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花月ユキ

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だれでも歓迎! 編集
■キャラクター名
花月ユキ

■性別
女性

■年齢(学年)
享年14歳

■特殊能力
◆特殊能力名『Bitter Sweet』

◆大好きな人と、一生を添い遂げるための能力。
◆大好きな人を全身で感じた時に発動し、『それ』とひとつになる。
◆能力発動後は術者の世界は愛に満ち溢れ、その歩みはもう誰にも止められない。

■キャラクター説明
小柄でショートカット、少し臆病だが、優しく、頑張り屋さんな性格。
趣味はお菓子作りで、中でもチョコレートマフィンは大のお気に入り。
そんな、どこにでもいるような、ごくごく普通の女の子。

ひとつだけ普通じゃないコトを挙げるとすれば、それは、親友の女の子が好きなコト。
小学校時代からの親友で、自分の焼いたお菓子をとても美味しそうに
食べるその笑顔にときめきを覚えたのは、果たしていつからだったのであろうか。

ところが、そんな彼女を悲劇が襲ったのは、今(AD2015年)より三年ほど前。
彼女は不幸な事故でこの世を去ってしまう。
その秘めたる想いを告げることも出来ず。

いまわの際に願ったのは、ささやかな想い。
甘くて少しほろ苦い、ひとりの少女の祈り――――。

■アピールポイント
恋する女の子ってかわいいですよね。ぺろぺろ。
SSを読んでみんなでぺろぺろしましょう。

■プロローグSS

 草木も眠る丑三つ時――――舞台は関東某所の中学校。
 夕闇が辺り一帯を漆黒に染め上げ、一寸の先の物体すらも窺い知れぬ世界。
 ただ風が木々を揺らす音のみが、知覚しうる全てであった。

 ――――少なくとも、常人の理においては。

「やれやれ、普段より闇に生きる者でなくば、この瘴気は堪えるであろうな」

 凛とした女声が黒一色の世界に分け入る。
 次いで、草鞋が砂利を踏みしめる音も世界に加わる。
 依然として世界は黒に包まれていたが、それでも猶、女は確固とした眼差しで
 歩みを進める。

「だが、このねっとりと纏わりつくような瘴気が肯定している。アタリだとな」

 女の声は独り言なのか?――――否。
 それもまた常人の理の外の存在には違いなかったが、女の声に頷く者がいた。
 女の背後で怪奇的に浮遊する、オールバックにサングラス、黒のスーツの男。

『ああ、そうみたいだな。一度死んだ身だってのに、脳がひりつきやがる』

「どうした、怖気づいたか? なんなら帰ってもらっても構わんのだが」

『まさか! こんな大物、生きてる時だってそう会ってねえんだ。俺にも噛ませろよ』

 仮にこの場に他の誰かがいたとしても、男の声は聞こえてはいないだろう。
 唯一人、女だけが男の姿を見、声を聞き、存在を認識していた。

「それは頼もしいことで。……だが、お喋りはここまでだ」

 女の顔が引き締まる。その胸は豊満であった。
 真っ直ぐ下ろした黒髪は闇に溶け、白装束と草鞋以外には何も身につけてはいない。

 女の名は、鰺ヶ沢弓葉(あじがさわ ゆみは)。
 青森イタコテクニカルセンターより関東へと派遣された、女子高生出張イタコである。
 除霊も請け負っている彼女は、近頃世間を騒がせている悪霊退治の任についていた。

 べしゃ、べしゃ……と、不快な音が鼓膜を撫でる。
 例えるならそれは粘度の高い水音とでも言うべきだろうか。
 音が大きくなるにつれ、闇の向こうから、小さな人影が近づいてくるようであった。

『あれが悪霊の正体ってか? ただのガキじゃねえか』

「お前、もっとちっこいガキに殺されたんじゃなかったか?」

 痛いところを突かれた男はバツが悪そうに舌を打つ。
 男は現地調達した地縛霊であった。なんでも数ヶ月ほど前に幼女に殺されたらしい。
 手頃だったので弓葉がスカウトし、何らかの密約が交わされ仲間に加わったようだ。

