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ラブレターを書くにあたって (雲井)

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匿名ユーザー

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『この高校に入学して先輩を始めて見かけたのが一年前、その間ずっと心に仕舞い続けてきたこの気持ち、勇気を出して伝えようと思います。じつは……。』

 ここまで書いてギコはペンを置いた。
「……ダメだ、硬すぎる」
 便箋をクシャクシャに丸めてゴミ箱へ放り込む。既に何枚もの便箋が丸められてゴミ箱の周りに散乱していた。

 ギコは困っていた。ラブレターを書くという作業がこれほどまでに難しいことだとは思っていなかった。一年間あこがれてきた先輩に想いを伝える決心をしたのはいいが、恋文を書く段階でこのザマである。
「おちつけ、もっと柔らかくいこう」
 ギコは再びペンを持った。


『ヾ( `・Å・)ノ【゜+。койβαйшα。+゜】
可愛い後輩のギコでーす! 自分で言うなよ(●´艸`)
じつは だいじなお話があるんですけどー(*/ェ\*)』


 ペンが止まった。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
 ギコは便箋を引き千切った。
「なんだこの神経を逆撫でするような文章は! 気色悪い! いかんいかん……ラブレターなんだからもっとロマンチックに……」


『一年前の君は僕の心に一本の種を植えたのさ、そしてその種は今まさに満開の恋の花を咲かせ……』


「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 ギコは便箋をゴミ箱へ叩き込んだ。その後、誰かに見られることを恐れチャッカマン持ってきて焼却した。
「もう何?! 何が言いたいの俺? 種って何よオイ!」
 自己嫌悪で胸いっぱいのギコ。再びペンを持ったのは三十分後だった。


『好きです つきあってください』


「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 どうやらこれで決定らしい。三時間もかけて書いた物が これ、恋の難しさである。

 
 大仕事を終え、布団へ入る。
 明日、先輩にこれを渡す、そう思うと中々寝付けないギコだった。

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