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怪盗救世主 (中級)

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匿名ユーザー

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第一話 キザな泥棒

「奴らは必ず現れる。」
二人のAAが速歩きで廊下を歩いている。
一人はギコ族、もう一人はつー族のAA。
廊下は鉄で覆われていて窓は無い。
明かりを灯すものは冷たく光る蛍光灯のみだ。
暫く歩く。
と、二人の前に一つの扉が


「バタン」

その内一人のAAが、立ち止まることなく勢いよく扉を開けた。
「削除人のダブルサンダー、只今参りました。」
そして叫んだ。
その部屋に居るAAの半数近く…ざっと二十人ちょっとの視線を一度に浴びる。
そしてその中の一人が
「私は削除人を呼んだ覚えはないが。」
そう言ったのはさいたま族のAAだ。
だがとてもそうは見えない。

冷たい。



その部屋には廊下より明るい光が覆っている。
だが空気は悪い。

二人は何とか先程のさいたま族のAAから許可を貰い、警備に当たらせてもらった。
「なあエギレ…。」
片方のAAがもう片方にひそひそと話し掛ける。
どうやら扉を開けて叫んだAA…でない方だ。
「なんだよらぃ。」
エギレと呼ばれたAAは多少嫌々ながらも応ずる。
「今回奴らが狙ってる代物ってどんな物なんだ?」
エギレは今度は嫌々せずに答える。
「今回奴らが狙ってるのはサン・クリスタル。ほら、少し光も放ってて太陽みたいだろ。
 それでそう言う名前が付いたらしい。」
二人の目線はその代物へ。
「あぁ、それで隊長がさいたま族なのか。」
その考えは絶対に間違っている…。
だが今のエギレは突っ込む気にならない。


それから暫く時間が経つと、辺りに緊迫したムードが漂い始めた。
エギレは腕時計に見をやる。
「そろそろだな。」
時計の秒針が大きく聞こえ始めてきた。
その場に居る全員が、まるで目に見えぬ恐怖に襲われているかのようだ。
「来るなら…来い。」
皆の鼓動が最大限まで高ぶった。

そして…




そして奴らは現れた…!




「さあ、そろそろ始めようか。」
どこからともなく声が響いた。
直後、爆音。
鉄の壁は崩れて大きな穴を開け、中のコンクリートが剥き出しになる。
だが爆発で立った煙で大半のAA達、否隊員達は状況を把握できていない。
そのせいだろう、その場に居る隊員達は慌てふためいている。

否、二人は違った。
「また会ったなギカにコミ。」
エギレは煙に向かって…
否かすかに影が二つ。

…煙が晴れた。


「君達も来てたんだ。まあ居ないと面白くないしね。」
白いハットを被り、羽を生やした橙色のギコ族のAA。

「けど正直マンネリ化してるけどね。」
前髪を生やした桃色のしぃ族のAA。

そう、この二人こそ…

「何をしている。早く奴らを消してしまえ。」
どうやら時間は一瞬の休息も許してはくれないようだ。
隊長の言葉に隊員達は戦闘態勢に入る。
だが…時既に遅し。

気が付けば皆の視界は奪われている。
だが今度は煙によるものではない。
眩しい。
隊員達はもう何が何だか分からないといった状態だ。


「ガシャン」

否、やはり二人は違った。
皆が気付くと光の源は粉々に砕けていた。
エギレの一発の銃によって。
だが…
「…やられた。」
その輝きが静まった時には宝と共に二人の影は消えていた。



「今日も大した事なかったね。」
先程エギレ達が歩いていた廊下だろうか、そこを二人が走っている。
気持ちだが先程よりも明るく感じる。
二人の軽い足取り

…が止まった。
二人の目の前に隊員が数人。
ならば…倒すまで。
二人は武器を取り出す。
ギカは刃先が鋭く光させているボウガン、コミは魔力が満ち溢れているロッド。
どちらもかなりの殺傷力がありそうだ。
そして二人はほぼ同時に攻撃を放つ。


刹那、倒した。

だが…



「もう逃がさん。」
さいたま族のAA、あの隊長だ。
どうやら追い付かれてしまったらしい。
と、直後突然さいたま砲を放つ。
どうやら話す隙も与える気はなさそうだ。
そして…爆音。
予想以上に威力は大きい。煙の量も半端じゃない。
こんなものを喰らったらひとたまりもない。
考えるだけでも身の毛が弥立つ。
徐々に煙が晴れていく。


