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Brothers Story ~俺らの物語~ (E)

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
          異世界に迷い込んだ俺らの話―――



 俺は兄者。いや、ニックネームだけど本名で呼ぶ人は少ない。

 姉が一人で、弟、妹が一人ずついる。特に、弟の弟者――これもニックネーム――とは毎日一緒にいるくらいの仲良し――― とも言えないけど、比較的一緒にいる。

 二人で何をやっているかというと、去年話題になった『電車男』もやっていた掲示板、『2ちゃんねる』だ。

 だが、書き込みはしない。いつも叩かれるということもあるけど、俺は皆が紹介する画像を見るのが生き甲斐なのだ。

 たまに、『ブラクラ』と呼ばれる悪いページが見つかることもある。だが、俺はめげずに『ブラクラ』に戦っている。ふふん、かっこいいだろ。

 そんな俺らを皆は流石兄弟と呼ぶ。

 それは、俺がブラクラを取った時、つい言ってしまう口癖。

 『流石だよな、俺』、もしくは『流石だよな、俺ら』

 からきたものだ。



 こんな感じの、平凡な日常が今日も来る――― はずだった。


---------------Brothers Story-------------

プロローグ 何気ない日常


 その日は、朝日が眩しい晴れた日だった。まぁ、外には滅多に出ないから関係ないがな。

 七時頃起きて朝食を摂る。食の細い俺には食パン一枚で十分だ。他の家族も続々と起きてくる。弟者は俺より早く起きていて、既に食後のコーヒーを飲んでいた。

「ごちそうさーん」

 まだ口にパンの欠片が残っているというのに、俺は適当に食事を終える。食後のコーヒーも面倒臭い。俺は自室へ向かった。

 勿論、『2ちゃんねる』をやるためだ。

「今日はどんな画像があるか……、楽しみだ」

 薄く微笑を浮かべ、俺は階段を登る。だが、下から聞こえてきた声で、俺は一瞬歩みを止めた。

「兄者ー、またPCかー?」

 聞き覚えのある声。当たり前だ、自分の弟が発した声なんだから。

「当たり前だ。PCなくして俺はなし」

 俺はもう登るのを再開していた。大して長くない階段は、すぐに俺を自室へ導いてくれる。

 その自室で、あんなことが起こるのを――― 俺は、知る由もなかった。

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「OKブラクラGET。流石だよな、俺」

「今日十二回目だぞ……。もうやめろよ」

 それから六時間。結構やってる、とか思う奴もいるだろう。今は昼の一時。普通の奴なら飯時、だが、俺は関係ない。画像、特にソニンタンの画像を見れるなら、六時間でも十二時間でも二十四時間でもやってやる。

