蛮慕酒
語源
南宋の撫咤(ぶた)将軍は蛮族を恭順させるために彼らをもてなす宴をひらき、
自らが所蔵していた名酒を惜しみなく振舞った。
その深い
もてなしの心に感動した蛮族たちは撫咤将軍を大いに慕い領地は平定された。
撫咤将軍は蛮族をも慕わせる酒、すなわち蛮慕酒(ばんぼしゅ)を持つ男として、
宋国のみならず金国にまで名を轟かせたという。
この故事にならい、蛮族をも慕わせるほどの手厚いもてなしや豪勢な料理・酒のことを、
「蛮慕酒」と呼ぶ習慣がうまれた。
西洋にも広く知られた故事であり、フランス語における食道楽を意味するバンボシュ(Bamboche)の語源。
影響
日本においても「蛮慕酒を用意する」「蛮慕酒を尽くして接待する」などの言い回しは
江戸中期においては既に一般的なものになっていたという。
現在の会社組織における総務部の「蛮慕酒係」に相当する「蛮慕酒番」などの設置も幕府により推奨されており、
各大名の参勤交代時などにおける重要な役割を担ったとされる。
また一方において撫咤将軍は見事に発達した肉厚腹の人物(=美腹公)としてもよく知られており、
もてなしの宴には撫咤将軍の腹を連想させる脂の多い豚バラが最も縁起が良い料理とされるようになった。
中国においてはその種の宴では必ず大量の豚バラ料理が供される。
日本においても
豚バラを接待に使う風習は定着しつつあり、
沖縄県では
焼肉ステーションバンボシュなどに代表される豚バラを提供するレストランが特に人気である。
日本語で撫咤腹=ぶたばらと読めるのはもちろん偶然の一致に過ぎない。
『知っておかなきゃ恥ずかしい接待のアレコレ』(民明書房刊)より
最終更新:2012年01月15日 17:53