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ASA 17-004-2001 拷問 - 中国で広がる災厄 - 行動の時

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次のアムネスティ文書のうち、目次と序文の邦訳を掲載します。
AI Index ASA 17/004/2001
Torture - A Growing Scourge in China -Time for Action
原文(英文)はこちらにあります。
http://web.amnesty.org/library/Index/ENGASA170042001?open&of=ENG-CHN

『拷問 - 中国で広がる災厄 - 行動の時』
(AI Index ASA 17/004/2001)

目次
1. 序文
2. 拷問のパターン:加害者、場所、被害者
 2 - 1. 尋問中に行なわれる「自白を強要するための」拷問
 2 - 2. 「厳打」および他のキャンペーン期間中に起こる拷問 
 2 - 3. 範囲が広がりつつある、臨時雇用の警察や「護衛」、「警備」担当者による拷問
 2 - 4. 税金、罰金、未払いの借金を取り立てるための拷問  
 2 - 5. 売春婦と見なされた者およびその客と見なされた者に対する拷問と虐待
 2 - 6. 「盲流」または「三無人員」と見なされた者に対する拷問と虐待
 2 - 7. 計画出産政策の執行時に起こる拷問  
 2 - 8. 精神病者への拷問および精神病院の悪用  
 2 - 9. 刑事拘禁および行政拘禁中に「教育」や罰として被拘禁者に行なわれる拷問  
3. 拘禁中の死亡 - 究極的な保護の失敗  
 3 - 1. 新疆ウイグル自治区の例  
 3 - 2. チベットの例  
 3 - 3. 法輪功の例  
4. 拷問を犯罪とする法律
4 - 1. [刑法]第247条:自白を強要するための拷問、および暴力により証言を強要すること
  4 - 1 - a. 制限された定義と第247条[適用]の除外
4 - 2. [刑法]第248条:囚人に対する虐待「虐待被監管人」
  4 - 2 - a. 制限された定義と第248条[適用]の除外
5. 司法制度における拷問を防止するための手段
5 - 1. 拷問によって得られた証拠を排除することの不徹底
5 - 2. 黙秘権と自身を有罪にすることを避ける権利の不在
6. 被拘禁者の保護に関する主要な弱点
 6 - 1. 起訴・裁判・要請なしの長期拘禁
 6 - 2. 医療検査ならびに医療処置 - 実施の際の不備
 6 - 3. 家族ならびに法的弁護人へのアクセス - 制限されていて任意的で条件付き
 6 - 4. 弁護士への干渉
7. 拷問に対する調査と告発の実態
 7 - 1. 拷問の容疑への司法の介入の欠落
 7 - 2. 内部の調査および監督の不備
 7 - 3. 外部の監視 - メディア
 7 - 4. 拷問を告発する人への報復
8. 拷問と死刑
9. 強制送還禁止の義務
10. 勧告


1. 序文

1998年5月15日、湖南省春華鎮出身の農民、周建雄(音訳:Zhou Jianxiong)(30歳)が、拷問により死亡した。5月13日に拘束された彼は、妻が許可なしに妊娠したという疑いをかけられており、彼女の居所を聞き出そうとする村の計画出産部門の担当官たちによって、拷問を受けたのである。周は、逆さに吊るされ、何度も鞭で打たれ、棍棒で叩かれ、タバコの吸いさしを押し付けられ、焼きごてを当てられ、性器をもぎ取られた。(注1)

このような恐ろしい虐待事件は、これだけに留まらない。毎年多くの人が、中国で拷問により死んでいる。また、拷問による死を免れても、心身の後遺症に長期間苛まれている。

 被拘禁者や囚人への拷問や虐待は、中国では広く組織的に行なわれている。このような虐待は、警察署から、看守所[留置所]、監獄、行政による「労働教養所」[日本では「労働矯正所」と訳されることが多い]、他所からの出稼ぎ者を収容し送り返す「収容送還センター」、薬物中毒者を強制的に社会復帰させる施設まで、ありとあらゆる国家の施設で報告されている。また、拷問は、しばしば、「居住監視」や汚職容疑の公務員を取り調べる「隔離審査」の期間中など、[刑法上]「拘禁でない」管理につきものの虐待として報告されている。