「馬鹿な…。居ない。」
ある筈の姿が…ない。
二人は姿を消していた。
だが一体どこへ…。同じ疑問が皆にも過ぎる。
冷酷な隊長の感情も乱れ始めている。
「とにかく奴らを探せ。まだ遠くには行ってない筈だ。」
威厳のあった声もいつの間にかどなり声へ…。
そして一列の群れをなしていた隊員達は四方へと散らばっていった。
気付けばそこには兵士が二人…

否、兵士ではない。


「どうして誰も気付かないんだろう。」
笑いを堪えるコミ。
決して隊員達が間抜けな訳ではないのだが。
「さあ、さっさとここから出よう。」
一方ギカは冷静だ。
そして二人は出口へ走り出そうとしたが…

「おいおい、まだやり残してる事があるだろ。」
立ち塞がる二人のAA、ダブルサンダー。
「流石君達はちゃんと学習してるね。」
「あぁ。お前らとは長い付き合いだからな。」
二人は言葉を交わし、そして武器を取り出す。
ギカは先程のボウガンを握る。
一方エギレの武器。
剣…だが形がギザギザしている。まるで雷を描いたかのようだ。
否、実際に電流が流れている。
らぃも武器を取り出した。
剣が二つ。二刀流だ。
エギレと同様剣には電流。
コミはギカと同じく変わらずロッド。
二人と二人は戦闘態勢に入り、睨み合う。

そして…


戦いは幕を開けた。



先手を切ったのはエギレだった。
一歩踏み込んだかと思うと電気の衝撃波を放つ。
だがその程度ではギカは動じず。
そしてボウガンを衝撃波に狙いを定め、放った。
ぶつかり合う互いの衝撃。

小爆発。
共に「ガシャン」とガラスが割れる音。
煙でよく見えないがおそらく蛍光灯が割れたのだろう。
だがエギレもその程度では怯まない。
ギカ目掛けて煙の中に突っ込むエギレ。
ギカはそれを察し…剣を取り出した。
魔力だろうか、剣に秘められた力が蒼白い光となって表れている。
そして、受け止めた。
「君も大分強くなってきたね。」
「お前を倒す為ならどこまでだって強くなる。」


一方コミとらぃ。
こちらも激しい戦いを繰り広げている。
らぃはエギレと同様先手をきる。
コミはすかさず先程と同様、ロッドからエネルギー弾を放つ。
が、弾かれた。
間合いが詰まる。
そして、片方の剣を振り上げた。
その剣はコミ目掛けて…

…止まった。
なぜか。らぃはすぐ察した。
バリアだ。コミは秘かにバリアを張っていた。
そしてコミはらぃに出来た隙を見逃さなかった。
近距離から再びエネルギー弾。
攻撃がヒットし吹き飛ぶらぃ。
そして地面に倒れる。が、らぃに傷はない。
どうやらもう片方の剣で攻撃を防いだらしい。
「流石は二刀流。剣を二つ使うのとは訳が違うね。」
「当たり前だ。俺はこれでここまで上り詰めたんだ。」



そして四人の戦いは更に激しさを増す…と思われたがとんだ邪魔が。


「お前ら…いつの間にここに。」
これだけ激しい戦闘だ。誰かが騒ぎに気付いてもおかしくはない。
「どうやらこれ以上長居は出来なそうだね。」
そう言うとギカはカードを取り出した。
見覚えがある。先程の光の源だ。
先程と違いカードからは蒼白いほのかな光だけが放たれている為よく見える。
と、それを見た隊長。
「馬鹿め。何度も同じ手が通用すると思ったか。」
「違う。あれは」

エギレが言い返そうとした時、やはり既に遅かった。
だが光ではない。
カードから物凄い風が吹き出している。
更にそのカードを…ギカが剣に取り込んだ。
そしてギカが剣を一振り。
同時に巻き起こる物凄い強風。
その強さは手すりにでも掴まっていないと吹き飛ばされそうな位だ。
案の定木の葉のように宙へ投げ出される隊員達。


「ギカ、あの壁を破れば外へ出られる。」
そんな隊員達を尻目に二人はいよいよ外へ。
「言われなくとも。」
ギカは廊下の壁にボウガンを連射する。
壁が崩れた。
蛍光灯の光とは違う、日の光。
外を見渡すと大きな砦が。
二人は今、その大きな砦から脱出しようとしている。
二人は穴の前へ立つ。
下を見る。自分達が高い場所に居ることが分かった。
するとギカはまた先程のカードを取り出す…と見る見るカードが大きくなっていく。
その大きさは二人が優々と乗れる程の大きさだ。
そして浮遊しているカードに飛び乗る二人。

