「くふふふふふ………ははははははははは」
「
すばらしい、なんという喜劇、なんという友情か。
予想以上だ、感激だよ、痺れが止まらぬ憧憬すらしよう。
交差する思惑、互いの意地、信じているのはその論点か、はたまた相手自身をこそか。その願いはどの終点を目指している?希望まで無形の混沌ではあるまい、君らは譲れぬ結末を描いて、互いを誇りに思っているのだから。ああ見ておられるか
獣殿。あれぞ友、純粋なる情愛の活劇。我らが歓喜の幕開け」
「私とあなたが形にすることのできなかった語らいを、今我らの写し身が謳い上げてくれている……!」
「素晴らしい、その一言に尽きる。いやそれすら足らぬな。
弁には自負があったのだが、言葉に出来ぬ、出来ていいものではない。したくない。
識者の仮面を被り、
あの葛藤を形にするのは神聖さに泥を塗る行為だ。見守っていたい、久々に思ったよ終わって欲しくないとさえ
ああ、君たちは本当に、どこまで私の瞳を焦がすのだ」
「
“語りえぬものは沈黙しなければならない”
よく言ったものだ、君らにもこの言葉を送ろう。
ふふふ……まるで貴女のようではないか、マルグリット」
「何を嘆くことがあろうか、我が女神よ」
「見たまえ、あそこには総てがある。彼らは真に素晴らしい」
「友愛を懐き、互いを壊して形と成す愛の証明。
同時にそれは、互いの心情を汲みながら、そのために憎悪で拒絶した絶縁の嘆きでもある。
矛盾だ、矛盾が成されているのだよマルグリット。さながら、空を飛翔しつつ、深海へ潜航しているかのような荒唐無稽さだ。
踏破し、脱却し、条理を置き去って旋回する雲雀。奏でる囀りの応酬が羽根を毟り合うたびに反響し、心地よく世界を満たす」
「
羨むしかあるまい、脱帽するよ、彼らは今この世界に二人きりなのだ。魔道に頼るのではなく、ただ築き上げた絆で法則の頚木を跳ね除けている。
如何なるものにも縛られていない。総ての感情を瞬間に、永劫と等しく感じ取り、それすら流れ落ちる飛瀑の一滴。
凄まじいな。素晴らしいな。止めることなど誰に出来よう」
「許せないから壊すのではない。信じている、しかし何故かその願いを砕いている。憎しみより激しく、愛よりも慈悲深く。それは何故?」
「認められぬから奪うのではない。認めている、その道を羨んでもいた。だから与え、けれど奪い、されど無視して、そして通り過ぎながら壊死を望む」
「彼らは今語り合っているのだ。かつてないほどに激しく、凄絶に。
君をこう見ていた、君をこう感じていたのだと事細かに叫んでいる。相手に分かってもらう為に、分かってやる為に、分からせる為に。
思い出を語り合い、大切で仕方ないとその持て余した感情をぶつけ合っている……そこに下らぬ虚飾は一切がない。総てが剥ぎ取られ、裸の己を曝け出す。
なんと素晴らしい――これぞ魂の決闘だ」
「
ああ……難解だったかね。美しい顔が歪んでいるよ、また婉曲的だったか。ならばこう言おう。
――彼らは今、嘗てないほどに愛し合っているのだよ、マルグリット」
「
理解できぬかね?私もそうだ、ゆえに美しいと感じる」