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勝手にNIGHTMARE CITY (???)

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匿名ユーザー

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第1章 プロジェクト


ギコは父の元へ向かっていた。


電車は揺れる、窓の景色もめまぐるしく変わる、久しぶりに退屈しない日…ギコは心底ワクワクしていた。

なんせ高校一年最初の夏休みで部活もやってないギコは毎日がとにかく暇で仕方が無かったのだ、友達とも良く遊んでいたが、ギコの住んでる街はとくに何がある訳でもなく、遊んでいてもすぐに飽きてしまった。

バイトでもやろうかなんて思ったりもしてみたが、やる気が出ないし、そもそもギコの高校はバイト禁止だったのである、見つかったら停学は免れないだろう高校に入って早々停学はゴメンだ

しかし、だからと言って原付免許を持っている訳も無く、金も無いギコはとにかくやることが無かった。

(ああ…俺って大切な青春を思いっきり無駄にしてるような気がする…)

ギコはたびたびそんな事を考えた。大体こんな青春の過ごし方をしてたら『若かったあの頃は良かったなぁ…』と言っている中年の人々に申し訳が無い

それでもギコは毎日ダラダラ過ごし、変化の無い毎日を送っていた。

そんなある日、そんなギコの毎日に転機とも言える出来事が起きたのだ。

ギコの父親が現在会社で、とあるプロジェクトに取り掛かっていて、それについてギコに付き合ってほしい事があるらしく、ギコを会社に呼んだのだ

ギコの父は、名前を聞けば誰でも知ってる某有名コンピューター会社の重役だ、何でもそのプロジェクトとは、最新コンピューターを使って行われる人類史上始まって以来の試みらしい、こんな壮大なプロジェクトにギコは付き合う事になったのだ。

ギコにはもちろん若干の緊張はあったのだが、期待のほうが大きかった。なんせ、こんな大きなことに関われるとは思ってもいなかったからだ。

と、言うわけでギコは今電車で父のいる会社へ向かっていたのだ、ギコは電車の窓からの景色を見つめた。

「それにしても遠いな…父さんの会社…それにプロジェクトって具体的にはどういうものなんだろう…」

ギコは思わず呟く、でもまぁ着いてみれば全て分かるか、と思い
のんびり到着を待つ事にした。


しばらくして……電車は父の勤める会社のある街へ到着した。父に渡された駅から会社までの地図を見ながら進む…

「ここか…」

ギコは会社に着いた。それは圧倒されるほど大きいビルだった。ギコはそのビルの中に入る…

「うわっ……広いな…」

会社のロビーはとにかく広かった。足元には柔らかな絨毯が敷き詰められており、所々にある壁や柱も大理石で出来ており、まるでホテルのロビーのようであった。

「えっと…父さんは46階の特別プロジェクト室に来いと言ってたよな…」

ギコはエレベーターに乗り、46階のボタンを押す。エレベーターからは外の景色が見えた。他の建物や、車や人などがどんどん小さくなっていく

やがて、エレベーターは46階に着き、ギコはそこで降りる、その階をうろついていると“特別プロジェクト室”の扉が見えた。ギコはその扉をノックする

すると中からギコの父親が出てきた。

「おお、ギコじゃないか、待ってたぞ」

父の声を聞くと、ギコは「失礼します」と言い、中に入る

「じゃあギコ、ひとまずこっちに来て座ってくれ」

ギコは父に案内され、黒いソファーに座った。ギコの父も向かい側に座る

「で? 父さん、今日俺が付き合うプロジェクトってのは具体的にはどういうものなの?」

ギコは父に聞いた。

「うむ、では順を追って説明しよう、まず…ギコよ、お前にはこのプロジェクトの被験者になってもらいたいわけだ」

「被験者って…実験台ってことかよ」

ギコは不安げな顔で言った。

「おいおい…そんな辛気臭い顔をするもんじゃない、別にギコに危険な事をさせるわけじゃない、むしろゲーム感覚でできる事だよ」

なおも疑わしい顔をするギコを尻目に父はさらに続ける

「ウチの会社で現在、取り掛かっているプロジェクト…そのプロジェクトの名は“Dream City”…つまり夢の街だ、“我々人間は、夢の中で生活を営む事ができるのか”私たちはそのような実験を始めたのだ。そして、最新のコンピューター技術によって、やっとの事でそれが実現…現実の物となった。何度も実験を重ね、ついにこのプロジェクトも成功しようとしている…今日はその最終実験なんだよ、このプロジェクトが無事成功すれば世の中はガラリと変わる、全てが一新する…! どうだギコよ、協力してくれるか?」

「…………」

余りに荒唐無稽なその話を、いまだギコは信じれずにいた。大体そんな事が可能なのか…?夢の中で生活するなど…ギコは少し考えた。


第二章 Dream City


ギコはしばし考えた後、やっとの事で口を開いた。

「分かった。協力するよ、とりあえず…安全なんだよね…」

「ああもちろんだとも! 大船に乗ったつもりでいてくれ!」

ギコの父は自信たっぷりという表情で言った。

「ああ、分かったよ、じゃあ何をすればいい?」

ギコが父に聞く

父は「じゃあこっちに来てくれ」と言い、ギコを部屋の奥へ案内した。

部屋の奥は、ずいぶんとゴチャゴチャしていた。たくさんの数のコンピューターが並び、なにやら棺のような形をした物までがたくさん置いてあった。

「チーフ! その子が息子さんですか?」

社員の中の一人らしい男が、ギコの父に話しかけた。男は背広の上に研究の時に使う白衣を羽織っていた。よく見ると周りの社員たちも同じような格好をしていた。

「うむ、そうだ、これより息子もDream Cityの中に入る、スタンバイしてくれたまえ」

「はい、分かりました。」

社員の一人はギコの父にそう言われると、コンピューターの一台へ向かった。

「よし、ギコよ…これから実験を開始する、おまえは今からあのカプセルの中に入るんだ」

ギコの父はそう言いながら、部屋の中にある棺のような形をした物を指さした。

「えっ…! あんな所に入るのかよ…」

ギコは少し驚いた。なんせ人が一人どうにか入れるだろうというような大きさの物だ

「まぁ我慢してくれ…少しの間だけだ、お前があのカプセルの中に入ると、カプセルの中から催眠波が出され、10秒ほどで眠る、すると次に目覚める場所は、コンピューターにより作り出した仮想現実の街…すなわちDream Cityだ、そこは現実世界の街と何ら変わりは無い、自由に行動できる、現にそこにたくさんのカプセルがあるだろ? あの中にもお前のような選ばれた被験者が入っているんだが…その人たちもみんな今、Dream Cityの中で普通に過ごしている」

