酸化チタン

酸化チタンの危険性について
メルマガ「手作り美白化粧水と化粧品の役立つ知識」より
http://www.mag2.com/m/0000102852.html

手作り美白化粧水と化粧品の役立つ知識 5月号(Date: Fri, 9 May 2008 07:50:00 +0900 (JST))
MMUが日本であまり作られかった理由 byしんちゃん


MMU(ミネラルメイクアップ)がここ数年人気がでてきた
アイテムになりつつあります。

酸化チタンや酸化鉄など、ファンデーションの鉱物系原料のみで
作ったファンデーションとなります。

テレビ通販や新聞の折り込みチラシなどでは、既存のファンデーションより
安全性が高いとふれこんでいます。

果たして、そうでしょうか?

ここ数年インターネットの普及に伴い、一般人であっても
化粧品技術者と同じ情報を手に入れることができるようになっています。

日本語でのデータは少ないですが、英語が出来る方なら
途方も無い数のデータに無料でアクセスすることも可能です。

そこで酸化チタンや酸化鉄などのデータを入手してみると・・・、
意外にも危険性が表示されていることに気がつくかと思います。

例として酸化チタンを上げます。
絵表示に注目してください。
http://www.jaish.gr.jp/anzen/gmsds/0740.html

眼と肺の絵が描いてあります。
実は、この絵は酸化チタンが毒性を発揮するときに
身体のどの部分を標的にされるかということを示しています。

眼と肺ということは、目に入れたときの刺激性、
吸入したときに毒性があるということを示しています。

金属の粉でなくても、砂でも目に入れたら、硬い粒子のため、
目をこすったりすると角膜を傷つけるので、眼刺激は当然でしょう。
これは微細で硬い粒子なら何でもこれに当てはまります。

また、吸入毒性ですが、微細な粒子状のものなら
気管支や肺を傷つけたり、肺に貯まると塵肺になる恐れがあるので、
当然といえば当然かもしれません。

ただ、MMU販売業者の中には、タルクが危険成分なので、
タルクを抜いてファンデーションを作ったなどと説明するところもありますが、
タルクと酸化チタンや酸化鉄では、一つ毒性で大きな違いがあります。

それは酸化チタンや酸化鉄は、労働安全衛生法における
名称を通知すべき有害物質に指定されていることです。
ちなみにタルクは有害物質に指定されていません。

この世の中には20万以上の化学物質がありますが、その中でも
労働者に健康障害を生ずるおそれのある物質を700近く選んで、
この有害物質指定を行っています。

労働者が取扱うときに、取扱う物質の毒性を理解させるように
注意を喚起する制度です。法律は事業者間でのやり取りに限定していますので
消費者が購入する商品へのラベル貼り付け義務はありません。
ただ、事業者間でのやり取りでは、法律で安全性データの提出、
(原料メーカー⇒購入メーカーへの)を義務付けています。

つまり、酸化チタンの毒性について、化粧品メーカーが知らないというのは
ありえないのです。(データを提供しないと原料メーカーが法律違反となる)
(詳細は割愛しますので、こちらをみてください。)
http://www.kana-rou.go.jp/users/kijyun/msdsbun.html

酸化チタンや酸化鉄は飲んでも肌に塗っても毒性はありませんが、
眼に入れたとき、吸入したときに毒性を発揮します。

つまり、酸化チタンや酸化鉄を配合するには、眼に入らないこと、
吸入しないことを前提に商品開発を進めていくメーカーが多く、
使い方も同様に「粉が飛散せず、お客さんが吸わない」ことも
合わせて配慮するところも多いでしょう。

たとえば、ルーズパウダーは、酸化チタンや酸化鉄をタルクや
セリサイトのような鉱物で薄めたものですが、金属石鹸を数%程度配合して、
粉同士や肌への付着性を改善しています。
標準的な配合は以下の通りとなります。

タルク 80%
セリサイト 10%
酸化チタン 5%
ステアリン酸マグネシウム 4%
酸化鉄 1%
ちなみに防腐剤を入れないことも多いです。
また、スクワランを1〜5%程度配合することもあります。
スクワランが多いほど、肌への密着性が高まり、化粧もちの改善ができます。

単に酸化チタンや酸化鉄をマイカやセリサイトなどで薄めて作るわけではありません。

また、タルクとセリサイトの割合を変えたり、カオリンを配合したり
することで、マット感やカバー力を調整します。

パウダーファンデーションも酸化チタンと酸化鉄をタルクやマイカに
加えた後、金属石鹸やオイルを配合します。

他にも粉を飛ばないようにする工夫は色々ありますが、
シリコーンに酸化チタン類を分散させるという方法です。
日焼け止めなどには良く使われます。

フルーツゼリーを思い浮かべていただきたいのですが、
フルーツゼリーは、果実がゼリーの中に分散している状態です。
全部底に沈むわけでもなく、ゼリーの底に沈んでいるのもあれば、
浮いているのもあるような状態。

同様に酸化チタンをフルーツ、シリコーンをゼリーとすれば、
酸化チタンをシリコーンに分散させることで、
肌への接触を少なく出来、さらに飛散も抑えれるというメリットがあります。

