いくら百獣の王だって嬉しくもない。
悲しいだけなんだ。
サバンナでは、馬鹿にされたりすることはなかったけど、
逆に構ってくれなくて寂しいんだ。
ーーーダンデライオンーーー
俺は毎日のように今日も寂しく下を向き、
しぶしぶ、しょんぼりと歩いていた。
すると、俺の懐に、何かいた。
小さくて、綺麗な黄色い、太陽みたいな美しい人だった。
俺はそいつに吠えてみた。何度も何度も、吠えてみた。
それでもそいつは、無言で、動こうともしなかった。
俺はそいつに尋ねてみた。
「お前は、俺が怖くないのか?逃げないでいてくれるのか?なぁ」
そう言ったとたん、風が吹いてきた。
***その時そいつはこくっとうなずいた。***
俺は今度は違うことを、怒鳴るように尋ねてみた。
「おぃ。お前は涙の理由を知ってるか?俺には分からないんだ。
もしかして、この濡れたほほの暖かさはお前がくれたのか?」
しかし、そいつは喋らなかった。
ーー次の日ーー
今日は雨が降っていた。それでも俺はそこを歩いていた。
今日は、あいつに土産をやろうと思った。
黄色いきらきらした太陽のような琥珀を。
すると、そこに雷鳴が響き、やがて俺が渡っていた吊り橋が
谷底へと落ちた。
俺も、一緒に谷底へと落ちた。
体は石のように動かず、雨はあがらなかった。
俺の体からは、血がどっと出ていた。
俺は思った。
***俺も、お前のような姿になれば、愛してもらえるのかな・・・***
もう、元気な響く声はだせなかった。
しかし不思議と寂しくなかった。
濡れたほほの冷たさは、恐らくお前は知らなくていいだろう。
俺は心の中で、そいつに伝わるようにように言った。
「なぁ、涙の理由、分ったぜ。
この心の暖かさが、答えだ。なぁ」
ライオンのギコは死んだ。そう言い残して。
ーーー春ーーー
俺はあいつと同じ姿になれた。
そして、たくさんの子供を産んだ。
とても可愛い子供達だった。
あいつらも、俺のような寂しい奴ではなく、
あの「たんぽぽ」のような、明るい奴になってほしい。