ギコの父はカプセルを見ながら言った。

「ギコにはこの街で何日間か過ごしてもらう、それだけだ、むろん…危険な事は何も無い、まだこの街には十三人の被験者しかいないからな、車も走って無いし、さらに食べ物などはタダで食べていい、まだ実験段階だからな」

「へー何だか良く分かんないけど…とりあえず行ってみれば分かるよな…それだけ?」

ギコは父に聞いた。

「ああ、まだあるぞ、これは少し情けない話なんだが……このDream Cityでは、まだ人間の姿を完璧に表現する事ができなくてな…単純な構造の姿にしかなれないんだ…」

「と言うと?」

「まぁ…例をあげてたらキリが無い、ここはまぁ…“街の中では少し変な姿になるかも知れない”とだけ覚えててくれ、説明はそれだけだ」

「ふーん…分かった。じゃあこのカプセルの中に入ればいいんだったね」

ギコは空いてるカプセルのひとつに近づきながら言った。

「ああそうだ、じゃあ入ってくれ」

ギコは、父がそう言うとカプセルの中に入った。自動的にカプセルが閉じる

「じゃあギコ、装置の電源をONにするぞ、準備はいいか?」

父が言った。

「OK、いいよ」

ギコはカプセルの中から答える

「では、被験者№14 ギコ Dream City内へ入ります。」

社員の一人らしい声が聞こえた。次の瞬間、ギコに眠気が襲ってきてあっという間にギコは眠った。


第三章 被験者たち


「……ん…?」

ギコは気が付くと、アスファルトの上に立っていた。

「……ああ…そうか…ここがDream Cityなのか…」

ギコはようやくそう気が付くと、とりあえず歩き出した。周りは大きなビルや建物などで囲まれており、現実の街そのものだった。

「へぇーすげぇなぁ…これがコンピューターで作った仮想現実の街とはとても思えないな…」

ギコはそう言いながらさらに歩く

(しかし…誰かいないのかな…まぁ俺を含めて十四人の被験者しかいないみたいだし、こんな広い街でそう簡単に人と人とが出会えるわけも無いんだろうけど…)

ギコがそう思った時、後ろから声がした。

「あれ? 新しい被験者?」

ギコが振り向くと、そこには人が立っていた。人と言っても、その姿は毛のたくさん生えた犬のようなものだったが…

「ああ、そうだよ、キミも同じ被験者だよね、俺はギコだ、さっきこの街に来たばかりさ…よろしく」

「へぇー…ここに来たばかりなのに、すぐに人にあえるのもめずらしいね、俺はフサだ、よろしく」

二人はお互いに自己紹介しあうと、握手をした。

「ギコはここに来たばかりなんだろ? じゃあとりあえず、俺が今までにこの街の中で会った奴らをおまえに紹介するよ、まぁ…とは言ってもまだ三人にしか会ってないんだけどね」

フサは笑いながら言う

「ああ、ありがとうフサ」

ギコはフサに言った。

「あっ…! ところでフサ、俺の体どうなってる? 変になってない?」

ギコは父の言った言葉を思い出してフサに聞いた。

「ああ、おまえネコになってるよ、しかも黄色の」

「は!? ネコ!? マ…マジかよ…」

フサに言われてギコは店の窓に写った自分の姿を見た。

「た…確かにネコになってるよ…」

ギコは驚いた。窓に写った自分は紛れも無くネコであった。しかも黄色い毛の…

「ハハハ…ビックリしただろ? 俺もここに来る前に、変な姿になるかも知れないとは言われていたけど、こんな犬みたいな姿になってた時は流石に驚いたよ」

フサは自分の長い毛を触りながら言った。

「ちなみに俺の知り合いもネコになってんだよ、お前と同じだな」

「へぇーそうなんだ」

ギコとフサは話しながら、街を歩く、そしてしばらく歩くと、高いビルの前に来た。

「ここに俺の知り合いがいるんだ、さぁ入ろうぜ」

ギコはフサに連れられ、ビルの中に入った。


その頃、ギコとフサが入っていったビルの一室では、緑色のネコの姿をした男がパソコンと睨み合っていた。

「よーし、今日はもう25回以上ブラクラを踏んだ! だから今度はもう大丈夫、26回目の正直だ」

「兄者よ…しまいには、またPC壊れるぞ、そんな事ばかり言って、今までに何台のPCを壊したと思う…」

「しょうが無いんだから…兄者兄ちゃんは…」

「だぁーっ!! うるさいうるさいッ! よーし! このリンクだっ!」

兄者と呼ばれた緑色のネコがマウスを動かし、リンクをクリックする!