たとえば、風に当たってもシリコーンの中に入っているため、
酸化チタンの飛散も抑えれるというようになります。

一概にシリコーンが入っているから危険とは、
その目的と意味を知れば言えないと思います。

まあ、MMU業者の中にはそういうことは関係なしにシリコーンは
危険だというところもありますが、この辺りは何を安全性の基準に
置くかでだいぶ変わってくるでしょう。

政府が作った法律に従うなら、単に鉱物で酸化チタンや酸化鉄を希釈しただけでは
一番毒性が出る配合処方となりますし・・・・(^^;;

また、今販売されているMMU自体は、昔からあるルーズパウダーの
配合処方のうち、タルクやほかの鉱物をマイカに置き換えただけのものが
多いことに気がつかれるかと思います。

いくつもの粘土鉱物を調合するのは大変ですが、
材料がシンプルな市販のMMU程度は素人でも簡単に作れるので、
作られている方も多いかもしれませんね。

酸化チタンと酸化鉄をマイカと混ぜて、ジューサーにかければ
出来上がりという簡単なものですから。
(乳鉢で混ぜられる方が多いかと思いますが、化粧品会社の開発場面では
 家庭用のジューサーを使うことも多いので、安いジューサーを
 ファンデーション製造専用機にしても 面白いと思います)

色々な手作りレシピがありますが、たとえば金属石鹸など、粒子の飛散を抑え、
肌との密着性を高める配合になっているものもあります。
そういうのは参考になるのではないでしょうか。

ちなみに、ファンデーションに使うマイカや酸化鉄の粒子の大きさは
結構重要で、彩度が変わったり、仕上がりの状態も変わってきます。

キメが細かい肌だと大きな粒度の紛体では厚みがあり、嵩高い肌触りとなり、
また、化粧崩れが起きやすく、テカリやすくなる傾向にあります。

一方で、シワがある肌には大きな粒子が合っていて、
シワの部分に大きな粒子は入りやすく、
窪みを明るく仕上げるので、しわを和らげる効果もあります。

つまり、肌理がきれいな方には細かい粒子で、トラブル肌の方は大きな粒子が
肌に合いやすいという特徴があります。

ただ、あまりにも細かい粒子だと、吸入する危険性がありますので、
注意が必要です。
(ファンデーションに求められるのは、凸凹の肌表面に均一に粉が付着
 するということです。つまり、粉同士がくっつかず、細かい粒子の方が
 肌への付着は有利になりますが、吸入する危険性がでてきます)

個人的には、どこかの手作りショップさんがこだわりを持って
粒度の違うパウダー類を揃えたら手作りの幅が広がって、面白いなと思います。

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タルクの毒性について(1975年の報告) byしんちゃん


タルクにはアスベストが含まれていて、危険という情報が乱れ飛んでいますが、
果たしてそうでしょうか?

今の時代なら日本のある程度の規模の企業のものなら
まず問題ないかと思います。

タルク中のアスベストが問題になり、国の調査が行われたのは
今から30数年前となります。

日本のメーカー7社のベビーパウダーを調査したところ
5社のものから0.3〜1.8%のアスベストが検出されています。
2社からは検出されていません。

タルクは層状ケイ酸塩という鉱物の一種で、
タルクの中にアスベストが含まれるかどうかは、
鉱物が取れる鉱脈によって決まります。

つまり、タルクが取れる地域によって、アスベストを含むものや
含まないものがあるわけです。

17種類のタルク(産地別)を調査したところ、
7種類のタルクからアスベストが検出されています。

アメリカやパキスタン、中国の一部の地域では
全くアスベストは検出されていません。
つまり、どの産地のものを使うかで、タルクの安全性が変わってきます。

以下は1975年に発表された環境保全研究成果集からの抜粋です。

ベビーパウダーの中のアスベスト量
A社 0.4%、B社1.8%、C社含有せず、D社0.4%、
E社 0.3%、F社0.9%、G社含有せず

タルクの産地別のアスベスト量
1.米国カルフォルニア 含有せず、2.米国モンタナ 痕跡量、
3.中国(広西・海域)0.85%、4.中国(不明)0.95%、
5.日本(秩父)含有せず、6.中国(遼寧)含有せず、
7.パキスタン含有せず、8.北朝鮮(利原)2.6%、
9.中国(袖岩)0.25%、10.韓国(忠州)痕跡量、
11.中国(広西)含有せず、12.中国(広西)含有せず、
13.中国(海域)1.2%、14.朝鮮(不明)0.2%、
15.朝鮮(不明)含有せず、16.中国(満州)0.55%
17.朝鮮(不明)含有せず

ところで、アスベストが検出されたメーカーですが、
このとき国から指導を当然受けて製品の改良を行っています。

ただ、これは日本での話しです。外国産の化粧品に含まれるタルクが
安全かどうかは、なんともわかりません。


手作り美白化粧水と化粧品の役立つ知識 6月号(Date: Tue, 3 Jun 2008 08:10:00 +0900 (JST))
MMUの反響が大きかったので・・ byしんちゃん


MMUについての記事を書きましたが、色々反響がありました。

酸化チタンと酸化鉄の毒性ですが、タバコに比べるとかなりましと
お考えください。タバコの煙の粒子は肺から簡単に吸収され
血液に流れ込んでいきます。

たとえば、妊婦がタバコを吸うと胎児の細胞の成長を阻害するため、
子供が低体重や障害を持つ確率が高くなり、
妊婦の禁煙が推奨されるのはご存知の通り。

MMUを作ってほしいとの要望も多くありましたが、
結局は日本で売られているようなマイカやオキシ塩化ビスマスなど
肌に付着しやすい成分を主体にするようなものしか難しいと思います。

