モナー小説掲示板ログ保管庫@wiki(´∀`*)

ウェーイ)

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
・・・プロローグ・・・

 事の始まりは六年前だった。
 「上層部の輩はなんと言っていた?」
 いくつものカプセルがある。実験室だろうか。そこにいる長髪の男が、【夜勤】と書かれた帽子をかぶった男に尋ねた。
 「とっととプロジェクトを開始しろ!! ・・・とのことです」
 「全く、老人共は何を考えているのだか・・・。一度も成功例がない、しかも名前からして失敗しそうな感じのプロジェクトをやれだと? おまけに何故私が責任者の役までしなくてはいけないのか、あの老人共に小一時間問いt」
 「しかし、上からの命令には逆らえません・・・」
 「クッ・・・仕方ない。で、誰が中にはいるのだね?」
 「はい。ここの研究員の1/3の皆様と削除人の皆様と、軍上層部管轄内の孤児院の子供達です。あと、母者さんの息子さんとそのお友達が入るそうです」
 「なっ!? ・・・・・・彼らは、自らなのか?」
 「自ら、だそうです・・・。孤児院の子供達もそうです・・・」
 少々驚いた口調で尋ねる長髪の男に対して、【夜勤】と書かれた帽子をかぶった男はつらそうに答えた。
 「彼らは、面白いゲームか何かだと思っているのだろうな・・・。ゲームというあまいものではないのにな・・・」
 しばらく沈黙が、実験室に流れた。そして。
 「・・・仕方あるまい。これより、『NIGHTMARE CITYプロジェクト』を実行に移る! 夜勤! 研究員及び削除人共と彼らを、あのカプセルの中に入るように言ってくれたまえ!! それから、例の『管理AI』と、念のため監視プログラムをスタンバイしてくれたまえ!! 急げ!!!」
 「了解!!(人使い荒いなぁ、ひろゆきさん・・・)」
 そういうと夜勤という男は、実験室を出ていった。中に残っているのは、ひろゆきという長髪の男だけだ。
 「・・・・・・今まで二回やってきて失敗したが、せめてこれだけは成功してくれ!! 未来ある、彼らのために・・・!!」
 だがそんなひろゆきの願いもむなしく、このプロジェクトは彼が恐れていた事態になってゆくのである。
 そう、ここから悪夢が始まったのだ・・・・・・。
──────────────────────────────────


・・・第一章~予兆~・・・

 ジリリリリリリ・・・・・・
 とあるマンションで目覚まし時計が鳴った。かなりの大音量だ。
 その中で、けたたましい音にも関わらず寝ている少年がいる。
 彼の名は、ギコという。弱冠十六歳の黄色い猫AAである。短気で、物事を感情にまかせて行動してしまうタイプだと、周りからはよく言われている。更には、三日以上は眠っていられるというのが驚きなところである。
 「う~ん・・・。うるさいなぁゴルァ・・・」
 そんなギコも、大音量で目覚まし時計が五分も鳴り続けていれば流石に目が覚める。
 「なんだよ・・・まだ八時じゃねぇか・・・・・・って八時いいぃぃぃぃ!?!」
 普段この時間ならば、彼は高校に行って友達とお喋りしている頃だ。ちなみに、この十分後にはホームルームが始まっている。
 「兄キィ!! 兄キィィィーー!! ・・・・・・ってもういるわけねぇか!」
 微妙にたった寝癖をとかしながら、ギコは学校に行く準備をした。もはやその顔は、反泣きの状態である。
 ギコが先ほど呼んだ自分の兄、彼は普段ならとっくに大学に行ってしまっている。普段ならば。
 「うるせぇ!! 朝っぱらからドタバタしてんじゃねぇぞゴルァ!!!」
 その声の主は、ダイニングルームでお茶を飲んでいた。
 「!?! あ、兄キィ!? 何でこんなところにいるんだよ!? 大学はどうしたんだよゴルァ!?!」
 お茶を飲みながらギコの言葉に少々驚いている彼の名は、フサギコという。通称フサ。ギコと違って、毛がものすごく長い二十歳の茶色の猫AAだ。
 見た目からして、とてもじゃないが兄弟だとは思えないだろう。性格が似ていなければ、なおさらだろう。
 「あーもうわけわかんねぇよ!! でっけえ音で目覚まし時計は鳴るし、今は八時とっくに過ぎてるし、おまけに兄キはのんびり茶なんか飲んでるし!! どーなってんだよゴルァ!!!」
 混乱しているギコを見て、フサギコは溜息をつきつつ、呆れた口調で言う。
 「・・・ギコ、ちょっと訊くぞ・・・。今日は何曜日だ?」
 「何いってんの!? カレンダー見ろよな!! 今日は日曜・・・日・・・・・・あ!」
 「よーやくお気づきのようだな、バカ弟」
 ギコはすっかり忘れてた、というような顔をしていた。
 「・・・じゃあ、あのバカでけぇ音の目覚まし時計は?」
 「オレがセットした。もし起きなかったら四,五発殴ってやろうかと思ったけど、手間が省けて良かったよ」
 ギコは、むかつくような安心したような変な気分だった。
 「なんだぁ、今日は日曜日か・・・。もういっぺん寝てくる」
 「待たんかバカ弟!!!」
 寝室へ向かうギコを、フサギコが引き留めた。
 「・・・んだよ兄キィ?」
 「まずメシ食え!! それから今日は出かけるぞ!!!」
 「ハァ(゚Д゚ )? なんでまた?」
 そう質問したときには、ギコはすでに椅子に座らされていた。
 「ああ。実はよお、あのバカでかい科学館にプラネタリウムができたんだよぉ。だからさぁ、みんなで行こうかなぁっと」
 フサギコの目は、まさに幼い子供の目のように輝いていた。
 「オレは勉強が嫌いなんだよ! 他の奴ら誘えよな! 流石兄弟とかよ・・・」
 ギコはさめかかった朝食を食べながら、ぶっきらぼうに言った。
 「何いってんだよ! オレの弟だからこそ、お前も行くんだよ!!」
 「なっ・・・何でそうなるんだよ・・・!」
 「あ~そうそう。おとといさぁ、削除人に知り合いがいるってやつからさぁ、大剣もらったんだけどさぁ~」
 「・・・・・・ハァ(゚Д゚ )? 何いってんの?バカじゃねぇか?」
 いくら単細胞な兄とはいえこんな爆弾発言するか、とギコはそう思ってしまった。
 「しょうがないなぁ。見せてやるよぉ」
 フサギコは嫌みったらしく言って、自分の寝室に向かった。
 二分後、フサギコは大剣を持ってきた。見た目は本物のようだが、ギコはオモチャだろうと思っている。
 「疑ってるな? そう思って鉄板を用意した。触ってみな」
 見た目と色は鉄板だ。持ってみると、ずっしり重いし堅い。それどころか、傷一つすらない。本物の鉄板だ。と言うより、鋼の板だ。
 「・・・これを斬るってか?」
 「そーゆーことw ・・・んじゃあ、早速逝くぜ」
 そう言うとフサギコは、左手に鉄板を、右手に大剣を持って振り下ろす準備をした。
 「・・・・・・でやああぁぁぁぁぁぁ!!」
 フサギコのかけ声と共に、右手の大剣が鉄板に向かって振り下ろされた。
 
