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猿喰はさみSS・イラスト」(2011/11/05 (土) 19:38:35) の最新版変更点

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**イラスト #image(sk001.jpg,width=100,height=100,http://www10.atwiki.jp/c-stock?cmd=upload&act=open&pageid=68&file=sk001.jpg) #image(sk002.jpg,width=100,height=100,http://www10.atwiki.jp/c-stock?cmd=upload&act=open&pageid=68&file=sk002.jpg) #image(sk003.jpg,width=100,height=100,http://www10.atwiki.jp/c-stock?cmd=upload&act=open&pageid=68&file=sk003.jpg) **SS **猿喰はさみ初登場SS ――高すぎるコミュ力は、もはやコミュ力ではない。 末永めしあ(まつなが めしあ)は今日も上機嫌で希望崎学園に登校する。 学生鞄と愛用の杖、カールした黒髪を揺らしながら。 その顔は期待と喜びに満ち溢れ、足取りはタンポポの綿毛のように軽やかだ。 なぜなら、愛する隣人たちと会えるのが楽しみだから。 「おはよう御座います。今日も良いお天気ですね。」 前方の杖をついた老人へ声をかける。 例え学生でなくとも、知り合いでなくとも、彼女は分け隔てなく挨拶をする。 彼女にとっては地球上の全ての人が親友なのだ。 「…ええ、どうも。おはようござ…ぁあああああああ!?」 老人は振り向きざまに叫び声を上げると、歩道に尻餅をついて倒れこんでしまった。 もちろん失禁している。 「ど…どうしましたか!?どこか、具合でも悪いのですか?」 めしあが慌てて老人を抱き起こそうとする。 「ぐ…具合だって!?ひぇえええええええええええええええ!!」 腰の不自由そうな老人はそう叫ぶと、杖を投げ捨て、猛スピードで歩道を駆け抜けていった。 「どうしたんでしょうか…。」 老人の腰も一息で治してしまう。まさに現代の奇跡! めしあにとってこの程度のミラクルは日常茶飯事である。 ◆ ◆ ◆ ・希望先学園校門 「うわあああぁぁ!!なんだあれは!ば、化物だあああぁぁ!!」 「こっちに来るな!来るなあぁぁ!!」 投げつけられた石が体に当たる。 「あらあら、みなさんおはようございます。」 めしあに大した防御力はないが、体力だけは普通の人間よりも高い。 この程度の攻撃は、めしあにとってあいさつにすぎない。 めしあは手を振り答える。 「うふふ、また会えてうれしいなぁ。おはようございまぁす。」   「さて、私の教室はどこでしたっけ…。まあ、好きなところに入りましょう。」 めしあは自分の年齢がわからない。 家はあるが、どこで生まれどこで育ったのかも覚えていない。 そのような事は、彼女にとって瑣末なこと。 瑣末なことをいちいち覚えていられるほど、めしあは記憶力が良くなかった。 ◆ ◆ ◆ ・教室 適当な教室を見つけて入る。 「――あ、めしあちゃん。」 「あら、寅貝さん!」 ひさしぶり!と寅貝きつねに抱きつくめしあ。 きつねはそれを抱き返した。 「寅貝さん久しぶり!あなた、ここのクラスだったのね。」 「うん。ふふふ。めしあちゃんは、未だに自分の教室が決まっていないんだねぇ。」 既に他のクラスメイトは、めしあが入室した時点で全員退避している。 「相変わらず凄いコミュ圧だね。常人には耐えられそうにないや。」 「そおなのかしら…?」 「みんな、おはよう。」 担任がガラリ、と扉を開けて教室へはいってきた。 「…………!」 めしあを一目見るなり、ブクブクと泡を吹いてそのまま床に倒れこむ。 「きゃああ!大変!大丈夫ですか??」 「――おっと、めしあちゃん。これ以上君が近づいたら、本当に廃人になっちゃうよ。」 僕にまかせて。ときつねが携帯電話をとりだす。 保健室へ連絡しているらしい。 寅貝きつねは、めしあとまともに話せる数少ない人間の一人だ。 