なお、微粒子酸化チタン配合のものは、ナノ粒子をそのまま吸い込んで
しまいますので、注意が必要です。
微粒子酸化チタンは、タバコの煙より微細な粉となっています。

ただ、市販のMMUの粉をいくつか観察しているとかなり粗く、
湿気によって粒子は大きくなっていきますし、銘柄によっては
それほど吸い込む危険性を気にしなくてもよいのかなと考えています。

この辺りのMMUやルースパウダーの粒子の大きさなどを、
何らかの方法で検証して、皆さんに見てもらえないか、考え中です。

ただし、前にも書きましたが、微粒子酸化チタンを粉末で
飛散するような状態で配合するメーカーは、ほとんどありません。

通常、タルクやセリサイト、マイカなどの粘土粒子は似たような大きさで
サーフィンに使うサーフボードの大きさとすると、ファンデーションの
シミのカバーに使う顔料級の酸化チタンは野球ボール程度。

紫外線防御に使う微粒子酸化チタンはパチンコ玉ほどの大きさになります。
(顔料酸化チタンは約0.2ミクロンの大きさで、これが最も顔料としての
 役割を果たす大きさ。微粒子酸化チタンは0.1ミクロン以下を言います。
 顔料サイズは可視光線を跳ね返し、微粒子チタンは紫外線を跳ね返します。
 可視光線と紫外線の波の大きさが違うので、それぞれ最適なサイズがあります)

基本的に、顔料は粒子が細かいと鮮やかな発色になるので、
タルクなどに比べて細かくなりがちです。

もちろん、これは各企業の技術力や配合によって変わり、
せっかく細かいはずの酸化チタンも粉同士の混ぜ方が悪いと
粒子同士がくっついて粒度が荒くなっている可能性もあります。

ただ、高いSPF値のものほど、微粒子酸化チタンを使っている可能性が
ありますので、注意が必要です。

リキッドやクリーム、プレストタイプなら、粒子同士がオイルなどを
通じてくっついているため、ナノ粒子を吸い込むことはありませんが、
さらさらのパウダーは注意が必要です。

MMUを水に溶かして水おしろいのようにすることもできますが、
そうすると大抵の市販の日焼け止めと相性が悪くなり、
単にリキッドにしてもうまくつかないというジレンマに陥ります。
(日焼け止めは汗で流れないのが当たり前ですが、
 耐水性の日焼け止めはリキッド化したMMUを弾きやすくなります)

日焼け止めとの相性を考えると、粉のまま使うしかありません。

なお、微粒子を髪や服にほとんどつけず、顔だけに付着させるという技術は
存在しています。某社の吹き付け型ファンデーションがそうです。

ファンデーションの粉をイオナイザーでイオン化し、帯電しやすい肌表面へ
均一な層をつけるタイプのファンデーションです。

粉は電気的に反発するので、粉同士がくっついて厚塗りになることはなく、
また、塗る際のブラシやパフでの刺激もないのが特徴。

なかなかファンデーションを均一に塗るのは難しく、
まだらになることも多いので、肌が帯電していることに注目して
開発されたものです。

MMUで使えたら面白いような気がしますが、残念ながら使えません。
あの装置では、シリコーンでコーティングした粒子を使うことが
ポイントになっています。

シリコーンでコーティングすることで、帯電したイオン粒子に
なりやすいのです。
(水に溶けてイオンになるのはとはちょっと違います。
 布でガラス玉を擦ればガラスが静電気を帯電するのと同じ現象を
 あの装置を利用しています。たとえば、スカートの裾が
 まとわりつくのも同じような帯電現象のひとつです)

そうそう、10年前、大ヒットしたファンデーションがありました。

それは、酸化チタンや酸化鉄を無配合を前面に出したルースパウダー。

カバーするのは、当たり前と考えていた大手の化粧品会社に
衝撃を与えた商品です。ノーカラーファンデーションとも呼ばれました。

ソフトフォーカスで肌の透明感を自然な感じにして、肌のキメを細かくみせ
素肌の美しさを強調できるのが、ヒットした理由です。
(要は粉おしろいから顔料を抜いたものですね)

リキッドファンデーションもほとんど酸化チタンや酸化鉄を
配合せず、肌色がほんのりつく程度のものも流行りました。

MMUとは全く逆のコンセプト。
世の中、何が女性の心を掴むのかよくわかりません・・(^^;;


手作り美白化粧水と化粧品の役立つ知識 7月号(Date: Sat, 19 Jul 2008 22:38:42 +0900 (JST))
昔のおしろいと問題点 byしんちゃん

MMUの記事が反響を呼び、MMU開発の依頼が多くありました。

そこで、まずはMMUをナノサイズまでよく見てみたいと思い、
電子顕微鏡を用いて観察しましたので、紹介していきます。

電子顕微鏡で観察する意義は、単にMMUを見るだけではなく、
このメルマガを読んでいる方に、酸化チタンや酸化鉄といった顔料と
マイカやタルクなどの粘土との大きさの違いをわかっていただこうとも思っています。

