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戦うトラック乗り達~Fighting Truck Drivers~ (来田)

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
・・・地球とは別世界、だが歴史は同じという世界の話である。


此処では他人から蔑まれながらもただひたすらに積み荷を運ぶ人達が居た。

彼らの人生は、時に激しく、時に星の様に、輝いていた。


この物語ではギコとその周りの人物に物語のスポットライトをあててみよう・・・・。



―――モナー陸送にて―――


ギコ君、ちょっと・・・

・・・・・・・モナー社長が俺を呼んでいる。

え、はいはい・・・・?

・・・・・言いにくいんだが・・・・・・・明日までに練馬から盛岡までの往復と、盛岡から木更津までの路線を担当してほしい。



また無茶な事を言われた。俺は無理だと言い、跳ね返そうとした。だが、こう言い返された。


延着でもなんでも早く行ってきてくれ。


・・・・・わかりました。




俺は自分の愛車、三菱ふそう ザ・グレートに乗り込んだ。

バタンッ

―――なんとも言えない・・・・懐かしいような香りが一瞬鼻に届いた。だが俺には急ぎ旅が待っている。俺はトラックのエンジンキーを回した。

エンジンが腹に響く鼓動を俺に伝える。

さてと・・・・・・行くか!!

俺の名はギコ。三年前、この業界に入った。今は長距離の大型トラックに乗っている。巷で噂されるほどの悪い奴や酷い奴は確かにいる。そしてその中に俺も入るかも知れないけどな・・・・。でも、良い奴もいるさ・・・・・・。

がが・・・・がー・・・こちら>>1。繰り返す、こちら>>1。ギコ喜べ、東北道使用許可が出たぞ!ただし、自腹でだと・・・・・・・どうぞ

了解・・・・・・・・。どうぞ。

頑張れよ。どうぞ




俺はインターチェンジのETCレーンにトラックを入れ、さっさと料金所を通過した。・・・・・カーナビによると高速道路でこの先に渋滞が発生しているらしい。どうやら他の路線でも渋滞しているらしく、下道を通るのも面倒だ、と俺は思ったからそのまま走った。そして案の定渋滞に嵌まってしまった。


・・・・・・な・・・・油断したな・・・・・全然進まない・・・・・。


俺はこの時後悔した。なぜなら、手間を省いて渋滞に嵌まるのなら下道を走った方が良かったと思ったからだ。


・・・・ま、いいか。



―――その時ふと思った。「この渋滞の原因はなんなのだろうか」と。俺は車載のTVをつけてみた。そして―――



がががー・・・・・・えーお昼のニュースです。今朝七時過ぎ、首都高速道路環状線、霞ヶ関インター周辺にてバス4台、トラック5台の関係する多重衝突事故が発生しました。この事故により同区間は通行止め、近隣の道路は渋滞しております・・・・・。


どうやら同業者の巻き込まれた事故らしい。TVを聞いている時、“それ”は起こった。

ドカァァァァン!!

・・・!?



すぐに俺は事態を把握した。どうやら、俺の真後ろでも事故が発生したらしい。俺はすぐにハザードランプを点け、愛車から救急用品を持って飛び下りた。



後方では、エスティマとカローラが絡む事故が起こっていた。俺は損傷の酷いカローラの方に駆け寄った。その時俺はある事に気がついた―――

・・・・・ガソリンが漏れている・・・・・早く助けないと!!


カローラの中にはギコ族の男性が運転席に座っていた。だが、意識が無いみたいだ。
・・・・俺はガラスを割ろうとしたが、なかなか割れない。とその時―――

任せろ・・・・・・


えっ・・・?

俺が振り返るとクックルの人が立っていた。次の瞬間にはガラスは粉々に砕けていた。

さっさと助けて今度はミニバンの運転手を助けるぞ・・・・・


あ、ああ・・・・。


幸いエスティマの方はフロントバンパーを損傷した程度だったが、運転手を助けた直後、二台は爆発、炎上し始めた・・・・・。


・・・・危なかった・・・・・・。

―――いや、まだだ。

・・・・・・・え?
クックルはそう言うと消火器を愛車らしきトヨタダイナから持ち出した。

消火しないと鎮火させるのが大変だ・・・・。

・・・あ・・・・!

―――俺はその時基本的な事を忘れていた・・・・。消火しなければいけない事を。

・・・・さっさと消火器をお前さんのトラックからもってこい・・・・・お前のトラックも延焼するぞ!!!


判った・・・・・!

俺は自分の愛車から消火器を持ってきた。

その後、二人掛かりでなんとか鎮火させたが、極度の渋滞の為救急車が来ないどころか、一メートルも進めない状態となった・・・・・・。俺はそこで車の中で寝る事にした―――




―――コ・・・・・ギコ・・・・・・・。

誰かが俺を呼んでいる・・・・・。

ギコ起きろ!!

・・・・うっ・・・・・・

俺が起きた所・・・・・・・そこはグレーの運転席の後に備えつけられているベットではなかった。

・・・・此処は・・・・・モナー社長・・?・・此処は何処ですか・・?

ここは病院のベットさ・・・・・。お前、高速で事故に巻き込まれたんだぞ?

え・・・・?

そう、俺は何時の間にか事故に巻き込まれていた―――



・・・・・・社長、俺のトラックはどうなったんですか?

言いにくいんだが・・・・・・ハッキリ言うぞ。

           「原型を留めていなかった」

・・・・それは・・・・もう二度と走らせる事は出来ないって事・・・・ですか・・・?


ああ。


・・・・そんな・・・・・じゃあ・・・・カローラやエスティマの話は・・・・?


警察の話だと・・・・・・・カローラやエスティマが絡んだ事故はお前の後ろでは起きていなかったらしい・・・・。


・・・・・じゃあ俺は・・・・・・

          「夢を見ていたのか・・・?」



悪夢を・・・な・・・。



―――しばらく病室には沈黙が続いた・・・・・・。そして沈黙を破ったのはモナー社長の一言だった。


「ギコ、これを期にトラック稼業は辞めるべきだ。」


・・・・・わかりました・・・・・。じゃあ社長に最後のお願いです。

「あのトラック、俺にくれませんか?」



・・・・・・・・二度と走る事は出来ないんだぞ?いいのか・・・・?


