とある一人の少年が大きな扉の前に立っていた。
その少年の名前はギコと言う。
そしてそのギコの前にある扉は…禁断の扉。
この扉の向こう側には過去がある。
そう、ギコは禁断の扉を開けて過去へ行こうとしているのだ。
勿論興味本位などで行こうとしている訳ではない。
「しぃ…今生き返らせてやるからな。」
好きだったAAを生き返らせたい。それが理由だ。
あれは一ヶ月前の事だ。
ギコはしぃと言うAAが好きだった。
だがしぃは交通事故で死んだ。ギコを庇って。
ギコは悔しかった。自分は好きな人も救えず、逆に救われたのだから。
それからギコは一ヶ月間死に物狂いで自分の心と格闘し、そして決心した。
「過去へ行ってしぃを生き返らせる。」
例えそれが禁断の行為であったとしても…。
そしてギコの足が動き出す。
いよいよその時がきた。しぃを救う時が。
扉に近付くに連れてその重圧は増していく。
だが今のギコにもう迷いは何もない。
一歩一歩確実に扉へ歩を進めていく。
そしてギコの体が扉の境界線に入ったその時、突然扉が光りだした。
ギコは意を決してその扉へと飛び込んでいった。
その光のエネルギーは予想以上に強大だった。
「こんなものしぃの痛みに比べれば…。」
それでもギコの気持ちが歪むことはない。
だが気持ちだけではエネルギーに敵わず、ギコは意識を失ってしまう…。
ギコが意識を取り戻すとそこは自分の家だった。
ギコは一瞬ぼーっとしていたがすぐに我に返りカレンダーに目をやる。
そしてそのカレンダーは確かに過去へ戻ったことを証拠立てていた。
次にギコが目をやったのは時計だった。
「時間がない…。」
運命の時刻まであと一時間を切っていた。
それを見たギコは慌てて立ち上がった。
あの惨劇の舞台までは三十分もあれば着くが、それでも今のギコには時間が無さ過ぎた。
ギコは慌てて家を飛び出し必死で走った。
このペースで行けばギコはおそらく間に合うであろう。
けれど運命を変えるのを許そうとしない者が彼の前には立ち塞がっていた…。
「誰だお前は。そこをどけ。」
ギコの前には黒いフードを身に纏った自分とよく似たAAがいた。
「君だね、運命を変えようとする者は。けど無駄だよ。運命は変えられない。」
ギコはその言葉を聞いて目の前に立っている相手がどう言う人物なのかを把握した。
そして次の瞬間そのAAが敵である事も分かる。
「心配しないで。殺しはしない。君をあるべき所へ帰すだけ。」
そのAAはフードから鎌を取り出した。
今のギコにとってはしぃの居ない世界で生きることは死ぬことよりも苦だった。
それ程までにギコはしぃの事を愛していたのだ。
そしてギコは決心した。目の前の敵と戦うことを。
「俺は…必ずしぃを救ってみせる!」
ギコは護身用の剣を取り出す。まさかこんな事に使うとは思ってもみなかっただろう。
それを見た相手のAAは纏っていた黒いフードを脱ぎ捨てた。
そのAAは色は蒼で口はハイフンだったが、それ以外はギコとそっくりだった。
「最後に教えてあげるよ。僕の名はファティ、運命の番人さ。」
ファティと名乗ったAAはそう言うとギコへと踏み込んできた。
ギコも咄嗟に剣を構える。
そして次の瞬間金属同士のぶつかる音が辺りを覆った。
力は…ファティが勝っている。
所詮ギコは普通の少年。運命の番人であるファティに劣るのは当然だ。
だがギコはこの戦いに負ける訳にはいかない。
ギコは一旦相手との間合いを取った。
このまま闇雲に戦っていたら勝ち目はない。そう思ったからだろう。
そんなギコの考えを悟ったのかファティがこう言う。
「何をしたって無駄だよ。運命は僕の見方なんだから。」
ファティはギコを追い詰める為に言ったのだろうがギコはその言葉を冷静に受け止めた。
「だったら…運命が味方出来なくすればいいんだな。」
するとギコは無謀にもファティの元へと突っ込んでいった。
だがファティがそう易々と攻撃を許す筈がなかった。
ファティはギコへと向かって鎌を振る。
だがギコは…避けずに当たった。
「な…、どうして避けないんだ。」