なお、市販のMMUを電子顕微鏡でみた結論を先に書いておきます。

MMUは大きく酸化チタンや酸化亜鉛、酸化鉄などの微粒子を主体としたもの、
オキシ塩化ビスマス、マイカなどの大きな粒子を主体としたものの2種類に分かれます。

前回のメルマガで後者をお勧めしていましたが、今回の電子顕微鏡を用いた検証では
その推奨は信頼できるものという確信を持ちました。

それは酸化チタンなどの微粒子がマイカやオキシ塩化ビスマスなどの大きな粒子に
くっついているため、これらのMMUは安全性が向上していると思われるからです。

ただ、きっちとモノを見てから、言わないと恥ですよね。
MMU全般が危険というような印象を持たせて申し訳ございません。


今回の紹介は市販品ですが、ブログ購読者のご好意により
手作りファンデーションを提供していただきましたので、そちらの撮影も
行っています。次回にはそちらの紹介を致します。

さて、化粧品会社に入ったときに最初に教育されるのが化粧品の歴史。
悲劇についても多く学ぶわけですが、かつて多くの子供が化粧品の毒によって
死んだこともあります。

一番化粧品で引きおこされた悲劇はおしろいに含まれる鉛白によるものです。

おしろいは江戸時代に大量生産の技術が確立して、庶民に普及しました。
100%天然鉱物から出来ていますので、ミネラルファンデーションそのもの。

昔は、おしろいを顔だけでなく、胸の辺りまで塗る習慣がありました。
乳を与える女性が胸にまでおしろいを塗っていると、
庶民の子供だけでなく、大名の子供まで乳児が鉛を摂取してしまい、
その多くが突然死するという不幸に見舞われました。

子供だけでなく、大人の歌舞伎役者も死んだということですから
強い毒性を持っています。

鉛白の毒性が解明されるのは、大正時代で、禁止されたのが昭和でした。
その間に多くの乳幼児が死んでいます。

ところで、江戸時代の女性は、おしろいを使いこなすのに色々なテクニックを
用いていました。江戸時代に出版された化粧品本にこの当時のことが
書いてあります。

おしろいは、そのまま顔に塗ってはダメで、まずは水へ丁寧に溶く。
それが第一にやることです。

この水への溶き方、つまりおしろいの水への分散が重要で、
丁寧にとかないと顔にぬったおしろいが浮いて粉がふいたようにみえたり、
また、伸びが悪くツヤが出なくて見苦しいと書かれています。

この頃から女性の化粧について、あれこれ指南する本があるのですから
面白いですよね。それだけ余裕が出てきたということでしょうか。

これらは都風俗化粧伝という本に紹介されており、江戸時代であっても女性は
肌をいかに美しく魅せるかが重要であったことがわかります。

現在では、鉛白は使用禁止となり、酸化チタンが白色顔料の代表格となっています。

ちょうど鉛白が使用禁止になった時期に、酸化チタンがアメリカで
工業生産が開始となり、白色顔料は酸化チタンに移りました。

酸化チタンには、鉛白のような酵素の働きを止めてしまうという毒性はないため、
今現在でも使用されています。

ただし、最近ではナノタイプの酸化チタンについて、懸念されることが
起こっているのは周知のごとくです。特に欧米では皮膚からよりも
肺からの吸収について、問題視されています。

ちなみにナノタイプでなくとも、酸化チタンや酸化亜鉛、酸化鉄は、
非常に粒子が細かいです。前回もお話しましたが、マイカやタルク、
オキシ塩化ビスマスに比べてもかなり小さいのが特徴です。

これは、顔料というのは、粒子が小さいほど発色がよくなるため、
非常に小さなサイズで作られているからです。

たとえば、酸化チタンや酸化鉄、酸化亜鉛と人間のサイズを比べると、
これらの顔料と人間の大きさの比率がちょうど
人間と地球との比率が同じくらいということです。

つまり、酸化チタンを人間に例えると、酸化チタンから人間を見れば、
人間は地球くらいの大きさくらいになります。

皆さんが思っている以上に顔料の粒子は小さいものです。

さすがにこれだけ小さなものを見るのですから、
電子顕微鏡を使う必要が出てきます。

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MMUの電子顕微鏡写真 byしんちゃん

電子顕微鏡写真を見るに当たって、その仕組みなどを書いていますので、
ブログの記事をご参考ください。
http://tvert.livedoor.biz/archives/51223134.html
http://tvert.livedoor.biz/archives/51223149.html


MMUですが、大きく分けて二通りあります。
一つは酸化チタンや酸化亜鉛、酸化鉄のような微粒子顔料が主成分にくるものと、
もうひとつはマイカやオキシ塩化ビスマスのような板状の大きな粒子が
主成分にくるものです。

単にカバー力から言えば酸化チタンや酸化鉄が上位にくるものの方が、
「顔料」のため、肌の色むらについての悩みをしっかりとカバーしてくれます。

一方、オキシ塩化ビスマスが主成分となれば、パール顔料のため、
マット過ぎない仕上がりになると思います。

ファンデーションの好みは人それぞれですので、どちらの方が良いかは
使ってみないとわかりません。

ただ、電子顕微鏡で見ると、二つが大きく違い、製造するメーカーの考えが
大きく異なることがわかると思います。

こちらは酸化チタン・酸化鉄を主成分にしたMMUです。
主成分が顔料であるため、3500倍で写真を撮っています。

写真は下のリンクになります。
http://image.blog.livedoor.jp/shin_chanz/imgs/c/3/c329f79a.jpg

5ミクロンくらいの板が入っていますが、それがマイカです。
(写真中央の下のバーが物差しとなります)