ええ。俺にも過失が有ると思いますし・・・・・それにトラックを殺してしまったのは俺かも知れないですから。

・・・・判った。明日君を当社のトラック運転手から解任する。いいね?


はい。異存は有りません―――




・・・俺はその夜、不思議な夢をみた・・・・・。




・・・・ここは・・・・何処だ・・・?天国・・・・?それとも・・・・

何とも言えない風景が目の前に広がっていた。そしてその風景の中に一人、子供が立っていた・・・・・。そいつは俺にこう言ってきた。



―――本当にトラックを降りていいの?―――





・・・・・お前は誰だ?

俺はそう言ってみた。すると・・・・・・

―――僕は君がよく知っている・・・・・相棒だよ・・・。ねぇギコ君、君は本当にそれでいいのか?君は後悔をしないの?・・・・・・・・僕は君がトラックの運転席から降りるのに反対だ。


なんでだ?

―――だって、君はまだトラックを運転できる体なんだよ?君は僕を殺したのかも知れないと、自分を恨んでいるよね・・・?

ああ。

―――僕は恨んでいないよ。だって、僕は君を事故の衝撃から護れたんだもの。


・・・・・・・・・・・・・・・。

―――僕の体は壊れたけど・・・・・・僕は死んでいないよ。だって、僕は「君自身」なんだから―――






俺はそう相棒が言ったのを聞いた。そして目が覚めた―――




バタンッ

ギコ・・・・・・・調子はどうだ?

―――モナー社長が病室に入ってきた。俺はこう言った。


・・・・・モナー社長、俺・・・・・・まだトラックを降りれません。・・・・俺・・・・あいつに夢で会ってきて・・・・・・・「まだ降りるのは早過ぎる」って・・・・言われたんです。

また病室には沈黙が流れた・・・。そして―――


そうか・・・・・。じゃ、この辞表は要らないな。


はい。


事故の後始末はしてやるから・・・・体を直せよ・・・・。


判りました!




・・・・・・ありがとう相棒。俺のトラック人生はまだ・・・・・まだ終わっちゃ居ない!!




―――二ヶ月後、俺は怪我を治して会社に復帰した。

会社の同僚は俺の復帰を歓迎してくれた。もちろん、社長も。

会社の車庫、そこには俺の相棒は今は居ない。なぜなら、廃車になったからだ。


・・・・・・・だけど悲しんでいるだけだったらあいつは喜ばないだろう。

あいつが望んでいる事は悲しんでいるのだけではなく、

「―――前を向いて生きろ、そしてそれを死ぬまで精一杯続けるんだ―――」

と言う事だと俺は思う。人生は出会いと別れが凝縮した物だ。だから俺には奴を失った悲しみと懺悔の念が沢山詰まっていた。


そして俺が色々な事をただ考えているだけの日々、それは自分で自分の行いを悪い方向でのみ評価していただけの毎日だった。


そしてそんな日々が永く続く筈が無いと、気がつく日がやってきたのである。


~数日後、会社の会議室にて~








お~いギコ~・・・・・・寝ているな~・・・・・


はっ!?


なんと言う不覚。俺は会社の会議の最中、居眠りをしてしまった。


すみません・・・・・徹夜だったもので・・・・。


しっかり仮眠を取らないと、事故を起こすぞ?

ああ・・・・・。

俺は>>1にもっともな事を言われた。

さて、予算の面ですが・・・・・・今月の利益の面では黒字ですが、先月先々月は赤字だったため、予算の余裕が少なくなってきていると言う、深刻な事態への転落を始めています。このままでは倒産も間逃れません。なので最悪の場合、皆さんへの賃金が払い止めになるかもしれません。

―――俺が事故を起こしたせいだ・・・・俺の責任だ・・・・。


俺が拳を握りしめ、己の無念を噛みしめているのをよそに、話は別の話題に変わっていた。

さて、成田から東京貨物駅までの25㎞間、直線の道路だと言う事を知らない人は居ませんよね?

モナー社長はそう言って、ある話を切り出そうとしていた。

俺は「多分居ないと思います」と言っておいた。

では、本題に入ります。成田から貨物駅までの25スレッド間で、大型トレーラーを要して鮪35トン、タコ25トン、合計で60トンを輸送する事になりました。時間は真夜中の12時から午前4時までに東京貨物駅までです。延着は厳禁らしいですが・・・・・。

げっ・・・・・・魚と蛸かよ・・・・・・なまものだけあってあれは運転に気をつかうぞ。しかも延着厳禁って・・・・・。

―――どこからともなくそのような声が聞こえた。


・・・・誰かやりたい人は居ないですか?今なら会社予備のトレーラーヘッドを貸し出しますが・・・・・。




・・・・・俺がやる。


俺はこの話で自分は牽引免許を所有している、そして僅かだが実際に大型トレーラーを運転した事がある、この二つから立候補をした。


じゃギコ君頼みましたよ。



俺は、相棒を失った事を何時までも引きずっていてはいけないと、そして自分から切り抜けないといけない事を自覚したのさ。


・・・・・この時点では、この先の怒濤の荒波の様な歴史の流れと苦労の事は誰も予想すらしなかっただろう。


そして、会社の車庫の前に俺達は来た。



ガラガラガラガラ・・・・・


車庫のシャッターを開けると、そこには一台の大型トレーラーが停めてあった。俺は、それを見た時絶句した。


・・・・・・・これは・・・・・・。


・・・・俺が絶句した理由、それは普通のトレーラーじゃなかったからだ。

銀色に輝く車体、運転席を取り巻く真紅のストライプ、まるで狼の目付きのようなヘッドライト周辺・・・・・・それだけでも俺はコイツの事を気に入る。だがコイツの凄い所はそんなものじゃなかった・・・・・・。

驚いたかギコ?コイツは日産ディーゼルが過去に生産したトラック、通称「UDビックサム」だ。


ギコ、エンジンを動かしてみな。

え、いいんですか?

・・・・・ああ。さっさと動かしてみろ。

俺はエンジンを掛けた。


キュルルルル・・・・・・・・


あれ・・・・・社長、掛かりませんよ・・・・・?

コイツは誰がエンジンを掛けてもエンジンが掛からなかった。そう、誰にも・・・・な。



コイツは・・・・ある意味妖車なのかもしれないな

動かせるか?