「あっ…!」

パソコンの画面には無数のウインドが…

「またブラクラだったな…兄者よ…」

青い色をしたネコが呆れ顔で言う

「ハハハ…OK! ブラクラゲット! ドンマイドンマイ」

兄者は笑って言う、しかし、兄者がパソコンを再起動しようとしてももうパソコンは動かなかった。

「……やれやれ、また壊れたか…軟弱なPCだ」

兄者はPCを軽く叩きながら言う

「はぁ…まったく…やっぱり兄者は流石だよ…」

青い色のネコは言った。

「ある意味で…だけどね」

青い色のネコの隣で、銀髪の女の子が苦笑しながら言った。その時、部屋の入り口で声がした。

「兄者ぁ~またPCブッ壊したのか? いい加減、画像探しは諦めたらどうだよ…」

「おお、フサじゃないか…その隣にいる黄色い奴は誰だ?」

兄者はギコの方を見て言った。

「俺はギコ、今日この街に来たんだ、よろしく」

ギコは兄者に自己紹介する

「ギコ、紹介するよ、あの緑色のネコは兄者、青いのがその弟の弟者、そしてその姿が人間なのが二人の妹の妹者だ」

フサは、三人の名前をギコに教えた。そしてその後、ギコ、フサ、兄者、弟者、妹者の五人は、お互いの事を話しながら談笑した。

「ハハハ…そうかそうか、やっぱりギコもビックリしたか、そうだよな、いきなり体がネコみたいになってるんだもんな」

兄者が笑いながら言った。

「そう言えばどうして妹者だけ人間の時と姿が変わらないんだろうな」

弟者は不思議そうに言った。

「私は、兄者兄ちゃんや、弟者兄ちゃんと違って日頃の行いがいいもん♪」

妹者はそう言って得意そうな顔をする

「おいおい、妹者…それは無いだろ」

兄者が困ったような顔をして言った。

「そうだぞ妹者、兄者ならともかく俺はそんなに日頃の行いは悪くないぞ」

「弟者!!! それは一体どう言う意味だ!」

「だってそうじゃないか!!」

兄者と弟者はケンカを始めた。

「こら! 兄者たち! ケンカはしないの!」

「は…はい…」

「分かったよ…」

しかし、妹者に叱られると、兄者たちはあっさりケンカを止める、妹には弱いのかもしれない、何だかギコは見ていて面白かった。

「ハハハ…この三兄弟はいつもこんな感じなんだ」

フサは笑いながら、ギコに言った。

「ハハハ…本当にここにいる人はみんな面白いな」

ギコも笑った。そんな感じで、Dream Cityでの時は楽しく過ぎて行った。

だが……この時…Dream Cityを蝕む魔物の影が、一歩ずつ確実に迫ってきていた……場所は変わり…現実世界の特別プロジェクト室…それは突然の事だった


第四章 Nightmare City


「ギコの父は、カプセルの中に入っている息子の姿を見つつ、周りの社員と共に、コンピューターを管理していた。

その時だった。突然奥の方のコンピューターを操作していた社員がギコの父の元へやってきた。

「チーフ、メインコンピューターの防衛システムになにやら不穏な動きがあります。クラッカー(悪質なハッカー、システムに不具合を起こさせたり、重要なデーターを破壊したりする人のことを指す、ハッカーとは別物らしい)が進入した恐れもあります」

「な、なんだと…いかん…安全のため、すぐにDream Cityの人間を全員回収しろ!」

ギコは社員の話を聞き、少しあわてて言った。しかし、ギコの父は心のどこかで安心していた。なんせまだ気配だけなため、大事にならないうちに被験者を全員回収してしまえば、とりあえずは良いと思っていた。しかし……それは甘い考えだった……実は社員たちがコンピューターの異変に築いたときには、すでにメインコンピューターの防衛システムを始めとする、さまざまなデーターがすでに毒牙にかかっていたのである……そして…しばらくして…悪夢はついに発動する事となる……!

「なっ…! どうなっている…」

コンピューターを操作し、被験者を回収しようとしていた社員の顔からたちまち血の気が引く…やがてその社員は、蒼白な顔をしてギコの父の元へ走った。

「チ…チーフ…」

ギコの父は自分の所へ、駆けつけてきた社員の顔を見て思わずゾクッとした。
彼はまるで幽霊のように立ちすくんでいた…顔は血の気が全く無く、今にも泣き出しそうだ…

「ど…どうした…」

ギコの父は社員に聞く、きっとギコの父の顔も青ざめていただろう

「……回収…出来ないんです……なんか……様子が…おかしいんです…」

社員はうつろな目をしてぶつぶつと言った。

「な……なにぃっ…! 一体どういう事だ! 説明しろ!」

ギコの父が興奮して社員を怒鳴りつけたとき、奥のほうからもう一人社員が走ってきた。その社員の顔も真っ青だ

「たっ…たっ…大変ですっ!!! Dream Cityのメインコンピューター内に5種のコンピューターウイルスが侵入しました!!」

「な……なんだとぉっっ…!!!」

ギコの父の背中に嫌な汗が流れる…

「5種のウイルスはどれも、被験者のデーターを消し去ろうとしています!!」

「そ…そんな事になったら被験者は全員死亡してしまう!!」

そう……被験者のデーターが消去される…それはつまりDream City内で被験者が死ぬ事…すなわち現実世界での“死”を意味する……

「す…すぐに全ての被験者を回収しろ!! 何をボンヤリしとるか!!!」

ギコの父は半ば悲鳴のように言った。

「で…ですから…先ほども申し上げましたように…被験者が回収出来ないのです…おそらくは……ウイルスかと…」

最初にギコの父の元に来た社員が言った。そう…さっきギコの父に言われて、被験者を呼び戻そうとしたが、出来なかったのだった…

「な……何という事だ……私の息子が殺されてしまう……ギコぉー!!」

ギコの父は、ギコの入ったカプセルを叩きながら叫んだ

「だ…だめですっ…!!制御不能ッ!!侵入したコンピューターウイルスを止められませんっ!!」

コンピューターの画面には、血のように真っ赤な文字で

Error(エラー)

とだけ記されていた…

しばらくして…社員たちはワクチンソフトをいろいろとためしたが、全く効果は無し、打つ手は無かった……

「まさか…こんな事になるとは…」

「我々が、現代における全ての力を集めて作ったDream Cityがこんな事に…」

周りでは社員が口々にそのような事を言っている

「………違う……」

ギコの父が呟いた。

「違う? 何が違うんですか? チーフ…」

社員が聞いた。するとギコの父は言った。

「この街は…“夢の街”であるDream Cityから、人がいつ死んでもおかしくない狂気の街に変わってしまったのだ……もうこの街は…かっての“夢の街”Dream Cityでは無い…」

「この街はもはや…Nightmare City(悪夢の街)だ……」

ギコの父の言葉に、社員は皆一様に息を呑む……そう…この街から“平穏”の二文字は、すでに消え去ったのである、残ったのは悪夢だけ…街を包みだした邪悪な狂気だけ…


第五章 ウイルスの襲撃


ここは、Dream City内…その一角に、メインコンピューターに侵入した5種のウイルスたちが集まっていた。

「よし…じゃあ今から俺たちに与えられた使命を再確認しよう、俺たちはこの街にいる人間全てをデリート(消去)する、一人も余すことなく殺すんだ…これでいいな」

「アヒャヒャ…分かってるっつーの、早く血がみたいぜぇ~アヒャヒャァ~」

「OKモナ、…僕のこの両身のヤリの切れ味を人間どもに教えてやるモナ」

「いい男いるかな~ハァ…ハァ…」

「…………」

集まったウイルスたちは皆、この町にいる人間を殺そうと張り切っているようだった。

「よし…みんないい感じだな…それじゃあまず奴らに宣戦布告だ、この街のテレビやラジオの電波を全て乗っ取れ、そして人間どもに恐怖を与えてやるんだ」

その頃、ギコ、フサ、兄者、弟者、妹者の五人は、兄者のPCでテレビを見ていた。

「ギャハハハ! H○サイコ~おもしれ~!」

フサは、最近なにかと人気のハード○イを見て爆笑していた。

その時、突然画面が砂嵐画面になった。

「あれっ…なんだよせっかく面白い所だったのに~」

フサがぼやく

「PCが壊れたか?」

兄者がPCをいじる

「兄者…一体、何台PCを破壊すれば気が済むんだ…」

弟者が呆れながらそう言った時、突然PCの画面に何か映った。映ったのは見た事の無い四人組だった。

「なんだ、こいつら…」

フサが言った。

「まだ会った事の無い被験者かもな」

ギコがそう言って画面を覗き込んだとき、PCの画面に映る四人の内の一人が、とんでもない事を言い出した!