   スパンッ!!

 という嫌な音と共に、鋼の板が真っ二つに割れた。
 「えっ・・・? マジで・・・ホ、ホンモノ・・・・・・?」
 ギコは唖然とするしかなかった。一瞬のうちに、無傷だった鋼の板が真っ二つになってしまったのだから。
 「ホンモノだぜぇw だからお前が逆らえば・・・どうなるかわかるよな?」
 フサギコは、嫌みったらしい笑みを見せながら勝ち誇ったように言った。
 「・・・・・・お、おのれくそ兄キイィィィーーーーーー!!#」
 「あっはっはっはっは。てな訳で、準備ができ次第オレに声かけろよ。そうだ。せっかくだからお前も友達誘えよ。つか、誘え」
 フサギコの大剣が鈍く光った。それは、ギコに脅しかけているように見えた。
 「お・・・覚えてやがれぇぇーーーーーーーー!!!」
 怒りと恐怖が混じったギコの声は、フサギコには届かなかった。


 ギコとフサギコが兄弟喧嘩をしているとき、ある民家ではとある兄がパソコンをやっていて、弟がそれを見ている。そして・・・。

   ガガガガガガ・・・・・・

 「OK、ブラクラゲット」
 「・・・相変わらず流石だな、兄者。この朝だけで三十回もブラクラを取ってるぞ」
 「ふふふっ。流石だろう」
 (兄者の思っている意味ではないぞ・・・)
 パソコンをやっている方は兄者という。ここの民家に住む、流石家の長男である。歳は二十歳の黄緑色の猫AA。趣味は萌え画像及び動画集め・・・だそうだが、動画どころか画像の一つすら集まっていない。代わりに集まるものは、ブラクラなどである。だが以外にも、地理以外の勉強は出来るらしい。
 一方、そんな兄者の横で呆れた顔をしているのは、弟者という。兄者よりもまじめな流石家の次男である。歳は十九歳の猫AA。勉強はやや苦手だが、スポーツは万能にこなせるという。だが、引きこもりがちな兄者につきあっていて、最近ろくに運動していないらしい。
 「さてと・・・再起動、再起動」
 「兄者、まだやるのか? いい加減あきらめたらどうだ?」
 弟者の言うとおりである。だが兄者には、諦める気配など全くない。
 「何を言う。『ピンチのあとにチャンス有り』というだろう? それと同じで、ブラクラのあとに萌え画像有り・・・だろう」
 「いや兄者、そういうことj」
 弟者が言い終わる前に、すでに兄者がまたブラクラを取っていた。
 「OK、またまたブラクラゲット」
 「兄者・・・いい加減にしろよ#」
 弟者も間抜けな兄に、少しキレてきたようだ。一発殴ってやろうかと思ったその時だった。
 「大きい兄者~小さい兄者~、おはようなのじゃ~」
 真後ろから、挨拶をかけてくる少女がやってきた。
 「むっ、妹者か。おはよう。今日は少々遅かったな」
 「おはよう、妹者(ちっ、運が良かったな兄者・・・)」
 眠そうに目をこする彼女の名は、妹者という。十二歳の流石家の末っ子であり、もっともまじめな人物である。
 しかし、外見はスカイブルーの髪の毛と、それと同一色の瞳をもつ人AAである。それに比べて、兄者と弟者は猫だ。外見及び性格と共に、本当に兄者達の妹とは思えない。口癖は、語尾に『~なのじゃ』とつけるらしい。
 「ねぇねぇ、大きい兄者。さっきから携帯電話が鳴っているのじゃ」
 「何、まことか? ならばすぐにでなければ・・・」
 「持ってきてあげたのじゃ~」
 「おお、流石は我が妹。すまぬな」
 そうお礼を言うと兄者は、妹者からまだ鳴っている携帯電話を受けとった。
 「むっ、フサからだ・・・。何用だフサ? 用件はさっさと申せ」
 〈いきなりそれかよ、兄者・・・。まぁいいや。あのさ、今日暇?〉
 「氏にそうなほど暇ですが、何か?」
 〈ちょうどいい! 今から科学館に行かねぇか? プラネタリウムができたって聞いたから、お前らも誘おうかなって思ったんだけどよ?〉
 「プラネタリウムか。悪くないが・・・。弟者達と話し合っていけたら行ってもy」
 〈ホントか!? じゃあ、科学館前の時計台に八時四十分に集合だ! こいよな!! んじゃな!!〉
 「まだ決まっておらn・・・・・・ってもう切りやがった」
 溜息をつきながら、兄者は電話を切った。
 「フサ、なんと言っていたんだ?」
 「うむ。科学館にプラネタリウムができたから来ないか、とのことだ」
 「プラネタリウム!? すごいのじゃ~!! 大きい兄者~、連れてって欲しいのじゃ!!」
 「いいかもしれんなぁ・・・。兄者、行くぞ!!」
 兄者は少し迷った。まだ画像を取りたいらしい。だが、すぐに別の答えを出した。
 「うむ。たまに外に出るのも悪くないな。そうと決まれば早速準備に取りかかろう。時計台前に八時四十分集合だそうだから急げよ」
 「あと二十五分か・・・。OK、兄者」
 「オッケーなのじゃ~!」
 弟者と妹者は、嬉しそうな表情を浮かべながら、準備に取りかかった。
 しかし、浮かれている弟者と違って、兄者は怖い顔をしていた。
 (・・・先ほどから嫌な予感がするが・・・気のせいだろうか?・・・だと、良いのだが・・・・・・)
 その予感が気のせいではないことを、兄者達は身をもって思い知らされることになろうとは、思ってもいなかった・・・。


