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Rainfall (西塚)

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匿名ユーザー

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ああ,オレは二度とこんな想いなんてしたくねえ。


「つー!!」
「うるさい。なんだよ」
「なんだよ,つれないなあ」
「調子いいヤツ」
ケータイをいじるつーの背中に重たくのしかかって来たモララーはつーのケータイの内容読むなり
「あ,オイッ」
「誰?コイツ。僕の知らない人だよな?男?」
ひょいとケータイを取り内容やら相手先やらをごそごそと詮索するモララーにつーは溜息を一つ。
「誰だっていいだろ。ほら,帰るぞ」
ケータイを無理矢理取り返しコートのポッケに突っ込んだ。
「………それが先輩に対する態度か」
「いっとくがお前を先輩だと思ったことは一度だってないぞ」
「あいかわらず生意気だなあ」
「生意気で結構だ」

教室を出てすたすたと歩くつーに追いかけるモララー。
つーがだんだん早足になって。モララーは走って追いかけてどーんって体当たりして。
吹っ飛ばされたつーがモララーに向かって怒鳴り声で文句いって。
それからだんだん口喧嘩になって。また緩やかな口調に戻って。どうでも良いことでわらって。


ああ。これが日常風景で。幸せだったんだよね。僕らは。


「ナトリウム…水―……?ああ,2NaOHだな…」
「ねえ…ぶつぶつ言いながら問題解かないでくれるかなあ?」
「あ,ごめん」
しぃとつー。二人きりの教室で居残り。
流石に期末前となって勉強しなければと,一生懸命に問題集とにらめっこ。
「モララー先輩遅いねえ」
「そうだな。…ごめんな,つきあわせて」
「や,あたしはギコ君待ってるついでだからいいんだけどね」
目を合わせず顔を上げず手だけを動かし化学式をノートに書き殴る。
「健気だね。つーちゃん。こんな遅くまで先輩待っててねえ」
「別にオレが自主的に待ってるわけじゃない。アイツが帰ると後々うるさいからだ」
「そう言いつつも,いつも待ってるじゃない。あたしがいない時だってずっと一人でまってるんでしょ」
「……うん」
「それって健気だよ」
「…………よくわからん」

モララーというオレよりひとつ上の先輩は受験を控えている。授業はオレ達の学年よりも1時間多い。
『ぜってー帰るなw』
モララーの笑顔が浮かぶような文面が送られてきて『そんなん知ったこっちゃねえ』とそそくさと帰った日の翌日は非道く大変だった。
『なんで帰った?』
『待つわけないだろ』
『ちゃんと帰るなって送ったよ』
『聞くか。アフォ』
『………』
『なんだよ』
ああ悲しそうな色を含んだ目。あんたが怒った時に見せる目だ。そんな目でオレを見るなよ。
『………』
『そんなに気に入らないか』
『……じゃあボク,受験対策の授業出ない』
『…ぅええ?』
『その代わり受験落ちたらつーのせいだから』
『はあ!?』
恨みがましそうな瞳。その仲には怒りの色。
突拍子に言ったのだろうが,長い付き合いだ。
言ってしまったら最後,この人は絶対に実行する事を知ってしまっていた。
なんて勝手な人だろうと思った。
『………明日から…』
『明日から…何?』
にっこり悪戯っぽく微笑んで。オレは小さく悪態をついて。
『明日からだからな!待つのは!』
『え~嬉しいなあ。つーが待っててくれるんだ』
わざと言ってんなこのやろう。ああムカツク。いっつもコイツのいいペースじゃねえか。
その後に『あ,昨日勝手に帰ったからそれの代償として肉まん奢っ…』言いかけに一発殴ってやった。