カードは二人を乗せたまま宙を舞い、空へと飛び立っていった。
脱出成功だ。

だが、どうやらまだ終わらせてはくれないようだ。



「逃がさないと言った筈だ。」

誰かが近付いてくる。
…隊長だ。あの強風を抜けてここまで追ってきたらしい。
そしてさいたま太陽は元々浮遊の力を持つ。
「空の果てまで追ってくると言う訳か…。」
「そう言う事だ。それにここなら遠慮なく戦えるしな。」
そう言うと隊長はさいたま砲を…五つも取り出した。
一つでもあの威力だ。五つなんて言ったら想像もつかない。

だが、それでも彼らは戦うしかない。
この砦最後の戦いが幕を開けた。


隊長はさいたま砲を放ってきた。五つ同時に。
二人は攻撃を受け止める。が、流石に一度に五発も放たれれば防ぎきれない。
防ぎ切れなかった攻撃は飛び回って何とかかわす。
だがこのままでは一方的に攻められ、いずれやられる。
だがギカはやはり冷静だ。
ギカはまたあのカードを取り出した。
そして…なんと敵の方へと突っ込んでいった。
「馬鹿か。無謀にも程があるぞ。」
隊長は再びさいたま砲を放つ。
そして無情にも二人にヒットしてしまう。


「シン…」


不発…否違う。
当たっていない。
カードに吸収されている。

隊長の放ったさいたま砲は、ギカの持っていたカードに吸収されていた。
だが隊長がその事に気付いた時には…もう間合いは詰まっていた。
そしてギカは隊長にそのカードを貼り付ける。
そのカードからは物凄いエネルギーが。
そして…



「ドォン!」



…終わった。

辺りは一変して静まり返る。
コミは「ふぅ…」と軽く溜め息。
「終わったね。帰ろう。」
ギカがそう言うと二人はゆっくりと砦を離れていった。




彼らの戦いはもう始まっている…。





第二話 孤独な戦士

砦を離れてもう随分時間が経つ。
二人はカードに乗って夕焼け色に染まった空を飛んでいる。

それから暫く経つ…とコミが口を開く。
「ギカ、付いたみたいだよ。」
どうやらアジトに着いたようだ。
否アジトには見えない。
至って普通の、寧ろ少し豪華な位の家だ。
強いて違う所を言うとしたら、周囲に民家はなく木々に囲まれている、という事位だ。
カードはゆっくりと下降を始める。
そして二人は地へ着いた…と思うとカードが元の大きさへ。
実に良く出来ている。
ギカがカードを手に取り二人は家の中へ。


内装も普通の家と至って変わりはない。
外観と同様、寧ろ豪華だ。
コミは疲れたのかすぐにソファーに身を委ねる。
一方ギカは…地下へと降りていく。
右手に握られているサン・クリスタルを持ったまま。
コミは一瞬横目でそれを見るが、すぐに視線を元に戻し目を閉じる。

ギカが階段を降りる音が「トコ、トコ…」と辺りに響く。
普通の家と変わりはないとは言ったが、地下のある家などそうはないだろう。
そう、ここが彼らの…


「パタン」
強さの鍵だ。

目の前に広がったのは実験場。
「さてと、早速始めようか。」
ギカがサン・クリスタルを見ながら一言。
実験場はそれなりに広い。ギカは数歩歩く。
と、目の前には見たこともないような装置。
そこにサン・クリスタルを置いた。
そして装置は動き出す。

変化はすぐに表れた。
サン・クリスタルが…なんと文字列と化していく。
何とも不思議な光景だ。
と、ここでギカが剣を取り出した。
ギカがその動作をしている間、サン・クリスタルは完全に文字列と化していた。
そして…輝き始めた。
光り輝く文字列。綺麗と言ったらおかしいが、目を奪われるものがある。


「さあ、来い。」
言葉と同時に取り出した剣を光へと近付けるギカ。
すると…文字列が光と共に剣に取り込まれていく。

そして剣は文字列を完全に取り込んだ。
数秒後に光も消えた、と思うとそこから表れたのは…炎をまとった剣。
その炎はサン・クリスタルを取り込んだことを証拠立てていた。
「なかなかじゃん。」
ギカはそう言いながらその剣を適当に振る。
剣から放たれている炎が残像のように燃え映った。
同時に辺りがほんのり暖かくなる。