地球上にはきつねとめしあの他に、人類最高クラスのコミュ力を持つものが10人おり、 彼ら12人はまとめて『十二コミュ支』と呼ばれている。 めしあのコミュ圧に耐え、会話ができるのは現時点で十二コミュ支のみである。 「わたくしが近づくと、時々あんな事が起こるんです。何故かはわからないけれど…。」 あまりのショックに、めしあは涙目になっている。 「…ふうむ。未だに驚異的なコミュ圧を制御しきれていないんだね。かわいそうに。」 ◆ ◆ ◆ ・児童文学研究会 「なーるほどー?それで、自分のところに来たんだねっ。」 うす暗い部屋。 ここは、手芸部のすぐ近く、誰も近づかない場所にひっそりとある児童文学研究会の部屋だ。 会員は今、きつねとめしあの前に、机を挟んで座る女子―― ――猿喰はさみ(さるばみ はさみ)一人だけである。 「そうなんだ。コミュ力の制御と言ったら、はさみちゃんが適任かなって思って。」 「うんうんー。その考えは、正しいねー。実に。正しいねー。」 えへへと笑いながら立ち上がり、腰に手を当てるはさみ。 「なにせ!十二コミュ支のうちで、自分ほど人間嫌いな者はいないからねっ!」 本当にいないんだからねっ。っとVサインを繰り出す。 その仕草は実に友好的で、とても人間嫌いには見えないが、 これも猿喰はさみの世界レベルのコミュ力ゆえだ。 彼女が人を信頼することも、好きになることも稀である。 十二コミュ支といえど、本当に信頼されているかどうか怪しいくらいだ。 孤独を好む彼女は、自らのコミュ力を完全に抑制する術をそなえている。 「まぁ、猿喰さん。人間がお嫌いなんですかぁ…?」 また、泣きそうな顔をするめしあ。 コミュ力の低い者なら、この顔を見るだけで脳震盪を起こすだろう。 「いやいやいやいやいや、お二人さんの事は大好きだから、御心配なさらずだよー。 えっへへ!――他ならぬ、めしあ君のためだもの。自分一肌もニ肌も、 いくらでも脱ぎましょうぞー!」 えいえいおー! ◆ ◆ ◆ 「じゃあ、めしあ君。自分のやってみせた通りに、できるかなっ?」 「はい…やってみます。」 めしあは立ち上がると目を伏せ、脱力した。 数秒の間。 ――――フッ 場の空気が変わる。 驚く二人。 「――めしあ、ちゃんの…コミュ圧が…。」 「――消えた…っ!?」 ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド 目を見開くめしあ。 「………あら、何を見ているのかしら?」 ―――――――――――――――ぞわぁっ とてつもなく嫌な悪寒が二人の体をかける。 「…めしあ、ちゃん?」 「気安く名前を呼ばないで。屑。」 「―――――――――!」 冷徹な、感情のこもらない目が二人を見下ろす。 ――これが、コミュ力のゼロ地点突破! この数秒の間に、めしあは己のコミュ力を「反転」させることに成功したのだ。 「す…凄い!」 「これほどのコミュ制御を、ものの数秒で…!やはりめしあ君は、世紀の天才だ…!」 「何を言っているの、ふざけないで頂戴。あなた達。死になさい。」 めしあの眼からは、完全に光が消えている。 一切の友好的態度を受け付けない「絶対」の拒絶。 「何か…ゾクゾクしてきた。」 「うん…僕も。」 アブノーマルな二人であった。 ◆ ◆ ◆ 「くすん…くすん…。ごめんなさい、二人とも…。」 コミュ制御に成功したと思われためしあだったが、 それも1分ほどしかもたなかった。 元に戻っためしあは崩れ落ちると、泣き始めてしまった。 「いやいや謝らなくていいよー!めしあ君、凄かったよっ!すごく凄かった!」 「うん!僕も興奮したし。あんな冷たい目を向けられたのって初めてだよ。」 「お二人にあんなひどい事言うなんて…、わたくし、自分が信じられません。」 めしあはなかなか泣き止まない。 二人は、嫌な予感がした。 ――ブワァ!! とたんに、凄まじいコミュ圧が二人を包み込む。 間違いない。 彼女の魔人能力『黒の仔羊』が発動しそうなのだ。 めしあには謎が多い。彼女の魔人能力の内容も、二人は知らない。 しかし、めしあほどのコミュ力魔人。その能力ともなれば、 とにかく大変な事になるのは目に見えている。 普段飄々としている二人であったが、これにはさすがに焦った。 「ああー、めしあちゃん…ちょっと落ち着いて?」 「めしあ君、そんなに自分を責めないでっ!よしよし、よしよし。」 「くすん、くすん…うう~ごめんなさい。