「ね,つーちゃん」
「え…ああ?」
「話聞いてってば。それでね,ギコ君てばね……」
「………」
(やなこと思い出しちまったな…orz)
懐かしい,記憶。つい最近の話だけれど。
それからもう2ヶ月はたったか。モララーの受験対策のある日は必ず居残りして待つようになった。
「ところでさ,つーちゃんはモララー先輩とうまくいってる?」
「ぇ……えぁあ!?」
思わす顔を上げるとにっこり笑ったしぃの顔。
「だって…ねえ?こんなにラブラブなんだもん」
「や……つか…付き合ってないし」
(顔が…熱い。)
「え?嘘…。ずっと付き合ってるって思って…」
「や…付き合ってないぞ…?」
(ああ,なんだ畜生。なんだか気恥ずかしい気が…。)
「でも,なんて言うんだろ。これって普通にカレカノっぽくないかなあ?」
「……ただ…!た,ただの先輩後輩だ。それ以上の関係では…」
(オレどもり杉だから…もちつk…)
少しずつだがどんどん顔の赤くなっているつーを見て,しぃは少しだけ楽しんでいた。

ええだってオレとモララーって先輩後輩で…だってカレカノとかありえないから普通だし弁当一緒に喰ったり帰り一緒に帰ったりするだけだしそりゃたまに休みとかに遊びに逝ったりするけどもそれはモララーに無理矢理呼ばれてモララー自身の買い物とかに付き合わせられてるだけだしだって断ったらねちねち五月蝿いし何倍もしっぺ返し喰らうしオレがこうやってモララー待ってんのもそのせいだし別に好きで一緒に帰る訳じゃないしただ帰り道が途中まで一緒ってだけだしくだらねえ事しか話さないし喧嘩ばっかするしそれにオレはモララーの事好きな訳ないしむしろあーいう俺様資質は嫌…


「つー!!」
「アヒャーッ!?」
突然モララーの叫び声がし,ガターンと席から立つつー。
「あ,モララー先輩来たね」
彼女はいたって穏和な口調でやんわりと告げた。
「ね。傘ある?傘!雨降ってきた!」
つーとしぃの教室に飛び込むなり。
「えー。本当ですか?」
「今の時期濡れると寒いからね。つー,傘持って…」
言葉を止めた。思わず…
「…え?何でそんなに顔赤い?」
モララーが聞くのも最もであり,つーは耳から全て真っ赤だった。
つーはしまったとあわてて首の後ろを冷やそうとする。
顔が赤くなった時抑えるのは首の後ろを冷やす事だとテレビで見たことがある。
「ちょっと,恥ずかしいお話をしたんだよね?つーちゃん」
更に追い打ちをかけるしぃ。恥ずかしい話ってなんだ恥ずかしい話って。
「え?なに?恥ずかしい話ってw」
モララーがしぃに近寄って話を聞こうとするが
「傘!持ってるから!早く帰るぞ,バカ!」
つーがモララーを引っ張って教室からでた。

「ばいばい。つーちゃん」
一人明かりの灯った教室に残されたしぃ。
「ギコ君まだかなあ…?」
そうつぶやき,彼女はケータイをとろうとバックを開けた。



「なんで,引っ張るんだよー!」
「うるさいッ」
相変わらず顔の赤いまま。ああ畜生。体は冷えるのに頭だけがあつい。
「………」
テンポの速いつーの足音に合わせるようにしてモララーも歩く。
だってそうしないと濡れてしまうから。寒いのは,嫌だ。
100円ショップの透明なやけに脆そうな小さいビニール傘の中に2人。
車が通るとヘッドライトが当たって影が出来て,2人分の人影が重なって見えてひとつになる。
それをモララーはじっと眺めていた。何かを思う訳もなく考えるわけもなく。
「なんか…アイアイガサってこんなだよねきっと」
ぽつりと呟いてみるが車が水しぶきを上げる音でつーには聞こえなかったらしい。
(まあいいか)

帰り道を2人で歩く。
きっとボクが卒業したら一年間はこうして会えなくなるんだね。
ボクもつーも,きっと分からないよね,お互いがいなくなったらどんな生活になるのかなんて。
怖くはないけど,なんとなく寂しい。
絶対つーには言わないけどな。




そしてモララーは見事高校に合格。
制服もどうだ。似合っているだろう。

それからしばらくたった卒業の季節。3月の半ばの出来事だった。
あの,忘れられない事件が起こったのは。

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