 色々な板を周ってみたが、当たりよりブラクラの方が少し多い。だが、俺はめげない。

「さて、次はこのスレだ」

 適当にクリックしたスレッド。これが、俺を異世界へと迷い込ませる、引き金となった。

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「ふむふむ……、当たりと見られるものは……」

 俺は長年の勘で、ブラクラなどの区別がわかる。じゃあなんでブラクラに嵌るか? それは、狙ってやってるんだ。

「これは!? 凄く良さげな気配!」

 そのうち、俺は一つのアドレスに目を留めた。長年の勘からして、どうやら本物らしい。だが、弟者は。

「ブラクラだって……。やめとけよ」

 相変わらずの苦笑いで、俺を見下したように見る。

「むっ!? 俺の勘を信じないのか!? よし、見てろ! 絶対画像だ!」

 俺はこの時、弟者の忠告を聞いていれば、と後悔することになる。そうなることも知らずに、俺は自信満々でクリックした。

 目には、待望の画像が飛び込んでくるはずだった―――

「うわっ! 何で……!?」

「眩しッ! 光が……!」

 途端に俺らは目をきつく瞑った。そうしないと、目の前から溢れる光に押し潰されそうになるから―――

 そのまま、俺らは意識を失った。

              * * * * *

第一章 謎の世界


 何かが蠢くような音で、俺は目覚めた。凄く気分が悪い。船には乗ったことはないが、このようなものが船酔いなんだろうと察知できる。

「うぅ……ん……?」

 小さな呻き声を出し、ゆっくりと立ち上がる。そして、周りを見渡して俺は絶句した。

「ここは……?」

 なんと言えば良いのか判らない。

 周りは、まるで映画に出てくるような世界だ。どのような映画かというと、宇宙の映画とかに出てくる――― 全てが機械になっているとでも言えば良いのだろうか。

 電気の回線のような物が、壁を伝う。薄く輝くその光は、まるで虹のようだ。

 ふと俺は隣に弟者が倒れていることに気づく。

「おい、弟者」

 適当に揺すってみると、弟者はすぐに目覚めた。俺と同様、気分が悪そうで頭をぶんぶん振り回している。

「時に兄者、ここはどこだ?」

 そのままで聞いてきた弟者に、俺はさあな、と曖昧に答える。大体俺にそんなことが判る訳ないのだから。

 今まで通り、体はAAのまま。つまり俺ら自体に変化はない。

 ということは。

「あのアドレスをクリックしたらこんな事になったんだよな?」

「だな。……画像だと思ったんだけどな」

 俺が言った途端、弟者が呆れたような表情で俺を睨む。悪い、と笑いながら軽く呟いた。

 が、俺は一気に表情が硬くなる

『シンニュウシャ、ハッケン! タダチニハイジョセヨ!』

 こんなのはよくアニメで出てくる。感情の無い機械の声、それは俺の真後ろから聞こえた。

 振り向くと、丸い鉄の塊が空中に浮いている。いや、飛んでいるといった方が判り易い。腕が二つ設置されており、中心にある目は――機械に目があるのかは判らないが――不気味な赤い光を帯びていた。

「なんだ?」

 弟者が聞く当ても無く言う。だが、なぜか答えが帰ってきた。

“フフッ。僕のエリアに入り込んでくるとは、馬鹿な奴がいたものだ”

 異世界らしき所なのに、なぜか聞いたことのあるような声が響く。

 それを発している所を考える間も無く、俺は思い出した。

「モララーか!?」

“その通り。僕はこの電脳世界、『ディーガ パラノイド』を支配しているモララーさ”

 彼は少し驚いたように答えたが、声の主、モララーはすぐに平然とした感じでいるようだ。それより気になったのは、彼の台詞からはいつもの誠実さが感じられない。

 そしてもう一つ、彼の言った言葉、電脳世界。『ディーガ パラノイド』。本当に変な所へ来てしまったようだ。

「モララー! どうでも良いが、何でお前がこんな所―――」

“この僕に『お前』だと? 口を慎みたまえ。……見たところ君達はユーザーのようだ。管理プログラム、こいつらを『電脳獄』へぶち込んでおけ”

 俺の質問は一方的に却下された。そのまま、モララーの声は途絶え、代わりに先程現れた鉄の塊、管理プログラムが動き出す。

『サァ、オトナシクスルンダ!』

 この声を聞くと胃が痛くなる。だが、俺は大人しくした。

 なんせ、相手は機械だ。俺らに勝ち目は無い。それは弟者も承知したらしく、俺らは両手を挙げた。

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 無理矢理連れてこられた場所は狭い個室だった。機械が入り口の横に設置されたボタンを押すと、入り口の部分が一瞬光る。

 そして、投げ入れられたかのように入れられると、機械はまた同じ所のボタンを押した。

 その直後、また入り口の部分が一瞬光った。何となくだが、この世界を見て考えると、電磁波か何かを張っているんだろう。

「ったく、どうなってんだ?」

 弟者は少しぶつけてしまった左手を摩っている。

「ここは、全員牢獄に入れられる、ってか」

「そうでもないぜ」

 何となく呟いた俺の言葉に答えが返ってきた。また機械か、と俺らが振り返ると、そこにいたのは機械でもなんでもない、そして見覚えのあるAAが三人。

「ギコ!? それにモナーとしぃ!?」

 目の前に立っていたのは、まだ幼さが残る少年らしい顔をした青いAA。あと、細い目の下に薄い微笑を浮かべた白いAA。そして、可愛らしい顔をした桃色のAAが立っていた。

