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NIGHTMARE CITY ~最新シュミレーションの悪夢~ (ファイヤ~の弟)

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匿名ユーザー

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              NIGHTMARE CITY

第一章 「夢のシュミレーション」

ここは近未来都市。科学技術も発展していて、空を飛ぶ機械、飛行機が日常の
世界に飛び交い、全て機械で動く、そんな時代になっていた。

その中心とも言える、都市を管理している会社、2ちゃんねる本社。そこで夢
の実験が行われようとしている。

        --2ちゃんねる本社前・フリーウェイ--

ここは2ちゃんねる本社前のフリーウェイ。実験初日とあってかなりの人間が
集まっていた。実験とは「夢のシュミレーション・NIGHTMARE CITY」という仮
想空間で人間では味わうことの出来ないことを味わえる、正に夢の実験。

その参加者の中の少年が一人、フリーウェイに立っていた。

 「ここが2ちゃんねる本社か。立派な会社だな」

胸にかけてあるカードには『実験参加者NO.629 ギコ』と書いてある。彼
はこの都市に住む少年、ギコだった。実験の参加者に応募した結果、当選した
のである。

ギコが本社を見ていると一人の少年が声ををかけてきた。

 「よお、ギコ。久しぶりだな」

後ろを向くと見慣れた顔があった。

 「あれ!?フサも呼ばれたのか!?」

 「あぁ。俺も運が強いから」

胸のカードには『実験参加者NO.371 フサギコ』と書いてある。

彼はギコの友達、フサギコ、通称フサ。彼も実験の参加者のようだ。

 「けっこう、知っている人も多いぜ。さっき流石兄弟に会った」

 「えっ、あいつらも?・・・引きこもりの癖に出てくるなんて面白いな」

流石兄弟も二人の友達。実際には四兄弟だがフサが見たとき『姉者』の姿だけ無かったそうだ。PC御宅の変わった兄弟とその妹で、全員『兄者』『弟者』『妹者』と呼ばれている。

 「じゃあ本社の中でも知っている人が多いかもな」

 「そうだろうな。・・・じゃあ行くか」

おう、と返事をして二人は歩き出した。希望に胸を膨らませながら。

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第二章 「管理AI」

           --2ちゃんねる本社--

ここは2ちゃんねる本社一階の広間。すでにかなりの人間が集まっている。

 「でっけぇー!すげぇな」

二人が驚いていると「開発者代表の挨拶」が始まっていた。

 「・・・・・・続いて我が会社の社長、>>1000さんの息子>>1さんと、その部下、通称おにぎりさんの挨拶です」

 「>>1さんとおにぎり!?」

ギコ達は二人のことを知っていた。彼らは変なところも多いが、仲が良い二人組みである。

 「えぇー、ごほん。開発の指揮を務めた>>1000の息子、>>1です。本来なら父が出るべきですが、起動の準備のため、僕が挨拶をします。あと僕もNIGHTMARE CITYに出ます。今日はどうぞよろしくお願いします」

 「えぇー、僕はおにぎりです。あだ名ですけど。僕は>>1000さんや>>1さんの部下で開発に協力しました。僕も出るんでよろしくお願いします」

二人の挨拶で大きな拍手が起こった。仕方なくギコ達も拍手をする。よく見ると二人の胸には『実験参加者NO.001 >>1』『実験参加者NO.002 おにぎり』と書かれている。実験に参加するのは本当のようだ。

 「はい、ありがとうございました。次はNIGHTMARE CITYの説明です」

この言葉に会場はしんと静まる。

 「まず皆様には、ご自分のNO.カプセルの中で眠ってもらい、精神だけを抜き出して、我々がそれを実体化させます。その時体が猫のようになっていると思いますが、これはAA現象といい、精神だけの時の体です。不自由なことはありません。それからは皆様の自由です。夢のシュミレーションを楽しんで下さい。また困ったときにはお近くにいる七人のAGC(アスキーアート・ガード・チーム)と言う管理者と、AI(人工知能)と言われる七人の管理者がいます。その方々に聞いてください」

難しい解説にギコはよく理解できてなかったが、楽しそうだなと思った。

 「では皆様、会場に移動してください。NIGHTMARE CITY、スタートです!」

そう言うと皆、会場に移動していった。

 「フサ、行くぞ」

 「あっ、悪い。ちょっと先行っててくれ。ちょっと聞きたいことがあるから」

そう言うとフサは支配人のほうへ走っていった。

 「なんだ・・・?まあ良いか」



 「あのー」

 「はい、なんでしょう?」

 「さっき管理者って言ってたじゃん。そのリストとかってないかな?」

 「はいございます。こちらです」

フサが聞いていたのは管理者のことだった。そしてもらったリストを見る。そこにはこう書かれていた。

  『管理AI NO.006 八頭身3』

  『管理AI NO.005 八頭身2』

  『管理AI NO.004 八頭身1』

  『管理AI NO.003 つー』

  『管理AI NO.002 モナー』

  『管理AI NO.001 モララー』

  『管理AI NO.000 しぃ』

管理AIの七人の顔を全部覚えた。ついでに管理AGCの顔も。AAの顔なのでわかり易い。

 「こいつらがAI?」

 「はい、そうです。困ったときはこの方に聞いてください。・・・もう始まるそうです。急いでください」

 「あぁ、わかった。ありがとな」

フサは会場に走る。管理AIのことはただの興味だったが、全員何か変だった。何かが・・・変だった。

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第三章 「起動」

            --NIGHTMARE CITY会場--

 「うっわぁー!すっげぇカプセルの数!」

ギコは先に会場へ来ていた。かなりのカプセルが置いてあるので皆驚いている。

 「自分のNO.のカプセルに入るんだよな・・・・・・、えっと629、629・・・」

かなりのカプセルのせいでなかなか見つからない。

 「629・・・・・・、あった!」

ちょうど見つけた時、会場にアナウンスが流れた。

 『皆様、ご自分のカプセル、見つけられたでしょうか?見つけられたら蓋を
開けてお入りになってください。全員入られたら始めます』

このアナウンスで一斉に蓋の開ける音が響く。

 「よっしゃ、開けるか・・・・・・、おらっ!」

頑丈そうだが簡単に蓋は開いた。中は人一人分寝れるくらいのスペースがある。ギコは寝転んだ。

  『カプセルNO.629 ギコ』
 「・・・ちょっと不安だなぁ・・・」

内心ギコは不安だった。

  『カプセルNO.371 フサギコ』
 「よし、準備OK。さぁ、始めてくれよ」

  『カプセルNO.001 >>1』
  『カプセルNO.002 おにぎり』
 「お父さん、行って来ます」
 「大丈夫かなぁ・・・」

  『カプセルNO.546 兄者』
  『カプセルNO.547 弟者』
  『カプセルNO.548 妹者』
 「パソコンの準備もOK。流石だよな俺」
 「持ってきてたのか!?流石だな・・・」
 「母者ー、父者ー、姉者ー、行って来るのじゃー」

