Q9.0530時、南雲長官が山口少将の意見具申を採用しなかったのは何故か(その1)
A9.0530頃B-17が二航戦を撮影した写真がある。それによれば甲板上には攻撃隊は整列していない。
この状態から発艦準備を完了させるには40分は必要。現実的に即時発進は不可能である。
(註1)写真については、『歴史群像(55)日米空母決戦ミッドウェー』(学研)p64、p136
『写真太平洋戦争第3巻』(光人社NF文庫)p190を参照のこと。
(註2)よく見ると、蒼龍飛行甲板艦尾付近に1機・飛龍飛行甲板中央付近に1機確認できる。
おそらく直衛の零戦と思われる。
(註3)「攻撃機などの兵装が完備していても、これを格納庫から飛行甲板に揚げ、攻撃隊の発進準備を完成する
のにはまず40分は必要であろう」 (『戦史叢書(43)ミッドウェー海戦』)p289
蒼龍(0521~0524時におけるB-17の攻撃。艦尾に1機確認できる)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Soryu_under_B-17_attack.jpg
飛龍(後部甲板に「ヒ」の識別記号。飛行甲板中央に1機確認できる)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Hiryu_f075712.jpg
Q10.0530時、南雲長官が山口少将の意見具申を採用しなかったのは何故か(その2)
A10.第二次攻撃隊の制空隊(零戦)のほとんどは、母艦直衛に上がって対空戦闘中である。
護衛なしの艦爆隊で敵空母を攻撃しても、戦果は期待できない。
(参考1)珊瑚海海戦一日目には、護衛なしの薄暮攻撃を実施した。(編成は艦爆12・艦攻15の計27機)
しかし、米戦闘機の奇襲に遭い、未帰還機9(艦爆1・艦攻8)の損害を出した。
薄暮ですら、この大損害なのだから、昼間攻撃では到底有効な打撃は与えられないだろう。
During these battles, it became clear that attacks without fighter escort
amounted to suicide.
これらの戦闘(珊瑚海海戦)を通して、護衛なしの攻撃隊は結局自殺行為になることが明らかになった。
(『Grumman F4F Wildcat』Coral Sea)
http://users.skynet.be/Emmanuel.Gustin/history/f4f.html
米側の認識も同じである。
(参考2)ミッドウェー海戦において、単独で南雲機動部隊に攻撃してきた米空母雷撃隊は壊滅した。
護衛なしの攻撃に躊躇したのは、間違ってはいない。
(註)VT-8(ホーネット) 15機中全機撃墜
VT-6(エンタープライズ)14機中10機撃墜
VT-3(ヨークタウン) 12機中10機撃墜(2機未帰還)
計41機中35機撃墜。
(参考3)0530時点での米空母情報は、利根四号機の「ミッドウェーヨリノ方位10度・240浬」(0428時発信)のみ
であり、 実際の位置より北へ100浬近くずれている。よって、即時発進しても会敵できない恐れが大である。