「…………ええと、どちらさまですか……?」

 目の前の人影――体操服姿の少女であった――は、些か怯えた様子で尋ねた。
 弓葉は思わず拍子抜けしたが、すぐに気を取り直す。

 この中学校では、既に何人もの女子中学生が行方不明になっている。
 原因は、恐らくこいつ。油断していては、数時間後の日の出を迎えられぬだろう。

「自己紹介が遅れたな。私は鰺ヶ沢という者だ。お嬢ちゃんのお名前は?」

「花月……ユキ、です」

 少女は怯えた様子で名を名乗る。

「カゲツさんか。早速でなんだが、退治されてくれないかな」

 少女が反応を見せるよりも速く、弓葉が動いた。
 彼女が白装束の袖を振るうと、そこから数多の鋲が飛ばされる!

「えっ――――きゃあっ!!」

 少女へと真っ直ぐに飛ぶ鋲は、ばしゃり、という音に阻まれ、少女には達しなかった。
 奇襲の失敗を受け弓葉は素早く後退し、豊満な胸元から小瓶を取り出す。

「あれで決めてしまいたかったが……致し方ない」

『俺としちゃ、出番があって何よりだがな!』

 弓葉は小瓶の栓を抜くと、それを背後の存在に振り掛ける。

 すると――――なんたることか!
 中空に、スーツに包まれた男の右腕が浮遊しているではないか!
 それも、霊体ではなく実体で!

『ヘッ! それじゃあ一丁、暴れてやりますかァ――――!』

 浮かぶ腕――地縛霊の男の腕だ――は足元の砂利を幾つか握ると、それらを
 少女目掛け投げつける。
 投擲された砂利は、常人では到底出し得ぬ速度で大気を切り裂き少女に迫る――――!

「このまま、打ち合わせ通りに」

『おうともさァ!』

 鰺ヶ沢弓葉の能力は、己の尿と青森の地酒「豊盃」を秘密の割合で混ぜた聖水を
 霊体に振りかけることで、その霊の魔人能力を一定時間発現させるというものだ。

 これにより発現された地縛霊の能力――――時速200マイルで投石することの
 できる魔人能力『しし座流星群』を使い、遠距離から悪霊を攻撃する作戦であった。
 聖水によって発現した能力は対霊の効能を得る。相手が霊体であろうとお構いなしだ。

(正体不明の相手を前に、接近戦など言語道断。……さて、戦果の程は)

 地縛霊が投石を繰り返す最中、弓葉は冷静に状況を見極めんとしていた。
 投石は全てが少女の立っていた場所へと降り注ぎ、地面を穿ち、背後の校舎を
 破壊し、濛々たる土煙を立ち込めさせてゆく。

「……おい、やりすぎだ。これでは、標的が見えんではないか」

 破壊された中学校の敷地の修繕費については、依頼者たる学校側が負担する
 契約となっていたため、特に心配していなかった。
 パートナーからの文句に対し、男は煩わしそうに答える。

『ケッ、あれだけブチ込んだんだ、今頃蜂の巣よりヒデェ有様になってることだろうよ』

 程なくして土煙は晴れた。
 だが、地縛霊の男の言っていた通りの光景はそこにはなかった。

 さらに言えば、そこにはなにもなかった。
 穴だらけの地面と校舎のみで、少女の姿はない――――!

「なっ――――いない、だと!?」

『チッ! 跡形もなく消し飛んだ――――なんて都合のいい話はねェんだろうなッ!』

 少女の姿こそなかったが、禍々しい気配は変わらず在った。
 消えた少女には、恐らくはダメージもほとんどないだろう。
 二人は警戒を強め、闇に眼を凝らし、感覚を鋭敏に研ぎ澄まし、待ち構えること
 数分――――、

 不快な感触が、弓葉の左足首に纏わりついた。

「ッ――――!?」

 反射的に弓葉が鋲を飛ばすのと、彼女の身体が逆さまに吊られるのは同時だった。
 鋲はまたしても池に石を投げいれたかのような音をたてて無力化され、対する
 弓葉は宙ぶらりん、完全に敵の掌握下に置かれてしまっていた。

「あの、落ち着いて下さいっ。私は、ただ探しているだけなんです……」

「ぐっ……!!」

 連撃の鋲を放つより先に、その両腕も正体不明の物質に絡め取られてしまう。
 四肢のうちの三つを奪われ、支えやすくなったのか弓葉は逆さまの状態からは
 解放されたが、彼女に反撃の手段は与えられていなかった。

『クソッ、捕まりやがって! 喰らいやがれオラァ!!』

 叫びながら、地縛霊の男は文字通り全身全霊で石を投じた。
 これまでとは違い、両者の距離は適度に詰まっている――――最大の威力の一撃!