・・・・・ならば・・・妖車らしく俺にその本性を見せてみろ相棒!!

俺はそう呟いた。そしてその時―――



キュルルルル・・・・・・ボッボッボッボッボッボッボッ・・・・・


・・・・・・社長、コイツは・・・・・・とてつもない物を抱いていますね・・・・。まるで、子供の頃の夢のような・・・・・。

―――俺は無意識の内にそう口ずさんでいた。いや、感じた事を言ったまでなのかもしれないが―――


ああ。そうかもしれないな。一つ言っておこう。

「貴様にコイツのエンジンを掛ける事が出来た―――つまりそれはお前とそいつは切っても切れない関係になったって事だ。コイツを大切にしろよ。」



はい!!判りました!!


―――よろしくな、相棒―――




新しい相棒との出会い、それはギコと相棒の快進撃の序章のはずだった・・・・。





ジャァァァ・・・・・バシャバシャッ!!




にしても・・・・・・・何年も埃を被っていたとはとてもじゃないけど思えないな・・・・。

ん?

トレーラーを洗車していたその時・・・・。

此処に居たのか・・・・・・ギコ。


!?

俺が振り返ると、そこにはつーが立っていた。


よっ。久しぶりだな。


ああ。・・・・・・・・ところでお前・・・・・・何をしに来た?


忠告に来たんだよ。


・・・・・・。



一つ言っておく。・・・・・・貴様が二ヶ月前、首都高で事故を起こしたよな。


ああ・・・・・・それが何か?



どうもこうもないな。あれは陰謀だったんだ。


陰謀だと?


モララーの奴が・・・・・・トラック業界の天下を取るとかなんとか言って今、白ナンバーのトラックや他の輸送会社を潰そうとしているんだ。

―――それを聞いたとき、俺は失笑した。なぜなら、こんな事態はまずもって起こり得ないと思っていたからだ―――


フ・・・・ハハハハ・・・・・・アイツ・・・・其処までやりやがったか・・・・・・・・・・・・・。

奴の言う事だ・・・・恨むなよ・・・・。貴様を抹殺する。

・・・・・・・なに?

俺は一瞬その発言の真意が判らなかった。だがつーはそう言うと共に、両手に包丁を持っていた―――



・・・・なるほどな・・・・。お前もモララーの手先なのか・・・・・・堕落したな。

今回限りの仕事なんでね。あばよ・・・・・



・・・・そう言うとつーは包丁を振りかざして襲いかかってきた!


・・・・・・殺らなければ・・・・殺られるのか・・・・・。


―――俺は近くにあったデッキブラシを手にとった。デッキブラシでは包丁にはとてもじゃないが敵わない。だが素手よりは遥かにましだ―――


ふっ・・・・・・面白い・・・・。行くぞ!!


だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

―――俺とつーは切りかかった。・・・・・つーは包丁で俺の右腕を切り、俺はつーの脇腹にデッキブラシをぶつけた―――

な・・・・なかなか・・・・やるな・・・・ギコ・・・・・。



つー、お前もだぜ。


ドサッ・・・・・


・・・・・勝った・・・・のか・・・・・?

俺はある事に気がついた。個人を狙うのなら会社も狙う筈だ、と―――

急いで本社に行かないと・・・・皆が危ない・・・!!


―――ギコはビックサムに飛び乗った。エンジンキーを回し、エンジンを始動させた。



行くぞ相棒!!


GE-13Eが威勢よく鼓動を発する。








キッ・・・・・ドッドッドッドッドッドッド・・・・・バタンッ


社長・・・・・・・みんな・・・・・・・・嘘だろ・・・・・?


―――ギコはその場に座り込んでしまった。

              ・・・・なぜなら皆、殺されていたのだから―――




・・・・・それからギコは世間の表舞台から消息を絶った。相棒と共に。


警察はこの事件に関しては動かなかった。・・・・いや、正確には動けなかったのだ。


   ―――なぜなら、ある団体に圧力を掛けられていたからだ―――

その団体とは・・・・・一体何者であろうか。それは後日判る事であろう・・・。




二年後、運送業界は一つの大手、「モララー陸運」と、
中小企業の合弁企業「陸運連合」に絞られていた。

ただ、状況的に言うとモララー陸運が有利であり、所有車数にすると陸運連合に軍配が上がる。

後世運送業界史に謳われる、運送業戦国時代の始まりである。


さて、場所は変わりモララー陸運の社長室、此処に二人の男が居た・・・。


・・・・あれから二年か・・・・・。ギコ、モナー・・・・。俺はこんなやり方でこの業界を牛耳るつもりではなかったのだ・・・・・・。だが結果的にこうなってしまったのだ・・・・・・。赦せ・・・・・。



モララーの呟く声は、なんとも悲しげな声であった。・・・・まるで、望んでいなかった様な・・・・。

それを後から聞く、一人の男。まるで悪魔のような・・・・風貌を持った男。

その者の名はウララー。



・・・・・・貴様が革命を起こした責任を背負う義務は無い。代わりにこの会社を背負う・・・・貴様にとって、好条件の集まりであろう?何を悲しげに惜しむ?

冷酷で、かつ合理的とでも言うべき質問。

くっ・・・・・・・てめえ・・・・・・・利益だけで語るほど俺は・・・・俺は・・・。

モララーが言いかけている時・・・。


笑止、政治家に良心は必要ない物だ。

これにとどめをさすかの様にウララーが一言付け足した。


「貴様は表の社長、この会社の権力者だ。だが裏側もあるのだよ。ふはははは・・・」


例えるのならば悪魔のような性格の人物。彼は一体何者であるのだろうか?
そして彼の言い放った「裏側」とは一体・・・・?





今の時点では全て謎である。




その頃、陸送連合本部では・・・・。







―――しぃ会長―――

私の名前を呼んでいる人が一人。


・・・・・・はい、なんでしょうか?

私が振り返るとそこには、タカラさんが居ました。

あの・・・・・・モナー陸送の事でちょっと・・・・。


モナー陸送。それは懐かしい名前の会社。

・・・・・なんでしょうかタカラさん?

彼らの事、あなたはどう思っているんですか?