だが次の瞬間ファティはその理由が分かった。
ファティは自分に隙が出来ていたことに気付いた。
ギコは渾身の力を込めてファティを刺した。
ファティはその場に倒れ込む。
「俺が運命に反すればお前に運命は見方出来なくなる。そうだろ?」
ファティの体はもう動きそうにないが意識はまだあった。
「まさかこんな方法で僕に勝つなんてね…。君には負けたよ。」
ファティは負けを認めたが、最後にこう付け足した。
「でももう手遅れだよ。もう今からじゃ運命は変えられない。」
ギコが時計を見ると運命の時刻まであと十分ちょっとしかなかった。
それを見たギコは慌てて再び走り出していった。
残りの距離からして全力を出せば何とか辿り着けそうだ。
だが鎌のダメージが大きい今のギコにとってはそれはあまりにも無謀だった。
それでもギコは一生懸命走った。死に物狂いで走った。
一歩一歩踏み出すごとに体を襲う激痛。
だが「しぃの痛みに比べれば…」と必死で走るのをやめない。
そして…遂にしぃを見付けた。
しかしそこは惨劇の舞台の目の前だった。
だがしぃはギコが後ろに居ることに気付いていない。
呼び止めようにも擦れて声が出ない。これが運命と言うやつなのだろうか。
ギコは最後の力を振り絞ってしぃを止めようとした。
しかし無常にもしぃは惨劇の舞台へと足を踏み入れてしまった…。
鋼鉄の塊がしぃに迫りくる。
そして次の瞬間車のブレーキ音と共に何かがぶつかる音が辺りに響き渡った。
だがしぃは轢かれていなかった。
「ギコ、しっかりして!」
そう、轢かれたのはギコだった。
運命を変えるには自分を犠牲にするしかなかった…。
けれどギコは幸せだった。自分の大切なAAを救うことが出来て。
ギコは自分の命を犠牲にしてしぃを生き返らせたのだ。
そしてそれから一ヶ月が過ぎた…。
とある一人の少女が大きな扉の前に立っていた。
「ギコ…今生き返らせてあげるからね。」
その少女の名前はしぃと言う。
この世界は二度と動くことはない。
二人に愛がある限り…。
その少年の名前はギコと言う。
そしてそのギコの前にある扉は…禁断の扉。
この扉の向こう側には過去がある。
そう、ギコは禁断の扉を開けて過去へ行こうとしているのだ。
勿論興味本位などで行こうとしている訳ではない。
「しぃ…今生き返らせてやるからな。」
好きだったAAを生き返らせたい。それが理由だ。
あれは一ヶ月前の事だ。
ギコはしぃと言うAAが好きだった。
だがしぃは交通事故で死んだ。ギコを庇って。
ギコは悔しかった。自分は好きな人も救えず、逆に救われたのだから。
それからギコは一ヶ月間死に物狂いで自分の心と格闘し、そして決心した。
「過去へ行ってしぃを生き返らせる。」
例えそれが禁断の行為であったとしても…。
そしてギコの足が動き出す。
いよいよその時がきた。しぃを救う時が。
扉に近付くに連れてその重圧は増していく。
だが今のギコにもう迷いは何もない。
一歩一歩確実に扉へ歩を進めていく。
そしてギコの体が扉の境界線に入ったその時、突然扉が光りだした。
ギコは意を決してその扉へと飛び込んでいった。
その光のエネルギーは予想以上に強大だった。
「こんなものしぃの痛みに比べれば…。」
それでもギコの気持ちが歪むことはない。
だが気持ちだけではエネルギーに敵わず、ギコは意識を失ってしまう…。
ギコが意識を取り戻すとそこは自分の家だった。
ギコは一瞬ぼーっとしていたがすぐに我に返りカレンダーに目をやる。
そしてそのカレンダーは確かに過去へ戻ったことを証拠立てていた。
次にギコが目をやったのは時計だった。
「時間がない…。」
運命の時刻まであと一時間を切っていた。
それを見たギコは慌てて立ち上がった。
あの惨劇の舞台までは三十分もあれば着くが、それでも今のギコには時間が無さ過ぎた。
ギコは慌てて家を飛び出し必死で走った。
このペースで行けばギコはおそらく間に合うであろう。
けれど運命を変えるのを許そうとしない者が彼の前には立ち塞がっていた…。