「ひいっ!」

 どぼんっ――――!

 これまででも一際大きな着水の音が響き、そして、それきりであった。
 男の足掻きも空しく、少女にはなんらのダメージもない。

「酷いですっ……! 私はタマちゃんに逢いたいだけなのに……!」

『マジかよ……ア、あがアアアアッ!?』

 間髪いれず男の腕もまた少女の操る謎の物質に絡め取られる。
 次の瞬間、弓葉とは異なり、その腕は一息にグシャグシャに粉砕された。

 男の災難はそれだけでは済まなかった。

『アッ……アアアアアッ!? なんだってんだyゴボボボボボボ!!』

 男の腕を破壊した物質は、そのまま霊体であるはずの男の肉体をも覆ってゆく。
 顔面に到達したそれは男の口から体内へと侵入し、霊体の腹がみるみるうちに
 膨らんでゆく。男の表情も加速度的に苦悶に歪んでゆき、やがて――――、

『ウボオオオオオオオッ!!』

 ぱあん、と風船の弾けるような音が鳴り、男は破裂した。
 中空に飛び散った男の残骸はそのまま靄のように雲散霧消する。

「っ…………!」

 弓葉は男の消滅までの一部始終を、ただ見ていることしかできなかった。
 そしてハタと気付く。男が消えたなら、次は自分の番だ、と。

「……、……探している、と言ったな?」

 若干の逡巡ののち、弓葉は努めて冷静な声で少女に問いかける。
 少女はコクリと頷く。

「……大好きな人なんです。ひとつになれたと思ったんです……でも、違くて……」

 少女の言葉はいまいち要領を得なかった。
 だが、弓葉はそれでも構わなかった。重要なのは、話の内容ではない。
 とにかく時間を稼ぎ、注意を別なところに向けさせ、反撃に転じること。

「話を聞かせて欲しい。もしかしたら、力になれるかもしれない」

 例え醜かろうが、死の瞬間まで最大限に足掻く。
 自分は表舞台で輝くヒーローなどではなく、他人の血を啜り生きるプロなのだから。
 それが、齢十と八にして凄腕のイタコとして名を馳せる鰺ヶ沢弓葉の矜持だった。

「ありがとうございます。タマちゃん……私の親友で、羽瀬川弾子ちゃんって
 言うんですけど、私、その子のことがすごく好きで……」

「ふむ……」

 神妙な面持ちで相槌を打ちながら、弓葉は脱出法を模索する。
 少女の足元から伸びる三肢への拘束は、少女が話し出すとともに幾許か弱まっては
 いたが、弓葉に逃亡を許す程ではなかった。唯一自由な右脚がぶらりと揺れる。

「…………そのとき、『Bitter Sweet』……えと、私の能力が発動して……。
 私とタマちゃんは、あのときひとつになったんです。なったはずだったんです……。
 でも、タマちゃんは私の中にはいないんです。だから、探さなくちゃいけなくて……」

 袖の鋲、胸元の聖水、腰の短刀――――武装のどれにも手が届かぬ八方塞がり。
 対する相手の正体は、恐らくは半固体・半液体状の物質。素早く、力強く、精密だ。
 弓葉が打開策を巡らせているうちに、少女の独白は終わっていた。

「なるほど……事情は理解した。私でよければ協力させて欲しい」

「ほ、本当ですかっ!? わあ、ありがとうございますっ!」

 少女の顔がぱあっと輝く。その反応を見て、弓葉は作戦の手応えを感じる。
 重要なのはここからだが、まず一歩……勝機を窺い続ける弓葉に対し、
 花を咲かさんばかりの笑顔をふりまきながら、少女はにこやかに言い放った。