・・・・・・彼らは・・・・・可哀相だったと思います。
ですが、彼らのおかげで私達の今があるのです。

つまり身代わりだと―――


はい。


バタンッ


・・・・彼は沈黙を保ったまま会長室から出て行った。しぃ会長は心の中でこう付け加えた。

「私がこの連合会の会長になった理由、それはモナー陸送を潰し、皆殺しにした団体、「モララー陸運」の真意、それと唯一遺体で発見されなかったある人物を捜すため。その人物は私の彼だった人。だけど今は生死の確認も出来ない、そんな人。
・・・・・・・タカラさん、悪いけどあなたには、・・・・まだ全てを伝えるには早すぎる」

社員食堂にて―――


・・・・・・・なぜ・・・・・。なぜしぃ会長はあんな事を・・・・・。


タカラが愚痴を言っているとき、隣にフサが座り、こう言った―――

「・・・・・・タカラよ、お前さんが思っているほど会長は悪い奴じゃない。
 ・・・・・・だから失望するな」


・・・・・・・・・・。

「判ったか・・・?」

はい。フサさん、ありがとうございます!

「・・・・・・頑張れよ」

はい!!

タカラギコは威勢よく食堂から出て行った。

「・・・・・アイツ・・奴と同じ魅力を感じるな・・・・・。さてと、仕事にいくか―――」


フサは自分の愛車、「いすゞフォワード」に乗り込んだ。

               そこで彼はある人物の事を思い出していた―――

「―――そう言えば・・・・・ギコの奴に最後にあったのはいつだったかな―――」

そうか・・・・・二年前のあの時か・・・・。

―――二年前―――

・・・・・フサ、お前事故を起こした事は有るか・・・?

「・・・・・無いな・・・・・」

・・・・そうか・・・・。お前、これだけは忘れるなよ。

    ―――事故を起こした時点で、かなりの傷を背負う事になる。
                    それが貰い事故であっても――― 




「―――今思えばアイツの貰い事故って台詞・・・・・アイツが事故を貰ったって事だったんだろうな・・・・・・」


―――フサさん、今回の荷は何処まで積んでいく物かわかりますか?

「え、しぃ会長、大阪までじゃないんですか?」

その通り。奇襲には気をつける事。判りましたか?

「判りました。じゃ」

はい。いってらっしゃい。


しぃ会長の見送りの元、フサは自分のトラックを会社の敷地から出した。

「・・・・・・・奇襲・・・・ねぇ・・・」


「奇襲」この言葉は「モララー陸運やその雇われドライバーに気をつけろ」、と言う意味合いだ。


フサの一人旅は東名高速道路 高井戸インターから始まる。




時間は真夏の太陽が活躍する昼間から闇の支配する夜半へと移る―――

―――此処はとあるサービスエリア、向日葵の花の名所だ。
此処は大型車の駐車スぺースが尋常ではないほど多く、高速道路のトラックターミナルと比喩される場所でもある。


此処にある三人組が居た。奴らの名は「狂犬組」。

その中に一人煙草を吸いながら夜空を見上げている男が居た。

・・・・・・・夜空は何もかも忘れさせてくれる。だが・・・・・・血まみれの俺
達、俺達の罪を忘れさせる事は出来ない。

彼の名はフーン。彼は無意識にそう口ずさんでいた。

それ以上言うとどうなるか・・・・・判っているんだな・・・?

即座に言い返す一人の人物、彼の言葉に反応したのはD。

・・・・・・しかし・・・・。

しかしもかかしも無いんじゃネーノ?

そう突っ込んだのはネーノ。彼らの突っ込み役であり、ムードを元通りに直す役割のムードメーカーでもある。

・・・・すまん・・・・。

判れば良い。・・・二度目は・・・・・無いと思え


いいんじゃネーノ?



その時―――

がががー・・・・・・こちら本部こちら本部。狂犬組応答求む

・・・・・・無線だな。

こちらD、どうぞ


・・・・・・陸送連合の中型トラックがお前らの近くにさしかかっている。至急撃破せよ。どうぞ


・・・・・・・了解。


撃破か・・・・・いいんじゃネーノ?


ふっ・・・・・私に任せろ・・・・。


D・・・・・。


どうしたフーン?怖じ気づいたか?

なんでもない・・・・・。


私の手にかかって無傷で帰った奴は居ない・・・・・。

・・・・・・。

フーン、彼女に任せておけばいいじゃネーノ?


・・・・・判った。頑張って来いよ・・・・。


ふっ、任せろ。


時間は真夜中に移り、フサギコは名古屋周辺の東名高速道路をひた走っていた―――


「仮眠しないとマズいか・・・・・?」

パッパーン!!!!

「って・・・・なんだ!?」

フサがバックミラーを覗き込むとそこには純白の除雪トラックの姿。しかも後から煽ってきている。

「・・・・なんでこんな時期に除雪車なんだよ・・・・しかもなんで煽ってきているんだよ・・・・!?」

・・・・アバヨ。

ガンガンガンッ!!

「っつ・・・・・・突っ込んできやがった・・・・・・・・」

これで終わりだ・・・・・念仏でも唱えな・・・・・!

「ちっ・・・・・そんなに易々と・・・・俺は事故りはしないぜ・・・・」

フサはそう言うとアクセルを限界まで踏み込んだ・・・・・。
フサのトラックは時速160㎞まで加速を続ける。スピードメーターは振り切り、車体が呻き歪み始める・・・・・車体が分解する危険も有る速度域だ。

「うらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!根性だ持ちこたえろ!!!!」

グギャギャギャギャギャ・・・・・・・・・・



・・・・・・・逃げられた・・・か。

Dは次第に小さくなっていくフサのトラックを見ながらそう呟いた。

「ふり切ったな・・・・・。畜生・・・・・・修理代は自腹なんだぞ・・・・」

フサはそう言うと無線のマイクを片手に持った。

「こちらフサギコ、連合本部へ。奇襲された!ダメージは車体後部を潰された。
自走は可能だが連続で走行するのは無理だ。どうぞ」



がががー・・・・・・了解。時間をかけて本社まで帰社せよ。無事を祈る!どうぞ


「あ~あだよ・・・・ったく・・・」




同時刻の陸総連合本部、無線室にて―――

―――会長、フサの奴が攻撃を受けたらしいです。

無線の応答係の一人、弟者がそう報告した。その横で―――

OK、ブラクラゲットだ。

兄者、流石だな。こんな時にブラクラゲットとは。

気にするな。

・・・・・十分気にするぞ・・・・・。

何か言ったか?

