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ホ タ ル (フェークファー)

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匿名ユーザー

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プロローグ

ドガーン・・・ドーン・・・ドドーン・・・
「くそ。砲撃が激しくなってきたな・・・」
「あなた。早く逃げないと・・・」
「そうだな・・・。うかうかしてると俺たちも撃たれる。」
戦地の中をある一家は逃げていた。
どこにでもいる普通の一家なのだが

時はXX45年。第二次荒らし大戦のさなか。
大モララ帝国はモナ合衆国率いる連合軍と戦っていた。
しかし、圧倒的な兵力をもつ連合軍の前に大モララ帝国は連敗を続け
ついに連合軍は大モララ帝国に上陸。落日の時を迎えていた。
その一家の主は医者で2歳の娘を抱えていた。
医者として診療所を開いていたが 戦火は激しくなり今は逃げ惑っているところだった。

「ねえ。あの洞窟を見て・・・」
河の近くにあるその洞穴は河原に面していた。
「よし。ここに隠れよう。野蛮なやつらもこれには気づくまい。」
そしてその一家は洞窟に身を隠した。

その洞窟はもうたくさん人が逃げ込んでいた。
なんとか空間を見つけそこに腰を下ろした。
砲弾の音や爆発は外はまだ続いている。
「いつになったらこの戦争は終わるのだろうか・・・」
広い洞窟の中には誰かの赤ん坊の泣き声が聞こえ
怪我をして、息も絶え絶えな人たちの荒い呼吸の音
そういったものが響いていた。

外で見張りをしてる銃を持った人が突如言い出した。
「誰か来る」
みなは息を潜めた。赤ん坊も泣くのをやめた。
遠くに軍靴の音が聞こえ誰かがやってきた。
見張りをしている人はその軍はモララ軍だといった。
見張りをしている人は出て行ってその人たちと話し始めた。
「今すぐこの壕を譲り渡せ」
「いや。残念だがここは助かった人たちでいっぱいだ。あなたたちの入るスペースはない。」
「だめだ。そういうわけには行かない。俺たちは皇軍なんだぞ。」
「いや。だめだ。」
「うるさい!お前は!」
一発の銃声
話し声は聞こえなくなった。
「出る気配がないな。奴らは皇帝陛下の裏切り者だ。
 よし全員外の河原に連れ出せ。」
「はい。」
颯爽と兵隊たちは洞窟に入っていた人々に銃を突きつけ
外の河原まで寄せた。
人々は2列に並ばされ兵隊が4人、銃を構えていた
「何をするつもりなのあなたたちは・・・」
「いったい何をするんだ。」
「うるさい。皇帝陛下の行軍に従わなかった罰だ。」
そういうとその中尉は手をまっすぐ振り下げた。
とたんに当たりは銃声と悲鳴に満ち溢れその医者は伏せた。
やがて銃声もやんだ。
「よし。はやく逃げよう。」
「はい。」
軍靴の音はやがて遠くなりついに聞こえなくなった・・・

何時間がたっただろうか。
その医者は不意に起き上がった。

「・・・!」

「俺は生きている・・・」

「・・・!」

「おい椎子!」
しかし彼の妻も娘もすでに冷たくなっていた。
彼女たちの体を3発の銃弾が駆け抜けていた。
「くそ!なんてひどい人たちなんだ!」
あたりは血の気と清流の音で満たされていた。
しかし。なぜか誰かが泣く声がする。
その医者は不思議に思って惨殺遺体を眺めてみると
一人赤ん坊が泣いていた。
「こいつも助かったのか・・・」
しかし親はその子を握ったまま死んでいた。
「ここで野垂れ死にするのもかわいそうだ。しょうがない。連れて行こう・・・」
すでに日も沈み清流は蛍があちらこちらでほのかに光っていた。
「こんな死の現場でも蛍は輝いてるんだな・・・」


その五日後、大モララ帝国首都モララランドは陥落して第二次荒らし大戦は終結した。
それからのモララ共和国はモナー合衆国の指導下。民主的な政治をスタートさせた。
あの惨殺事件は誰も知るはずがない。
しかしそれは10年後。新たなる形で復活したのだった