ガラスのように表面が平らとなっていますね。
小さい粒が酸化鉄もしくは酸化チタンです。

この小さな粒でも白っぽいのとねずみ色ぽっいやつの2種類がありますが、
これはどっちが酸化鉄もしくは酸化チタンかどうかはわかりません。

さらに1万倍で撮って見ました。
http://image.blog.livedoor.jp/shin_chanz/imgs/c/1/c155291e.jpg

画面中央の横棒の長さがちょうど1ミクロンとなります。
その横棒を使って粒子の大きさを見てみると、0.1〜0.2ミクロンくらいの
微粒子となっていることがわかります。
これが、酸化鉄、酸化チタンの大きさで、マイカとは大きく違うことが
お分かりになれたでしょう。

ただ、写真ぼけていますね。ごめんなさい・・(^^;;


こちらはアメリカの人気ブランドのMMUの写真です。
成分の一番最初にオキシ塩化ビスマスがやってきます。


写真は下のリンクになります。
http://image.blog.livedoor.jp/shin_chanz/imgs/9/7/9727ba9c.jpg

上で紹介したMMUとは何か違いますよね?

デカイ粒子(オキシ塩化ビスマス、マイカ)がまずドカーンとあって、
細かい粒子(酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛)があります。

この大きな板がオキシ塩化ビスマスとなります。

全体の粒子が大きいので800倍で撮りました。
(実際には2000倍でもピントを合わせています)

酸化チタンや酸化鉄などの顔料と全く大きさが違いますよね?
目で見ると、良くわかります。

肌の上に乗っかり、できるだけ落ちないようにするには
球状よりも板状の方が有利です。
それも面積が広い割りに薄い板の方がより肌に密着するというもの。

さらに酸化鉄や酸化チタン、酸化亜鉛などの顔料もこのオキシ塩化ビスマスの
板にくっつきます。つまり、小さな粒子を配合しても
結局は大きな粒子にくっつくので、全体としては大きな粒子となっていきます。

こうなると仕上がりはどうなるか別にして、
粒度の細かい酸化鉄・酸化チタン主体のMMUに比べて
吸い込みによる安全性も高くなるような気がしませんか?

余り細かい粒子で出来たものは、昔と違って今は肺への影響が
海外で問題になっていますし、一考の余地があると思います。

MMUが大きく分けて二通りというのは、この写真から
その粒子の大きさでお分かりになられるかと思います。


こちらも仕上がりが良くて人気のあるブランドのものです。

写真は下のリンクになります。
http://image.blog.livedoor.jp/shin_chanz/imgs/a/b/abfc8a55.jpg


オキシ塩化ビスマスが主体のものです。

大きな粒子としては、オキシ塩化ビスマスやマイカ、パールが入っています。
小さな粒子である顔料は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄です。

全体の粒子が大きいので800倍で撮っています。
(2000倍にもピントを合わせています)

左上に細長いものがありますが、何なのか良くわかりません。

他にはなかった特徴的な形ですね。

ところで、電子顕微鏡ですが、単に細かいものを見るだけではなく、
元素を分析することもできます。

20分程度かかるのですが、画面に映っているものを各元素に分けて分析していきます。
今回は行っていませんが、この分析装置を使えば、この形のものがどういう元素で
構成されているのかわかるため、成分の特定が可能になります。

逆に言えば、びっくりするような不純物も高感度で検出するため、
純度の低い原料を使っている場合は、大変怖い事実がわかってしまいます。

さて、こちらはマイカが主体のものです。

http://image.blog.livedoor.jp/shin_chanz/imgs/a/5/a56dfe8b.jpg

マイカが成分の上位にきて、様々なマイカの粒子の大きさがわかります。
一番最初のMMUもマイカを使用していましたが、このものとは粒子の大きさが違いますね。

小さな点は、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛となります。
顔料の配合量も少なく、あえて抑えているのかもしれません。


電子顕微鏡写真どうでしたでしょうか?

成分の名前や大きさをどうのこうのいうより、見てもらったほうが早いと思ったので
写真を撮ってみました。少しでもお役に立てることを願っています。



手作り美白化粧水と化粧品の役立つ知識 8月号(Date: Sun, 31 Aug 2008 13:10:00 +0900 (JST))
手作りファンデの電子顕微鏡写真 byしんちゃん

手作りのファンデに使われている微粒子酸化チタンの電子顕微鏡写真です。
http://image.blog.livedoor.jp/shin_chanz/imgs/2/7/27ce3b88.jpg

今までMMUの酸化チタンの粒子を電子顕微鏡写真で見ていただきましたが、
微粒子酸化チタンは非常に細かいのがわかります。

大きなマイカの粒子に、小さな微粒子酸化チタンがついています。

これは手作りファンデーションですが、ネットの販売店から購入した
微粒子酸化チタンをセリサイト、マイカに分散させたものです。

分散には乳鉢を使用されたとのこと。

マイカかセリサイトのどちらの粒子かわかりませんが、
この粘土の薄片に微粒子酸化チタンと酸化鉄の粒子がついているのがわかります。

すごく小さな粒子が微粒子酸化チタン。そしてそれより少し大きく、
白くなっているのが、酸化鉄の粒子です。
酸化鉄の粒子も細かいですが、微粒子酸化チタンの粒子は、とても小さいです。