い、いや空耳だろう・・・・。

空耳ではない事は、あえて言わないでおこう。


所で会長、彼らは何を企んでいるんでしょうか・・・?

姉者さん、彼らはこの業界を牛耳り、経済を牛耳り政界までも・・・・牛耳るつもりではないでしょうか・・?

だったらさっさと潰さないと・・・・

しかし・・・・

無理です。彼らが居る事で運送業界が成り立っているんです。・・・・皮肉ですがね。

しぃ会長はそう付け加えた。



・・・・クソッ・・・・俺達の力は・・・こんなものだったのか・・・・・!?

落ち着け兄者、確かに俺達は力が無いかもしれない。だが野良犬にも野良犬の生き方がある。俺達ができる限りの事をして・・・・・・負けようぜ。


―――いや、これは勝たなければいけない戦いですよ。だって一人一人の力は弱くても、みんなでやれば相手を動かす事も出来るはずじゃありませんか。

タカラギコの発言にしぃ会長はこう付け加えた。

そう・・・・・彼らをナチスにして、この国を過去の大戦の二の舞・・・・・、
この国をまた戦争で敗戦国にしてしまってはいけないんです。
我々がバラバラになって、ゲリラになろうとも、
この戦いが歴史に残らなくても我々は戦わなくてはいけない。
この国の未来のためにも、―――

タカラ、しぃ会長・・・・・。

・・・そうだな。みんなで勝ってこの国を動かそうか!!


ああ。・・・・・やってやろうぜ!!




・・・弟者さん、フサさんの被害はどの位ですか?

奴の話だと・・・・・リア周りを潰されたらしいです。

潰された・・・・・?

そうらしいです。詳しい事は奴に聞いて下さい。

はぁ・・・・・。



その頃フサギコは―――

「次のインターで大阪だな・・・・・・」


その時、それは起こった。


バァァァァァァン!!


「な・・・・バースト!?」

フサギコのトラックは左に急速に曲がって行った・・・・・・。
そう、時速100㎞以上の速度で、だ。

「この・・・・・・!!」

フサギコはハンドルを右側に動かした。だが必死の努力も虚しく―――





ガシャン!!


最初に走行車線沿いの壁にトラックは突っ込んだ。

反動で右側に跳ね飛ばされ中央分離帯に激突、

何回も衝突を繰り返し横転して止まった・・・・・・・。



・・・・・・・シュゥゥゥゥゥゥ・・・・・・


トラックは大破、原型を留めなかった。トラックからは軽油が漏れだし、後方の高速道路の路上には積み荷の魚が散乱していた。


「く・・・・・・いてててて・・・・・・」



奇跡的にフサギコは生きていた。だが大怪我を負い、体を車体に挟まれた状態だった。



「俺も・・・此処まで・・・か。・・・・・・会長、みんな・・・・・・・後は頼んだ・・・ぞ・・・・・」

軽油に火花が着火し、トラックは炎に包まれた。

「あばよみんな・・・・・永遠に・・・・・・」


その時―――


おいお前、こんな所で黄泉への旅支度かよ・・・?

「ギコ・・・・・ふっ・・・・・幻覚でもなんでも良いや・・・・」

お前はまだ死んじゃいけないだろう!?

「もう駄目だギコ・・・・・・そこによ・・・・走馬灯が見えるんだよ・・・・・」

なに・・・・?

「ほら、俺がガキだった頃や俺が自動車学校で苦戦している頃や・・・・・・・・・今じゃ良い思い出さ・・・・・」

待てよ。お前は・・・・・・まだ死ぬのは早過ぎるぜ・・・・・?

「・・・・・・・このトラックから脱出するのは無理だな」

けっ、何を諦めてんだよ。そんなもの・・・・・・・俺がなんとかしてやる!!

「ふっ・・・・・どうにでもしやがれ・・・・・俺は死ぬ覚悟は出来ている」

馬鹿野郎!!さっさと生きて会社に帰れ!!

「・・・・・・・・会社に帰れ・・・・・か・・・・奴らに出会って初めてこの仕事が楽しく感じたからな・・・・・・それが心残りだな・・・・あばよギコ。お前は天寿を完うしろよ。俺は・・・・あの世で見守っている」

そうか・・・・。あばよフサ。またどこかで会おうぜ。

「ああ」



ドガンッ

その瞬間、トラックは爆発炎上、フサギコは爆風で飛ばされた―――







・・・・・・・フサさん・・・・・。

?会長、フサさんがどうかしましたか?

兄者さん、嫌な予感がする・・・・・。


・・・・・・・・・奴の身に何かあったのでは・・・?

兄者・・・・・・絶対何かあったんだろう?・・・そうでなかったらこんな不吉な事は起きない筈だ。

弟者はそう言うと、あるティーカップをみんなに見せた。

フサギコの奴だけ割れた・・・・・。

ちっ・・・・のんびりと寛いでいる暇は無くなったらしいな・・・・・。弟者、姉者!!情報収集をするぞ!!

ああ!!

判ったわ!!

三人はそう言うと無線とインターネット、マスコミを監視し始めた・・・・。

あの野郎・・・・・てめえだけ死んでみろ、俺は絶対許さねえぞ!!