 「ギコ、お前は誰誘ったんだ?」
 携帯電話をしまいながら、フサギコは尋ねた。
 「ああ。とりあえず、クラスメイトの≫1とおにぎりと誘った。あとは用事あるから来れないって。・・・・・・ハァ」
 「何ため息ついてんだよ?」
 「別に。・・・ンなことよりも兄キ、ちと聞いていいか?」
 「何をだ?」
 くだらないことかな、とフサギコは思った。
 「・・・この街の名前ってさぁ、どうしてナイトメアシティってゆうんだ?」
 「え? うーーーん・・・。さぁな。オレにもわかんねぇや」
 ギコ達が住む大都市の名は、ナイトメアシティと言う。何故、このような不吉な名前が付いたのかは、ここの住民は誰も知らない。
 「なんかでっけー事件とか起こったわけじゃねーよな・・・。でもよ、今更になってどうしてそんなことを?」
 「あ、いや、何となくなんだけどよ・・・・・・・・・ってあれ?」
 「ん? どうした、ギコ?」
 ふと上を向いて驚くギコ。それにつられて、フサギコも上を向いた。
 そんな彼らが目にしたものは、どんどん黒くなってゆく太陽の姿だ。
 「何だぁ・・・ありゃ?」
 「日蝕だ」
 「日蝕? ・・・なんだそりゃ?」
 ギコは不安そうにフサギコに訊いた。
 「・・・オレも見るのは初めてだが、月が太陽と地球の間に入って太陽光をさえぎって、太陽を隠す現象らしいが・・・。しかし、恐ろしくはえーな・・・」
 一分もしないうちに、太陽が真っ黒になってしまった。
 「まっ、オレら自身に害はないはずだから、このまま行こうぜ」
 「え? あ、ああ・・・」
 だがギコには、これがただの日蝕ではないように見えた。
 彼には、何かの予兆に見えた・・・。


 ギコ達が住んでいるマンションの屋上。そこに紫、白、赤、長身かつ白い猫AA達が何やら話し合っている。
 「日蝕だ。・・・時が来たぞ」
 「アーヒャヒャヒャヒャヒャ、ミナゴロシノジカンダァ!!!」
 「もうすぐ、モナ達の計画のスタートモナね」
 「ハァ、ハァ(´Д`*)・・・。≫1さん、いよいよだよ・・・」
 その会話の内容は、良いものではないようだ。
 「まぁ待て。計画開始は一時間後だ」
 「ナンデダヨ!?」
 「そういえば、しぃちゃんがいないモナね・・・。もしかして、しぃちゃんがいないから?」
 「そうだよ。という訳で手分けして探してくれ。まぁもし見つからなかったら、さっき言ったとおり一時間後に計画開始だよ。あと五分前になったら自分の担当場所に行ってくれ」
 「チッ、シカタネエナ」
 「OKモナ」
 「じゃあ、一時間後に会おうね・・・≫1さん」
 そう言うと紫色の猫AA以外のAAは、しぃという人物を探しに行った。
 「しぃ、一時間だけ猶予を与えてやる。それまでに戻らなかったら・・・・・・キミも殺すからな!!
 そう言った瞬間、紫色の猫AAの左手から、紅い大剣が突如出てきた。
 もうすぐ。悪夢が始まろうとしている。


 あのマンションから少しはなれた裏路地。そこに一人の少女が、ビルの壁により掛かって座っている。十六歳ぐらいの、桃色の猫AAだ。
 彼女の名前はしぃ。そう、あの紫色の猫AA達の仲間である。
 しかし彼女は、彼らがまもなく行う計画に反対して、一人抜け出してきたのだ。
 「・・・あっ、日蝕・・・・・・」
 ふと空を見上げると、黒い太陽が彼女の瞳に写った。それが何を意味しているかを、彼女は知っている。
 「とうとうあの計画が始まるのね。・・・私一人じゃ何もできないけど、・・・・・・モララー、あなたの計画を止めてみせるわ・・・!」
 何やら固く決心すると、しぃは走り出した。あの紫色の猫AA、モララーの計画を止めるために・・・。
──────────────────────────────────