 全員、近くに住んでいる俺らの親友だった。

「えっ? なんで私達の名前を知ってるの?」

 なのに、しぃは驚いたような表情になる。俺らも口をぽかんと開けていた。

「初対面モナよ? ユーザーはプログラムの名前までお見通しモナ?」

 モナーもいつもの口調のくせに首を傾げている。何か変な嫌がらせではなく、全員俺らのことを忘れてしまったようだった。

「あぁー! どうなってんだこの世界は!? モララーには取り押さえられるし、俺らはユーザーとか何とか言ってるし!」

 いつも冷静な弟者が、何か弾けたような声を出す。俺はそこまでいかず、ただただ唖然とするだけだ。

 彼らもぽかんとしていたが、すぐに表情を硬くした。

「君達もモララーに捕まったモナね……」

「糞ッ! モララーの奴!」

 何故かモナーはしんみり、ギコはムカッとした表情になる。二人ともモララーのことについて言っているようだ。

「お前達、モララーのことは覚えてるのか?」

「覚えてるも何も、モララーは俺達の親友だからな」

              * * * * *

第二章 プログラムとユーザー


「フフッ、ユーザーまで出てくるとは……。面白くなってきたね」

 暗い研究室のような所。壁は機械で張り巡らされている。先程、流石兄弟が倒れていた所と似ていみたいだった。

「電脳世界全てが僕の手に入るのも、そう遠くないはずだ」

 奥のほうに見える机。そこに座っているのは黄色い体をしたAA。彼は不気味な笑いを口元に出している。まるで、何かを持て余しているかのようだ。

 彼はモララー。流石兄弟やギコ達を捕らえたAA。

「しかし、ユーザーは侮れません。『フィルセイバー』を抜く力を持つ者……、それがユーザーです。あれは、この世界の住人――― 私達でも抜くことが出来ないのですから……」

 その後ろに立っている黒いコートに身を包んだ男。そのような者が全部で四人立っている。

 それぞれ、コートに付けられているフードに顔を隠していた。つまり、顔を確認できない。だが、周りの空気が明らかに違った。

 何か邪悪なオーラが、彼らを包み込んでいる。

「フン……、そうか。君達もありがとね。僕らのために働いてくれて」

 その彼らに、モララーは半分振り向き、微笑を見せる。全員、何か邪悪な気配が感じられた。

「けどねぇ、だから僕は面白い、と言ったんだよ。だって、そうすればその力が僕の手に入るじゃないか」

 元々微笑を浮かべていたが、それ以上にモララーは口元を歪めた。そこから白い歯が覗かせる。

 黒いコートの男達、その中心に立つ男が鼻で笑った。

「怖いお方だ。……では、すぐに手配しますか?」

「いや、まだいいよ。まだ……ゲームは始まったばかりなんだから……!」

 その後、彼の哄笑が暗い部屋に響き渡る。最初は小さく、だんだん大きく。

 まさに、恐怖とはこのことなのだろうか。

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「やっぱり、そうか」

 俺は平らな壁に寄りかかった。何か起動しないか心配だったが、牢獄にそんな機械を入れるはずがないだろう、と気にしないことにする。

「うん……。よく遊んでたのに突然。何度か声をかけても返事をしなくて……」

 桃色のAA、しぃは悲しげに俯いている。

「一度抗議したらこのザマだ。二週間ぐらい前だったか」

 ギコも腕を組んで言う。親友に裏切られた悲しみは大きいだろう。俺達も、ギコ達に忘れられたと思った時はとても悲しかったから。

 だが、俺は少し考える。

(ここは電脳世界……。つまり、現実世界じゃないってことか)

 短い思考の末、思い切って聞いてみた。

「なぁ、もしかしてお前らプログラム?」

 意を決して出した言葉は、本当だったらかなり失礼な言葉だろう。案の定、弟者が口を挿む。

「馬鹿! 何聞いてんだよ! んな訳ないだろ!」

 だが、モナーは平然と俺の待っていた言葉を口に出した。

「いや、モナ達はプログラムモナよ。モナ達だけじゃなくこの世界にいるほとんどの住人は」

 弟者はかなり驚いていたが、俺は何故か納得した。だったら、俺たちのことを知らない訳、この世界がこうなっている訳も収まりがつく。

 兄者は頭を抱えているが、俺は小さく呟いた。

「俺達は、電脳世界に迷い込んだんだ」

 そうしか、言いようがなかった。

 ふと見ると、しぃが少し考え込んでいる。目を閉じて下を向いていたが、やがて顔を上げた。

「貴方達ならこの危機を救えるかもしれない……!」

 しぃの顔は煌きに満ちていた。他の二人も同意したかのように頷く。

「危機? モララーのことか?」

 俺が聞くと、三人は再び頷いた。

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 鉛色の機械が壁、天井の全てに張り巡らされている。一応、電気はあるようで、少し明るみを帯びている。