『人間ども!! 今から俺たちが言う事を良く聞けぇ!! 俺たちはこれから、この街にいる人間を全て殺す!!』

「な…なにぃっ!」

フサが驚いて言った。他のみんなはあまりのことに呆然としている

『俺たちは、この街のメインコンピューターに侵入したコンピューターウイルスだ!! 今言った事は嘘でもなんでも無い!! 愚かな人間どもよ!! 死の恐怖におののけ!! 醜くわめけ!! のたうちまわり、血を噴き出しながら死んでゆけっ!!』

彼らがそこまで言うと、PCの画面は元に戻り、他愛の無い番組を映し出し始めた。

「ど…どういう事だよ…コンピューターウイルスって…この街は…安全じゃ無かったのかよ……殺すって何だよっ!!」

フサは冷静さを失い始めていた。

「フサ! 落ち着くんだ!」

ギコが内心の動揺を抑え、フサをなだめる

「冗談だろ…まさか…」

弟者がそう言った時、兄者が言った。

「いや、恐らく奴らの言ってた事は本当だろう…本当にこの街のメインコンピューターにウイルスが入り込んでしまったのだろうな…」

「なんで、本当だと言い切れる?」

弟者が聞き返した。

「言い切れるともさ、あいつらメインコンピューター内に侵入したコンピューターウイルスだと言っていた。そしてこの街にいる人間を皆殺しにするとも言っていた。仮にこれが全て嘘だとしよう、じゃあなぜ、このDream Cityを管理している人間たちが、俺たち被験者を回収しないんだ?」

そこまで言われて、さすがに他のみんなもハッとする

「間違いなく俺たちを回収するためのプログラムが、ウイルスにやられたんだ」

兄者は少しあせるようにそう言った。

「な…なるほど…なかなかカンがいいな、流石だ兄者」

「そんなのんきな事言ってる場合じゃないでしょ弟者兄ちゃん!!」

妹者が言う

「ねぇ、兄者兄ちゃん、だとしたらこれからどうすればいいんだろ…」

「うん…相手がコンピューターウイルスじゃあ話し合いなんか聞かないだろうしな、対象となったプログラムやデーターを抹消するために作られたプログラム…それがウイルスだ、ゆえに容赦なんて知らないだろう…」

兄者は妹者の問いに答えて言った。

「やっぱり…戦うしかないのか…?」

弟者が静かに言った。


その頃…ウイルスたちは…


「よし、最終準備が終わったらそれぞれ出発だ、分かったな…!」

「ヒャッヒャッヒャ~待ち遠しいぜぇ~早くぶった切ってやりてぇ~」

「そう言えば…さっきTVに映った時、“アイツ”がいなかったな…どこに行ったんだ…」

その頃…街のあちこちでは、ギコたちと同じように、テレビなどでウイルス達の宣戦布告を聞いて、パニックになっていた。




「できないよ…私には…私……」




「ドクオ! 見たか…今の…」

「ああ……大変な事になったな…どうする…」




「ヒィ~ど…どうしょぉ~殺されるよ~死ぬのやだよ~」

「おにぎり君!! 冷静になって!! くそっ!! 今の本当の事か!?」




「レモナの姉貴~やばいニダ~」

「どうするんだYO!!」

「くっ…まさかこんな事が起こるなんて…何やってんのよ…この街の管理者たちは…!」




「ヒィ~ど…どうしよう…」

「とりあえず落ち着いた方がいいんじゃネーノ」




そして…ギコ達は…

「戦う…か…」

ギコが呟いた。その時、兄者が言った。

「待てよ……そうか! そうじゃないか!みんな! この街から出る方法があるかも知れない」

「な…なんだって! どういう事だ!」

フサがそう言って兄者の方を見た。他の人の視線も兄者に注がれる

「つまりこういうことだ、ウイルスは、このメインコンピューターの防衛システムを無理やり突き破って中に侵入したんだろう、って事は、ウイルスがここへ無理やり入ってくるときにこじ開けた入り口が、この街のどこかに今、あるんじゃないか? つまり逆に言えば、そこが今の街の唯一の出口なんじゃないか!?」

「おおっ!! なるほど!! 言われてみればそうだ!」

フサが歓喜の声を上げる

「そうか…なるほど…見直したぞ兄者! 流石だ!」

弟者も同じように喜ぶ

「まだ喜ぶには早いよ、まだその出口がどこに在るのかは分からない…」

ギコはゆっくりと言った。

「うむ…まぁたしかにそうだが……よし! みんなしてその出口を見つけて、この街を出よう、あと、他の被験者も探す。ウイルスがいつ襲ってくるかは分からないが、このままむざむざ殺されるよりはマシだ! 最後の最後まで俺達は抗う…! 死んでなるものか!」

兄者はまるで自分に言い聞かせるようにそう言った。

「よし…! 分かった。俺も出てやる…! この街を…生きてっ…!」

ギコは力強く言った。

「うん」

「ああ」

「よしっ…!」

妹者、弟者、フサも兄者の言葉に頷いた。

「よし、それでは早速、出口をみんなで探しに行こう!なるべく効率良く見つけられるようにバラバラになって探した方がいいな、ただし探してる途中で他の被験者に会ったら連れて行け、あと、自分が出口を見つけ次第、俺達の事はかまわず、自分一人でもいいから出るんだ!」

「ああ!」

兄者の言葉にギコが頷くとみんなも同じように頷く

「それと…こんな非常時の時に備えて…この街のとある場所にある武器屋で拳銃3丁と、日本刀一本をこっそりもっていったんだ!」

兄者はそう言うと、部屋の片隅から武器を取り出した。

「おお…いつの間に…用意が良すぎないか!?」

弟者が驚いて言った。

「こんな本当に万が一の時のためだ、全員分には足りないが…仕方あるまい」

兄者が拳銃を構えながら言った。

「じゃあその拳銃3丁は、流石三兄弟が持っているといい、もともとお前らの武器だしな、それとフサ、その日本刀はお前が持て」

ギコは力強く言った。

「でもギコ、お前丸腰じゃぁ……」

フサがそう言ったが、ギコは

「いいんだ、力の無い俺が持ってても使いこなせないよ、やっぱりここは、力の強いフサが持っててくれ」

と、フサに日本刀を渡した。

「……分かった…! その代わり…意地でも生き残れ!!」

フサが言った。

「ああ、分かってる!」

ギコも答えた。


第六章 必ずキミを護るから


「さぁついに作戦開始だ!! オマエら、好きなだけ殺してくるがいい!!」

「ヒャッヒャッヒャ~よっしゃ~!」

「行くモナ~」

「いい男♪いい男♪」

ついにウイルス達は動き出した。人間VSコンピューターウイルスの壮絶な戦い……命を賭けたサバイバルゲームはついにその幕を開けたのである

その頃、ギコはフサや流石三兄弟と別れ、薄暗い路地を駆け抜けていた。その時、ギコは周りが少しずつ暗くなるのを感じた。

「あっ…! 太陽が…!」

ギコは空を見上げると、太陽が真っ黒になっていた。日食というヤツだろう

「これは…まさかウイルス達が動き出したのか!!」

ギコは漆黒の円と化した太陽を見て、そう思い、さらに走る…!