兄者さん・・・・・。

会長、今すぐ私が大坂に行ってきます。なのでレッカー車を貸し出して下さい。

タカラさん、それは許可しますが決して無理はしないで下さい。

―――マスコミを騒がして喜ぶのは政府と彼らだけですから―――

・・・判りました。


タカラギコは車庫の中に停めてあった大型レッカー車に乗り込んだ―――

・・・・・フサさん・・・・どんなに大事故を起こしていても・・・・・・・・あんたは絶対に死んじゃいけないんだ・・・・・。

タカラギコはそう言い残すと会社から出発した・・・・・



その頃フサギコは天国とでも言っていいのか、そう言った場所に来ていた。

「此処は・・・・何処だ・・・?」

ようこそフサエル君―――

「・・・モララー・・!?俺はフサだ!フサエルなんて名前じゃねえ!!」

君はどうやら判っていないらしいね。死んだ事に―――

「・・・・・なに・・・・?」

君は愛車の爆発に巻き込まれて爆死したんだよ。証拠に白い翼と天使の証である輪がついているしね。

フサギコが振り向くと確かに背中には翼があった。

「・・・・・・嘘だろ・・・・?」

嘘じゃない。本当の事だ。でも安心していいよ。なぜなら地上に君臨する事が出来るんだから―――

「貴様・・・・・・・何を企んでいる・・・・?」

僕かい?僕はね・・・・・地上の革命を成功させて巨万の富を我が手にするのさ。

モララエルはそう言った。

「くっ・・・・・偽善者め・・・・・天上の者が富を狙うブタになるのか。笑止、貴様の思惑なんぞ絶対に潰してやる!」

フサギコはそう言うと拳を構えた。

ふっ・・・・・身の程知らずだねえ。貴様がこの私を倒す?やれるものならやってみなよ!!

そう言っている内に彼は鉛色に鈍く光る剣を持っていた。

「貴様なんかには負ける訳にはいけないな!」

だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


ドンッ!!



・・・・弟者、姉者・・・・これを見ろ・・・・。

嘘だろ・・・・・?

そんな・・・・・・・。

あの野郎・・・・・事故って死にやがった・・・・・・クソッ!!

兄者のFMVの液晶にはあるニュースが書かれていた―――

・・・・ターコイズグリーンの4トン車が横転、炎上し運転席付近からフサギコ族の男性が遺体で発見された・・・・除雪トラックに突っ込まれたかのような傷がついていた・・・・・と。



多分奴だな・・・・。

兄者、奴ってのは?

「狂犬組」のDだ。

Dと言うと・・・・・「潰し屋D」か!?

ああ。

彼女だって言う保証は?

無い。だが・・・・・会ってみて判るだろ?

無計画ね・・・・。

それが俺だ。弟者、姉者。俺らも出撃するぞ・・・・・。

とうとうあの10トンダンプを使う時が来たんだな兄者?

ああ。

しょうがないわね・・・・・・行きましょ。大阪に―――



そして三人は会社の車庫に来ていた。
車庫には中型・大型平ボディ車に始まりウイング車、ユニック車、タンクローリー、ダンプカー、セミ・フルトレーラー、カーキャリア、4トンスーパーロング・・・・宛らトラックの展示場と化していた。

その中に一際目立つ三台のダンプカーがある。

そう、流石兄弟の愛車達だ。三人は三人とも愛車をデコレートしている。俗に言う・・・・・デコトラだ。
荷台、運転席のぺイントに始まりメッキボディ化、マフラーやバンパーの換装、字光式ナンバープレート装着など挙げ始めるときりがないほどに。


エンジン始動!!

キュルルルル・・・・・・・・バビュン!!ビュルビュルビュルビュル・・・・・

三台のダンプカーの排気音が共鳴をしているかの様に重なり合う。



姉者、弟者。・・・・・準備は良いか?

OKよ。

姉者に同じく、だ。

行くぞ!!


三人は会社から出社(兄者曰く出撃)した・・・・。

時間帯は夜明けの時間帯へ移り、明けの明星が渾身の力を振り絞るかのように光る。
その横を朝日が昇り始めていた―――




太陽が完全に登った頃、三人は東名高速道路を大阪へ向かって走っていた・・・。

がががー・・・・・・兄者聞こえるか?どうぞ

OK、聞こえるぞ

TVを見ていたが、どうやらフサの奴が事故った場所の周辺は通行止めみたいだぞ。どうする?


・・・・・・行ってみて判断する。

判った。

ねえ、確か狂犬組のテリトリーってここいら辺じゃ無かったかしら?

確か・・・・・この周辺だな。警戒するしかないな・・・・。

―――その通り。我々のテリトリーはこの周辺だ。

その声は・・・・フーンだな!?

―――その声は兄者か・・・・・久しぶり。

あなたDね・・・・・。

―――そうだ。

兄者!後に三台・・・・除雪トラックが居る!!

―――逃がさないんじゃネーノ?

けっ・・・・・逃げられねえんだったら戦ってやるぜ!!

―――そうか・・・・・こちらもお相手したいと思っていたところだ!!

かかってこい!!

―――手加減はしないんじゃネーノ?




合計六台、車線幅は三車線。此処に六台が密集して戦いを繰り広げていた―――

時速170㎞以上の速度・・・それは50メートルを一秒程で走り抜ける速さだ。事故を起こしたら生きて帰れる保証は無い。


―――フサギコがそうであった様に―――




さて、フサギコはと言うと・・・・・モララエルと戦っていた。

「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ダァァン!!

拳と剣のぶつかり合い・・・それは悲惨な物だ。フサギコの全身は血塗れになり、モララエルも返り血を浴びている・・・・・何方も相当なダメージを負っていた・・・。

―――いい加減に・・・・諦めろ。貴様には私は倒せん!!

「うるせえ!意地でも倒してやる!!」

とその時―――

二人ともやめるんだ!!

!?


二人が振り返るとそこには一人の天使が立っていた―――
彼の名は天界の王者「モナファー」だ。

貴様ら二人とも・・・・堕天使の仲間入りしたいのか?

―――滅相もございません。

「堕天使??」

・・・・・フサと言ったか・・・・。貴様はまだこちらへ来たばかりだったな・・・。よかろう、案内しよう。ついてきなさい。

「はぁ・・・・・」


・・・その前にその傷をなんとかしなさい。

「傷・・・?って・・・・こりゃひでえ・・・」

・・・・ずっと気がついていなかったのか・・・・流石はモララエルと言った所か。


「それはそうと・・・・・・奴は一体なんだ?それにこの国は一体なんなんだ?」

・・・色々話すと長いが・・・・これだけは言っておきたい。

お前はもう二度と下界の奴らと同じ時を進む事は出来ない。ただし、彼らに会う事だけは許そう。君の死で運命の狂ってしまった人も居るからな・・・・。

「それでもいい。あいつらに会えるなら」

・・・・そうか。それも生き方の内だ。

「・・・・・・ギコの奴に会いに行く。あんたが止めても無駄だ。・・・・俺はどうしても行きたいんだから」

止めはしないさ。早く行ってきな。

「また会おうぜモナファー」


フサはそう言うと雲の切れ目から飛び下りた。



―――ジョナサン・・・いやモナファー、フサと俺の息子はどうしている?