・・・第二章~悪夢の始まり~・・・

 ギコ達がみんなと待ち合わせをしている場所に着いたのは、八時三十五分頃だった。そこは、科学館と呼ばれている建物の正面にある、大きな時計台だ。
 そしてそこにあるベンチには、二人の人影が座っている。
 「おっ、あれは・・・≫1とおにぎりじゃねーか。おーい!」
 ギコはベンチに座っている二人に声をかけた。どうやら顔見知りらしい。
 「あっ、あの声は・・・・・・やっぱりギコ君だ!」
 「ホントだワッショーイw」
 最初にギコの声に気がついた少年の名は、≫1という。ギコとはクラスメイトである。黄色でたった髪の毛と、それに似合わない細めが特徴的な人AAである。
 一方、『ワッショーイ』と語尾につけているもう一人の少年は、おにぎりという。彼も、ギコのクラスメイトである。顔がおにぎりの形のような、ちょっと変わったAAだ。
 「おはよう、ギコ君。・・・どうしたの、不機嫌そうな顔をして?」
 「いや、ちょっとな。・・・・・・兄キに脅されてな」
 「ギコォ~。何か言ったかゴルァ~?」
 「何でもありませんよ、兄さん!!」
 イライラしながらギコは、空いているベンチに座る。
 「フサさん、ご無沙汰してます」
 「いやいや。こっちこそ、バカ弟が世話になってるなっ」
 「・・・・・・(゚Д゚#)」
 「ところで、これで全員ワッショーイ?」
 「いや、あと流石兄弟が来るはずなんだが・・・」
 あの兄者のことだ。多分来ないだろう、とフサギコは思った。だが、その予想は外れた。
 「お~い! フサ~!」
 数分経ってからだった。聞き覚えがある声が聞こえた。その声の持ち主は、みんな分かっている。兄者だ。
 「遅れてスマンな」
 「おはようございますなのじゃ~」
 彼らが来たときには、時計は八時四十三分を指していた。
 「へぇ、来たんだ。お前のことだから来ないんじゃないかと思ったぜ」
 「失礼だぞ、フサ。俺だって、たまには外に出かけるときぐらいあるぞ」
 「とにかく、これで全員か?」
 ギコはみんなに尋ねた。
 「たぶん。僕はレモナちゃんを呼んでみたけど、忙しいから来れないってさ」
 「こちらもネーノを呼んでみたが、用があるから無理だそうだ」
 ≫1に続き弟者が言った。
 「じゃあ、これで全員だねワッショーイ」
 「みたいだな。・・・んじゃ、いこうか・・・。兄k・・・・・・って兄キ? どこ行った?」
 「フサさんなら、もうとっくに行っちゃったよ」
 ≫1の指さす方向には、すでにチケット買っているフサギコの姿があった。
 「んなっ・・・もうあんなところで! 一声かけろやゴルァ!!」
 「時に落ち着け、ギコよ。・・・まぁ、我々も早速逝こうぞ!」
 「うん! 行くのじゃ!!」
 そういうと兄者は、妹者を連れて科学館へ向かう。
 「あっ兄者!? ・・・しょうがないな。・・・・・・ってあれ?」
 弟者が気づいたときには、もうすでに一人残されていた。
 「・・・ま、待ってくれーー!!」


 彼らが入って最初に目にしたものは、いくつもの望遠鏡だった。
 「ああっ! この望遠鏡!! けっこう倍率いいやつなんだよなぁ!! いいなぁ・・・。おお! こいつもいいやつじゃねぇか!!」
 「(つーか、何で望遠鏡?)兄キィ!! みんなもう行っちまったぜ!?」
 「分かった、分かった。先に行っててくれ。オレはもう少s・・・・・・うほっ! これもいいなぁ!!」
 「どっかのガキみてぇだ・・・・・・」
 そう呟くとギコは、その場を去っていった。


 そのころ兄者達は、大きな扉の前に立っていた。
 「・・・ここだな」
 「そのようだな、兄者」
 「わくわくするのじゃ~」
 「楽しみだね」
 「早く入ろうよワッショーイ」
 「そうだな・・・。では、行くぞ!」
 そう言うと兄者は、ゆっくり扉を開けた。
 次の瞬間、彼らの目に驚くべき光景が映し出された。
 「・・・・・・!!」
 「・・・なんとも神秘的な・・・」
 「きれいなのじゃ・・・」
 「こんなにすごいの・・・見たことないよ」
 「・・・ホンモノみたいだねワッショーイ」
 プラネタリウムに映し出された星々は、彼らをその神秘的な光景で迎え入れたのである。