 これらの虐待は、秘密裏に行なわれているだけではない。公衆の面前で時として恥をかかせたり見せしめにするつもりで日常業務の中で担当官により行なわれている。これらの虐待は、計画出産担当官から徴税官にいたる、刑事司法制度とは無縁の担当官の間で幅広く行なわれている。

 中国の刑法によれば、拷問や虐待は、ある特定の条件のもとでしか刑罰の対象とならない。非常勤や嘱託、警備補助員のような公務員に準じた扱いを受ける者は、特に拷問をしても起訴されることはない。実際には、法により犯罪として責任を追及され得る者でさえも、しばしば起訴を免れたり、軽い刑罰を受けるのみで済んだりしている。

 最近では、当局の方針に疑いを持ったり、権利を主張しようとして、担当官と言い争いになっただけで拷問の犠牲になる人も多い。当局は罰金や税金を集めるために拷問を使用している。腐敗した担当官が、恐喝や[証言の]強要に拷問を利用する例も、しばしば報告されている。出稼ぎ者、特に若い女性が、しばしば餌食になりやすい。

 拷問の報告が増えるのは、特定の犯罪に対する定期的な取り締まり強化キャンペーン「厳打」に際して、「速やかに成果をあげる」ためなら「あらゆる手段」を講じても良いと言うお墨付きを、警察が明確に与えられた場合である。

 拷問や虐待は、非合法化された法輪功への弾圧のような政治色の強いキャンペーンで、広く行なわれている。被害者やその家族より用意された詳細な証言に応えるというめったにない機会に、当局は事実と反する声明を出したり、誤った行為を絶対的に否定したりしてきた。[被害者や家族による]申し立てが完全に調査されたことを示す事実は何もない。当局は、このように無関心であるなら、国家の優先するキャンペーンの最中に、拷問や虐待が行なわれるのを黙認しているのではないかと見なされてもしかたがない。政府は拷問に誠実に対処していない、という疑いを抱かせるものである。全ての市民は、拷問から守られなければならない。

 拷問は、重要なケースを含むあらゆる被拘禁者に対する尋問の最中に行なわれている。拷問や虐待は、また、囚人が刑事上や「行政上」の刑に服している監獄や労働教養所でも、日常的に行なわれている。強制労働と「罪の自認」は、刑罰の根幹をなす方針で、囚人がしばしば虐待される環境を作り出している。特に、厳しい処遇が、一般の刑事囚や、「矯正に反抗している」と見なされた政治囚に行なわれている。看守は、しばしば、選んだ囚人や「牢名主」に、懲罰の任務をさせているが、彼らは、しばしば看守の指示を得て、日常的に他の囚人の虐待に責任を負うべき者たちである。

 近年、中国のメディアは、拷問や虐待の事件を暴き出すのにますます重要な役割を果たしてきている。いくつかの重要な新聞は、当局の調査を待たずに事件を報道している。被害者と家族が何年にもわたり担当官の妨害と無関心に対して裁判で争っているいくつかの事件は、メディアで報道された後、解決している。警察による権力濫用や、市民に対する法的保護の不備や、ある種の拘禁への恐怖について、議論が広がっている。

 この報告書は、ここ数年の間にアムネスティ・インターナショナルが把握した中国における何百もの拷問のケースから代表的な事例を集めたものである。本書は、なぜ中国で拷問が続くのかを検討し、拷問犯罪の起訴、被拘禁者の保護の法的枠組みを分析し、法と実際における欠陥を指摘している。本書は、国際的な基準にのっとり、拷問を根絶するために必要な改革についての詳細な勧告を提示している。

注1: この事件の詳細については、以下の第2章第7節を参照。

第2章『拷問のパターン:加害者、場所、被害者』以下は、中国人権サイトhttp://blog.memo-mail.jp/chai/?eid=3に掲載されています。

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