ギコは角を曲がった。すると、誰かが道路の隅でうずくまっていた。それはギコと同じようにネコの姿をした人だった。毛の色はピンク色で、なにやら悲しそうな目をしていた。恐らく被験者の一人だろう

「おい、そこの人!」

ギコはその人に声をかけた。

「えっ…は…はい…」

その人はおずおずと答えた。

「俺はギコ、キミは?」

「私は…しぃ…」

「…しぃ…か…君も被験者の一人だね?」

「えっ…はっ…はい…あの…」

しぃはギコが何か聞くたびに少し慌てたようになる

「そうか、じゃあ俺について来てくれ、もしかしたらこの街を出る事が、出来るかも知れないんだ!!」

そう言うと、ギコはしぃに手を差し出した。

「でも…私は…」

しぃは俯く

「生きるんだ!! 生きなきゃダメだ!! 俺と一緒に行こう!! この街を…出てやるんだ」

ギコの言葉に、しぃは顔を上げた。

「うん……分かった」

しぃはギコの手をしっかりと握った。ギコも離れないように、しっかりとしぃの手を握った。そして二人は再び走り出した。

(必ずキミを護るから…)

ギコは心の中で強くそう思った。

ギコがしばらく走るとフサがいた。

「フサ! どうしたんだ、俺と反対方向へ出口を探しに行ったはずなのに…」

「ギコか! それがな、こっちに地下鉄の乗り場がある事を思い出したんだよ俺は地下鉄でひとまず街の端の方へ行って、そこで出口を探すつもりさ」

フサは言った。

「そうか…それはいいアイディアかもな」

「ところでギコ、その子は誰だ?」

フサはギコの隣にいるしぃを指差して言った。

「ああ、俺達と同じ被験者さ、しぃって言うらしい」

「そうか…ギコ! その子の事しっかり護ってやるんだぞ!」

フサは地下鉄乗り場に行った。

「ああ!!」

ギコもフサにそう言い、再び二人は別れた。


そのころ流石三兄弟は…

「兄者が他の被験者を探しに行ったまま戻ってこないな…一応、無線機は渡されたが…」

弟者がビルの一室の窓の外を見ながら言う

「…………」

妹者も不安げな顔をしている

30分ほど前、兄者は「とりあえず、まだこの近くに他の被験者がいるかもしれん、出口を探す前に俺はそっちの方を探しに行こうと思う、探しに行くのは俺一人で大丈夫だから、弟者と妹者はこのビルからの見張りをたのむ、何かあったらこの無線機で連絡してくれ、俺も万が一の緊急時には連絡する」
と言うと、弟者に無線機を渡し、引き止める弟者と妹者を無視してビルを出て行ってしまったのだった。

(兄者が出て行って、30分ほど経つ…そろそろ諦めて戻ってきてもいい時間なのだが…)

弟者は部屋の時計を見た。不安は湧き上がる…

『ガ…ガガガ…弟…弟者…弟者! 聞こえるか!?』

その時、部屋の机の上に置いてあった無線機から兄者の声が聞こえた。

「あ…兄者兄ちゃんだ!」

妹者が、無線機の方を見る

すぐさま弟者は無線機を取った。

「こちら弟者だ! どうしたんだ兄者!」

『弟者か! ヤベェよ!! ウイルスの野郎に見つかっちまった!!』

兄者は早口でそう言った。

「何っ!! ウイルス!? 大丈夫か!!」

弟者も無線機に向かって、大声でしゃべる

『ああ…とりあえずは…でも…走って逃げてるから、もうそろそろ体力も限界だ…!』

無線機の向こうから、息を切らした兄者の声が聞こえる

「わ…分かった兄者、すぐに助けに行くから場所を教えろ!」

弟者は窓の外を見渡しながら、兄者に現在地を聞こうとする

『ああ、分かった! えーっと…ここは……ん…? あっ!! バイクだっ!!OK! 弟者! 助けに来なくていいぞ! いい事を思いついた! 何とか逃げ切ってやるからビルん中で待ってろ! 絶対にそこを動くんじゃねぇぞ!!』