 「えーっと・・・。おっ、ここだな」
 兄者達が入ってから三分後、ギコもプラネタリウムの扉の前に来た。
 「暇つぶしぐらいにはなるかな。・・・にしても、無駄にでかい扉だな・・・」
 そう言いながらギコは、その扉を開けた。
 「さーてと、どんなもんかな・・・・・・!! す、すげえ・・・。ホンモノ以上じゃねぇのか・・・?」
 ギコでさえ、その神秘的な光景に目を奪われてしまったようだ。
 「なっ! 来て良かっただろ!?」
 「わっ!! な、なんだ兄キか・・・。脅かしやがって・・・」
 いつの間に来たのだろうか。フサギコが後ろにいた。
 「お前が勝手に驚いただけだろう?」
 「普通誰でも驚くぞ・・・」
 ぶつぶつと文句を言いながらギコは、辺りを見渡しながらうろうろと歩き出した。
 北側には、四人の人影がそこに見える星座などを言い合っていた。声からすると、兄者達だ。
 更にギコは、南側に行ってみた。ふと上を向くと何よりも最初に、ある四つの星が目に映った。
 「なあ、兄キ。あれ、なんてゆうんだ?」
 ギコは、後ろに着いてきているフサギコに尋ねた。
 彼の指さす四つの星は、十字架をかたどっているように見える。
 「おっ、珍しいなぁ。お前がオレに訊くとは・・・。しかし、こんなものもわからないとは・・・やっぱ日頃の勉強が必要ですよ、ギコ君?」
 「・・・んなこたぁどうでもいいからとっとと教えやがれゴルァ#」
 「やれやれ・・・。あの四つの星はな、それぞれアルファ、ベータ、ガンマ、デルタってゆーんだ。その四つの星を対角線で結ぶと十字架に見えるだろ? しかも南にあるから、あれらは南十字星と呼ばれている」
 「南・・・十字星・・・?」
 「そうだ。あと南十字星の上にあるヤツがケンタウルス座ってゆーんだけども、これはな・・・・・・」
 (また始まった・・・。兄キのウンチク)
 ベラベラと喋るフサギコを無視して、ギコは南十字星を見上げた。
 「南十字星・・・・・・サザン・・・クロス・・・」
 そう呟いた瞬間、彼の頭の中に何かが流れ込んできた。思わずギコは頭をおさえた。
 「? どうした、ギコ?」
 フサギコが、大丈夫かと声をかけようとしたその時だった。
 「Go,if you come up against a hurdle.
        Fight,fight for the things you belive in...」

 「えっ?!? お、おいっギコ!? おお、お前・・・」
 突然、ギコが歌い出した。苦手で、嫌いな英語で。
 まるで、何かに取り憑かれたように。
 「Passion,Joy,Sorrow,pain and tears.
        All they will be pabulum of your life...」

 「? ギコ? おい、ギコ!? どうしたんだ!? しっかりしろ!!」
 心配になったフサギコは、思わず大きめの声を出した。
 「!!! あ、兄キ・・・。わ・・・わりぃ・・・」
 「大丈夫か、ギコ? それに・・・今の歌は・・・?」
 「わからねぇ・・・。けど、急に頭ン中に流れてきたんだ・・・。どこかで聞いたような歌だった・・・」
 「『行け、たとえ困難に直面しても。戦え、己が信じる物のために・・・。情熱も、喜びも、悲しみも、痛みも涙も。全てキミの生きる糧になるから・・・』訳すとこんなもんだな・・・。でも、よく歌えたな・・・。英語嫌いなお前が・・・」
 「ああ、自分でも驚いてる・・・」
 しばらく沈黙が流れた。だが、その沈黙は長くなかった。
 「フサ!! 先ほどお前の声が聞こえたが・・・大丈夫か?」
 後ろから声が聞こえた。声の持ち主は、兄者だ。
 「え? あっああ、ダイジョブだ! 気にするな!」
 「そうか・・・。ならば良いのだが・・・」
 兄者は心配そうに言いながら、その場をはなれた。
 「・・・もう少し経ったら、ここを出よう」
 「ああ・・・。わりぃが、そうさせてもらうぜ・・・・・・」


 「あと二分・・・」
 ギコ達のマンションの屋上。そこに、あの紫色の猫AAが立っている。モララーだ。彼の左手には、血のように紅い大剣を持っている。
 プルルルルルル・・・・・・プルルルルルル・・・・・・
 突然、電話が鳴る音が聞こえた。その音は、モララーが持っている携帯電話からだった。
 「・・・つーだ。なんだろう・・・。なに、つー?」
 「オイ!! マダミナゴロシノジカンニナラネェノカヨ!?」
 電話の相手は、先ほどモララーと一緒にいた赤い猫AA、つーだ。殺すことが生き甲斐だという、危険極まりにAAだ。
 「ハァ・・・。つー、僕に電話したって計画開始の時間は変わらないぞ。それより、しぃは?」
 「ハイハイ。シィノヤツハドコニモイネェゼ。デ、アトナンプンダヨ?」
 「そうか・・・。今二分きったよ。今度は自分の携帯をを見てくれよ」
 「アヒャ、ワカッタカラセッキョウハアトニシテクレ。ンジャ、アッチノセカイデ」
 「ああ、またね」
 そう言ってモララーは、携帯電話を切った。
 「しぃ、やっぱり僕ら裏切るのか・・・。じゃあ、仕方ない・・・キミも殺すからな・・・!!」
 モララーの憎悪と欲望に満ちた黒い瞳が、おぞましく光った。


 「今日はとても楽しかったね、ギコ君」
 「・・・・・・」
 「? ギコ君、どうしたの?」
 「え? あっいや、なんでもない・・・。気にするな・・・」
 先ほどからギコは、自分が無意識のうちに歌っていた歌のことを、ずっと考えていた。≫1の声など、聞こえていなかった。
 「なんか元気みたいだねワッショーイ・・・。大丈夫?」
 「勉強のやりすぎで疲れたのか? 勉強も良いが、無理はいけないぞ」
 (兄者は全くと言っていいほど勉強などしない・・・)
 「・・・何か言ったか、弟者よ?」
 「・・・幻聴だ。俺は何もいっていなかったし、何も聞こえなかったぞ」
 「そうか・・・」
 「でも、とっても楽しかったのじゃ~」
 「だな。よし、今日はオレがおごってやるぞ~」
 「・・・いいのかよ兄キ? 金欠じゃなかったのか? それに、今九時半だぞ?」
 「たこ焼きぐらいは買えるぞ。それに、それはおやつ代わりにもなるだろう?」
 「ハイハイ・・・」
 そう言って彼らは、たこ焼きが売っている街の商店街へと向かった。
 もうすぐ、何が起ころうとしているかを知らずに・・・。