これはギコエルさん。お久しぶりです。

擬古でいいさ。で、どうなんだ?

言いにくいんですが・・・・・フサはこの前事故を起こして死んでしまいました。

・・・・残念だ。二人で仲良く俺の後を継いでほしかったんだがな・・・。

同感です。私もモナー陸送の社長として・・・・彼らは私達に似ていたと思います。

時代の流れ方も似ている。群雄割拠の・・・・・裏切りと動乱の時代だ。

私達が生きていた頃の時代背景も同じでしたね。

ああ・・・・だが俺達の二の舞だけはしてほしくないな。

ですね・・・・・。

俺達の過ちを繰り返す奴達は破滅をする。俺達がそうであったように。




その頃流石兄弟は・・・・関ヶ原まで来ていた・・・・・。

狂犬組の除雪トラックも、流石兄弟のダンプカーもボコボコになっている。

それは激戦を繰り広げた証だ。


兄者!!後から突っ込んでくるぞ!!荷台を下げろ!

・・・・・無駄!

それはどうかしらね?

姉者はそう言うとDの進路を妨害し始めた。

・・・邪魔だ。

諦めの悪いのが・・・・私の特徴よ!

ガリガリガリガリ・・・・・


車体と車体が削り合う音が高速道路に響く




・・・・・そろそろ終わりにするんじゃネーノ?

・・・・兄者・・・さようならだ。

Dはそう呟いた・・・・。

やられて・・・・・たまるかよ・・・・・!!


兄者はそう呟くとブレーキペダルを思いっきり踏みつけた。兄者のダンプカーは後の二軸がロックし、Dの除雪トラックに突っ込んだ・・・・・・。

・・・・・ふっ・・・・・・まだまだ!

Dにはダメージが届かなかった。だが兄者には相当のダメージが及んでいた。

くっ・・・・・失敗した・・・・。ギコ・・お前にもう一度会いたかったぜ・・・・・あばよみんな・・・・俺は・・・フサの所へ逝って来るぜ・・・・。



待てよ・・・・・兄者何を言っているんだよ!!

そうよ!

弟者、姉者・・・・逃げてくれ・・・・。

その時無線機に声が入った・・・・・ギコの声が。


―――兄者・・・・・まだ死ぬのは早すぎるぜ・・・・・俺達が来たんだからよ!


・・・・・ギコか?・・・・いや、空耳か・・・・・あいつが此処に来る事はまずないだろう・・・・・。




だが空耳ではなかった。兄者の目の前に二台のトラックが乱入して来た。


銀に輝く車体を持ったビックサムとターコイズグリーンの車体のフォワード、事故を起こした筈のフサギコのトラックとギコのトレーラーが、だ。

―――空耳ではないという事が証明されたのだ―――



・・・・兄者よ・・・・・まだ死に急ぐなよ?

・・・ああ。だが・・・・なぜ死んだ筈のフサが此処に居るんだ?それにお前は何処に行っていたんだ?

それは・・・・・・後で話す。

・・・そうか。

「今は後の除雪トラックを片付けるぞ・・・・」

・・・・ああ。

・・・俺達は後ろで見守っている・・・・・。

兄者はそう言うと速度を落とした・・・・・。そしてD、ギコ、フサの三人だけが残された・・・・・。

「・・・・気をつけろギコ。あいつは・・・・俺に突っ込んできた奴だ・・・」

・・・判った!D!勝負だ!!

・・・・ふっ・・・・・威勢が良いな・・・・・だがでかいのは図体と度胸だけか?

今・・・・・なんて言いやがった!?・・・貴様許さん!

・・・・面白い・・・・貴様の相手、受けて立とうではないか!

上等だ!!

ギコとDはアクセルをふかす。

二台のディーゼルエンジンのエンジン音が重なり合う・・・・・


行くぜ・・・・・D!!

・・・・・貴様とは初めて会ったが・・・・・これが最初で最期の勝負になるだろう。なぜなら・・・貴様のトラック人生も今日限りだからだ!!

ふざけやがって・・・・・絶対にその宣告を跳ね返してやる!!


二人の戦いが今、始まる。


ギコはクラッチを踏み、ギアを6速に入れた。
・・・・・エンジンが絞り出す560馬力の出力と相まって怒濤の加速が発生する。


一気に差をつけてやるぜ!!

トレーラーとは思えないほどの加速、一気に時速150㎞以上の速度域へと加速する。
  それは時速90㎞と時速140㎞で作動するスピードリミッターが解除され存在しないという事も加担しているのだ。


・・・・ふん・・・・・中々やるな・・・・だが・・・・・貴様は油断している!!


Dはそう言うとステアリングホイールについている“nitro”の名前の入ったボタンを押した。するとDの除雪トラックも物凄い加速をし始めた。

実は“nitro”と言うボタンを押すとエンジンに亜酸化窒素(麻酔に使用される笑気ガスと同じ物)が噴射され、(詳しい説明は省略するが)普段の1.5倍程度の馬力が発揮される、と言う魂胆である。この装置をニトロ、又はナイトロシステム、もしくはNOSと呼ぶ。

―――簡単に言えば、Dの除雪トラックは一時的にドラックカーに化けた、と言う事だ。

ギコはミラー越しに見える後方から物凄い加速をするDの除雪トラックを見てこう呟いた。

「そうこないと面白くねえぜ」と。



ギコはアクセルを踏み込んでエンジンをふかす。タコメーターの針がレッドゾーンに近づく。だがギコはギアを変える事はしなかった。なぜなら、トレーラーの耐えられる限界の速度まで来ていたからだ


時速は200㎞に迫る。空気が粘性を帯び、車体が分解する限界に近い速度。

これより上の速度域を体験する事の出来るのは飛行気や新幹線に乗った者、もしくはスポーツカーを改造して時速300㎞以上の速度に対応させた者達だけだ。


Dもギコを真似るように除雪トラックを走らせる。


と、大阪インターの表示が入った標識が見え始めた。それは、戦いの終焉が近づいていている事を示していた。

二人はその標識を見て、さらにアクセルペダルを踏み込む。

タコメーターの針はレッドゾーンに突入し、車体が軋み、スピードメーターが振り切れる・・・・・・まさに「限界の領域」に突入していたのだ。


―――そして出口の緑色の表示と大阪環状線へと続く道路が見えはじめる。

ギコの大型トレーラーも、Dの除雪トラックもどちらも譲らぬままインターチェンジの分離を越えた。


勝敗はつかぬまま勝負は終わったのだ。


そして近くのインターチェンジから下道へ降り、Dとギコはお互いに近くの駐車スペースにトラックを入れる。

トラックから降り、Dと八合わせる。


ギコがDの顔を見るのはこれが初めて、である。

・・・あんた、なぜ狂犬組に入ったんだ?