そこまで言うと、兄者の声が無線機から聞こえなくなった。

「お…おい兄者!」

その後はいくら無線機に叫んでも兄者は応答しなかった。

「何…どうしたの…兄者兄ちゃん…」

妹者が不安そうな声で言った。

「………心配いらないよ…こういう時、兄者はいつもしぶといからな」

弟者は内心の不安を押し殺し、妹者を安心させるべくそう言った。


その頃…街のとある場所では二人の被験者がウイルスに襲われていた。

「ハァ…ハァ…そこの髪生えてる方、いい男だなぁ…待って~」

やけに背の高いウイルスが、走って逃げる被験者2人を追い回す

「ひぃ~あいつ1さんをねらって来てるよ~」

「くっ…なんてキモイ奴なんだ…ホモかよ…って事は…もし捕まったらトイレん中に連れ込まれて…や・ら・な・○・か…? ってな事に…ひぃ~考えただけでもキモイ~!」

1さんと呼ばれた人間の姿の被験者は走って逃げながら、昔どこかで見たおぞましい漫画のワンシーンを思い出してしまい、身震いした。

「あっ! 1さん、あそこに軽トラが!! あれで逃げよう!!」

おにぎりのような頭の形をした被験者が、前方にある軽トラを指差しながら言った。

「よし!! たしかこの街ではキーが無くても車とかが動くんだよな」

1さんは軽トラ目指して、全速力で走った。やがて二人は軽トラの前に着いた。

「運転は僕がやる! 1さんは後ろの荷台に乗って!」

おにぎりはそう言うと運転席に飛び乗り、ハンドルを握った。1さんも荷台に乗り、やがて軽トラは発進した。

「ハァハァ…キミ1さんって言うんだね…かっこいい名前…ますます好きになっちゃったよ~待って~」

ウイルスはまだ追いかけてくる

「くそっ…なんて足が速いんだ…追いつかれちまう…!」

1さんは舌打ちしながら言った。

「1さ~ん逃がさないよ~このウイルス№1“八頭身”から逃げられるとでも思ってるの~」

“八頭身”はそう言うと、手の中から光るムチを出して、振り回しながら猛スピードで追いかけて来た。

「うわ~なんだよあのムチ…! あれで僕をどうするつもりだよ…!」

1さんは恐怖に青ざめる、膝がガクガク震える

「うわあああああっ!!! こんな所で殺されてたまるかぁ~!!!」

おにぎりはそう叫ぶと、アクセルを限界まで踏み込んだ


第七章 兄者の作戦


ここは特別プロジェクト室……

「ウイルス達の暴走が始まりました!! 早速ウイルス№1“八頭身”とウイルス№2“つー”が被験者を襲っています!!」

「襲われているのは被験者№8 1さんと№10 兄者です!!」

社員が口々に、現在の状況をギコの父に報告する

「くっ…ギコよ…無事でいてくれ…たのむっ!!!」

ギコの父は歯を食いしばりながら、必死で息子の無事を祈った。

そして…街の中…

兄者はバイクにまたがり、フルスロットルで後ろから追いかけてくるウイルスから逃げていた。

「ヒャッヒャッヒャ~! ちょこまかと逃げ回ってんじゃねぇよ!! むだむだぁ~必ずアタイが血祭りに上げてやるよアヒャヒャ~ッッ!!!」

兄者を追いかけている赤い毛のネコが、手から光るナイフを出して投げつけた。

「くっ…!!」

兄者は車体を激しく揺さぶり、これをかわす、そしてさらに逃げる

「無駄だって言ってんだろうがぁ!! このウイルス№2“つー”様の手にかかって死ななかった奴は誰一人としていないんだよ!! ヒャッヒャッヒャ~ッ!!!」

不気味な笑い声で笑いながら、“つー”はさらにナイフを投げる、兄者は何とかこれをかわしながら“ある場所”へ向かっていた。

「くっ…もう少し…もう少しだ……よしっ! 見えてきたっ…!!」

兄者は目の前にある大きなビルに向かってバイクを走らせる、“つー”はそれを追う

そして兄者は何と、バイクでビルの入り口の扉を打ち破り、そのまま中へ入って行った。

「アヒャ~何てとこまで逃げやがんだ、往生際の悪い奴め」

そう言うと、“つー”もビルの中に入る

兄者はバイクでビルの中の階段を駆け上がっていた。ガタガタと揺れるバイクから転倒しないよう、しっかりと片手でハンドルを握りながら、もう片方の手で無線機をつかみ、弟者に連絡した。

「弟者ぁ~!! こちら兄者だ!! 応答してくれ!」

その頃…弟者たちが待機しているビルの一室で…

「弟者兄ちゃん! 無線機が!」

妹者が無線機を見ながら言うと、弟者が無線機を手に取る

「兄者!! 無事か!」

弟者は無線機に向かって大声で言う

『ああ、それよりこれから俺がやろうとしている事を言うから良く聞けよ! あのな…』

兄者は弟者にこれからやろうとしてる事…すなわちウイルスを振り切る方法を手早く弟者に説明した。

「なにぃ…!! 無茶だそんな事!!」

弟者は兄者の言った言葉に驚愕した。

「なに…兄者兄ちゃんは…何をしようとしてるの…?」

弟者の大声に妹者も心配して駆け寄る、弟者はそんな妹者を無視して、さらに
兄者と話を続ける

『他に方法が無いんだ、少なくとも奴を振り切る方法はそれしか…!』

「でも無茶だ!! 映画じゃないんだぞ!! そんな事がうまく行くと思うか!? もっと冷静になれ! 兄者!!」

弟者がそう言った時、妹者が弟者の無線機を取り上げた。

「い…妹者」

「兄者兄ちゃん!! 一体何をしようとしてるの!!」

妹者が無線機に向かって話す。

『おお、妹者!! 妹者も良く聞くんだ!! 俺がこれからしようとしてる事をな!! あのな…』

兄者は、弟者に話した時と同じように妹者に言った。

「そ…そんなの…そんなのだめだよ! 兄者兄ちゃん! 死んじゃうよ!!」

妹者も弟者と同じように反対する

『危険な事は分かってるさ! 俺だってさっきから震えが止まんねぇんだ…! それをやるんだと思うと…なさけねぇけどよ…でも…やらなきゃどうせ死んじまうんだ……だったら…俺は最後の博打に出る!! バカな兄貴でごめんな…妹者…でも…分かってほしい……大丈夫だ! 俺は必ず生きて…おまえらの元へ帰って見せるからな!!!』

兄者はこれまでに無いしっかりとした口調で強く…そう言った。

「………分かった……でも……死んだら許さないからね……兄者兄ちゃんが居なくなっちゃったら……毎日がつまらなくなっちゃうんだからね…」

妹者は目に涙を浮かべて言った。

「妹者…」

弟者は妹者の手から無線機を取ると、言った。

「兄者………生きて…生きて…! 一緒にまた画像探しやろうぜ!!」

『ああ、任せときな!』

そこまで言うと、兄者の声が無線機からしなくなった。

「兄者兄ちゃん……」

妹者は涙を拭うと顔を上げた。

「妹者…兄者は大丈夫だよ…なんたって、いつも流石な俺達の兄貴だもんな」

弟者がそう言って笑うと、妹者も笑った。

一方…兄者は…

「よし…もう少しで屋上だ!!」

兄者が言ったとき、“つー”も追ってきた。

「ヒャヒャヒャ~追いついたぜ~」

兄者のバイクは屋上に出る

その後を“つー”も追う、そしてついに兄者は追い詰められた。

「ヒャヒャヒャ~まったく、てこずらせやがって~ここは屋上だ! もう逃げ場はねぇぞ!! 今度こそ殺す!!!!」

“つー”は光るナイフを構えると、兄者を睨み付けながら言った。すると兄者はニヤリと笑いながら静かにこう言った。

「おい“つー”見て分かるようにこのビルの屋上にはフェンスが無いんだ」

「あぁ!? それがどうした!?」

“つー”が兄者を睨み付けたままで言った。

「さらに…このビルの向かいにある、あのビル…あそこでは今…ちょっと生意気な弟と、かわいい妹が、俺の帰りを待っている……」

その時、“つー”の表情が変わった。これから兄者がやろうとしている事に気が付いたのだ

「お…おまえ……まさかっ…!」

「ああ、そうさ…お前の思っている通りだよ! 追い詰めた場所が悪かったな!! この詰めの甘い…! ポンコツウイルスがっ……!!」

兄者はニヤリと笑いながら言うと、バイクを向かいのビルめがけて走らせ、バイクを屋上から飛び出させた! バイクはビルとビルの合間の空間を飛んでいた。

(このまま……このまま目の前の窓ガラスを突き破れ!!!)