「じゃあ、ちょっと確認させていただきますね!」

「えっ……?」

 少女の言葉とともに、少女の足元から新たな半液状物質が生じ、それは細長く
 うねうねと成形され、触手めいて弓葉の身体に這い寄る。
 触手は弓葉の白装束の中へするりと侵入する。

「っ……一体、何を……!?」

 不快感に眉を顰めつつ弓葉が問う。
 張りのある身体をにちゃにちゃとまさぐり続けながら、少女は笑顔で答える。

「お姉さんがタマちゃんを隠してないか確認です!」

「!?」

 貪欲なる触手は、一本、また一本とその数を増やしてゆく。

 あるものは太腿をなぞりながら尻肉へと半液状の手を伸ばし、
 あるものは引き締まった腹周りを撫で調べ隠された短刀を取り上げ、
 あるものは豊満な胸を絞りあげたわわな果実の中から聖水の小瓶を掴み……

 弓葉の身体を穢してゆく触手達の、そのどれもが不快な音と感触を有していた。
 極限まで高まった不快感と恐怖は冷静沈着な弓葉の理性を削り取り、気がつけば
 彼女は叫び声をあげていた。

「――――ああああああああああっ!!」

 叫びながら、弓葉は唯一自由な右脚に全力を込め、少女を蹴り上げた。
 衝突の刹那に弓葉の履く草鞋から仕込み針が露出し、少女の顔面を縦に切り裂いた。

「っ……ひ、酷いですっ……! いきなりなにするんですかあ……!」

 少女は右眼から涙を流しながら――――そして顔面の左半分を縦に真っ直ぐ裂かれ、
 その傷痕もまたじくじくとうねりながら、怯えた表情を浮かべていた。
 攻撃した弓葉の方が、むしろ「訳が分からない」といった表情で茫然としている。

 と、先程少女の顔を抉ったときの『飛沫』が、弓葉の頬に付着していた。
 血ではない。どろりとした感触と、鼻を刺激する不快な悪臭。
 ――――そして、こみあげてくる嘔吐感が、彼女の絶望的な推測を肯定していた。

「まさか……お前の、正体は……!?」

 少女が一歩ずつ近づく。べしゃり、べしゃりと不吉な足音。

 近づくにつれて鮮明になる姿。体操服の少女の足元には全てを飲み込むような
 茶色の海が広がっており、そこからは幾本もの触手が伸びている。
 触手の色と、少しずつ再生する左半分の顔面もまた、目を覆いたくなる程に、茶色。
 見廻せば、弓葉の白装束や身体も、触手に触れられた部分は全て茶に染まっていた。

 張りつめた殺気と、それが解かれた後は極度の緊張と恐怖。
 それらが文字通り臭いものに蓋をしたかのように、弓葉に全く気付かせなかった。

 花月ユキの腕が、顔が、否、その存在そのものが――――あからさまにウンコなのだ!

「…………私はタマちゃんに逢いたいだけなのに……邪魔しないでください……!!」

「なっ……!?」

 少女が怒りに満ちた目で弓葉を睨むと、足元から新たな触手が二本生え、蠢く。
 一本は弓葉の残された右脚を絡め取り、完全に自由を奪い去る。
 もう一本は弓葉の口腔に捩じ込まれる。噎せ返るような悪臭と不快感が彼女を襲う。

「ん゛ん゛ん゛……!! オ゛ボォ、ゴ、オ゛ゴボォ!!」

 耐えきれない不快感は嘔吐となって解き放たれ、塞がれた口の僅かな隙間から一条の
 吐瀉物が漏れ出でた。出しきれぬ分は、あるものは胃に逆戻りし、またあるものは
 別なる出口、すなわち鼻から零れた。