ギコは会ってそうそう疑問をぶつけた。

・・・・・奴らとは昔からの長い縁だ。そんな事より―――

「貴様、もしかして一番星ではないのか?」

はぁ?


・・・・いや、何でもない。

Dがそう言って一番星と名のある者の名を挙げる。それはギコが色々な意味でその人に似ているからだ。

知らねえな。俺は今を生きているんだ。

・・・・そうか。また会おう。

ああ。

今度会う時は・・・・その時が決着の時だ。


いいじゃねえか・・・・・忘れるなよ?

お前さんも・・・・な。

あばよ!



一つの戦いが幕を閉じた。すっきりとしない様な、それでも彼らにとっては満足できる様な形で。

そして兄者達と合流して、東京に、本部に帰った。そして社員食堂でフサや、流石兄弟やタカラギコ、しぃ会長・・・・・皆の前でギコは己の失踪直後からの軌跡を皆に話した。


・・・・・・聞かせてもらおうか。なぜ、フサが生き返ったのか、そしてお前は何処に行っていたのか、を。

兄者が多少憤りを混じらせた様な声で聞く。

話せば長くなる。そう、とっても長くなるんだ。あれはそうだな・・・・モナー急送が潰された後、俺が行く当てもなく彷徨い続ける最中の事だった。・・・・・・


そう、彷徨いの、放浪の旅を続けていた。旅を続けている時俺は、「お前は何処へ行きたいのか。また何を望むのか」と自分に問いをぶつけて暫く答えを捜せずにいた。

そして俺は何気なく道端のラーメン屋に入ったのさ―――


いらっしゃーい!

あ、ああ・・・・。

とりあえず、カウンター席に座ってみた。すぐに声を掛けてくれた娘さんがメニューを持ってきてくれた。



・・・・ハッキリ言うと、余り繁盛していない様な状況だった。だけど何か、安らぐものを覚えた。・・・・今思うと、懐かしい様な感覚だったな・・・・。

俺はメニューを見ながら店内を見回した。そしてある写真を見つける。

七十年代後半から、八十年代に生産された感じの大型トラックに、色々なデコレートパーツを取り付けた・・・まるで過去のこの業界の華やかさを模したかの様なセピア色に染まった写真さ。

俺は、店の主人にその写真の事を聞いてみた。

主人曰く「昔一世を風靡した一番星の写真、そして今はもう誰も知らない、孤高の男の居た形跡」らしい。

・・・・そこから店内は暫くの間、無言の時間が流れた。


社員食堂は、まるで誰も居ないかの様に静まり返る。ギコはさらに話を続ける・・・。


それから食堂を出て、俺は行き先の無い旅を続けていた。だが、頭の中には一番星の事が過る。どこか懐かしい感覚と、嫉妬の様な感覚。そしてもう一人の俺みたいな一番星と、一番星と同じ年代で、同じ職業である親父の事・・・・・。そして先の問いに「俺は風来坊だ。」とか色々と考えて答える。

そして、北海道から鹿児島、色々な地を旅しながら年月は経ったのさ。


詰まる所、日本全国で自分探しの旅していたんだな?

兄者がそう問い詰める。


そうだ。俺は、逃げていたのかもしれないけどな・・・・。

・・・・いや、逃げていないですよ。だって、もし逃げたいのなら今此処には居ない筈です。

タカラギコがそう発言する。それに皆は賛同して、ギコを匿う。兄者もギコが逃げきるつもりではなかったという事が判ったのだから、それ以上追求しなかった。




・・・フサ、今度はお前さんの事を話してもらおうか。

兄者がそうフサに質問を投げかける。

「・・・詳しい事は言えないが、それでも・・・・話そう」


皆が知っている通り、俺は事故を起こして死んだ。そしてこの翼と頭上の輪が天使だという事を証明している。俺は天空の世界で戦乱を、革命を、成功させようとするモララエルと戦った。奴との戦いの後、俺は地上に降り立った。そして、ギコと再会し、お前らを助けるために現れた訳だ。まるで誰かに導かれた様に、な。


・・・・つまり、この戦いの裏には天使達が居るって事か。

弟者がそう言う。

「・・・・そうだろう」

何にしても、野望や策略が裏に存在するんだな。

ギコがそう言い切る。

そうね。・・・・今日はこれでお開きにしましょうか。

しぃ会長がそう提案する。そして皆が解散していき、一日が終わった。


・・・・その日の夜中、ギコはいつもの様に車載のベットで寝ていた。そして、あの特殊な夢を見ていた。

霧の中を歩くギコ。・・・・・霧が晴れて、彼はそこがどこか判る。

・・・・ここは・・・・前に来た事の有る場所・・・だよな・・・・。

彼は、またあの天国の様な場所に来ていた。

背後から誰かが近づいてきている。そして、声で誰か判る。

「・・・・・・俺は、人生を通じてできる限りトラックを運転するつもりだった」

フサ!?

「・・・だけど、運命はそれを許してはくれなかった。俺はみんなに言いたい事がある。色々な困難や誘惑に負けないで立ち向かってくれ。俺は天から見守っている。俺は一人旅の好きな一人の男だ。俺が居なくなっても悲しまないでくれ。

これは、俺の人生だ。誰にも指図はされないつもりだった。

最後に皆に言っておきたい。

ありがとう。

そして、身勝手でごめんな」

──え?・・・・。

「・・・俺はあっちに帰らないといけなくなったんだ。あばよギコ」

フサ、おい待てよ・・・・

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