「あ、もう終わったんだ。」
先程までソファーで寝てたコミがやって来た。
ギカは「この通り」と炎の剣をコミに見せる。
それを見たコミが一言。
「じゃあそろそろ行きますか。」
その言葉にギカは笑顔で返事を返す。

「パタン…」

二人は階段を駆け上がり家の外へと出ていった。



夜。
削除人らしきAAが三人。
懐中電灯片手に草木が茂る草原を探索している。
「確かにここら辺から荒らしの反応があったんだけどな…。」
どうやら近くに荒らしが居るらしい。
だが荒らしはどこにも…

否、居た。
三人の背後に…。


瞬間、一人の削除人を地面から現れた何者かが襲った。
言う間でもなく荒らしだ。
その削除人は吹き飛ばされ地面に倒れた。
他の二人の削除人が駆け寄った時には既に意識は無かった。
そして内一人が荒らしの方へと視線を移す。

「何だこいつは…。」
削除人の見た先には荒らしと思われる八頭身が居た。
だが普通の八頭身ではなかった。
家一件分あるかと言う程に大きく、更に鎧のようなものを着ている。
普通の荒らしではまずありえない。
だがここで逃げては削除人の名が廃る。
一人の削除人が銃を取り出し八頭身に向けて撃った。
攻撃はヒットした。
だが…効いてない。
それに追い討ちを掛けるように八頭身は撃ってきた削除人を吹き飛ばした。
そして一人目と同様地面に倒れる。
おそらく銃に反応したのだろう。
銃を撃たなければ反撃を喰らうことも無かったのかも知れない。
だが削除人達の誇りはそんな事で揺らぐ程安いものではない。
そんな事はお構いなしに八頭身は最後の一人となってしまった削除人に目をやった。

絶体絶命。



「これ以上削除人には手は出させない。」
どこからともなく響く声。
声の先には炎の剣を持ったギカが立っていた。
そして削除人の方を向き一言。
「君達の勇姿、無駄にはしないよ。」

と、余所見をしている暇はない。
八頭身は声に反応したのか炎に反応したのかは分からないが、ターゲットを変更する。
標的は勿論ギカ。
そして八頭身は拳を繰り出してきた。
だがギカが動じることはない。
そして…その拳目掛けて跳んだ。
ぶつかり合う剣と拳。
闇夜に振られた炎の剣の残像は一層綺麗だ。

「ジュワ…」
…溶けた。

炎の剣が八頭身の拳に嵌められていた鎧の一部を溶かした。
これには八頭身も参ったのか呻き声を上げる。
その声は炎の剣の殺傷力を物語っている。

そう、これが強さの鍵の力。

「じゃあそろそろ止めだ。」
ギカは八頭身の怯んだ隙を見逃すことはなかった。
再びジャンプ。先程よりも勢いよく。
と、剣から放たれている炎のエネルギーが増していく。
炎のエネルギーは最高潮に。
そして…


八頭身の胴体目掛けて炎の剣を振った。



真っ二つ。

そして爆発した。
立ち込む煙が晴れるとそこにはギカと八頭身であっただろう文字列の残骸が。


と、そこへ戦いをじっと見ていたコミが駆け寄ってきた。
「どうだった使い心地は。」
コミの問いに…
「まあまあかな。」
そう答えた。
十分凄いようにも見えるが…。

そんな会話を済ませた後、二人は文字列の残骸へと目をやる。
まだ多少の煙が立ち込めている。
と、ギカが何かを見付け残骸の方へと小走りで行く。
コミもすぐに後を追う。
そして二人はとある所で足を止めた。
「これか。」
二人の目の先には見たこともない形をした文字が。
その文字が凶暴な荒らしを生み出した原因らしい。
そしてギカはその文字を手に取る。

「じゃあ帰ろうか。」
暫くしてコミがそう言う。
そして二人は先程まで戦場だったその場から姿を消した。


その様子を一人の削除人がただ呆然と見ていた。
そして呟く。
「まさかあれが噂の…」




華麗な技で宝を盗み、その宝を武器に変えて荒らしを倒す。
そして奴らはいつしかこう呼ばれるようになった。
「…怪盗救世主。」

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