「邪魔するってことは、あなたがタマちゃんを隠したんですか? 一体どこに!?」

 再生した彼女の瞳は狂気に濁り、弓葉の口元から咽喉にかけてをねぶりながら、
 触手の数を増やし一心不乱に彼女の身体へと殺到させる。

「ン゛ゴォ……!!」

 白装束は引き裂かれ、剥ぎ取られ、袖に仕込んだ鋲も全て茶溜まりに落ちた。
 流麗な長い黒髪も、今は触手に汚され、茶の斑が染みついている。
 その双眸からは涙すら零れ、今や『恐山大祭』新人の部奨励賞という輝かしい経歴と
 それに裏打ちされた自信も粉々に砕かれていた。

「いない……。どこに隠したんですか……?」

 裸に剥かれ、その艶めかしい肢体を少女の目と茶の触手に隅から隅まで調べられ、
 羞恥と、屈辱と、憤怒と、恐怖と、その他の様々な感情が弓葉の心を穢していた。
 少女は一通りの捜索で求める人物がいないことを悟ると、恥辱のかくれんぼを
 次なるフェーズへと進行させる。

「『外』にいないってことは――――『中』に隠したんですね。私には分かります」

「ン゛ボッ!?」

 弓葉の両脚を支配する触手が互いに外へと動き、股関節を軋ませる程に開脚させる。
 少女の足元の茶溜まりからはさらに二本、新たな触手が伸び出でて、一本は弓葉の
 尻の窄まりに接吻し、もう一本は震える鼠蹊部を淫靡に撫ぜる。

「ン゛ン゛ーー! ン゛ン゛ーーー!!」

 これから起こる出来事に思い至ったのだろう、弓葉は青ざめた表情で首を大きく
 横に振り、全力で抵抗の意を表す。
 しかして少女は意に介さず、固く閉じられた線に、異形にひくつく点に、
 無慈悲な触手を突き刺した!

「ン゛ゴボォオ゛ッ――――――――!!」

 くぐもった悲鳴が大気を震わせる。
 痛みと絶望に弓葉の腰が弓形に痙攣し、限界まで開かれた目は光を失いつつあった。
 茶の触手に滲む破瓜の血が、血便めいた情緒を醸し出している。

「タマちゃん、どこにいるの!? 待っててね、今見つけてあげるから!!」

 弓葉を襲う三本の触手は、ぐちゃぐちゃ、にちにちと耳障りな旋律を奏でながら、
 肉の壁を奥へ、奥へと分け入ってゆく。
 痙攣する下腹部からは弓葉の失禁の証たる黄色が密やかに滴り落ちている。

「ン゛ブッ……! ン゛ブッ……! ン゛ブッ……! ン゛ブゥ……!!」

 触手の進行――――否、侵攻とすら呼ぶべきそれは、子宮を蹂躙し、直腸を蹂躙し、
 咽頭を蹂躙し、結腸を蹂躙し、鼻腔を蹂躙し、胃を蹂躙し、大腸を蹂躙し、
 鼓膜を蹂躙し、十二指腸を蹂躙し、盲腸を蹂躙し、尿道を蹂躙し――――、

 上と下から女体へと入った二本の触手は、やがて小腸にて邂逅を果たす。
 だが、それまでの旅路で見つからなかった囚われの姫君は、そこな到達地点でも
 見つかることはなく、

「そんなっ……! 嘘っ、なんでいないのっ!?」

 小さな両手を胸の前で組み合わせ、少女は祈るように狂気を吐き出す。
 少女の想いは足元の茶溜まりを震わせ、突き立てられた触手はさらにさらにと
 質量を増やし、下腹部に溜まる茶の塊は弓葉の腹を妊婦めいて膨らませてゆく。

「ン゛ン゛ッ……! ン゛ッ……!!」

 最早悲鳴を上げる気力も尽きたか、想像を絶する痛みの中で弓葉は白目を剥き、
 びくつきながら短く呻くのみ。
 魔人の肉体も流石に限界をであろう程に膨れ上がった腹は、遂に、

「――――――――ッッ!!」



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「ね、次の授業、体育だけど……タマちゃん、大丈夫?」

「んっ、へーきだよ。ユキちゃん、ありがと」

 その日のタマちゃんは、どこか調子が悪そうでした。
 お腹が痛いのかな、苦しそうな表情でお腹を押さえている姿を見て、私のお腹まで
 痛くなってしまいます。

「大丈夫だって! 遅れちゃうし、行こっ?」

 にっこりと微笑みながら、私に向かって手を差し伸べるタマちゃん。
 愛しい気持ちが私の心に溢れて、彼女のために気合を入れて焼いたお菓子は、
 でも今のタマちゃんにはあげられないな、と少し悲しくなったりして。

 タマちゃんは、優しい子だから。
 私の焼いたお菓子を見たら、きっとお腹の調子なんて二の次で、私にその天使の
 ような笑顔を振り撒きながら、美味しそうに食べてくれる。

 それは嬉しいけど。すごく、すっごく嬉しいけれど。
 でも、私はタマちゃんが好きだから。好きな人には、なにより元気でいて欲しいもの。

 だから私は、お菓子と、一緒に打ち明けるつもりだった、この想いを。
 どっちもかばんの中に眠らせて、また、次の機会までお休みさせることにしました。

 明日がある。明後日だってある。いつだって大丈夫。
 私とタマちゃんの日常は、永遠に続いていくんだから。

 私はタマちゃんの手をとって、並んで歩きだす。
 ずっと一緒にいようね――――!





 ――――――――以上が、某日、某中学校にて起こった魔人覚醒に伴い
 多数の生徒が亡くなった事故における、最初の犠牲者の走馬灯であり、
 その少女・花月ユキの魔人能力『Bitter Sweet』の祈りの正体であった。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 しばし立ち尽くしていた花月ユキは、ふと我に返る。
 辺りには自分以外の存在はない。
 少し前までもう一人いたのだが、それは今は数多の肉片になって飛び散っている。

「結局、あの人もタマちゃんを隠してなかった……。ほんと、どこに行ったの……」

 ユキは涙ぐみ、血と肉片の入り混じった茶溜まりを歩く。
 そして思い出したように、先程触手で没収した物品等を検めることにした。
 もしかしたらそこに、『あの子』への手掛かりがあるかもしれない。

「これじゃない……。これも違う……」

 御眼鏡に適わぬ物はぽいぽいと捨てられ、茶溜まりに落ちてばしゃりと音をたてる。
 イタコ少女の御自慢の聖水も、腰に忍ばされていた短刀も、みな等しく茶に染まる。

 最後の物品は、小さく折りたたまれたビラであった。
 ユキはそれを触手から受け取り、自らの手で開き、目を通す。

「…………最萌え……トーナメント……?」

 慣れない言葉が踊るビラに当初は困惑を覚えたユキだったが、詳しく読んでみると、
 要は一番可愛い者を決定しよう、という催しだそうだ。
 そこいらで糞に塗れている肉片は、これに出るつもりだったのだろう。憐れな話だ。

「一番可愛い、って、そんなの、タマちゃんに決まってるのにね。――――っ!」

 奇しくも己の呟きにユキはハッとさせられた。
 そうだ。この世で一番可愛いタマちゃんが、この大会にいないはずがない。

 ずっとこの中学校で待っている必要なんてなかったのだ。
 自分から、逢いに行こう。

「待っててね、タマちゃん。遅くなっちゃったけど、もうすぐだから」

 ばしゃり、ばしゃり。
 不吉な足音が『萌え』の祭典へと近づいてゆく。

「隅から隅まで探して……今度こそ一緒になろうっ――――!」      <終>




◆最◆ 【羽瀬川弾子】 ◆萌◆

私立希望崎学園二年。お腹にダメージを受けることで脱糞する能力を有する。
中学二年の体育の時間に能力が発動し、荷電粒子砲の如き下痢便で同級生を大量殺戮
した経験を持つ。世間的には、これが魔人覚醒直後の暴走という扱いになっている。
現在はマスケットめいてコロコロウンコを放つ『汚物弾の羽瀬川』として一部で有名。


◆最◆ 【花月ユキ】 ◆萌◆

現世に顕現した死人。愛する者と同一化する能力を有する。
羽瀬川弾子の下痢便による最初の犠牲者であり、死の瞬間に魔人として覚醒し、
その能力により愛する羽瀬川弾子(の排便)と同一化した。
数多の犠牲者の肉片の上に築かれる雪月花は、果たしてどれほどの絶景であろうか。

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