 「・・・・・・あと三十秒・・・」
 モララーが嬉しそうに言った。彼らの計画が、もうすぐ始まろうとしているからだ。
 「・・・・・・あと二十・・・・・・十五・・・・・・十」
 先ほどから言っているのは、計画開始のカウントダウンである。
 「・・・・・・五、四。三、二、一・・・・・・NIGHTMARE、スタート!!!!」
 そしてついに、悪夢が始まった。


 「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 大きく、悲痛な悲鳴が、この大都市を沈黙にした。
 悲鳴。また悲鳴。聞こえては消えてゆく、苦痛と恐怖に満ちた悲鳴。
 「な、なんだぁ!?!」
 「今の悲鳴は・・・・・・!?」
 「何事だ!?」
 「ただごとではないぞ、兄者・・・!!」
 「ななななんかやばそうだよワッショーイ!!!」
 「ガクガクブルブル(゚Д゚;)!!!」
 「あ、あっちからたくさん聞こえるのじゃ!!」
 「ホントだ・・・。あっちは中心街のほうだ・・・。行ってみるか!!」
 「賛成だ!! 行くぞ、皆の者!!!」
 「い、行くんd・・・・・・ちょっと、待ってくださーい!!」
 そう言って彼らは、叫び声が聞こえたところへ走っていった。
 そして彼らは、悪夢と闘うことになる・・・。
──────────────────────────────────


・・・第四章~大都市の狩人~・・・

 「ここ・・・だよな・・・? いったい何が・・・」
 「普通に見りゃわかるだろ、兄キ・・・。ここで何があったのかぐらい・・・」
 「クッ・・・! 俺らから見れば、地獄絵だな・・・」
 「ひ・・・・・・酷いのじゃ・・・」
 「あわわわわ・・・・・・」
 ギコ達が中心街で見たもの。それは、原形をとどめていないほどバラバラにされたたくさんのAA達だ。
 「クソッ! 俺たちの友達まで・・・!」
 「落ち着け、弟者よ。・・・とにかくいったん我らの家へ向かおう。この辺りだと、我らの家のほうが近いだろう」
 「そ、そうですね。だったら早速行きましょう。善は急げです」
 「そうだなゴルァ・・・。んじゃ、早速お邪魔させてもらうぜ」
 全員が賛成のようだ。だが。
 「わるい。先に行っててくれ。オレ、ちょっと戻る」
 「戻るって・・・・・・この状況わかってんのか兄キ!? 危険すぎるぞゴルァ!!」
 「ギコの言うとおりだ!! 今は危険すぎる!!!」
 ギコと兄者が止めに入る。だがフサギコは、聞く耳を持とうとしない。
 「大丈夫だって! ちょっとあるもん取りに行くだけだよ! そんじゃな!」
 「あ、兄キ!!」
 「おい、待て!! フサーー!!!」
 結局行ってしまった。フサギコは、この中でも一番足が速い方だ。とてもじゃないが、追いつけない。
 「ど、どうするんですか!?」
 「クッ・・・仕方ない! 弟者、我らだけでも先に行くぞ!」
 「承知! 妹者よ、こっちだ」
 「う・・・うん・・・。わかったのじゃ・・・」
 妹者はもうほとんど放心状態だった。無理もない。十二歳であんなひどい死体を見たのだから。そのとなりでも、≫1が完全に放心状態に陥ったおにぎりを抱えている。
 「皆の者、急ぐぞ! 今の我らでは、勝てる相手ではなさそうだ! 一度戻っt」
 「モドルヒツヨウはナイゼ。ナゼナラ・・・・・・オマエラハココデゼンインシヌンダカラナァ!! アーヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」
 「なにっ!? だ、誰だ!?!」
 だが、その声の持ち主はどこにも見当たらない。前方、後方、左右とどこにもいない。だが、もっと別の場所になら・・・。
 「上だ!! 皆の者、退け!!!」
 兄者の声で、全員後ろに下がった。まさにその時だった。

   ドオオォォォォォン・・・!!