乳鉢でゴリゴリすりつぶすと、時間も労力もかかりますが、
うまいこと微粒子酸化チタンを分散させていると思います。

写真下のバーが1ミクロンの長さを表しています。

ところで忘れてならないのは、紫外線の大きさは約0.2〜0.4ミクロンの長さです。
波長によって、長さは変わりますし、肌に当たる角度によっても大きさは変わります。

つまり、紫外線防御を考えると、この約0.2ミクロンという隙間を
酸化チタンや酸化亜鉛、もしくは有機系紫外線吸収剤で埋めないと、
隙間から紫外線が肌へ侵入していきます。

酸化チタンや酸化亜鉛は、あくまで皮膚を覆っている部分のみ紫外線を反射したり
吸収して防御してくれますが、酸化チタンの粒子が塊となっていたり、
粒子と粒子の間に隙間があると、そこから紫外線が入っていき、
「日焼けする」という状態となります。

他の手作りファンデーションも見てみました。

真珠パウダー、グリーンホワイトマイカ、セリサイト、ゴールドマイカを
乳鉢ですりつぶしたものです。

酸化鉄や酸化チタンが入っていないので、カバー力はなく、
仕上げのルースパウダータイプですね。

高倍率でも見てみましたが、とくに小さな粒子はありませんでした。
顔料系の成分が入っていなければ微細粒子はほとんどありません。
http://image.blog.livedoor.jp/shin_chanz/imgs/4/1/4123142c.jpg


こちらはピンクマイカとセリサイトで、乳鉢で潰していない画像です。
粒子が大きいものと小さいものがあります。
どちらが、マイカでセリサイトかというのは、はっきりわかりませんが、
おそらく大きな粒子がセリサイトだと思います。

大きな粒子に小さな粒子がついていますが、こちらは薄片が潰れたものの可能性があります。
硬い金属片なら簡単には壊れませんが、タルクやマイカ、
セリサイトのような粘土粒子なら、薄片が割れていくこともしばしばあります。
http://image.blog.livedoor.jp/shin_chanz/imgs/a/f/af42af25.jpg


さらに倍率を上げて大きな粒子の表面を見たものです。
大きな粒子の上にちがう種類の小さな粒子が乗っかっていますが、
大きな粒子の表面も少し割れて、小さな粒子が出来ているのがわかります。
http://image.blog.livedoor.jp/shin_chanz/imgs/e/7/e7b2f5e6.jpg


こちらはセリサイトにマイカ、シルクパウダー、真珠パウダー、無水ケイ酸パウダー、
微粒子酸化チタンと酸化亜鉛、酸化鉄を使用したものです。

玉が入っていますが、おそらく無水ケイ酸だと思います。
皮脂を吸って、皮脂をコントロールする効果があります。皮脂が多く出る方には
よいですが、皮脂が少ない方は配合しないか、配合しても少量の方がよいでしょう。

微粒子酸化チタンと酸化亜鉛を配合しているとのことでしたが、
倍率を上げてもわかりませんでした。

配合量が少なくて、たまたま視野に入ってこなかったのか、微粒子酸化チタンといえど、
粒子が大きくて、他の配合物と区別がつかなかったのかもしれません。
http://image.blog.livedoor.jp/shin_chanz/imgs/2/4/24abe4d2.jpg


手作り美白化粧水と化粧品の役立つ知識 10月号(Date: Fri, 10 Oct 2008 08:50:00 +0900 (JST))
MMUを開発しました byしんちゃん

ミネラルファンデーションの開発を行いました。

メルマガの反響により要望が多かったのと、いくつかのMMUメーカーさんから
「安全性」やら「天然」について様々な意見を頂きましたので、
こちらとしてもMMUについて模索を行いたいと思いました。

他のミネラルファンデーションとの違いは、酸化チタンにこだわったところ。

このこだわりは、意見を頂いたMMUメーカーさんにもはっきり伝えています。

日本の化粧品会社や原料会社による化粧品文化は、
いかに酸化チタンの安全性を向上させるかに競争しているのが、特徴だと思います。
アメリカの自然派化粧品メーカーにはない発想です。

どういうことかというと、アメリカの自然派化粧品メーカーは、
ミネラルファンデーションに使用する酸化チタンはピュア酸化チタンを使用します。

これは、天然ミネラルを謳い文句にするためには、必要な処置でしょう。

しかし、日本では、ピュア酸化チタンというのは、(日光によって)肌に悪く、
如何に改善するかが焦点となっています。

たとえば、最近発表された某ブランドのファンデーションでは、
酸化チタンの安全性を向上させるため、リン脂質でコーティングしたことを
特徴としています。
ピュアな酸化チタンでは、肌の具合が悪くなっていくというデータが
示されていますが、まさにこのピュア酸化チタンは
ミネラルファンデーションに使用されている酸化チタンそのもの。
kose.co.jp/jp/ja/ir/index.html
(ニュースリリースに掲載されています)