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第一章 闇夜の煌き

モララ共和国は12年間でなんとか自主政権が置けるまでになり
モナー合衆国からの独立も果たした。
しかしこの村はそんな時代の流れなどあまり関わってこない
時と別の方向にいる。そんなのどかな村だった。
10年前の戦争の影もすでになくなっていた。

初夏の4時ごろ。みだらに広がるススキの中を少年たちは歩いていた。
「秘密の場所ってなんだゴルァ。」
ギコ12歳。彼とその友達のつー達は今あるところに向かっているのだった。
「すごいススキの畑だな。つー。俺たちはどこに行くんだ。」
「今にわかる。とにかくすごいところだ。」
「たしかここは茂名さんの私有地のほぼ中じゃない。入っちゃっていいの?」
「まぁ。優しい人だから許してくれるんじゃない。とにかく行こうぜ」
茂名さんは代議士で村の中でも一番の分限者だった。
彼の持っている土地は広くススキ畑の大部分であった。

やがてギコたちはススキ畑の中の小さな小川にたどり着いた。
「このあたりかな。そうだ。やっぱりここでいい。確か
 毬藻岩という岩もここら辺にある。」
「ここでいいのか?何も無いじゃないか。」
「日が沈んでからわかる。それまで少し待とう。」
ススキ畑の隙間から見える西の広大な山々の果てに太陽はゆっくり吸い込まれていき
東の空は蒼く青く染まっていった。
そんなのを見ながらギコは友人たちと話していたがやがて眠ってしまった。
・・・・・
「おい!おきろ!ギコ!」
つーの声が聞こえる。
ギコは目を覚ました。
すでに日は沈み満天の星が輝いていた。
しかし、その煌きは宇宙だけではなかった。
「目の前を見てみろ!」
ギコは首を向けてみた。
清流は眩しいほどに煌いていた。
ホタルであった。
何千何万ものホタルたちは
一つ一つが金剛石のように煌き
宇宙の大銀河を見ているようだった。
「す・・すごい・・・」
「だろ。上級生に教えてもらったんだ。」
その光は10分ぐらいにわたって煌き続けススキ畑を照らしていたが
やがてススキの中に吸い込まれるように消えていった。
ギコは持ってきたランプに火をつけた。
「もう帰ろう。ホタルも行ってしまったし。」
「そうしようか。どうだったギコ?感想をひとつ。」
「すごいな。ここは宇宙みたいだ。」
「だろ。今ここが一番すごいんだってさ。」
ギコたちは帰路を帰り始めた。

家に着くとなぜか家は看護婦の麗音さんさえもいなかった。
ちょっと暗い中、二階に上がりベランダから夜空を仰ぎ見た。
果てしなく広く目の前に広がりあの時見たホタルとは違う夜空
「自分って何だろう・・・」
何か考えた。
生まれたときは戦争中で戦争のさなか僕は生まれた。
親は生まれてすぐ亡くなってしまいお父さんが男手一つで育てた。
だからお母さんなんか僕は知らない。
「一体どんな親だったんだろう・・・」
実際僕は父さんとはぜんぜん似てない。
お母さんに似ていたともいえなさそうだ。
「一体なんだったんだろう・・・」
そのとき玄関のドアが開く音がした。
お父さんが帰ってきた。

父さんの名前は茂羅モラ夫。村唯一の診療所「茂羅診療所」の医者で
村ではかなり親しまれている。無口でおとなしく冷静な人だ。
お父さんは出かけがちなのでたいていつーの家に泊まりに行くことも多い
しかし、今日はお父さんは早かった。
「お父さん。お帰りなさい。」
「ああ。ギコか。台所にカレーライスがある。暖めるから少し待ってろ。」
そういって台所に行き数分後カレーを持ってきた。
小さめの診療所に何とか用意されていた6畳の居間でカレーを食べ始めた
しかし食べ始めて五分経っただろうか突然玄関のドアをノックする音が聞こえ始めた。
「来た。」
お父さんは突然言うと席を立ち上がった。
「お父さん。何が来たの」
「お前はそこで食っていい。俺が行く。」
そういって部屋を出て行った。
好奇心旺盛な年頃のギコは茂羅の後をついていった。

