東征に先駆けて兵を鼓舞するための撃剣の神楽として
御前試合が執り行われた。しかしそれは何処の武家が東征の総大将となるのか、という代理戦争が真実。
久雅家家臣
坂上覇吐がこの神楽を制し、これをもって征夷の将は久雅竜胆鈴鹿となった。
龍明を艦隊司令として三十余隻の大型船の艦隊で荒れ狂う淡海を渡る。航路の安全を確認するため少数で挑み、第一陣は総勢一万の軍勢を持って出陣した。全軍の二十分の一以下とはいえ後続に道を開く先遣隊としては多すぎるが、それは時間のなさが理由にある。
異国という外患を抱える神州にとっては穢土の領域を皇旗で一刻も早く染め上げる必要がある。そしてこの隊は航路確保だけでなく、穢土の地に橋頭堡を打ち立てることを求められる。
神楽の益荒男達だけでなく、常識外れにも東征の将である竜胆すら乗船した(自らいち早く軍功を上げることで内輪揉めを避け、軍の統制を取ることを目的としている。無論、無謀の特攻に等しい)。
途中
淡海の天魔の妨害に遭うものの、これを退け出港から十日かけて海を乗り越えた。
ついに穢土の地に足を踏み入れた東征軍は橋頭堡を築き、当面は本隊の到着を待ち守りを固め地理の把握に務める。この地で東征軍益荒男らは親睦を深めるが、
夜都賀波岐が母禮・悪路が襲来。始めの一撃で五千強が瞬殺、益荒男も再起不能になり久雅竜胆の死という大打撃を覆う。しかし死んでもおかしくない者や死んだはずの者達は何故か生きており、
畸形曼荼羅という謎の力に目覚めていた。
初戦での死者は九割を超える(死者九千七百四十八名、生き残りも全員負傷)。壊滅した数日後、中院冷泉率いる本隊の内三万が到着。
東征の最前線を進む兵数は七万に(内訳は勢州が6、雍州が4)。
目覚めた覇吐たちは、謎を抱えるものの次なる目的地へ進む。向かう先は鬼無里、不二、諏訪原。七万の東征軍は不二に大軍を、鬼無里に少数精鋭の二手に分かれ、その先の諏訪原で合流を目指す。
東征中であっても政治闘争は継続しており、軍の中には他家に通じる間者も紛れているため安心できない。総大将こそ竜胆だが、隙を見せれば追い落とそうと暗躍されている。
出発から十日以上、鬼無里に着いた刑士郎らは神州と変わらぬ景観に困惑するが、天魔・奴奈比売によって天魔・紅葉の居城へ向かい、それぞれの問答を行う。
出発から二十日余り、東征軍は不二に到着。夜都賀波岐に対する切り札を獲得するために竜胆を中心とした少数で探索を行う。
天魔・常世の妨害に遭うが、竜胆は不二の奥底にあった
黄金の残滓を取り込み
天魔に対する切り札を得る。
不二を通過してしばらく、休憩と合流のために箱根で陣を敷いた。
東征軍は諏訪原で補給を行う。壊滅した
黒船の生き残りを保護した東征軍。竜胆は彼女の話から、補給と軍備は中院と六条に任せ、益荒男を連れて諏訪原の調査を行う。そして彼女たちは
天魔・宿儺によって夜都賀波岐の過去の記憶を見せられる。
再集合した彼らは現れた宿儺を前に翻弄され、天魔全員が勢揃いするという絶望、さらに敵の首魁である
天魔・夜刀が現れ蝦夷の地まで手は出さないと約束される。しかし凍結の力の行使によって穢土諏訪原からの脱出を余儀なくされた。
しかしいち早く異常に勘付いた冷泉はすでに沖から東征本隊の船団を出港させていた。
諏訪原脱出から十三日、竜胆らは本隊とは別に蝦夷に向けて北上していた。
この地で一人一人が幻を見せられて
太陽からアドバイスを受ける。幻から解放された竜胆たちは奥羽を抜けており、東外流海峡を目前に場所まで飛ばされていたが、いつの間にか2ヶ月も経過していた。
東外流の端で船団と合流した竜胆達は慌ただしくも翌日の昼には蝦夷に向けて出航する。
夜刀を大切に思うからこそ、奴奈比売・紅葉・母禮と共に謀反を起こした常世によって東征軍は強襲を受ける。
東征軍は奴奈比売と紅葉を斃すが、龍明・丁禮・爾子など他にも数十隻の船艦が沈み多くの犠牲者を出して、東外流海峡を抜けて蝦夷に到達する。
一週間後、負傷者などは東外流以南に予備兵として残し東征軍の大半は蝦夷に上陸していた。この時点で東征軍の約半数が潰されている。最終決戦を翌日に控えた益荒男達は英気を養う。
そして遂に天魔との決着をつける戦いが幕を開ける。蜘蛛の群れは冷泉率いる雑兵達が、夜都賀波岐は竜胆率いる益荒男達で相手取る。
前哨戦は悪路vs宗次郎、母禮vs紫織。この戦いの余波で軍の四割が死滅するが、太極に到達した宗次郎と紫織によって悪路と母禮が討滅される。続いて攻勢に出た東征軍は刑士郎が宿儺、夜行が大獄と相対し、これに勝利する。
そして常世の命で新生した夜刀と覇吐の戦闘が始まり、果てに夜刀は第六天の敗北を確信して消えていった。
これにて穢土の地は神州の領土となる。穢土の時間が正常化し、歪みが消滅したことで勝利を実感したのも束の間、久雅竜胆の急死によって東征は幕を閉じる。
久雅と六条の当主死亡もあり、中院冷泉が神州の実権を握る。
論功行賞において中院冷泉は見合った冠位を授けるとしたが、竜胆の死を誰も悼まない者達を前に益荒男達はこれを蹴った。
益荒男達は各々の生活に戻っていくが、 卯月以降のある時期、中院冷泉が「戦が終われば英雄はいらない」と益荒雄達を逆賊として扱い討伐軍を編成、
大欲界天狗道の完成による影響が神州にも及び殺し合いが発生してしまう。
そして
第六天波旬を倒すために益荒男達・
曙光曼荼羅は東征軍改め波旬討伐軍として、
座に再集結した。
第七天における東征の歴史は記録が改竄されており、
化外や
歪みなども含め荒唐無稽なものではなくなっている。