを解析、精製する。 そうして完成した成長プログラムを他の地竜へと埋め込むのである。 今回の水中機開発についてはクジラ型をもちいることとなった。 前述した要求性能を満たすための選択だった。 大型化が、必要だったのである。 膨大な量の魚雷を積み込むこと、そして開閉可能な発射口の確保。 これらを同時に満たそうとした時、クジラのもつ大きな胴と巨大な口腔は好都合だったのだ。 また複殻式の外装を採用したため、外殻と内殻の間にあるスペースに燃料等を積み込むことができ搭載量の増加に貢献している。 実際に開発された機体は、潜水艦と呼ぶよりは本物のクジラに近く見えた。 前面が太く、後ろにいくほど身が細くなる。 真上から見ると水滴に胸びれと尾びれが生えたような形をしており、いわゆる涙滴型と呼ばれる水中航行に適した形をしている。 下顎を下げて大きく開いた口の中には4基の魚雷発射管。 実戦ではその口辺から盛大に水雷を吐き出すことだろう。 ソーラー光発電をする関係で全身が黒く、腹部のみが白い。 眺めている限りはのんびりと海を泳ぐシロナガスクジラそのものだった。 推進方式については、ハイスキュード・スクリューを装備してはいるが胸ひれと尾ひれのみを使った魚類式推進も可能であり 速度は半減するが静粛性に優れた移動も可能となっている。 上陸の際は生成した外殻を脱ぎ捨てて地竜形態へと戻ることができる。 逆に水竜形態へと戻るには外殻形成に2週間ほどの時間がかかるため、緊急時以外での外殻廃棄はしないように運用された。 サイズ比較用資料 #image(比較b.png ,width=591,height=489,title=比較絵)

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