☆第一話☆
午前二時の踏み切りの前に、望遠鏡を担いだ黄色いAAが、空にある無数の星を見つめながらラジオを聴聞き、ブツブツと呟いていた。
「……良かった、今日は雨は降らないのか…。 それにしてもしぃの奴遅いな……もうとっくに待ち合わせの時間過ぎてるぞ……」
黄色いAAがそう呟いていると、
大きな荷物を背負ったピンク色のAAが走って来た。
「ゴメンギコ君遅れちゃった」
「何してたんだよしぃ! 待ち合わせは二時って言っただろ!」
「ゴメンゴメン! ちょっと寝ちゃったの♪ そんなに怒んないで」
ギコが怒って言ってるのにもかかわらず、
しぃと言われたAAは舌を出しながら笑っている。
そのしぃの態度にギコは怒る気をなくし、ため息をして、「まったく…」と言うと、踏切の棒が上がる同時に、さっさと歩いて行った。
「あ、待ってよギコ君!」
さっさと言ってしまうギコを、しぃは猫のように追いかけて行った。(まあ、実際猫のような見た目なのだが)
しぃはやっとギコに追いつき、顔をのぞいて恐る恐る聞き出した。
「ねぇギコ君、まだ怒ってるの?」
しぃの言葉にギコは、少しだけ笑って答えた。
「もう怒ってないよ、俺は早く綺麗なホウキ星が見たいだけさ」
「なら良かった♪ ところでどこに行くの?」
「絶好の場所だよ、望遠鏡を使わなくても良い星空が見えるんだ」
「へぇー楽しみ♪」
「……しぃ、ちょっと手ぇ貸して」
ギコはそう言うと、しぃの手をギュッと握った。
「え、ギコ君?」
しぃはギコのした事に少し驚いている。
「今日は暗いからな! 離れたりすると危ないから……」
ギコは、かなり頬を赤らめている。
「でもギコ君、街頭があるから大丈夫だよ」
しぃの言葉にギコはさらに頬を赤らめた。
おそらくそれはしぃに対して怒っているのではなく、
ただ恥ずかしいだけなのだろう。
「ね、念のためだよ! 嫌なら別に離しても良いんだぜ」
ギコは、赤面のまま握っている手を離そうとするが、
しぃは、離れかけたギコの手を握った。
「ううん、このままで良いよ。 離れたくないもん」
「………あっそ」
そう言いながらもギコは笑顔になり、しいの手を今度は優しく握った。
「さ、逝こうぜホウキ星を探しにさ」
「うん♪」
二人はお互いの手を握りながら、
ギコの言う「絶好の場所」に向かっていった。
第一話終わり
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☆第二話☆
何分か歩いていると、さっきギコの言った「絶好の場所」に着いた。
そこは神社の裏側にある小さな丘だった。
確かに「絶好の場所」と言うのに相応しい場所だ、
夜空には、ダイヤモンドダストの様に輝いている無数の星が綺麗だし、
ここから見下ろして見える町の明かりも、夜空に負けない位に輝いている。
「ほんとに綺麗な場所だねぇ…」
しぃは夜空と夜景の境目のところを見つめている。
「………方が……だよ……」
「えっ? 何!?」
ギコは何か言ったらしいが声が小さくてよく聞き取れない。
「いっ、いやなんでもないよ
それよりしぃ、俺のリュックの中の望遠鏡と三脚(望遠鏡を支えるもの)取ってくれないか?」
「うん、いいよ」
しぃは笑顔で、木の幹に置いてあったギコのリュックを取りに行った。
そのしぃを見つめながらギコは呟いていた。
(さすがに今時、「しぃの方が綺麗だよ」だなんて言えねえよな……)
そして呟き終わったと同時にしぃが望遠鏡と三極を担ぎながら歩いてきた。
「ギコ君、取ってきたよ」
「あぁ、じゃ始めようか」
「うん♪」
二人は天体観測の準備を始めた。
――――――中断――――――――