 長い廊下だろうか。そこを四人の黒いコートを纏った者達が歩いている。

「なぁ、ゼルナス! いつになれば奴の言いなりから解放されんだよ? 五月蝿くて堪らねぇ! あぁー、ウゼぇ!」

 少し体格の小さい――他の者達が大きいため小さく感じる――者が、先頭を歩くものに問う。

 荒い声からは男性だと判る。小さい体ながら、敏捷性は優れてそうだ。

「バクセル、ここは奴のエリアだ。そのような口を聞くと、何をされるか判ったもんじゃない」

 先頭を歩くものの代わりに答えたのは、その後ろを歩いていた者。

 しっかりとした体格からは、相当な力の持ち主であることが確認される。声も低く、こちらも男性だろう。

 バクセル、と呼ばれた男は、ちっ、と舌打ちをする。

「どうでもいいけどさぁ……、俺、荒っぽいことは苦手だからな。ゼルナスが言っても、ザルギンが言っても、荒っぽいことはしないからな!」

 頭の後ろに手を組み、少年染みた言語を使い言葉を発したのは、一番後ろを
歩いている者だ。

 そうは言っているものの、体格も比較的しっかりしており、荒っぽいこと――つまり戦闘――が苦手とは思えない。

「ゲミックス。その願い空しく、戦闘は起こりそうだ」

 そして、初めて声を出す。それは、先頭を歩いていた者、ゼルナスだ。

「奴の役目が終わったらな」

 見難いが、フードの下から見える口元には不気味な笑みを浮かべていた。

             * * * * *
 
第三章 牢獄からの脱出


「危機を救うって……、何で俺らが? ここには……、自衛隊かなんかいないのか?」

 俺の質問に、しぃは首をゆっくりと横に振った。

「確かに、ここには『Phantom』と呼ばれる四人で構成された人達がいるわ。エリアの安全を護ったりしているんだけど、彼らは―――」

 途中でしぃは口を噤んだ。何か言いたくないことでもあるのだろうか。俺は無理にでも聞く、ということはしなかった。

 どちらにしても、ギコが続きを言ってくれた。

「奴らはモララーについているんだ。だから無駄なんだよなぁ。―――そういや、あの時だったっけ? モララーが変わったの」

 ギコが二人を見る。だが、二人は寂しい表情をしていた。その時、初めてギコは気づいたらしい。彼らにこのことを話すと、悲しくなってしまうことを。

 ギコは詫びるように頭をかき、こちらを向き直した。

「ん~、まぁとにかく、お前達に頼みたいんだけど」

 ギコは電磁波の張られた入り口を見やった。

「あれをどうするかだよな」

 顎に手をつけ、ギコは考え込む。寂しい表情をしていたモナーとしぃも、色々考え込んでいた。

 電磁波は、見えない壁を作り上げている。特殊な電磁で出来ているようで、プログラムである三人でさえどうにもできないらしい。

 弟者もうーん、と頭を抱え込み、唸っていた。

「電磁波、ねぇ……」

 そのまま通り抜けることも出来そうな電磁波の壁に、俺はゆっくりと近づく。よくよく見てみると、数十枚の電磁パネルが張り巡らされているようだった。

(……ちょっと、触ってみるか)

 冒険気分で、俺は電磁パネルに手を近づける。

「っ!」

 突如、激しい痺れが俺の神経を揺さぶった。顔を顰めたのも一瞬で、俺はそのまま倒れる。意識も、遠のいていった。

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『お前が……、俺の半分か』

 遥か遠く、いや、もしかしたら耳と口が重なってしまうほどの近くかもしれない。そこから聞こえてきたのは、何故か懐かしい声だった。

―――……誰だ?

 目がはっきりと開けられない。だが、気配だけでそれが俺以外の人物だとは察知できた。喉の深くから振り絞った声で、声に問いかける。

『プログラムとユーザー……。あまり変わりはないみたいだな』

 声は答えなかった。どうやら、声は一方的に話しかけているだけのようで、俺に回答権はないみたいだ。

 プログラムとユーザー……。あの世界でもよく耳にした言葉を、声も発した。勿論、意味とかが分からないわけではない。

 プログラムと言うのは、パソコンとかにある電子系のデータで、ユーザーは特定のものを使う人の事を指す、はずだ。

『お前はどうなんだ? 俺を……感じているのか?』

 その思考が中断された。声は、俺に問いかけてきたのだ。さっきの声は聞こえなかったはずだったのに……。

 それに、質問の内容の意味をちゃんと理解することは出来なかった。そういえばさっきだって、『俺の半分』とか『変わりがない』とか言っていたことを思い出す。

 『俺を感じているのか』、と言われても、それが誰なのか判らなければどうしようもなかった。

―――……誰だ?

 もう一度問いかける。今度の問いは、明確に発せられていた。

『俺か? やっぱり忘れてるのか。……俺は……、お前の―――』

 突如目の前が眩くなる。声も最後の言葉を言った直後、それと連携して聞こえなくなった。声の気配も消え、全てが無に帰ったような気もする。

 俺の意識も、いつの間にか消えうせていた。

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「―――に者! 兄者! しっかりしろ!」

 はっきりとした感覚の中から、聞きなれた声が聞こえる。

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