日本には化粧品開発者向けの雑誌がいくつかありますが、
そこにも10年以上前からピュア酸化チタンの問題点を
指摘する論文が掲載されています。

たとえば、ピュア酸化チタンとコーティング酸化チタンで
パウダーファンデーションをつくり、ねずみの皮膚に塗って、
紫外線を当てるとピュア酸化チタンの方は肌が壊れたとか、
また、酸化チタンの原料メーカーの論文では、ピュア酸化チタンと
コーティング酸化チタンを油に分散して、ねずみの皮膚に塗り、
紫外線を当てると、ピュア酸化チタンの方は、
皮膚の細胞が細胞死を起こす割合が多かったとか、
他にも培養細胞系で、ピュア酸化チタンは細胞死を誘導させる割合が高いとか・・・。

化粧品原料で、開発者向けの雑誌で、この成分は危ないから
どう使いこなすべきかと取り上げられる原料は、
界面活性剤か酸化チタンぐらいなものだと思います。

ちなみに酸化チタンの何がいけないかというと、
日光に当たると活性酸素を発生させる点です。
(日光にあたらないと問題ない)

酸化チタンは、活性酸素の発生量が多いアナターゼ型と顔料として
使われるルチル型の2種類があり、化粧品に使われるのは主にルチル型となります。

ルチル型はかなり活性酸素の発生量が少ないのですが、全く無いわけではありません。
そのため、酸化チタンの表面にシリコーンオイルやシリカ、
アルミなどをコーティングして活性酸素の発生を防ぐわけです。

約半世紀前に、酸化チタンを使用したペンキを樹脂の表面に塗ったら、
樹脂がボロボロになったことから、この酸化チタンの活性酸素発生の
メカニズムがわかりました。

ちなみに、大学で化学を専攻したら、酸化チタンや酸化亜鉛が
紫外線を吸収することによって、活性酸素を発生させる光触媒効果などについて
学ぶことがあるかと思います。

当然、学生の頃に酸化チタンが紫外線に当たると、紫外線を吸収する一方、
活性酸素を発生させると学んでいますので、化粧品会社に入ったら、
どうやって酸化チタンを安全に使いこなすかということについて興味を持つのは、
自然な成り行きでしょう。

ただ、ピュアな酸化チタンを使用しているかといっても、ルチル型なら
日光を直接肌に当てるよりは安全だと思います。
ピュア酸化チタン系のミネラルファンデーションを使用しても
何もせず日光に当たる男性よりは、肌は守られています。

しかし、それでも酸化チタン自体の安全性を「より高める」ために
研究するのが、日本企業の文化。
普通は中小メーカーが大手の化粧品は危険だと宣伝するのが常なのに、
酸化チタンに限っては逆となっています。

つまり、自然派化粧品メーカーが使用しているピュア酸化チタンが
危険だと大手メーカーが宣伝したり、また、動物実験やら培養細胞等のデータも
化粧品の論文誌にいくつも掲載され、ピュアな酸化チタンを取り巻く状況は、
日本ではあまりよいとはいえません。

さて、以前にいくつかのメーカーのMMUの電子顕微鏡写真を見ていただきました。

大手のMMUの写真と他のメーカーのMMUの見比べると、
大変興味深い点に気づかれるかと思います。

天然を謳い文句にしているメーカーのものをいくつも集めたつもりですが、
大手のMMUと粒子の極端な違いがないのです。

天然鉱物を切り出して、ファンデーションを作るなら、粒子の大きさなど、
結構ばらつきがあるはず。それがなぜか、大きな粒子と小さな粒子に分かれていて、
大きな粒子は、大きさにばらつきがありますが、小さな粒子は、
どれもだいたい0.0002〜0.0003ミリくらいの均等な大きさ。

この大きさには意味があり、光を最大限に跳ね返し、ファンデーションに
色を付ける顔料としては最も効果的なサイズ。

粒子の形も揃っていて、大きさも10万分の1〜1万分の1ミリ単位で制御され、
これはまるで・・・・(^^;;

まあ、天然ミネラルを1万分の1ミリ単位で削って、
大きさも均一にする工作機械を使用していると言われたら、
返す言葉もありませんが、現実的には、重金属の少ない精製ミネラルを
使用しているということでしょう。

電子顕微鏡写真というのは、結構、色々なことがわかります(笑)

さて、酸化チタン自体の主な用途は顔料で、ペンキやインキ、
紙などに使われています。
それも化粧品に使われるルチル型がよく使用され、
ペンキやインキに使われる酸化チタンですら、活性酸素を対策を行っている
コーティングタイプを使用しています。

これは、酸化チタンの分散をよくさせるという意味合いも強いですが、
日光に当たって、活性酸素が出てしまうと、漂白剤のような働きとなり、
他の色を退色させる原因にもなるからです。
もちろん酸化チタン自体も無傷なままではなく、白から黒ずんでいきます。

日本では、町に張っているポスターや折込チラシですら、
コーティングタイプの酸化チタンを使用しているのに・・。

まあ、たとえルチル型を使用していても日光を直接顔を当てるよりは
マシなので、アメリカではルチル型を使っていれば、大丈夫、大丈夫という
感じなんでしょうか。
日本企業が重箱の隅をつつくような細かいところに
執着しすぎというだけなら、よいのですが。

ただ、自然派化粧品というのは、安全性に少しでも疑念がある成分は
使わないというのが、誕生のきっかけだと思いますので、
どうもピュア酸化チタンの使用には釈然としないものがあります。

ちなみにピュア酸化チタンを使用しているかどうかは、
全成分表示をみればわかります。酸化チタンや酸化亜鉛を
コーティングしている場合は、そのコーティング剤が表示されるからです。

コーティング剤を使用すると、肌に触れるのは、中身の酸化チタンではなく、
外側のコーティング剤の方なので、その化粧品で肌にアレルギーを起こすかどうか
判断するには、コーティング剤の成分が表示が必要となります。
(化粧品全成分表示制度の基本です)

肌に安全なコーティング剤というのは、決まっていて、
シリコーンオイルやステアリン酸Alなどの金属石鹸、アルミナや水酸化Al、
シリカなどのミネラル系コーティング剤くらいしかありません。

酸化チタンをコーティングすることで、肺に入っても、
ピュア酸化チタンは炎症を起こすが、コーティングタイプは
炎症を起こさないなどの報告もあり、肌に塗っても間違って吸い込んでも
安全性が確実に高くなっています。

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MMUの吸引と酸化亜鉛 byしんちゃん

微粒子を吸引すれば、肺にまで到達するでしょうか?

この問いかけに対する答えは、酸化亜鉛による職業病の調査報告に記載されています。

酸化亜鉛は、消炎効果があり、赤ちゃんのおむつかぶれにも使用されているほど、
皮膚病治療薬としての効果があります。

しかしながら、酸化亜鉛の微粒子を吸い込むと、
金属ヒューム熱の原因となることが確認されています。

ヒュームとは、溶接などで生じた金属の蒸気が、
空気中で冷えて微粒子状になったもの。

亜鉛は、鉄にメッキすることで、鉄がさびるのを遅らせる効果があります。
そのため、工場や家、様々な建築現場で使われ、
亜鉛をメッキした鉄板を切断したりする際に、亜鉛が蒸発し、
微粒子となって空気中に撒き散らされます。

この微粒子を吸い込むと、肺にまで達し、
発熱や吐き気、悪寒などを引き起こします。

ただし、微粒子のサイズによって、どこまで侵入していくかは大きく変わり、
5μ以上のものは、鼻やせいぜい喉にしか沈着しません。

鼻についたものは、そのまま排出されるか、また、喉に入ったものは、
飲み込んでしまうだけで、肺には入りません。

さらに2−5μのサイズだと、気管支部の粘膜上で捕捉されますが、
粘膜の生理的作用や繊毛運動によって、上の方に運ばれ、
結局つばと共に飲み込むことになります。(腸では全く吸収されません)
気管の繊毛運動は、空気には塵や砂、さまざま微粒子、
細菌等が混ざっていますので、それらの異物を吸ったときに
除去する作用のことです。

つまり、気管の下に異物が引っかかったなら、繊毛運動によって
異物を上に押し上げ、気管から取り除いていきます。
無菌環境を保つくらいのレベルですので、
たいていの異物は肺に簡単には入りません。

問題は、ナノ粒子です。鼻の中や喉、気管支の壁などに付着せずに
肺にまで入っていくと、肺胞に付着し、金属ヒューム熱の原因となります。

1mmの10万分の1以下の小さな粒子ですので、労働環境によっては、
激しく息を吸っているときもあり、あっという間に肺へ到達してしまうわけです。

参考文献:溶融亜鉛メッキ その健康への影響 鉛と亜鉛、38、3、21、2001

MMUには、オキシ塩化ビスマス、タルク、マイカなどが主に使われますが、
いずれも20ミクロン以上の巨大な粒子です。
基本的には、健康であるなら、肺に入りません。

酸化鉄、酸化チタンにしても、電子顕微鏡で見ると、いくつもの粒子が集まって、
大きな粒子となっていました。

当初は、MMUの吸引を懸念していましたが、
ナノ粒子を使っていない限り、肺には入ることが無いかと思います。

なお、酸化亜鉛による金属ヒューム熱が起こる職業というのは、造船所が典型例で、
亜鉛精錬、亜鉛メッキ作業、亜鉛メッキされた金属の溶接、切断作業があります。

酸化亜鉛を吸っても安全な量というのは、空気1m3当たり、
0.005gとなり、微粒子酸化亜鉛を吸うときにのみ金属ヒューム熱が発生します。

発症は、急性型で暴露4〜8時間で、口の中が乾いたり、
口の中で金属味が突然出現し、その後悪寒、発熱、筋肉痛、頭痛、
倦怠感などが出現します。
これらの症状は24時間〜36時間後に自然と消滅します。
数日も暴露すると、体は耐性をもってきます。
月曜日に発熱することが多いことから、月曜熱とも呼ばれます。
参考文献:臨床医からみた産業中毒例、亜鉛ヒューム熱、
産業医学ジャーナル、12、4、35−38、1989

ちなみに酸化鉄や酸化チタンなどは、金属ヒューム熱の原因にはなりません。
化粧品に使われる原料では、酸化亜鉛のみが金属ヒューム熱の原因となります。

また、酸化亜鉛の金属ヒューム熱は、体はすぐに耐性を持つという特徴があり、
何日も酸化亜鉛の微粉末を吸っても、金属ヒューム熱の症状がでるのは、
初日程度となります。

なお、よほど吸い込まない限り、MMUの酸化亜鉛で、
金属ヒューム熱を発症することはないでしょう。
最終更新:2009年11月23日 22:29
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