「誰だお前は。そこをどけ。」
ギコの前には黒いフードを身に纏った自分とよく似たAAがいた。
「君だね、運命を変えようとする者は。けど無駄だよ。運命は変えられない。」
ギコはその言葉を聞いて目の前に立っている相手がどう言う人物なのかを把握した。
そして次の瞬間そのAAが敵である事も分かる。
「心配しないで。殺しはしない。君をあるべき所へ帰すだけ。」
そのAAはフードから鎌を取り出した。
今のギコにとってはしぃの居ない世界で生きることは死ぬことよりも苦だった。
それ程までにギコはしぃの事を愛していたのだ。
そしてギコは決心した。目の前の敵と戦うことを。
「俺は…必ずしぃを救ってみせる!」
ギコは護身用の剣を取り出す。まさかこんな事に使うとは思ってもみなかっただろう。
それを見た相手のAAは纏っていた黒いフードを脱ぎ捨てた。
そのAAは色は蒼で口はハイフンだったが、それ以外はギコとそっくりだった。
「最後に教えてあげるよ。僕の名はファティ、運命の番人さ。」
ファティと名乗ったAAはそう言うとギコへと踏み込んできた。
ギコも咄嗟に剣を構える。
そして次の瞬間金属同士のぶつかる音が辺りを覆った。
力は…ファティが勝っている。
所詮ギコは普通の少年。運命の番人であるファティに劣るのは当然だ。
だがギコはこの戦いに負ける訳にはいかない。
ギコは一旦相手との間合いを取った。
このまま闇雲に戦っていたら勝ち目はない。そう思ったからだろう。
そんなギコの考えを悟ったのかファティがこう言う。
「何をしたって無駄だよ。運命は僕の見方なんだから。」
ファティはギコを追い詰める為に言ったのだろうがギコはその言葉を冷静に受け止めた。
「だったら…運命が味方出来なくすればいいんだな。」
するとギコは無謀にもファティの元へと突っ込んでいった。
だがファティがそう易々と攻撃を許す筈がなかった。
ファティはギコへと向かって鎌を振る。
だがギコは…避けずに当たった。
「な…、どうして避けないんだ。」
だが次の瞬間ファティはその理由が分かった。
ファティは自分に隙が出来ていたことに気付いた。
ギコは渾身の力を込めてファティを刺した。
ファティはその場に倒れ込む。
「俺が運命に反すればお前に運命は見方出来なくなる。そうだろ?」
ファティの体はもう動きそうにないが意識はまだあった。
「まさかこんな方法で僕に勝つなんてね…。君には負けたよ。」
ファティは負けを認めたが、最後にこう付け足した。
「でももう手遅れだよ。もう今からじゃ運命は変えられない。」
ギコが時計を見ると運命の時刻まであと十分ちょっとしかなかった。
それを見たギコは慌てて再び走り出していった。
残りの距離からして全力を出せば何とか辿り着けそうだ。
だが鎌のダメージが大きい今のギコにとってはそれはあまりにも無謀だった。
それでもギコは一生懸命走った。死に物狂いで走った。
一歩一歩踏み出すごとに体を襲う激痛。
だが「しぃの痛みに比べれば…」と必死で走るのをやめない。
そして…遂にしぃを見付けた。
しかしそこは惨劇の舞台の目の前だった。
だがしぃはギコが後ろに居ることに気付いていない。
呼び止めようにも擦れて声が出ない。これが運命と言うやつなのだろうか。
ギコは最後の力を振り絞ってしぃを止めようとした。
しかし無常にもしぃは惨劇の舞台へと足を踏み入れてしまった…。
鋼鉄の塊がしぃに迫りくる。
そして次の瞬間車のブレーキ音と共に何かがぶつかる音が辺りに響き渡った。
だがしぃは轢かれていなかった。
「ギコ、しっかりして!」
そう、轢かれたのはギコだった。
運命を変えるには自分を犠牲にするしかなかった…。
けれどギコは幸せだった。自分の大切なAAを救うことが出来て。
ギコは自分の命を犠牲にしてしぃを生き返らせたのだ。
そしてそれから一ヶ月が過ぎた…。
とある一人の少女が大きな扉の前に立っていた。
「ギコ…今生き返らせてあげるからね。」
その少女の名前はしぃと言う。
この世界は二度と動くことはない。
二人に愛がある限り…。