筑摩一号機2

Q.ミッドウェー海戦における第五索敵線(77度)の筑摩一号機の行動について、
  途中で米艦爆(SBD)と遭遇し、交戦しながら報告しなかった。

  のは問題ではないのか。


A. まず、日米双方の公刊戦史に該当の記録は見られない。
 

ということで、まず、ヨークタウンの『アクションレポート』を確認してみますと、
http://www.ibiblio.org/hyperwar/USN/ships/logs/CV/cv5-Midway.html

「At dawn, ten VSB of VB5 were launched to search the Northern semi-circle
for a distance of 100 miles as a security search against surprise by enemy
carriers not previously located by our forces. This search returned at about
0830 with negative results and was landed on board after launching a six-plane
combat patrol of fighters.」

(日本語訳)
「黎明時、 VB-5の哨戒機が発進し、母艦の北側を半円状(進出距離100浬)に
捜索した。その目的は、不意に日本機と遭遇することにより、母艦の位置が明らか
になることを避けるためである。これらの哨戒機は、0830時(日本時間0530時)
に帰投したが、敵情は得られなかった。各機は、上空哨戒の6機の戦闘機が
発艦した後に着艦した」
 

ここで注目すべきは、「with negative results」
つまり、報告すべきような事態は「生じなかった」ことになる。

「午前4時30分(日本時間0130時)、空母ヨークタウンの甲板から、索敵機に
したてられたSBDが飛翔した。十機が一機ずつ、定められた方角に向かって
飛んだ。が、この索敵は日本機動部隊を直接発見しようという目的を持って
いなかった。

十本の捜索線は、百海里の半径を持つ半円を北の方角に向かって描いていた。
このとき空母は、自分たちの存在をまだ日本側にさとられていまいという確信を
持っていた。が、万が一ということもある。十機の索敵機には、敵空母部隊その
ものではなく、そこから発進してきた攻撃隊を発見するという任務が与えられて
いた」                              (『ミッドウェー戦記』)

アクションレポートの記述と一致しますね。
というか、アクションレポートをもとに書かれた文章であることが分かります。
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1245844940/456-457

 

 

<日本側では『実録太平洋戦争』(秦郁彦/著)に見られる。>

「水偵の索敵は目視によるため、通常300~1000mの低高度で、しかも
雲下を飛行することになっていたが、この日、都間機が進出するにつれて
進路上の雲は増大し、視界は低下して行った。

前日まで南雲機動部隊を米側の索敵網から保護していた不連続線の影響
と思われるが、北側ほど天候が悪く、南側および東側に行くほど好天だった
ようである。実際に都間機の北側を飛んだ第六索敵線の筑摩四号機は、
天候不良のため引き返している」(>>357

「それにしても、都間機のコースは直下の敵大機動部隊を見落とすほど、
悪い条件下にはなかったと推定されるが、同大尉が回想するように、途中
米哨戒機(ヨークタウンのSBD・プレストン少尉機)と遭遇して空戦したことに
気をとられ、あるいはそのため一時的にコースを外れたのが、見落とす原因
になったのかも知れない」
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1245844940/400
 

<米側では『空母ヨークタウン』(PatFrank/著・谷浦英男/訳)に見られる。 >
 

「太陽と共にウォリィ・ショート大尉の急降下爆撃機十機も上昇していた。
北方100浬の半円を、西から東に索敵する命令を受けていたのだ。だが、
ショート隊の全機がそれぞれ会敵したのは、敵の下駄ばきの水上偵察機だった。
ベン・プレストン少尉機は、その一機とからみ合ったが戦果を確認する時間は
なかった」
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1245844940/458

 

 

<秦氏の著述は『空母ヨークタウン』を出典としているのだろう。
しかし同書の記述だけでは、筑摩一号機と交戦したとは断定できない。>

よーく読み返してみると、この文章からは、
(1)米SBDが遭遇したのが筑摩一号機だとは断定できない。
(2)米SBDが遭遇した日本軍水偵は一機だけではない。

もしかしたら、公刊戦史編纂時の都間大尉への取材では、米公式記録に
ないという理由で触れられなかったのかもしれません。
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1245844940/459

 

 

<更にヨークタウンSBDの索敵圏から考えると、仮に筑摩一号機と接触したとしても、
それは復路(0430時以降)になり、0415時の兵装転換下令には影響しない。 >

[ミッドウェー海戦索敵図]
                           ┌─┐
                        ┌─┘  └─┐ヨークタウン索敵線
            ┏━┓     ┌─┘        └─┐(進出距離100浬)
            ┃  ┃  ┌─┘              └─┐
            V  ┗━│×0335(天候不良の為      │
               ┌─┘┃       引き返す)      └─┐
               │┏━┛                       │
            ┌─┘┃筑摩四号機往路                └─┐
            │┏━┛                              └─┐
         ┌─┘┃↑                      0500┏━━━×0430
      ┏━│━━×0330               ← ┏━×━┛     ┃ │
   ┏━┛┌┘           0530     ┏━━━┛           ┃ └┐
       │               ×━━━┛(ヨークタウン索敵機発進)  ┃   │
       ───────────────☆───────────-----------------------┃----┘
       筑摩一号機復路┏━━━┛    0130       ┌┘        ┃
        ←  ┏━━━┛             ←  ┌──×0307      ┃
     ┏━━━┛                ┌───┘                ┃
                     0356×─┘                       ┃
                         └─×0402(攻撃隊発艦)           ┃
                  米TF16航路 └─┐                      ┃
                               └─┐                   ┃
                 (利根機をレーダーに捕捉)×0428        ┏━━━━×0400
                                  └┐   ┏━×━━┛
                                ┏━━━━┛  0330
                        ┏━━━━┛   │↓
         0300   ┏━━━━┛           └┐
        ┏━×━━┛                     └─×0506(攻撃隊進撃開始)
 ━━━━┛   →                            │
                                         V
 

http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1245844940/466-467

確認してもらいたいのは、以下の一点だけです。
「仮に筑摩一号機がヨークタウンSBDと遭遇したとするならば、それは復路
(0430~0530)のことである」

実は往路は索敵圏外になるので、遭遇することはない。
つまり、>>120の指摘(筑摩一号機が敵艦爆との遭遇を報告していれば・・・)
は、意味をなさない。利根四号機より後になってしまいますから。
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1245844940/468

 

 

<また、筑摩四号機(第六索敵線・54度)と遭遇した可能性もある。>

そして>>459の通り、SBDが遭遇した水偵は複数あることがうかがえるが、
これは、第六索敵線の筑摩四号機であると予想される。
同機もまた、敵艦爆との遭遇を打電しなかったのだろうか?
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1245844940/469

 

<よって、都間大尉の責任にすることは過早であると考えられる。>

 

 

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最終更新:2012年11月27日 22:41
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