兄者は重力に身を任せ、そのまま向かいのビルに突っ込む

「うおおおおおおおおおっ!!!! いっっけえええええッッッ!!!!」


ガッシャーーーーーーン!!!!!


見事、兄者は弟者達の部屋の窓ガラスを突き破って中に入った!!

「イヤッホウ!! 弟者ぁぁッッ!! 今帰ったぞォッ!!!」

部屋の中でバイクを停止しながら兄者が言った。

「兄者ぁ!! 無事だったか!! すげぇ!!! すげぇよ!! やっぱ兄者は流石だぁっ!!!」

弟者が兄者に抱きついて喜ぶ

「おいおいおいおい…やめろ弟者…悪いが俺にはその趣味は無いぞ」

兄者は笑いながら弟者に言った。

「くっ…なんて奴なんだ…」

向かいのビルの屋上に一人残された“つー”がうらめしそうに、兄者たちのビルを見る、その時、“つー”の右肩から血が噴き出した。

「ぐおっ…! なっ……狙撃!? 向かい側からか!!」

そう、妹者が割れた窓から拳銃で“つー”を狙撃したのである

「ちっ…! ひとまず今回は引き上げだ!」

“つー”は捨て台詞を残すと、瞬く間にその場から去った。

「妹者!! ありがとよ!! これで作戦成功…と」

兄者はそう言うと、大きく深呼吸した。その時、妹者が兄者に抱きついた。

「妹者……ごめんな…心配かけて…」

兄者は妹者の頭をなでてやった。

「バカ……もう二度と…あんな危ない事しないでよ……すごく…心配だったんだからね……まったく…しょうがないお兄ちゃんなんだから………」

妹者はそのまま泣き続けた。兄者は、少々照れくさくなって軽く笑うと、「ああ、もう心配かけないよ」と妹者に言った。

「それよりも…二人とも、もうこの場所はウイルスに知られてしまった。これ以上ここにいるのは危険だ、場所を変えるぞ! このバイクに乗れ! 出発だ!」

兄者はそう言うと、部屋の中に停めてあるバイクにまたがった。

「よし!」

「わかった」

弟者と妹者も兄者のバイクの後ろに乗り、バイクは三人乗りで出発する、ビルの階段を駆け下り、バイクは外に出た。

「なかなか運転上手いじゃないか兄者」

弟者が感心して言った。

「当たり前だ、これでも一時はモトクロスのレーサーを目指してたんだぞ」

兄者が後ろの弟者に、得意そうに言った。

「確かそれって三日で諦めたんだよね」

「うっ…い…妹者…」

妹者の鋭いツッコミにとまどう兄者

「ハハハ…兄者らしいや」

弟者が笑った。こうして流石三兄弟はまず、最初の難を逃れたのである


第八章 フサの死闘


…一方、出口を探すために地下鉄に乗ろうとしたフサは、予定通りウイルスに見つかる事無く、地下鉄に乗る事が出来た。

(フーッ…それにしてもやはり、地下鉄に乗ると言うのは意外と正解だったかもな…ウイルスに万が一、地下鉄内で襲われたら逃げ場が無いと思っていたが…意外とこの地下鉄ってヤツがウイルスどもにとっては盲点だったのかも…
ウイルスどもが、あんな派手な宣戦布告をしたら…当然、街の中にいる人間はパニックになる…正常な…落ち着いた考えが出来なくなる…とにかく逃げ惑う事しか出来なくなる…恐らくウイルスどもは、そう思ってる…
だからこそウイルスどもは当然…地下鉄を利用して逃げようなどと思う人間はいないと思っているのかも…地下鉄ならウイルスどもの視野から外れてるかもしれない…そんな事を考える人間なんてここにはいない…奴らは恐らくそう思ってる…
もし…奴らが…ウイルスどもが、そう高をくくっているのならば…この地下鉄で移動し、出口を探すと言う作戦はある意味最高の選択だったのかもな…そうだ…! ウイルスどもにとって、この作戦はいわば、心理の死角…! もっとも俺に最初からそんな考えがあった訳では無いが、結果的に良かった…まだ…完全に安心できたわけじゃないが…)

フサは、自分の取った行動が以外にも良かったので、少し安心していた。やがて…地下鉄は駅で止まる…!

(えっ……! ばかなっ…! この地下鉄はコンピューター制御で、終着駅でしか止まらないはず……まさか……!)

フサは不気味な気配を感じ、ゾッとする…そっと窓の外を覗くと……誰かが地下鉄に乗ってきた!!

(くっ…まさか…こんな事が出来るのは…そう…ウイルスしかいない…つまり
…今、乗ってきたのはウイルスだ!)

『出発します』

機械的な声の車上アナウンス…地下鉄は出発した。それと同時に…足音がフサの方に近づいてきた…


コツ…


コツ……


コツ………


足音はどんどん大きくなる…それに比例してフサの鼓動も早くなる…フサは地下鉄の揺れに耐えられるようにしっかり踏ん張って、日本刀を構えた。

そして…やがて隣の車両から、白い毛の色のネコが現れた。

「……おまえ…被験者じゃねぇよな…!」

フサは分かりきった事を言う、すると白いネコは不敵に笑い、フサに言った。

「ウイルス№3“モナー”だモナ、地下鉄に乗れば安全だとでも思ったモナ?」

「くっ……!」

見ていて不快になるような笑いを“モナー”は浮かべる…フサはそれを見て、頭に血が逆流しかけたが、冷静さを失ってはダメだと思い、耐える…!