わたくし、二人を困らせてばかり。」 確かに困っている。 めしあはぼろぼろと涙を流しながら二人を見上げた。 「そういえば、わたくしは昨日も人を一人殺めてしまったんです。 どうして死んでしまったのかわかりませんが、たぶんあれはわたくしのせいなのです…。」 「あ、その話は聞いたかも。」 きつねの情報網に、その話は引っかかっていた。 そして、何かを思いつく。 携帯を取り出すきつね。 「僕も忘れてた。めしあちゃん、ツイッター登録したんだって?」 顔を上げるめしあ。 「え、そうなんだー?めしあ君。」 「えっと…そうなのです。実は…。」 めしあはツイッターに登録すると、持ち前のコミュ力を生かし、 その日のうちに1京ものアカウントをフォローしたらしい。 これぞ惑星規模のコミュ力のなせる技である。 「…じゃあ、まだ誰にもフォローしてもらってないんだ。」 「そうなのです。…もしかしたら、みなさん恥ずかしがっているのかもしれません。」 もちろんそうではない。 めしあの驚異的コミュ圧は、電子機器をも介して人を遠ざけるのだ。 「むむむー。水臭いなぁ、めしあ君たら!真っ先に自分たちに教えて欲しかったよぉ!」 はさみが携帯を取り出す。 「…すみません、猿喰さん。みなさん、わたくしと違ってお忙しいようでしたから…。」 「ふふふ。とりあえず、僕らはめしあちゃんのツイッター、フォローしとくね。」 「本当ですか…!?わぁっ…!ありがとうございます!」 めしあの顔がパァッと明るくなる。 いつの間にか涙は消えていた。 ◆ ◆ ◆ にこにこと微笑みながら携帯の画面を覗き込むめしあ。 「うーむ。良かったねえ、きつね君。」 「うん。結果オーライかな?」 きつねとはさみ。曲者ぞろいの十二コミュ支の中でも、二人はかなりまともな方である。 十二コミュ支の面子は忙しく。なかなかめしあに構ってあげられないが、 まともにめしあに構ってあげられるのも、十二コミュ支以外にほとんどいないだろう。 果たして、めしあのコミュ圧に耐えられる魔人は現れるのだろうか。 できるだけ、めしあに構ってあげなければいけない。 嬉しそうなめしあの笑顔を見て、二人はそう思うのだった。
**イラスト #image(sk001.jpg,width=100,height=100,http://www10.atwiki.jp/c-stock?cmd=upload&act=open&pageid=68&file=sk001.jpg) #image(sk002.jpg,width=100,height=100,http://www10.atwiki.jp/c-stock?cmd=upload&act=open&pageid=68&file=sk002.jpg) #image(sk003.jpg,width=100,height=100,http://www10.atwiki.jp/c-stock?cmd=upload&act=open&pageid=68&file=sk003.jpg) #image(sk004.jpg,width=100,height=100,http://www10.atwiki.jp/c-stock?cmd=upload&act=open&pageid=68&file=sk004.jpg) **SS **猿喰はさみ初登場SS ――高すぎるコミュ力は、もはやコミュ力ではない。 末永めしあ(まつなが めしあ)は今日も上機嫌で希望崎学園に登校する。 学生鞄と愛用の杖、カールした黒髪を揺らしながら。 その顔は期待と喜びに満ち溢れ、足取りはタンポポの綿毛のように軽やかだ。 なぜなら、愛する隣人たちと会えるのが楽しみだから。 「おはよう御座います。今日も良いお天気ですね。」 前方の杖をついた老人へ声をかける。 例え学生でなくとも、知り合いでなくとも、彼女は分け隔てなく挨拶をする。 彼女にとっては地球上の全ての人が親友なのだ。 「…ええ、どうも。おはようござ…ぁあああああああ!?」 老人は振り向きざまに叫び声を上げると、歩道に尻餅をついて倒れこんでしまった。 もちろん失禁している。 「ど…どうしましたか!?どこか、具合でも悪いのですか?」 めしあが慌てて老人を抱き起こそうとする。 「ぐ…具合だって!?ひぇえええええええええええええええ!!」 腰の不自由そうな老人はそう叫ぶと、杖を投げ捨て、猛スピードで歩道を駆け抜けていった。 