 赤い物体が落ちてくると同時に、大きな地響きが鳴った。
 その物体がゆらりと動く。否、物体ではなかった。AAだ。姿は赤い、猫AAだ。そいつのいる場所には、巨大なめり込みが出来ていた。
 「なっ・・・・・・!!」
 「馬鹿な!! これほどのことを、一人のAAで出来るはずがないぞ!!」
 「ちょwwwwwwまっwwwwwwやばいですよ、この人!!!」
 「な・・・何が・・・・・・起こったの・・・じゃ?」
 「・・・・・・貴様、何者だ? まさかとは思うが、ここにいるAA達を殺ったのは貴様か?」
 「ソノマサカダヨ。オレハツー。オマエラゼンインヲコロスタメダケニウマレテキタソンザイサ!! アーヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」
 その笑い声は、殺気に満ちあふれているようだ。
 「・・・・・・おいおい、こいつはマジでやばいぞ・・・。早く逃げるぞ! ・・・って、お前ら聞いておるのか?」
 兄者が言うが、みな逃げようとしない。
 いや、恐怖で足が動かず逃げられないのだ。
 「くそ、どうすれば・・・!」
 「兄者。俺がおとりになっている隙にみんなと逃げてくれ」
 「何っ!?」
 「ギ、ギコ君!? 何いってんだよ!! 危険すぎるよ!!」
 「≫1の言うとおりだぞ!! 自ら死に急ぐ必要はn」
 「こんな所で全員死んじまうよりマシだろ!! こいっ!! まずオレが相手だゴルァ!!!」
 そう言うとギコは、すぐさま身を構える。
 「ヘェ、マズハオマエガアイテッテカ・・・。ケンカヲウラレタノハハジメテダヨ!!!」
 先に仕掛けたのはつーの方だ。だが、すぐにギコは飛びかかってくるつーの背後に回って、一発蹴りを喰らわせようとした。が、あっさりかわされてしまう。
 「!! そ、そうだ・・・。皆の者、すぐにここから離れるぞ!! 我らの家へ!!!」
 「な、何を言っているんだ兄者!? ギコが戦っておるのだぞ!! こんな所d」
 「ギコも言ったであろう!! こんな所で、全員死ぬよりはマシだと!!! 早く行け!!!」
 いつもはとぼけながらもブラクラを踏んでばかりの兄者が、まじめな顔をしている。
 「クッ・・・!! 行くぞ、妹者よ!」
 「わ、・・・わかったのじゃ・・・」
 「ギコ君・・・・・・」
 そして、兄者達はその場を離れた。流石兄弟の家へ向かうのだろう。
 「チッ、ニゲラレタカ。マァ、アトデサガストシヨウ」
 「それはこのオレを倒してからにするんだなゴルァ!!!」
 力任せのギコの拳が、つーの左頬に命中する。数メートルほどつーは吹き飛ぶ。だが、すぐに体勢を立て直す。
 「マサカアタイノホホヲナグルナンテ・・・・・・ユダンシタノモアルケド、ヤルネェ。・・・ケド」
 その口調は、怒りが混じっているようだった。
 「アタイノタイセツナイレズミノブブンヲナグリツケルノハ、ユルセナイネェ・・・」
 その左頬には、アスタリスクの刺青があった。何か分けありの刺青のようだ。
 怒りに燃える目をギコに向けたその瞬間、つーの両手に紫色の光が輝いた。それほど強い光ではないが、手全体を覆っている。その光が消えたとき、つーの両手には紫色に輝く短剣がャられていた。
 「な・・・!? なんだ・・・それ・・・?」
 「コレカイ? コレハキノブキッテユーヤツサ。アタイラカンリAIダケガツカエル、オマエタチヲコロスドウグサ!!
 「“気の武器”・・・? 管理AI・・・?」
 二つの言葉に疑問を抱いているうちに、つーはすでに真っ正面にきていた。
 「シニナァ!!!」
 切りかかるつーを、ギコは何とかかわした。しかし、腹部が少し切れる。もう少し遅ければ、ギコは真っ二つになっていたであろう。
 「っ・・・!! あっぶねーな!!」
 「オラオラ!! ヨソミシテンジャネーゾォ!!」
 再び切りかかろうとしたその時だった。
 「あれ? つーちゃんだモナ。モナの担当場所まで来ちゃったんだ」
 ちょうどつーの後ろから声が聞こえた。口振りからすると、つーの仲間のようだ。
 「チッ、モナーカ」
 めんどくさそうに言うと、つーは後ろに下がった。
 「クッ、そいつの仲間か!?」
 「そうモナ。モナの名前はモナーというモナ。・・・それより、さっきはつーちゃんらしくなかったモナよ。どうしたモナか?」
 モナーは、語尾に『モナ』と付けるのが特徴的な猫AAだ。
 「ヒサビサニスコシウデノタツアイテダッタンデネ。チョットアソンデタダケダ。モナーモヤルカイ?」
 「う~ん・・・。気は乗らないけど、やらせてもらうモナ!!」
 そうモナーが言った瞬間、彼の右手が黄緑色に光り出した。そして、その光が消えた頃には、モナーの手に黄緑色の両端に刃の付いた剣が出現していた。
 「アヒャ!! ジャアイクゾ!! ケド、トドメハササセロヨ!!」
 「くそっ、二対一かゴルァ!!」
 「いや、二対二だゴルァ!!」
 今度の声は聞き覚えがある。ちょっとイラつくが、頼りになる声だ。そしてその声の持ち主は、つーとモナーの後ろで大剣を振り下ろした。
 「うわっと!」
 「ナ、ナンダァ!?」
 かわされはしたが、その大剣はそれなりの威力を持っているらしい。何せ、鋼の板をもいとも簡単に真っ二つにするほどだから。
 「あ、兄キ!?」
 先ほどモナーとつーがたっていた所には、ギコの兄のフサギコが立っていた。
 「ったくお前というヤツはよぉ、もう少し考えろよな! お前がこいつらに素手で勝てるわけねーだろ! 学習しろっつーの!!」
 「・・・うっせーなぁ!!」
 「ホウ・・・2タイ2カイ。オモシロソウジャネェカ!!」
 「いや、悪いが・・・・・・四対二だ!!」
 今度は、ギコの後ろから声が聞こえた。それとほぼ同時に、ギコの真横を何かが通った。
 小さな、鉄の塊のようなものだ。それがモナーの足下に当たる。
 「うわっ!! ビックリしたモナ~・・・」
 「あっ、兄者・・・? それに、弟者も・・・」
 ギコが振り返った先には、銃を持った兄者と弟者が立っていた。
 「ギコよ。鉛玉を腹一杯喰らいたくなかったら、少し離れた方がいいぞ?」
 「い!? チョ、ちょっと待て兄者!! 今はなr・・・ってうわぁーーーー!!!」
 いきなり飛んできた銃弾に驚いたギコは、とっさに猛スピードで逃げる。その銃弾は、つーとモナーめがけて飛んでくる。
 「おっとっと」
 「ヌワッ!! ムカツクヤツラダ。セッキンシテイッキニキリキザンデヤル!!!」
 「そうはさせねぇぞゴルァ!!」
 流石兄弟が撃ち放つ銃弾を乗り越えて接近しようとするつーを、フサギコが止めに入る。
 リーチがつーの武器より長いだけあって、少しだけ押している。だが、もし同じぐらいのリーチがある武器をつーが持っていいれば、確実に負けているであろう。
 「う~ん・・・、ちょっと厳しいかもしれないモナね。つーちゃん、ここはいったん引くもナよ」
 両端に刃の付いた剣で銃弾をはじきながら、モナーはつーにそう言った。そして、そのまま姿を消した。
 「ア、モナー!! ッタクショウガナイヤツダナァ・・・。オマエラ、ツギニアッタトキハバラバラニキリキザンデヤルカラカグゴシトケ!!!」
 そのままつーも姿を消す。
 今その場には、銃弾をリロードする流石兄弟と、ホッと胸をなでおろすフサギコと、完全に気が動顛しているギコが残っていた。
 「ふぅ・・・。フサ、ギコ、大丈夫か?」
 「オレは大丈b」
 「大丈夫じゃねーよ!! もう少しで銃弾があたるとこだったんだぞゴルァ!! 友達の弟殺すつもりか!?」
 「すまん、すまん。まぁ、生きているだけで良かったであろう」
 「よかねーy・・・ブオッ!?」
 「ンなことよりもだ。お前達、どうしたんだその銃は? それに、≫1達はどうしたんだ?」
 あきれながらギコを押さえつけたフサギコが、兄者達に問う。
 「≫1達は我らの家に向かわせた。今頃は家に着いているだろう。それとこの銃だが、・・・削除人の死体から拝借してきたわけだ」
 「ムゴ・・・ホゴ・・・・・・ブハッ!! え!? 削除人って、あの削除人!? やられちまったのか!?」
 削除人。それは千人を超える鍛え上げられたAA達のこと。いわば軍人のようなものである。
 「うむ。我らが通った道には、四,五人殺されていたよな、弟者よ」
 「そうだったな。・・・削除人と言えば! フサよ、先ほどネーノから電話があったぞ」
 「何!? ネーノからか!! 今どこに!?」
 思わぬ名前が出てきて、ついフサギコは興奮して、弟者の首を掴み縦横に振る。
 ネーノは、フサギコの大親友でもあり、史上最年少の削除人でもある。
 「グオッ!? は・・・話すからその手を・・・・・・放して・・・くれ・・・!!」
 「す、すまねぇ・・・」
 謝りながら、フサギコは弟者の首を放す。
 「ゴホッ・・・。ネーノは、今街の生き残っている何人かとで西の廃ビルに隠れているそうだ。それと、これはネーノから聞いた情報だが・・・・・・ほとんど全滅だそうだ・・・
 「そ、そんな・・・。あの削除人達でさえ、敵わないなんて・・・」
 しばらくの沈黙がその場を流れた。
 その沈黙は、ギコが口を開いたことによって消された。
 「・・・な、なぁ。これからどうするんだ?」
 「・・・そうだな。これから、生き残っている者達を探しに行こうと思っているのだが。・・・丁度四人おるから、四方向に分かれよう。俺は北を行こう」
 「OK、兄者。じゃあ、俺は南へ探しに行く」
 「オレは西だ。・・・ネーノ達のことが心配だしな」
 「・・・オレは強制的に東かゴルァ・・・。まぁ、いいけどな」
 「うむ、決まりだな・・・。ならば行動開始だ。・・・GOOD LUCK!!」
 兄者の大声と共に、みんなはそれぞれ生存者を探しに行く。
 だが、先ほどの戦いはほんの序曲に過ぎない。この先には、計り知れない悲劇が待ちかまえていた・・・。
──────────────────────────────────