「残念だけど…お前にはここで死んでもらうモナ」

“モナー”はそう言うと、手の中から光るヤリを出した。しかもヤリの上と下の両方に刃のついている、両身のヤリだった。

「へっ…! そんなオモチャで俺を殺そうってのかい!」

フサは日本刀を構えたままで言った。

「オモチャかどうかは…自分の体で試してみるモナ!」

“モナー”はそう言うと、大きなモーションでフサに斬りかかってきた。

フサは体をさばいてそれをかわす、すると…“モナー”がそのまま座席を斬りつけた。座席は真っ二つになってしまった。

「どうモナ? なかなかいい切れ味してるだろ?」

“モナー”はそう言うと、フサに向き直り、再び斬りつけた。今度はモーションの少ない隙のない攻撃だ

「ぐっ……!」

フサはそれを日本刀で受け止めると、すばやく払い、逆に斬りつけた。しかし
“モナー”はそれを避ける

「おらっっ!!」

フサは隙が出来ないよう、振りを少なくして、連続で斬りかかる、しかし“モナー”は長いヤリで、それを受け止めつつ後ろに下がる、やがて“モナー”は高く飛び上がった。

「……!!」

フサが驚いていると、なんと“モナー”はヤリで車両の天井を切り裂き、地下鉄の上に出て行ってしまった。

フサが「卑怯者! 降りて来い!」と言いかけた時、“モナー”が開けた天井の穴から“モナー”が手を伸ばし、フサの襟首を掴んで引き上げた。

「ぐあっ…!」

フサがうめき声を上げるとほぼ同時に、フサは地下鉄の上に引き上げられていた。

「さあ…第2ラウンド開始だモナ…! ゴングの代わりに、念仏となえてやってもいいモナよ」

“モナー”はヤリをまっすぐにフサに向けながらニヤニヤ笑う

「な…なんのマネだこれは…」

フサは突然自分を地下鉄の上に引き上げた“モナー”を睨み付けながら立ち上がる

「何って…サドンデス・マッチだモナ、電車の上から落ちたら文句無く即死…
! 決着をつける戦い…残念ながら僕は、これ以上キミのようなクズを相手にしている時間はないんでね…いろいろ忙しいんだよ僕は…だから悪いけど…手早く決着をつけさせてもらうよ…」

“モナー”はそう言って、ヤリを構えた。

「……安心しな…お前が忙しいのもこれまでだよ…! あの世に送って…永久に暇にしてやるぜ…!」

フサも、下に落ちないように踏ん張りながら日本刀を構える…そして…互いに睨み合う…

「よしっ!! 行くぞ!! おりゃああああああっ!!!」

フサは日本刀を振りかざし、“モナー”に突っ込んで行った。そして間合いに入った瞬間に斬りかかる

“モナー”はそれを受け止め、フサに斬り返した。フサはそれを日本刀で受け止めたが、“モナー”の力の強さに圧倒された。

フサは何とか押し返し、もう一度“モナー”に斬りかかったが、“モナー”が思いっきりヤリを振り、フサの日本刀をはじき飛ばしてしまった。

「あっ…!」

フサがはじき飛ばされた日本刀を目で追うのと同時に、“モナー”の強烈な中段蹴りが、フサの腹に入った。

「ぐはぁっ!!!!」

フサは叫び声を上げながら吹き飛ばされる、そのままフサは電車から落ちる所だったが、一歩手前のところで、端の部分につかまり、ぶら下がった。

しかし、目の前にはすでに“モナー”が来ていた。

「くっ…!」

フサが見上げるとそこには“モナー”の勝ち誇ったような顔があった……そして“モナー”はフサを見下ろしながら話し出す。

「これで終わりモナ、冥土の土産にいい事を教えてやるモナ、TVに映ってたウイルスの人数は四人だったけど、実は五人なんだモナ、TVに映ってたのはウイルス№3の僕を始め、№1の“八頭身”、№2の“つー”、№5の“モララー”…この四人だった。その時、なぜか№4の“しぃ”だけが、どこかに行ってしまっていて、いなかったんだモナ」

「なにっ…!! “しぃ”!? “しぃ”ってまさか…!?」

フサは驚愕した。そう…思い出したのだ…フサが地下鉄に乗る前にギコが一緒にいた奴の名前を…

『ところでギコ、その子は誰だ?』

『ああ、俺達と同じ被験者さ、しぃって言うらしい』

……フサは蒼白になった。

(まさか…まさかアイツがウイルスだったとは……ギコが危ない!!!)

「まぁ今頃どこかで被験者の人間どもを殺しているんだろうよ“しぃ”も…さて…そろそろ死んでもらうモナ!!」

フサの肩に“モナー”のヤリが深々と突き刺さった。

「ぐわああああああっ!!!!!」

フサは激痛のあまり、手を離してしまい、そのまま線路へ叩き付けられた。

地下鉄は行ってしまった。

フサは思いっきり線路に叩きつけられたが…まだ死んではいなかった。頭を打たなかった事が良かったのかも知れないが……しかし、それでもフサの体には激痛が走り、刺された肩からの血も止まらなかった。

「くっ……良く死ななかったもんだぜ…やっぱ俺ってけっこうタフなのかもな……痛っ…」

フサは全身の激痛を堪えて立ち上がった。

「は…早くギコに…アイツがウイルスの一員だと……教えてやらなくては…
ギコが……殺される………」

フサは血の止まらない肩を抑えながら、ヨロヨロと歩き出した。


第九章 仲間


街外れの古いビルの中…ここに二人の被験者が隠れていた。

「なぁ…ドクオ…ここなら安全だよな…ウイルスに見つからないよな…」

「ああ…たぶん…な」

その二人は体を寄せ合い、震えている…被験者№1のドクオと、№2のヒッキーであった。よほどウイルスが怖いらしい

その時…! ドクオとヒッキーのいる部屋の前で、足音がした…!

「ひっ……! き…来た……ウイルスが……」

ヒッキーは外に聞こえないように蚊の鳴くような声で言った。そして…足音は…二人のいる部屋の前で止まった…

「………!!!」

ヒッキーはもう恐怖のあまり言葉も出ない、すると、ドクオがゆっくりと立ち上がり、身構えながら部屋の扉に手をかける

「だ…誰だよ……誰かいるなら…出て来い!!」

ドクオは叫ぶようにそう言うと、扉を思いっきり開けた!!

ガンッッ!!

「ぐばぁっ!?」

ドクオが開けた扉に何かぶつかった。ドクオがおそるおそるそれを見ると、猫の姿をした人がドアの前でひっくりかえっていた。

「だ…大丈夫!? ネーノ君!」

その隣では、眉の垂れ下がったネコが心配そうに、倒れているネーノというネコを見ている、被験者№7のショボーンだった。

「いたたた…鼻血が出たじゃネーノ…全く…せっかく被験者を助けに来たのにずいぶん手荒な事をしてくれるじゃネーノ」

ネーノが愚痴っぽく言った。

「安心して、僕らもキミと同じ被験者だよ」

ショボーンは顔を明るくしてドクオに言う

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