「どうしたんでしょうか…。」 老人の腰も一息で治してしまう。まさに現代の奇跡! めしあにとってこの程度のミラクルは日常茶飯事である。 ◆ ◆ ◆ ・希望先学園校門 「うわあああぁぁ!!なんだあれは!ば、化物だあああぁぁ!!」 「こっちに来るな!来るなあぁぁ!!」 投げつけられた石が体に当たる。 「あらあら、みなさんおはようございます。」 めしあに大した防御力はないが、体力だけは普通の人間よりも高い。 この程度の攻撃は、めしあにとってあいさつにすぎない。 めしあは手を振り答える。 「うふふ、また会えてうれしいなぁ。おはようございまぁす。」   「さて、私の教室はどこでしたっけ…。まあ、好きなところに入りましょう。」 めしあは自分の年齢がわからない。 家はあるが、どこで生まれどこで育ったのかも覚えていない。 そのような事は、彼女にとって瑣末なこと。 瑣末なことをいちいち覚えていられるほど、めしあは記憶力が良くなかった。 ◆ ◆ ◆ ・教室 適当な教室を見つけて入る。 「――あ、めしあちゃん。」 「あら、寅貝さん!」 ひさしぶり!と寅貝きつねに抱きつくめしあ。 きつねはそれを抱き返した。 「寅貝さん久しぶり!あなた、ここのクラスだったのね。」 「うん。ふふふ。めしあちゃんは、未だに自分の教室が決まっていないんだねぇ。」 既に他のクラスメイトは、めしあが入室した時点で全員退避している。 「相変わらず凄いコミュ圧だね。常人には耐えられそうにないや。」 「そおなのかしら…?」 「みんな、おはよう。」 担任がガラリ、と扉を開けて教室へはいってきた。 「…………!」 めしあを一目見るなり、ブクブクと泡を吹いてそのまま床に倒れこむ。 「きゃああ!大変!大丈夫ですか??」 「――おっと、めしあちゃん。これ以上君が近づいたら、本当に廃人になっちゃうよ。」 僕にまかせて。ときつねが携帯電話をとりだす。 保健室へ連絡しているらしい。 寅貝きつねは、めしあとまともに話せる数少ない人間の一人だ。 地球上にはきつねとめしあの他に、人類最高クラスのコミュ力を持つものが10人おり、 彼ら12人はまとめて『十二コミュ支』と呼ばれている。 めしあのコミュ圧に耐え、会話ができるのは現時点で十二コミュ支のみである。 「わたくしが近づくと、時々あんな事が起こるんです。何故かはわからないけれど…。」 あまりのショックに、めしあは涙目になっている。 「…ふうむ。未だに驚異的なコミュ圧を制御しきれていないんだね。かわいそうに。」 ◆ ◆ ◆ ・児童文学研究会 「なーるほどー?それで、自分のところに来たんだねっ。」 うす暗い部屋。 ここは、手芸部のすぐ近く、誰も近づかない場所にひっそりとある児童文学研究会の部屋だ。 会員は今、きつねとめしあの前に、机を挟んで座る女子―― ――猿喰はさみ(さるばみ はさみ)一人だけである。 「そうなんだ。コミュ力の制御と言ったら、はさみちゃんが適任かなって思って。」 「うんうんー。その考えは、正しいねー。実に。正しいねー。」 えへへと笑いながら立ち上がり、腰に手を当てるはさみ。 「なにせ!十二コミュ支のうちで、自分ほど人間嫌いな者はいないからねっ!」 本当にいないんだからねっ。っとVサインを繰り出す。 その仕草は実に友好的で、とても人間嫌いには見えないが、 これも猿喰はさみの世界レベルのコミュ力ゆえだ。 彼女が人を信頼することも、好きになることも稀である。 十二コミュ支といえど、本当に信頼されているかどうか怪しいくらいだ。 孤独を好む彼女は、自らのコミュ力を完全に抑制する術をそなえている。 「まぁ、猿喰さん。人間がお嫌いなんですかぁ…?」 また、泣きそうな顔をするめしあ。 コミュ力の低い者なら、この顔を見るだけで脳震盪を起こすだろう。 「いやいやいやいやいや、お二人さんの事は大好きだから、御心配なさらずだよー。 えっへへ!――他ならぬ、めしあ君のためだもの。自分一肌もニ肌も、 いくらでも脱ぎましょうぞー!」 えいえいおー! ◆ ◆ ◆ 「じゃあ、めしあ君。自分のやってみせた通りに、できるかなっ?」 「はい…やってみます。」 めしあは立ち上がると目を伏せ、脱力した。 数秒の間。 ――――フッ 場の空気が変わる。 驚く二人。 「――めしあ、ちゃんの…コミュ圧が…。」 「――消えた…っ!?」 ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド 目を見開くめしあ。 「………あら、何を見ているのかしら?」 ―――――――――――――――ぞわぁっ とてつもなく嫌な悪寒が二人の体をかける。 「…めしあ、ちゃん?」 「気安く名前を呼ばないで。屑。」 「―――――――――!」 冷徹な、感情のこもらない目が二人を見下ろす。 ――これが、コミュ力のゼロ地点突破! この数秒の間に、めしあは己のコミュ力を「反転」させることに成功したのだ。 「す…凄い!」 「これほどのコミュ制御を、ものの数秒で…!やはりめしあ君は、世紀の天才だ…!」 「何を言っているの、ふざけないで頂戴。あなた達。死になさい。」 めしあの眼からは、完全に光が消えている。 一切の友好的態度を受け付けない「絶対」の拒絶。 「何か…ゾクゾクしてきた。」 「うん…僕も。」 アブノーマルな二人であった。 ◆ ◆ ◆ 「くすん…くすん…。ごめんなさい、二人とも…。」 コミュ制御に成功したと思われためしあだったが、 それも1分ほどしかもたなかった。 元に戻っためしあは崩れ落ちると、泣き始めてしまった。 「いやいや謝らなくていいよー!めしあ君、凄かったよっ!すごく凄かった!」 「うん!僕も興奮したし。あんな冷たい目を向けられたのって初めてだよ。」 「お二人にあんなひどい事言うなんて…、わたくし、自分が信じられません。」 めしあはなかなか泣き止まない。 二人は、嫌な予感がした。 ――ブワァ!! とたんに、凄まじいコミュ圧が二人を包み込む。 間違いない。 彼女の魔人能力『黒の仔羊』が発動しそうなのだ。 めしあには謎が多い。彼女の魔人能力の内容も、二人は知らない。 しかし、めしあほどのコミュ力魔人。その能力ともなれば、 とにかく大変な事になるのは目に見えている。 普段飄々としている二人であったが、これにはさすがに焦った。 「ああー、めしあちゃん…ちょっと落ち着いて?」 「めしあ君、そんなに自分を責めないでっ!よしよし、よしよし。」 「くすん、くすん…うう~ごめんなさい。わたくし、二人を困らせてばかり。」 確かに困っている。 めしあはぼろぼろと涙を流しながら二人を見上げた。 「そういえば、わたくしは昨日も人を一人殺めてしまったんです。 どうして死んでしまったのかわかりませんが、たぶんあれはわたくしのせいなのです…。」 「あ、その話は聞いたかも。」 きつねの情報網に、その話は引っかかっていた。 そして、何かを思いつく。 携帯を取り出すきつね。 「僕も忘れてた。めしあちゃん、ツイッター登録したんだって?」 顔を上げるめしあ。 「え、そうなんだー?めしあ君。」 「えっと…そうなのです。実は…。」 めしあはツイッターに登録すると、持ち前のコミュ力を生かし、 その日のうちに1京ものアカウントをフォローしたらしい。 これぞ惑星規模のコミュ力のなせる技である。 「…じゃあ、まだ誰にもフォローしてもらってないんだ。」 「そうなのです。…もしかしたら、みなさん恥ずかしがっているのかもしれません。」 もちろんそうではない。 めしあの驚異的コミュ圧は、電子機器をも介して人を遠ざけるのだ。 「むむむー。水臭いなぁ、めしあ君たら!真っ先に自分たちに教えて欲しかったよぉ!」 はさみが携帯を取り出す。 「…すみません、猿喰さん。みなさん、わたくしと違ってお忙しいようでしたから…。」 「ふふふ。とりあえず、僕らはめしあちゃんのツイッター、フォローしとくね。」 「本当ですか…!?わぁっ…!ありがとうございます!」 めしあの顔がパァッと明るくなる。 いつの間にか涙は消えていた。 ◆ ◆ ◆ にこにこと微笑みながら携帯の画面を覗き込むめしあ。 「うーむ。良かったねえ、きつね君。」 「うん。結果オーライかな?」 きつねとはさみ。曲者ぞろいの十二コミュ支の中でも、二人はかなりまともな方である。 十二コミュ支の面子は忙しく。なかなかめしあに構ってあげられないが、 まともにめしあに構ってあげられるのも、十二コミュ支以外にほとんどいないだろう。 果たして、めしあのコミュ圧に耐えられる魔人は現れるのだろうか。 できるだけ、めしあに構ってあげなければいけない。 嬉しそうなめしあの笑顔を見て、二人はそう思うのだった。

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