 ・・・第四章~少女との出会い~・・・

 あれからに時間が経過した。
 「ハァ・・・・・・。結局見つからずじまい、か・・・」
 大通り、建物の中、裏路地まで生存者を捜したギコであったが、結局見つからなかったようだ。
 「しょうがねぇ。流石兄弟のうちに行くか・・・」
 あきらめたのか、ギコはしぶしぶと来た道を戻り始めた。
 その十字路を曲がろうとしたその時だった。

   ドカッ

 「うわっ!!」
 「キャッ!!」
 誰かとぶつかってしまったようだ。声からすると、女性のようだ。
 「いてて・・・。だ、大丈夫か?」
 「こちらこそ、ごめんなさい・・・」
 ぶつかった相手は、ギコと同じ年頃の桃色の猫AAだ。
 「・・・・・・」
 「? あ、あの・・・どうかしましたか?」
 しばらくギコは、その少女を見つめていた。そして数秒後・・・。
 「っおっしゃぁー! 生存者だゴルァ!! やっと見つけたぜぇーー!!」
 生存者を見つけたのがかなり嬉しかったのか、ギコはとてつもなく大きな声を上げた。
 「あ、あの・・・」
 「え? あっ、ゴメン! 急に大声出して・・・。えっと、オレはギコっつーんだ。キミは?」
 「わ、私は・・・しぃ・・・」
 「しぃ、君が通ったところに生存者・・・生きているAAはいなかったか?」
 「・・・ううん。私の通ったところには、もう・・・誰も・・・・・・」
 それ以上言葉が続かなかった。瞳が、悲しみに染まる。
 なんだか悪いこと訊いてしまったかな、とギコは罪悪感を感じる。
 「ご、ゴメン・・・悪いこと訊いちまって・・・」
 「ううん。いいの」
 「・・・あ、そうだ。ここで立ち話もなんだから、オレの知り合いのやつらのとこに行こうぜ」
 「え? でも・・・」
 「だーいじょーぶだって。みんなイイ奴だから! もしかして・・・迷惑か?」
 「そ、そんなことはないけど・・・。・・・・・・じゃあ、道案内をお願いしてもいいかしら?」
 「おっけー! じゃあ、ついてきてくれ」
 このときギコはまだわからなかった。彼女が何者で、どんな存在なのかを。


 (中断・・・)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー