歪み

ゆがみ

神咒神威神楽の用語。

「歪曲」「陰気」とも。
三百年前の東征を境にして、西側で生じるようになった異能者のこと。世界で唯一神州に発生している異常。
あるいは異能そのものを指す。異能とは、説明のつかない超常。世の理を無視した現象、すなわち歪み。異界の法則。
また、当代のの法則から外れた者を指して歪みや化外と言ったりもする。

一般にこの世から外れているもの、すなわち『陰の異能』を意味し、一度境界を踏み越えたことで、人界にの毒が混じり出したのだと言われている。
元を辿れば御門龍明第六天波旬自滅因子を発生させることを目論んで東から西に持ち込ませた概念。

歪みの汚染度を壱から拾までの数値で表す汚染等級が用いられる。

穢土と隣接している秀真は、汚染に呑み込まれることが危惧されているが、地相的にはもっとも安全らしい。
呪を組み込んだ都市計画は、陰気を寄せ付けない方陣と化している。
玖錠紫織陀羅尼孔雀王は莫大な気力を練り上げた陰気特攻の技で、これを受けた歪みを減退させる効果がある。

作中では第二次東夷征伐を成し遂げることで、凶月咲耶を除いて歪みは世界から消失した。

陰の異能

世界の法則を歪ませることで理屈も説明も出来ない超常能力が行使可能になる。しかし帳尻合わせとして歪みの使用後には返し風が吹くとされる。
竜胆曰く、屏風の中にいる人喰い虎を斃せる力。元は穢土の力なので、東の蜘蛛を倒すのに効果的な武器となると見られている。

刑士郎曰く、歪みとは『己はこうだ』と世に知らしめる勝鬨なのだという。
返しを無視して振り絞れば万事容易く罷り通る、そういう絵巻の中のご都合主義。
吼えて使えば勝利する。出せば終わる必殺──これが自らを構成する最強だと、それらの自負が個々によって形は違えど滲み出た凱旋の咆哮こそが異能。
例えば歪みを消失させるような異能なら、それは使い手が歪みが無い世界こそを求めていることを示している。

西に流れた歪みのほとんどは、夜都賀波岐が一柱天魔・奴奈比売を源泉とするものである。
そのため奴奈比売はどのような歪みが西に渡ったのかをほぼ把握しており、西の者が使う歪みの技を威力を神の域に押し上げた上で再現することが出来る。ただし300年かけて西側のノリに改変されているので完全再現は出来ないとのこと。
歪みの特性とそれを使う本人の渇望は関係があり、元になるのは奴奈比売の渇望が大半であるが、宗次郎や紫織ほどの者であれば、それを自分流ので染め上げることが出来る。

夜都賀波岐はこの世界には本来存在しているはずが無い旧世界の敗者である。故に彼らはこの世の理を歪ませ、同時にこの世に生きる者にとっての毒となる。
夜都賀波岐の歪みは東征軍の歪み者が身に宿す些細な異常を起こす陰気などとは比較にならないほど極大で、規模も密度も桁違い。

歪み者

異能者は御門の管轄に置かれる。
陰気に汚染された者は、汚染等級の具合にもよるが人としての外観に歪みが生じる……つまり正常な人間の外見ではなくなる。極端な例で言えば凶月刑士郎のように、本来の大和人の特徴である黒髪が白髪になるなど、そういった身体的特徴に諸々の変化が現れる。
高位の歪みであるなら、髪や瞳の色が真っ先におかしくなるらしく、全てがそうで無いものの異形の証として最も顕著な変質を見せやすいのがその二つ。
等級四はギリギリ人間だが、人と鬼の狭間にあるため真人間というわけでもない。宗次郎のような陰が低い者でも、普通の人間からしても恐るべき回復力。

軽度汚染ならば特殊能力が備わったりと、むしろプラスに転じることも多いのだが、高度な歪みに汚染されると人の身には耐えられなくなり、やがて自壊するため毒であることには変わりはない。
そして現在は歪みを宿す者達が増えてきている。本編において300年振りに東征が決行されたのも、歪みの汚染が西側のプラス・戦力になる限界を迎えたと判断されたからであり、これ以上待つと過度な汚染によって西が内側から崩れると思われたからである。

凶月一族禍憑きという歪みを持つ。彼らは高濃度陰気によって穢土側の価値観が刷り込まれており、の概念が継承されていた。

歪みは本来全くの別法則の力だが、それを宿すのは人間の肉体であるため、人間部分に訴えればこちら側の理を通じさせることが可能。御前試合において龍水は刑士郎の暴れ狂おうとした歪みを抑えることに成功している。
歪み者は西側では異能だが、穢土にはその源泉があるため故郷に帰ってきたかのような気分になる。その空気に落ち着き、心なしか力が湧いてくるのは錯覚ではない。
一定以上の陰を持っている者なら、歪みに対する鼻が効くようで、不和之関では何も寄ってきていないと分かっていた。
御門龍明が言うには元は穢土の成分が混ざっているのだから、歪み者は天魔を既知のものとして認識できる。例えるならば先祖返りをしたかのような感覚。
咲耶は神州最大の歪みとして自身の異能が流れ込んできた道筋を感じ取ることができるため、淡海の航路を示す役割を担う。

歪みの源泉である天魔夜都賀波岐達は桁外れの歪みを有しており、悪路より過度の陰気汚染を受けた症状は宗次郎曰く、手は震え、目が霞み、気を抜けば内臓ごと吐いてしまいそうな慢性的な嘔吐感、しかしそれでありながら、力だけは湧き上がってくる始末で、なんとなれば星まで跳躍できるような、矛盾した感覚が同居することになる。この状態は歪み者としてあれる許容限界を超える陰気汚染を受けたことで、もはや余命幾ばくか。

高位の歪み者の特徴

異形化による魔性の身体能力の獲得

高位の歪み(陰が等級伍以上の者)は高濃度の陰気汚染により、筋力、体力、走力といった身体性能が魔性の域にまで強化され、理屈を無視した身体能力を獲得する(他、膂力、握力、反応速度、耐久力など)。
この領域にある者の特徴として非常に死ににくいというものがあり、単純な肉体能力が意味不明に突出している。歪みの汚染度が高すぎると殺せるとかそういうレベルの存在ではなくなっているため、監視や封印の処置を取られることになる。
覇吐と刑士郎の身体能力を、人の枠内の能力で十段階の数値で表した場合、七以上になる。これは現状、白兵において西側最強格の数値であり、物理常識を無視した運動が可能という事実を示す。
一応歪みに頼らずとも身体能力を強化する術はあるのだが、作中で異能に依らず咒力と気力による感覚強化により歪みに匹敵する身体能力を獲得することが出来たのは御門龍明のみ。

覇吐と刑士郎は歪みによる五感総ての超強化を行なっている。故に高速移動を行いながら視認せずに攻撃を避けることが可能。
また高位汚染者特有の頑強さは歪みを持たない人間程度の力ではビクともしないほど。

凶月刑士郎を例としてあげるなら、彼は歪みによる身体強化に長け、異界と化した肉体は骨格や筋量がどうだのという理屈や常識など受け付けない。よって人の埒外へと身体能力を変容させた法則外の運動が可能。五間の距離をただの一足で詰め、覇吐との戦闘では雷速の速さで踏み込んでいる。
さらに骨の形、筋密度、内臓の位置や経絡に至るまで、常人とは隔絶した異界の法則に則る活性は、運動において力学の限界に囚われない。 心臓のみならず、あらゆる大動脈、急所の位置、臓器の位置をずらすことで例え左胸を刃で貫かれようとも致命にならない。首を切断でもしない限り必殺とはならないし、狙われる場所も限定できる。ただし肉体変化は任意に行うものなので、戦意などが絶たれることで急所の位置は戻ってしまう。
頑強さは鉄板さえ容易に貫く紫織に殴られても全く効かず、斬撃は効果が怪しく逆に折られる可能性が生じてしまう。例え刺されても筋肉で絡め取る真似も可能。
加えて尋常ならざる再生能力を有しており、僅かな間に怪我も疲れも無くなる。それでも重度の損傷は瞬時に回復できないが。
さらに神州の五指に入る高位の歪みの中で、達人級の武(陽の伍以上)を有するのは刑士郎一人のみ(後に覇吐も)。

坂上覇吐の場合、陰の漆という濃さの歪みであり力勝負なら刑士郎以上なのだが、自分の陰気の濃さを自覚していなかったせいか、刑士郎と比べると高位汚染者特有の性質の数々を使いこなせていない。

彼ら魔性の域の速さと膂力を前に、耐えられる武器などない。一般には名刀やら利器と呼ばれる物も彼らが振るうには不足だろう。
剣速、体捌きは常軌を逸し、只人の動体視力では捉えることは出来ず、剣戟は大気の爆発で掻き消される。発生した衝撃波だけで皮膚や衣が避けていく。
高位の歪み同士の戦闘は、言わば雷光。他者が割り込もうものなら微塵に砕かれる鋼の嵐にも例えられる。

また特徴として、高位の歪み者は自己を一つの異世界と化しているため、例えば高速体術で発生する衝撃波などが外界に伝搬しにくい。基本、己と他を切り離しており、あくまで自身の内部と触れた物に限定される力が歪みなのである。

その他、個々の異能を制御できるかどうかはまちまちだが、共通して言えることは常人にとって極度の違和感を伴うこと。彼らが纏う異質の空気は、たとえどれほど鈍い者でも気付かずにはおれない。
凡人にとって、その雰囲気だけでも恐怖を抱かせるに十分なのだが、それでも東の陰気を数割程度宿しているだけというのが実情。純粋な化外の出鱈目さを感じさせる。
陰の拾の凶月咲耶ほどになるとあまりに陰が強く濃すぎて、空間を歪ませて牛車の形を歪んで見せた。

ただ天魔・血染花に目覚めた刑士郎のように過度の歪みは穢土の存在に近くなり過ぎて、逆に天魔・常世に従わされる危険が伴う。


余談

似たものとしてPARADISE LOSTにおける隔離街の毒がある。
過度の汚染は腐滅による死を招くが、軽微であれば十人十色の進化を遂げることができる。

穢土諏訪原の戦闘跡から、紫織と宗次郎が高位の歪み者同士の戦闘ならこうなるだろうとのことで、高位の歪み者は大体Dies iraeにおけるエイヴィヒカイト創造位階程度だと見ていいようだ。

黒白のアヴェスターにおける戒律とは、我はこうだと謳い上げ、天地に向き合う誇りを得ることで、傀儡のごとく戦い続ける世界に彩りを与えるためにあったのだという。
歪みもまた、己はこうだと世に知らしめる勝鬨であり、世界が天狗に染まりきらぬよう、世界に彩りを与えるものであった。


  • 歪みの大元って、つまりはルサルカの使う「魔術」だったのかな? 渇望を具現化させる辺りはエイヴィヒカイトっぽいものがあるけど -- 名無しさん (2012-05-27 18:32:36)
  • メタな話になるが、初期の夜行や中盤の殺し合い夫婦達は初めの覇吐や刑士郎より汚染度が上なのに髪の色とか身体的特徴に変化なかったね -- 名無しさん (2012-05-27 18:37:45)
  • 夜行と殺し愛夫婦の力は歪みとは違ったはず。夜行は波旬のうんちパゥワーで、夫婦も確か波旬との接続が強くなって得た擬似的な大極だったと思う。 -- 名無しさん (2012-05-27 19:09:09)
  • 旧世界(第五天)と現世界(第六天)の力を混ぜ合わせてどちらにも属さない存在を創り、これに波旬を討たせるという計画の一環という感じでよろしいのでしょうか?旧世界のものは現世界において異物であるため、歪みとなって発現する。言うまでもないでしょうが、これも龍明が元凶といえる。 -- 名無しさん (2012-05-27 21:15:39)
  • 歪みを引き入れて波旬を刺激し、波旬の自滅因子を作るのが目的だったはず。まあ実際には波旬は無反応で、その代わり嚢腫が反応し覇吐が誕生した。という感じだったはず・・・あってるよな? -- 名無しさん (2012-05-28 02:18:24)
  • まぁ 計画そのものは悪くなかった 普通の神格ならば自滅因子も産まれたりしただろうが……波旬は様々な意味でエレオノーレの想像を遥かに上回る化物だったという訳だ。 -- 名無しさん (2012-05-28 02:52:21)
  • 想像を遥かに上回るひきこもり根性とも言える。 ニートすら超えたニートっぷりにはもはや表現出来る言葉が存在しない -- 名無しさん (2012-05-28 03:35:39)
  • ついに波旬が攻めてきたか…。なんてことにもならんしなぁ あっ何か波旬の触覚来てるしボコろうって感じ -- 名無しさん (2012-05-28 08:24:39)
  • 本人達が本編で力説してるけど波旬にとっての歪みは正しく覇吐(のみ)なんだよな。 -- 名無しさん (2012-10-13 22:56:34)
  • ↑×3はじゅんは誰にも養ってもらってないからニートではないな ニートは獣殿とマリーと蓮に終身看護してもらってたけど -- 名無しさん (2014-05-11 00:47:16)
  • ↑ 覇吐にとっても抱きしめたかった化外の極致は波旬って事になるんだろうか -- 名無しさん (2014-05-11 14:24:28)
  • 歪みねぇな -- 名無しさん (2017-02-16 02:09:19)
  • まず星間戦争時代に「渇望やら世界観やらを基に世界とその法則を創造する」神座システムが開発されて、第四天時代に水銀が自身の座におけるパワーソースである神秘の力(魔術)でそれを再現・人間に扱えるようデチューンして段階的かつ効率的に神格になれるようにしたのがエイヴィヒカイト、さらにそれを天魔(主に奴売比米)が流用して西に流れ込んだのが歪み -- 名無しさん (2019-11-25 19:04:29)
  • ↑雑に語ればジェネリック版永劫破壊か。聖遺物を用いない故に魂の収集も必須ではない。 -- 名無しさん (2020-02-08 09:41:35)
  • 聖賢はこれに相当するっぽい? -- 名無しさん (2023-05-12 19:45:34)
  • 歪みは階層で言えばクリシュナのアヴァターラ、神の太極が聖賢ってイメージ -- 名無しさん (2023-07-11 09:02:01)
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最終更新:2023年07月11日 09:02
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