           --NIGHTMARE CITY・管理室--

 「社長!全員のカプセルイン、確認です!」

 「管理A・G・C、管理AI、ログイン準備確認です!」

 「NIGHTMARE CITY、全準備完了しました!」

パソコンがたくさんある部屋、管理室で係員の声が響く。そして真ん中に>>1の父、>>1000が出てくる。

 「・・・NIGHTMARE CITY、起動!」

掛け声と共に機械の動く音が聞こえる。NIGHTMARE CITYは、起動を始めた。

            --NIGHTMARE CITY会場--

こちらのカプセルでも機械の音が聞こえてくる。

 (機動を始めたんだな・・・、眠くなってきたぞ・・・、あぁ、そう言ってたっけな・・・)

ギコは薄れゆく意識の中こう思った。

目の前が光で溢れた。

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第四章 「始まり」

           --NIGHTMARE CITY・管理室--

 「社長!NIGHTMARE CITYの起動に成功しました!」

 「只今より精神抜き出しを開始します!」

管理室では歓喜の声が響く。NIGHTMARE CITYの起動に成功したからだ。
>>1000も思わず笑みを零しながら言う。

 「よし、始めろ!・・・AGCとAIはどうなった!?」

 「今、ログイン中です!」

管理室では声が飛び交う。しかし、誰もこの後どうなるか、わからなかった。

               --異空間--

 ―――ん・・・なんだ・・・これ・・・・・・

ギコが目覚めるとそこは周りが蒼い、異空間だった。他の人の姿も見える。海で浮かんでいる、とでも言えば良いのだろうか。ふわん、と体が浮かび無重力の状態だ。

 ―――うわぁ・・・俺、死んだのか・・・?

そんなことを考えていると上か下からか声がした。

 『み・・・な様・・・聞こえるでしょうか?今、皆様の精神を抜き取っている状態です。決して異常な状態ではないので、ご了承ください』

最初の支配人の声だった。精神抜き出すとこんなになるんだなと無駄に驚きつつギコは言った。

 ―――まだかよぉ・・・

 『ご安心ください。たった今精神を全員抜き出しました。・・・ではNIGHTMARE CITYにワープ!』

支配人が言うと目の前の光が一気に強さを増した。

強い光に一瞬、目をつぶる。目を開けるとそこはもう異次元ではなかった。

         --NIGHTMARE CITY スタート地点--

 「あれ・・・、ここって・・・」

NIGHTMARE CITYに着いたはずだが、辺りは現実世界とあまり、否、全く変化がない大都市だった。

 「ここは・・・、NIGHTMARE CITYだよな・・・?」

呟くとあのアナウンスが聞こえた。

 『皆様お待たせしました。ここがNIGHTMARE CITYです』

言った直後、質問が挙がった。

 「ここって現実と同じじゃあ・・・?」

フサだった。皆同じことを考えていたようだ。

 『皆様のなじみが深くなるように、現実と同じ世界にしました。店や、飲食店も用意してあります。お金は勿論払いますが、皆様に一人、一万円を差し上げます。カードに入っているので、ご自由に使ってください』

かなりのサービスに皆、おぉーと声を上げていた。カードを見ると確かに一万円が入っている。そして。

 『では皆様、ごゆっくりお楽しみください!終了は明日の朝です。』

アナウンスが止まり皆歩き出した。ギコも歩き出そうとしたら声に止められ
た。

 「おいギコ。一緒に行こうぜ」

不利向くとそこにはフサと流石兄弟の姿があった。兄者の脇にはパソコンがある。

 「よう、流石兄弟じゃん。やっぱり来てたんだな」

 「ふざけ半分で応募したら当たったんでな。しょうがなくきた訳よ」

 「くじ運は昔から強い・・・、流石だよな、俺ら。・・・それより俺たち、ホントに猫みたいになってるぞ」

体を見てみると体が猫、AA化していた。ギコは薄い黄色、フサは毛の生えた茶

色、流石兄弟の兄者が緑、弟者が青、しかし妹者は人間のままだった。

 「何で妹者は人間のまま?」

 「あぁ・・・。その辺は深く考えなくて良いだろう」

 「おっきい兄者ー、ちっちゃい兄者ー。早く行きたいのじゃー」

妹者が喚く。宥めながら兄者は言った。

 「とにかく、行こう。結構楽しめそうだからな」

おう、と相槌を打ち五人は歩き出す。しかし兄者の言った楽しめそうと言った事は直に覆される。タイムリミットは迫っていた。

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第五章 「蠢く野望」

           --NIGHTMARE CITY 丘--

NIGHTMARE CITYが始まり早五時間。もう日が暮れかけようとしていた。現実世
界ではないがここにも『太陽』があった。そして今太陽が地平線に消えようとしている。

ここはその太陽の見える丘。そこには人影が五つ。

 「このAAって体、尻尾がいらねぇ」

 「まぁそういうな。慣れるだろ」

ギコ達だった。そのギコが背伸びをしながら言った。

 「それよりお前ら、残金何円だ?」

兄者が皆に聞く。それぞれが答えた。

 「俺は八千円!」

 「兄者、俺は九千円だ」

 「私は千円なのじゃー」

 「俺はさっきCD-ROMを買ったから八千五百円だ」

 (CD-ROM・・・?)

それぞれ結構使っているようだった。そして視線はギコへ行く。

 「俺は・・・・・・ゼロ」

一瞬静寂に包まれる。そしてフサを先頭に笑い声が上がった。

 「あひゃははは!馬鹿だなギコ!どうせ食べ物とかに使っただろ!」

 「うるせー!腹が減ったんだよ!」

楽しく笑い声が挙がったところに三人のAAが歩いてきた。

 「楽しそうですね、何やっているんですか」

少し澄んだ声。振り向くと、人型のAAと紫色のAA、そして白色のAAが立っていた。彼らにフサは見覚えがあった。

 「あれ・・・?もしかしてAGCの人じゃないか?」

 「そうです。よく分かりましたね」

知ってんの?、と言われてフサは頷く。確かにリストに載っていた顔だった。

 「確か・・・この人がレモナさんで、この人がドクオさん。それでこの人が・・・」

 「ヒッキーと言います。AGCの隊長です」

ヒッキーは笑っているのかわからない顔で言った。

 「残りの人は?」

 「イマハ、ソコラヘンヲウロウロシテイルトオモウガ・・・」

ドクオがしゃがれた声で言う。ふとギコが質問した。

 「AIの人とは一緒じゃないのか?」

ギコの質問にレモナは少し困った顔で言った。

 「それがどこにもいないのよ。どこ行ったのかな・・・」

夕日が沈みかけようとしていた。

      --NIGHTMARE CITY 296番道路 とあるビル七階--

とある高層ビルの七階。AAの姿はそんなにないが一つの部屋から声が聞こえる。

 「これで全員集まったな」

 「モララー、しぃが来ていないモナ」

 「そうか・・・。だがもう時間がない。始めるぞ」

部屋の中には人影が六つ。暗い部屋ではよくわからないが藍色のAA、白色のAA、赤いAA、白色のAAに似ているが少し背の高いAA、これは三人いる。

 「あの会社も馬鹿なことに、俺たちを自由に動けるようにしやがった。・・・まぁ、おかげで実行しやすいがな」

 「実行と言うのはやっぱり、皆殺し、だな?」

 「あぁ。この街を支配するためにな。殺すときは気をつけろ。歯向かう奴もいるかも知れない。そういう時は」

 「光の武器、ライトニング・トリガーモナね」

 「そうだ。アレを自由に使って、殺る。それだけだ」

 「僕達は>>1さんとやるよ・・・ハァハァ」

 「>>1さん・・・今すぐにも会いたいよ・・・ハァハァ」

 「>>1さーん・・・」

 「まぁ待て。実行は明日の朝だ。夜明け前に集まる。いいな?」

 「アヒャヒャヒャ、明日が楽しみだな!」

 「しぃはどうするモナ?」

 「・・・・・・俺が行って来る。じゃあな」

台本があるかのように、会話は進んだ。

藍色のAA、モララーが部屋を出る。歩きながら不敵な笑いを浮かべて言う。

 「しぃ・・・、邪魔したら仲間でも・・・」

その瞬間モララーの手から赤く鋭い閃光で出来た剣が現れる。

 「殺す」

モララーは足を速めた。

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第六章 「南十字星」

           --NIGHTMARE CITY 丘--

太陽が地平線に隠れる。空には星が瞬こうとしていた。

暗くなったNIGHTMARE CITYに人影はあまり見られない。しかし夕方ギコ達がいた丘に、人影が一つ。

 「・・・・・・・・・」

ピンク色の体をした女型AA。彼女は黙って空を見上げている。

そして後ろを振り返る。そこには藍色のAAが立っていた。

 「しぃ・・・、こんなところにいたのか。何やってるんだ」

 「モララー・・・。よくここがわかったわね」

ピンク色のAAはモララーが探していたしぃだった。モララーはそれに答えず、言った。

 「お前・・・、わかってるのか?明日は実行の日なんだぞ」

モララーの質問にしぃは唇をかむ。モララーが続けた。

 「お前がどう反対しようと、もう決まったことだ。モナーやつー、八頭身達も張り切っている。そして俺もな」

しぃは話さない。モララーも諦めたのか振り返り様に言った。

 「明日、変なことすると許さないからな」

モララーは行ったが、しぃはもうしばらく星を見ていたかった。

 「綺麗・・・・・・」

しぃが見て言った星はSouthern cross、即ち南十字星。南十字星は優しい光で仮想空間を見守っていた。

          --NIGHTMARE CITY 49番道路--

時間は過ぎ、次の日の朝。正確には夜明けだ。

太陽が出てきてもまだ薄暗い路地に二人のAAが歩いている。

 「ふぁあぁー、ギコ、何でこんな朝早くから・・・。流石兄弟まだ起きてないぞ」

 「良いんだよ、とにかく一番乗りだ一番乗り!」

 「子供かお前は・・・。しっかし、早いだけあって誰もいないな」

ギコとフサだった。フサはギコの一番乗り希望により無理やり起こされたようだ。まだ人のいない路地を見てフサが言う。

 「こりゃ一番乗り確実だな♪」

(たっく・・・ダメだ・・・コイツ)

NIGHTMARE CITY終了まであと少し。しかしこれから『延長戦』ともいえる戦いが始まる。

      --NIGHTMARE CITY 296番道路 とあるビル屋上--

高層ビル屋上。そこには六人のAI。

 「・・・・・・ついにこの日が来たな」

 「いよいよ、始まるモナ」

 「ついに、今日>>1さんと・・・ハァハァ」

 「アヒャヒャヒャ。あれ、しぃが今日もいないよ?」

赤いAA、つーの言葉にモララーが顔を顰める。

 「・・・しぃがいないと俺たちの力が減る。俺たちだけの力、ライトニング・トリガーはしぃの力とも言えるからな。・・・だが良い。邪魔をするなら殺すまでよ」

だんだん声を強めながらモララーが話す。

 「・・・よし、皆、携帯は持ったな?それぞれ適当に殺ってくれ」

全員表情を変えずに頷いた。

モナーは緑、つーは赤、八頭身は橙の光を帯びて消えていった。

一人残ったモララー。NIGHTMARE CITYを見ながら叫ぶ。

 「さぁ、本物の悪夢の始まりだ!!」

悪夢が、始まった。

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第七章 「動いた悪夢」

        --NIGHTMARE CITY スタート地点手前--

 「やっほぉーい!一番乗り!」

ギコ達はスタート地点が残り三百メートル辺りまで来た。周りに人の姿はない。

 「付き合ってらんねぇな・・・。あっ!」

 「どうしたフサ?」

 「金がまだあるんだっけ。ちょっとそこの店で買ってくる」

フサが行こうとしていたのは、武器屋だった。

 「武器屋って・・・、お前何買うんだよ?」

 「前からかっこいい刀が欲しかったんだ。先行っててくれ」

そう言ってフサは行ってしまった。

 「なんだ・・・?まぁいいか」

その時ふっと目の前が薄暗くなった。太陽はもう上空にあるはずなのに。

ギコは上空を見た。

 「どうなってんだ、ゴルァ・・・あぁ!?」

太陽が黒かった。所謂、皆既日食である。プログラムの街にこんなことがあるのだろうか。

 「日食って・・・、一体どうなってんだ?」

その時だった。

ガアァン!!

鈍い衝撃音。何事か、と思って横を見るとビルの壁が打ち破られ、木端微塵になっていた。しかも、その中には一人の男性が紛れていた。

咄嗟にギコは走った。

 「おい!どうしたんだ!?」

途切れ途切れの声で男性は言った。

 「・・・か・・・管理、AI・・・が・・・」

そう言って男性は意識を失った。後で気づいたがこのときもう死んでしまっていたらしい。

 「管理AI・・・?」

ギコが男性を寝かせると後ろから声がした。

 「次は、君モナね」

       --NIGHTMARE CITY 73番道路 Bビル 二階--

ここは元々ギコ達が寝ていた所。残っていたのは兄者、弟者、妹者の三人。

 「・・・で、見事に置いて行かれた訳だが」

 「情けないな・・・兄者」

 「情けないのじゃー」

 「何で俺が・・・」

三人で今後のことについて話し合っている。

 「まぁいい。俺が外に行って探してくる。弟者と妹者は待っててくれ。

 「よしわかった。気をつけろよ・・・」

弟者は少し不安気に承諾した。

 「行ってくるぞ」

兄者はビルを出た。すると横にはカギがついているバイクがあった。

 「丁度良い。免許はないが乗ってみるか」

兄者は軽い気持ちで走り出した。これから起こる戦いのことを知らずに・・・。

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第八章 「足手纏い」

          --NIGHTMARE CITY 99番道路--

 「>>1さん、ホントにおにぎりみたいになって一日経ったけど慣れれば良いもんだね」

 「なんか僕、姿変わってないけど・・・。まぁいいや」

少し暗い99番道路を歩いていたのは>>1さんとおにぎり。

丸腰な彼らは、ゆっくりとスタート地点へ向かっていた。

 「・・・ハァ・・・・・・」

 「あれー?>>1さんがため息なんて珍しい」

 「失礼だな君・・・。昨日嫌な夢見たんだよ」

 「どんなですか?」

 「少し大きめのAAが僕達を追いかけてくるんだ。『>>1さ~ん!』て言いながら。気持ちわるかったー」

 「面白いじゃないですか」

 「面白くないよ!何言ってんだ君」

夢の話など呑気な会話をしている二人。それだから後ろにいる三つの人影に気づかなかった。

 「>>1さん、見っけ♪ハァハァ・・・」

ビクッ!

二人の背中に起こる寒気。恐る恐る振り返ると、先程>>1さんの言っていた『少し大きめのAA』が立っていた。

        --NIGHTMARE CITY スタート地点手前--

 「誰だ!?」

ギコが振り返ると、そこには白色のAAが立っていた。

 「モナか?モナは『管理AI NO.002 モナー』だモナ」

モナーと名乗るAIは人を葬った後とは思えない顔で答えた。

 「管理AIが何でこんなことを・・・」

 「決まっているモナ。ここをモナ達の物にするためモナ」

 「何だって・・・」

モナ達、所謂管理AIの物にすると言うことはギコには理解し足りない。

しかし、先程の衝撃、ギコの脳裏には『殺される』と言う言葉が過ぎった。

モナーは言った。ゆっくりと。

 「ってことで、君には恨みはないモナけど、死んでもらうモナ」

 (糞・・・、やっぱりか・・・)

抵抗しようが殺されると思った。先程の衝撃を考えての上で。

ギコは目を瞑る。恐怖を少しでも紛らわすため。

 「覚悟モナ」

・・・・・・・・・・・・・・・

しかし何の痛みも覚えない。何だ?、と思い目を開ける。

 「おらぁ!ギコ、大丈夫か?」

目の前には刀を構え、モナーに反撃をしていたフサがいた。

 「フサ!その刀・・・」

 「そこで買った。おかげで金はすっからかんだ」

白い歯を見せて笑うフサにギコも笑って返した。

しかし、相手のモナーに苦悶の姿は見られない。

 「ふん、美しい友情モナね。丁度良いから二人揃って死んでもらうモナ」

すると、モナーの手から緑色に輝くオール状の棒が現れた。

そして勢いよく振りかぶる。狙いは無防備なギコだった。

しかし、フサの刀が持ち堪える。先程の攻撃より遥かに威力が強かった。

 「く、糞・・・」

 「フサって言ったモナ?大変モナね、足手纏いがいて」

モナーの言葉はギコの心に突き刺さる。自分は足手纏いなのだ。

 「・・・・・・ギコ、逃げろ」

いきなりのフサの言葉。ギコは勿論反論した。

 「何でだ?俺も戦う!」

 「いいから早く逃げろって言ってんだよ!!」

自分の声がかき消されるほどのフサの声。ギコは少し迷い、言った。

 「・・・・・・わかった。フサ、死ぬなよ」

そう言ってギコは走り出した。自分の無力を嘆きながら。

 「仲間を逃げ出させるとは、勇気があるモナ。死ぬ準備が出来たモナね」

 「うるせぇ!それに俺はこんなところで死なないからな!」

そう言ってフサは走り出す。モナーに向かって・・・。

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第九章 「護るから」

          --NIGHTMARE CITY 49番道路--

 「おーい!ギコー!フサー!いないのかー!」

薄暗い49番道路、元々はギコ達が歩いていたところに大きい声が響く。

 「いないようだな・・・。他を探すか」

兄者だった。ギコを探しに来て約一時間。しかし一向にギコ達の姿は見えない。

バイクに跨る兄者。突然、パソコンを取り出した。兄者愛用FM-Vである。

 「こういう所でやるのも悪くはない」

カタカタカタカタカタカタ・・・・・・

 「よし、画像を見つけた。勿論クリック」

カチッ

ガガガガガガガガガガ・・・・・・

 「OKブラクラゲット。流石だよな俺」

兄者がブラクラゲットしている間をじっと見ている赤いAA。

 「次はあいつを殺すか・・・、アヒャ!」

そう呟き、赤いAAは跳躍をした。それは尋常ではない高さまで跳ね上がった。

 「死ねぇぇぇぇぇぇ!!」

上からの絶叫。兄者が上を見ると、赤いの短剣を持った、短剣と同じ色の体をしたAAがまっ逆さまに落ちてきた。

 「何だ!?」

咄嗟に兄者はバイクを走らす。十メートル程離れた時、途轍もない爆音が起こった。

ドグァアアン・・・!!!

爆風で飛び散った石片が兄者の頬を掠める。

後ろを見ると、剥き出しになったアスファルト。そしてそうした張本人である赤いAAが立っていた。

 「何者だ?」

 「よくかわしたなぁ。俺は『管理AI NO.003 つー』だ!お前の命、もらいに来たぜぇ!」

つーと名乗るAAは再び兄者に襲い掛かった。

 「命をもらいに来た?フン、俺の命はお前になんかに取られる安っぽい命じゃないつもりだが?」

兄者は捨てゼリフを吐き、バイクを走らせた。

           --NIGHTMARE CITY・管理室--

 「社長!管理AI、制御不能です!」

 「管理AIがプレイヤーを襲っています!『実験参加者NO.762 山崎』心停止!死亡確認です・・・!」

管理室では管理AI暴走の対処を行っている。しかし暴走を始めた管理AIを制御することは出来なかった。

 「糞っ!どうなっているんだ・・・?」

>>1000が机に手を叩き付けて叫ぶ。

 「社長・・・。このままでは全員の命が・・・」

係員の言葉に>>1000も言葉に詰まる。

 「誰かがプラグアウトするしかないだろう・・・」

プラグアウト。こちらの世界からではなく、仮想空間のある所から抜け出す、こちらでは使用できないことだ。

 「全員がスタート地点に来ないと終了できない、そのプログラムが仇になりましたね・・・。プラグアウトはどこですれば良いんですか?」

係員の質問に>>1000はゆっくり答えた。

 「・・・都市の外れにある『ビッグ・ブリッジ』。そこでのプラグアウトが可能だ・・・・・・」

          --NIGHTMARE CITY 12番道路--

ギコは、まだ走っていた。少し目に涙を溜めながら。

 (フサ・・・、ごめんな・・・・・・)

走ってかなりの時間が経った。疲れのせいか、ギコは咽こんだ。

 「ゲホッ、ゲホッ・・・。・・・・・・くっそぉー!!」

ギコは手を壁に叩きつける。そして自分の無力を恨んだ。

ふとギコは前を見た。

そこには悲しげな表情で座っている、可愛らしい少女型AAの姿があった。

 (こんな所に・・・、何やってんだ・・・)

思い切ってギコは声をかけた。

 「あ、あの・・・君・・・」

 「誰・・・?」

澄んだ声。少女に話しかけるのなんてギコには初めてだった。

 「いやっ、あの・・・。ここにいちゃ危ねぇ・・・ぞ、ゴル・・・ァ・・・」

少し震えた声で言った。少し経って少女は言った。

 「うん・・・。でもいいの。このまま私はこの都市と一緒に・・・」

 「そんなのいけねぇ!君の命は無駄なんかじゃない!俺が護るから!一緒に行こう!」

この言葉に少女も驚いていたが、一番驚いたのはギコ自身だった。

(うわぁ・・・何言ってんだ俺・・・)

しかし少女は少し笑いながら言った。

 「ありがとう・・・。そう言ってくれるのうれしい・・・。けど迷惑じゃあ・・・?」

 「いや、全然良いって・・・!そうだ、君なんて言うんだ?」

 「私・・・?・・・私はしぃって言うの・・・君は?」

 「え?あぁ俺はギコだ。しぃか・・・。よし、じゃあ行こう!」

ギコは手を差し伸べる。しぃも手を出した。

そして、ギコはしぃにも聞こえない小さな声で言った。



 ―――必ず君を護るから・・・・・・




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第十章 「逃げることも勇気」

          --NIGHTMARE CITY 99番道路--

 「うぎゃぁぁぁああああ!!出たぁぁぁああああ!!」

>>1さんとおにぎり、二人揃っての大絶叫。向けられたのは『少し大きめのAA』、八頭身だった。

しかも八頭身は全員で三人いた。

 「>>1さーん、探したよぉ!さぁこれから一緒に夢の世界へ・・・♪」

 「絶対にいやじゃぁぁぁああああ!!」

二人は一斉に走り出した。しかし、八頭身もそう簡単に諦めない。

 「>>1さーん!待ってよー!」

 「いっしょにハァハァしよう~!」

 「そうやって逃げるところも好きだよ~!」

走り出したかと思えば、簡単に追いつかれた。

 「まずい・・・!あっ、あれだ!!」

おにぎりが指差したのは荷台付きの軽トラだった。

 「よし、おにぎり君、運転を頼む!」

勢いよく荷台に乗る>>1さん。そしておにぎりは運転席に乗り込んだ。

 「わかった!僕の技術を見せてやる!」

おにぎりは鍵を捻った。

激しいエンジン音。アクセルを踏み、軽トラは走り出した。

 「>>1さ~ん!足掻いたって無駄だよぉ!」

 「結局は捕まるんだから~!」

 「そういうことすると僕達も・・・、そりゃ!」

 「!!」

信じがたいことが起こった。

八頭身の内、二人の体に変化が起こった。一人にはタイヤ、もう一人にはプロペラがついていた。

もう一人はそのままだが、スピードを上げた。

強化した体で、三人同時に叫んだ。

 『絶っっっ対に捕まえるからね~!』

 「まずい!おにぎり君、スピードアップだ!」

 「了解!」

命がけの追いかけっこが始まった。

         --NIGHTMARE CITY 地下鉄Z駅手前--

 「おらぁ!」

勢いよく振り下ろされた刀は、しかし易々と緑の光に止められた。

二人が戦っている間、既に場所は移され、地下鉄のZ駅手前になっていた。

 「どうしたモナ?そんなんじゃ死ぬのも時間の問題モナ」

 「うるせぇ!お前なんかに殺されるか!・・・それよりお前管理AIだろ?」

ふと思い出し、フサはモナーに聞いた。

 「ん?そうモナ。よくわかったモナね。それがどうしたモナ?」

 「ってことは、残りの六人もこんな事を・・・?」

再度質問した。今度はなぜか、モナーは嫌な笑みを浮かべて言った。

 「そうモナ!ここをモナ達のものにするため、邪魔をするものはすべて排除モナ!」

まずい・・・、フサは心の中で思った。

管理AIであるからして、相当強いのは確かである。しかし自分は、まだ刀を使い始めて、二十分程だ。勝てる見込みがない。

 (逃げるか・・・?)

後ろには丁度良いように、地下鉄のホームへの入り口があった。

最先端の技術を使ってあるため、駅員などの姿は無い。完璧な無人だ。

 「さぁ、無駄話は終わりモナ。・・・さようなら」

モナーは緑のオールを振り下ろす。

 (仕方ない・・・!)

選択の余地は・・・なかった。

 「じゃあな!」

フサは後ろに振り向き、走り出した。

しかし恥ずかしさも何にもない。当然なのだ、逃げ出すと言うことは。

 「む!?逃げるモナか!?」

だが、そう簡単に逃がしてくれないようだ。モナーは勿論追ってきた。

 「おらぁーーー!!!」

走り幅跳びの要領で、フサはかなり遠くまでジャンプした。

目の前には階段があった。

 (手すりを使って・・・)

 「ちっ!すばしっこい奴モナ!」

手すりに乗り、スケートのように滑り出した。そして三十段余りの階段は十秒ほどで降りきることが出来た。

出たのは、地下鉄のホーム。運が良いことに丁度、地下鉄の電車が来た。

先程言ったように、最先端の技術を使用しているため運転手や車掌の姿もないようだ。

 「チャンス!」

フサは扉が開いた瞬間、電車の最後尾に乗り込んだ。

 「待つモナー!!」

遅れてモナーが来る。しかし間に合わない。

ぴったり、扉が閉まりモナーは扉に激突した。

 「痛っ!・・・糞ー!開けるモナー!!」

しかし、電車は走り出す。モナーも走り出すが、すぐに見えなくなった。

 「はぁはぁ・・・。助かった・・・・・・」

一瞬の安息。しかし、これで終わりではなかった。

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第十一章 「流石な兄弟」

         --NIGHTMARE CITY 潮風トンネル--

 「ふぅー・・・。しぃ、ここを抜ければ良いんだな?」

 「え?あ、うん・・・」

ギコとしぃは潮風トンネルと言われるビッグ・ブリッジへの近道を通っている。

しぃの手を持ちながら。

この道は行こうとしたとき、しぃに教えられたものだった。

三十分前―――

 『しぃ、ここを抜け出す方法とか知らないか?』

ギコはしぃに聞いてみた。無駄だとは思ったいたが。

しかし、しぃは答えた。

 『この世界から出るにはもうプラグアウトするしか方法はないの・・・。プラグアウトするにはビッグ・ブリッジに行くしかない・・・』

 『ビッグ・ブリッジ・・・?』

ギコはしぃがこんなに知っていることに少し驚いた。

しかし、そんなことを考えている暇さえもなかった。

 『よし!ビッグ・ブリッジへ行くぞ!』

 『う、うん・・・・・・』

現在―――

そのあとしぃに聞かされた話では、ビッグ・ブリッジは巨大な運河に跨る、長さ千メートルは有に超す橋らしい。

先は出口に繋がっており、そこから現実世界へと出れるそうだ。

 「出口だ!」

長いトンネルをやっと抜け、目に焼きついてきたのは実際に見ると本当に長いビッグ・ブリッジの姿だった。

 「うわぁ、でっかいなぁー!」

思わず出た感想はその通りのものであった。

日食は依然続いているが、太陽は少し傾きかけていた。

 「・・・よし、渡るぞ!」

 「うん・・・」

その時、ギコは気づいていなかった。しぃの胸にカードがなかったことを。

          --NIGHTMARE CITY 73番道路--

 「アヒャヒャヒャヒャ!逃げれるとでも思ってんのか!?」

赤いAA、つーが兄者のバイクを追う。

異常な速さで振り切ることは難しかった。

しかも周りは夥しい死体がぞろぞろあった。

 (ここは、弟者に電話するか・・・)

心に決め、運転中だが携帯電話を取り出す。そして素早い手付きで電話番号を押した。

トゥルルルルルル・・・トゥルルルルルル・・・

 “はい、こちら、弟者だが”

 「弟者か?兄者だが、かなりのピンチと来ている」

 “どういうことだ?”

聞いてくる弟者に兄者は全てを話した。

襲ってくる赤いAA、つー。そして死体。ただ事じゃないと思ったのか、弟者の声も真剣になった。

 “成程・・・。兄者、戻って来い。一人じゃどうしようもないだろう”

 「それはそうだが・・・」

 “俺たちを信じろ。とにかく戻って来いよ”

兄者は少し考えたが言った。

 「わかった。しかし、妹者には心配をかけたくない。内緒にしてくれ」

 “よし!・・・死ぬなよ、兄者・・・”

弟者の声で電話は切れた。兄者は少し笑い、心の中で言った。

 (当たり前だろ・・・弟者。俺はまだソニンタンの画像をだな・・・)

そんなことを考えていると、いきなり後ろから赤い短剣が飛んできた。

 「オラオラ!戦場でボーっとするもんじゃねぇぜ!!」

後ろを向くと、つーが追いかけてくる。

 「お前に俺は殺せないと思うが・・・!」

兄者はスピードを上げた。

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第十二章 「微かな希望」

       --NIGHTMARE CITY 73番道路 Bビル 二階--

 (兄者・・・無事でいろよ・・・)

電話を握り締め、弟者は心の中で思った。

 「誰からだったのじゃ?」

妹者が、顔を前に出して聞いてくる。

 「ん?兄者が・・・」

そこまで言って、弟者は思い出した。兄者との約束。

 『妹者には心配かけたくない。内緒にしてくれ』

 (あぶねぇー・・・。とりあえず口裏を・・・)

一瞬の静寂の後、弟者は苦笑いの表情で言った。

 「兄者、これから帰るってさ。心配するなって」

そう言ったら、妹者は笑いながら言った。

 「心配なんてしてないのじゃー」

そっと、妹者を撫で、弟者は窓の外を見た。

 (兄者・・・・・・)

光の失った太陽が兄弟を見守っていた。

         --NIGHTMARE CITY 地下鉄 電車--

ゴトン!

何かが落ちる音。ふっと、フサは目覚めた。

 (何だ・・・!?)

横を見ると、刀が倒れていたらしい。

 (びっくりした・・・。少し寝ちまったようだな・・・)

背伸びをして、フサは外を見た。地下鉄なので外の景色は見えない。

 「とりあえず、次の駅で降りるか・・・」

ふと呟いたときだった。

 「そいつは無理モナねぇ」

聞き覚えのある声。上からだった。

 「お前・・・まさか・・・!?」

 「そのまさかモナ!」

声と共に電車の天井が破れた。

出てきたのは、白いAA、紛れもなくモナーだった。

 「モナからは逃げられないモナよ」

 「そうみたいだな・・・」

フサは刀の柄を握る。

しかし、襲ってくるかと思いきや、モナーは屋根の上に飛び移った。

 「ついて来るモナ」

一瞬ポカン、としたフサだったがすぐに屋根の上に飛び移る。

もう逃げることは出来なさそうだったから。

 「どこだ・・・?」

見渡すと、一つ前の車両にモナーが立っていた。

 「・・・君みたいなある程度強い奴とは、こういうデスマッチで勝負をつけたいモナ。落ちたら死ぬモナよ」

ごくん、とフサは唾を飲み込む。

確かに、ここは走る電車の上。周りに落ちたら死ぬ可能性のほうが高い。

 「覚悟が出来たら、来るモナ」

一瞬フサは迷った。しかしすぐに覚悟を決め、走り出した。

 「うおぉぉぉおおおお!!」

地下での決闘が始まった。

          --NIGHTMARE CITY・管理室--

 「『実験参加者NO.592 さいたま太陽』!死亡確認!」

依然として、管理室では死亡確認の声が響く。

このままでは皆が死ぬことも考えられた。

 「糞・・・。プラグアウト出来そうなプレイヤーはいないか!?」

>>1000が叫ぶ。期待は薄かったが、思いもよらぬ返事だった。

 「あぁ!今、『実験参加者NO.629 ギコ』!ビッグ・ブリッジを渡っています!」

 「何!?」

カードについているセンサーで全員の位置がわかるのだった。

今ギコのセンサーはビッグ・ブリッジの三分の一程度のところに反応していた。

 「ギコ君か・・・。よし、希望が出てきたな!」

希望。しかしそれは薄かった。

 「あ!社長!ギコと一緒にいるAAは・・・、『管理AI NO.000 しぃ』です・・・!!」

 「何!?そんな馬鹿な・・・!なぜ管理AIと・・・!?」

それに追い討ちをかけるようにもう一人の係員が言った。

 「社長!ビッグ・ブリッジの上にAA反応!これは・・・、『管理AI NO.001 モララー』と確認・・・!」

この言葉に、>>1000は愕然とした。

 「二人の管理AIに囲まれている・・・。彼ももう終わりか・・・」

否定したかったが、しょうがなかった。

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第十三章 「裏切り者」

        --NIGHTMARE CITY ビッグ・ブリッジ--

 「長ぇー橋だな・・・」

ギコは、はぁはぁ息を荒くしながら歩いている。

 「・・・・・・・・・」

しぃは渡り始めてからずっと黙っている。ただ足を進ませるだけだ。

 (なんで、しぃはこんなに黙っているんだろう・・・)

声に出さず思った。



その様子をじっと見ている藍色のAA。手には赤い剣を持っていた。

 「しぃ・・・。やっちまったみたいだな・・・」

にやりと笑い、藍色のAA、モララーは跳躍をした。

 「裏切り者は抹殺だ・・・!」

剣の先を下にしながらモララーは落ちる。

狙いは・・・しぃだった。

ヒュゥゥゥ・・・

何かが落ちてくる音。ギコは上を見た。

 「なんだ・・・?・・・あぁ!?」

ギコは驚いた。上からAAが凄い勢いで落ちてきたからだ。

 「しぃ!危ねぇ!!」

 「え・・・?きゃ!!」

咄嗟にギコはしぃを突き飛ばし避けた。

ドカァアアン!!

目を瞑っていたのでよくわからないが、かなりの衝撃だったのが音でわかる。

横には『駐停車禁止』の標識が吹っ飛んできた。

後ろを振り返ると、何事もなかったかのように藍色のAAが立っている。

 「何するんだよ!!」

ギコが叫ぶとモララーはふっ、と顔で笑い言った。

 「何をって・・・。決まってんだろ。皆殺しと裏切り者の抹殺だよ!」

手の赤い剣を振り上げ、また襲い掛かってきた。

 「糞っ!またかよ!」

ギコはぎりぎりのところで横の標識を掴み、剣の勢いを止めた。

対峙しながらギコは言った。

 「裏切り者ってなんだよ!?」

 「・・・?。そうか気づいていないんだな。なら良い。とにかく二人とも抹殺してやるよ!」

またモララーは振りかぶった。しかし、ギコの反射神経はそれをも止めた。

そのせいかギコは気づかなかった。しぃが唇をかんでいる。

 「ギコ君・・・・・・」

小さな声が響いた。

        --NIGHTMARE CITY 32番道路 AGC本部--

 「マズイコトニナッタナ・・・・・・」

 「そうですね・・・」

紫色と白色のAAが窓辺に座っている。そこは薄暗く、人の気配も彼らしかなかった。

 「タイチョウ。ドウスルンダ?」

 「とりあえず、彼らの応答を待つしかないでしょう・・・。AIの強さは本物ですからね・・・」

彼らは管理AGCのヒッキーとドクオだった。他の管理AGCの姿はなく、やはりいたのは二人だけだった。

 「レモナタチハ、ダイジョウブダロウカ・・・」

 「大丈夫でしょう。彼らもAIに引けをとりませんからね・・・」

しかし、ヒッキーは不安そうだった。

           --NIGHTMARE CITY 55番道路--

 「死体の臭いがすげぇんじゃネーノ?」

 「生存者は見つからないね・・・」

 「まずいわね・・・」

三人のAAが死体の多い55番道路を歩いている。

人型のAAはレモナだった。

他の一人は黄緑、もう一人は水色で瞳をうるうるさせている。

 「隊長に連絡する?」

水色のAAが聞いた。

 「まだ早いんじゃネーノ?ショボさんよ」

 「そうね・・・。ネーノの言うとおり、もう少し探してからにしましょう。もしかしたらニダーとぼるじょあは何か見つけたかもしれないし」

どうやら水色のAAはショボ、黄緑はネーノと言うらしい。

レモナと一緒にいるところから見て、二人は管理AGCのようだった。

 「わかった・・・。・・・・・・あれ?何だろう」

ショボが指差す先には小さく丸いAAが蹲っていた。

 「生存者・・・じゃネーノ?」

 「そうみたい・・・。行ってみましょう」

三人が近くに行くと、小さいAAは泣きながらこちらを見た。

 「君どうしたの?」

ショボが優しく聞くと小さいAAは怯えながら答えた。

 「お父さん、シンダ・・・。お母さん、シンダ・・・。独りぼっち」

どうやら両親をこの騒ぎで亡くしたらしい。

ネーノがレモナに言った。

 「ここは危ないから、連れて行ったほうが良いんじゃネーノ?」

少しレモナは考えていたがやがて言った。

 「そうね。連れて行きましょう。坊や、名前は?」

小さいAAは答えた。

 「僕、ジサクジエン!」

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第十四章 「意外な攻撃手」

         --NIGHTMARE CITY 73番道路--

 「アヒャ!いい加減にしな!俺からは逃げられねぇよ!」

つーは依然として兄者を追いかけている。

顔には青筋が奔っていて、怒り気味のようだった。

 (まだ着かないのか・・・)

兄者は体中に切り傷を負っている。

これはつーの投げた短剣が掠って起こったものだ。

 (・・・見えた!アレだな)

兄者が思わず出た微笑。それは目線の先にあった弟者達がいるBビルのためだった。

しかも、横には丁度よく斜めに積まれたベニヤ板がある。

 (アレを使って、二回の窓を突き破る・・・。それしかないな・・・)

兄者は進路を変えた。

 「アヒャ?何をする気だ?」

つーが疑問を抱くより早く、兄者はベニヤ板に乗っかり、跳んだ。

 「アヒャ!!?そんな馬鹿な・・・!!」

 「うぉらあぁぁぁぁ!!」

叫び声と共に、兄者はビルのガラスをわり入り込んだ。

パリーーーン・・・!

ガラスがわれ、兄者は弟者の姿を捉える。

 「兄者!」

 「弟者!やるぞ!」

しかし後ろからはつーが追いかけてきた。

 「こんな所にはいって隠れられるとでも思ったのか!?アヒャヒャヒャ!」

 「まずい!弟じ・・・」

兄者は驚愕の顔になった。

それは妹者がショットガン式の拳銃を取り出し、つーの前に立ちはだかったからだ。

 「妹者!?」

弟者もかなり驚いている。

そして、妹者は叫んだ。

 「バキューン、なのじゃー!!」

バキューンッッッ!!

拳銃は放たれた。弾はつーの左足に当たる。

 「ぐっはぁ・・・・・・!」

いくら管理AIとはいえ、目の前の不意打ちは避けられなかった。

つーは苦悶の声をあげ、その場に仰け反りかえった。

 「く、糞・・・・・・」

言ったとたん、つーは意識を失った。

 「妹者・・・、どこでそんな物騒なものを?」

兄者が尋ねると、妹者は笑いながら答えた。

 「昨日買ったのじゃー。結構面白いのじゃー」

そう言うと、妹者はズボンのポケットからたくさんのカートリッジを取り出した。

 「これだけあれば大丈夫じゃー」

笑いながら言う妹者に二人はかなり困惑気味だった。

 「まぁ、この戦いは妹者のおかげで勝ったわけだし・・・。終わるまでは良いか」

 「うむ、母者に見られたら、俺らが殺されるがな」

苦笑いしながら拳銃所持二人は許した。

 「兄者、とりあえずアレを言おうではないか」

 「そうだな。よし・・・」

―――流石だよな俺ら

 「なのじゃー」

日食中の太陽を見ながら三人が一斉に言った。

       --NIGHTMARE CITY 地下鉄 電車の屋根--

カキィーン!

 「ぐっ!」

鋼が激しく擦れあうような音。そして呻き声。

空中には先程までフサの握っていた刀が吹っ飛んでいた。

 「がはぁ!」

それはモナーの攻撃が手、そして腹部に当たったためで、その衝撃によりフサは最後尾へと吹っ飛んでいった。

ガシッ

 「く、糞ぉ・・・・・・」

ぎりぎり壁に手をかけ助かっていたが兄者同様、体は傷だらけで自分を支えている手も、いつ駄目になるかわからなかった。

モナーがゆっくりと近寄ってきた。

 「ふふふ、これで終わりみたいモナ。モナも仕事があるモナから、そろそろ死んでもらうモナ」

モナーは緑のオールを回転させる。

 「へっ、人殺しが仕事かよ・・・!嫌な職業だな・・・!」

フサはにっ、と笑いながら言った。

この言葉にモナーも一瞬顔を顰める。しかし、すぐに表情を戻し言った。

 「ずいぶん余裕モナね。・・・さーて、終わりモナ!」

モナーはオールを回転させたまま、フサへ振り落とした。

 (まずい!)

その時、フサの目には一筋の光が見えた。

最初は何だかわからなかったが、すぐに理解し顔からにやっと微笑が出る。

 (これだ・・・!)

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第十五章 「当たり前の結果」

        --NIGHTMARE CITY ビッグ・ブリッジ--

ここでも、激しく両者はぶつかりあっていた。

 「うおぉりゃぁ!」

ギコの振り落とした標識は、しかし空中ジャンプで簡単にかわされる。

 「ふん!そんなものが当たると思ってんのか!?」

代わりにモララーは空中にいたまま、横回転斬りをギコにぶつけた。

 「糞っ!」

カッッッ!

 「きゃ!」

モララーの剣とギコの標識が当たって起きた摩擦のせいか、周りは光に包まれる。

この光にはしぃも目を瞑るしかなかった。

しぃが瞬きをしながら目を開けるとそこにはモララーはおろか、ギコの姿もなかった。

 「・・・・・・?」

しぃは周りを少し見渡して気づいた。

 「あぁ!」

上だった。

モララーとギコが対峙をしている。

ギコの手には既に標識の姿は見て取れなかった。

 「ギコ君・・・」

上では激しい戦いが続いていた。

 「うおらぁ!」

 「へ

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