玄関のドアの外は大騒ぎになっていた。
ひたすらノックする音が聞こえ
「茂羅さーん。」と呼ぶ声まで聞こえていた。
茂羅は玄関のドアを開けて外に出た。
ギコはドアの隙間からそれを眺めた。
10人ぐらいの人が植木屋の小木さんのトラックの周りに集まっていた。
外はかなりの大騒ぎだった
「どうしたのですか皆さん。妙に騒いでいるようですが。」
人々は大騒ぎだったがあくまでお父さんは冷静だ。
茂名氏の家の家政婦のーがいてお父さんを見るなり喋り始めた。
「大変や。主人が撃たれたわ。大変や。」
「まあ落ち着いてください。いつ撃たれたんですか?」
「夕方。外の畑にいたとき突然撃たれたんや。ほんま大変や。」
「どうです。ちょっと見せてください。」
ギコも近づいて様子を見た
茂名氏はぐったりしていて体中に3箇所が銃で撃たれていた。
血がまだたくさん出ていてギコは気持ち悪くなった。
そんな中、茂羅は慣れた手つきで脈を測ってこう言った。
「いくらでも悪戯だと思ってたらついにここまできてしまったんや。」
「どうしてです?」
「たしか1ヶ月も前からや。〝殺す〟とか書いた紙がたくさん来たり
 ナイフが送られてきたり、車で出かけたとき後ろの車につけられたり
 さらにはこないだ部屋にいたときにナイフが飛んできたんや。
 警察もあまり関心がなく、言っても後でパトロールすると言って結局来ないんや。」
「とにかく茂名氏は脈が弱い。体中が撃たれたからか。急いで手術室へ。」
トラックから茂名氏をストレッチャーに動かし手術室に駆け込んだ。

第二章 手術室

完全に手術体制になったお父さんは手術室に入っていった。
僕はストレッチャーで患者を運び手術してに安置した
水槽のような手術室はよくわからない器具が並べられその中心に茂名氏がいた。
ギコが手術室から出るとこういう一言が聞こえた。
「術式開始。」
午後7時 お父さんは手術を開始した。

すでに9時になり手術が始まって2時間たった。
ギコは心配そうな顔をしたのーさんと二つ山を隔てた隣町の警部房木フサ朗と兄弟の流石巡査たちと待合室にいた。
「主人は大丈夫やろうか・・・」
のーさんが心配そうな口調で言った。
弟の方の巡査はそれに応じたように
「とりやえず。治ることを信じましょう・・・」
「あのススキ畑から狙われたんだな。あれほどパトロールしたのに・・・」
「たしかに脅迫状が来た日に俺はあのあたりを立ち入り禁止にしたぜ。」
「それなのに今日は隣町の本署に行ってたから張れなかったんだな。」
「ああ。まったく。少しでも張れる時間があったんだけどな。」
「おい。お前が少しでも言っていたら・・・」
「何が。お前だって。」
そのとき手術室のドアが開け放たれ父さんと麗音が出てきた。
「茂羅さん・・・主人は・・」
「手術は成功しました。途中心臓が停止しましたが何とか一命は取り留めました。」
「よかったわ。ほんまありがとうございます。」
お父さんは房木警部のほうに顔を向けた。
「警部さん。茂名さんはほんとあと一歩で死んでしまうところまできてたんですし
 精神的に恐怖を与える脅迫状まで来てたんですよ!今回は助かったからいいですけど
 次回またあったらもう助かりませんよ!」
「はぁ。私どもも犯人を調べていました。しかし、本当に何の手がかりもないんです。
 茂名氏は有望で親しみやすい人格の人でねだから思い当たる節がないんです。」
「しかし。起こってしまったのではどうしようもない。何か茂名さんを護る手段を考えてください。
 茂名さんは2週間くらいで退院できますから。」
「でも犯人はぐっと手に入るように捕まりますよ。相当な信念や恨みを持っている人以外は自責の念で
 ゆっくり崩壊していきますからね。しかもここはとてものん気な田舎町だ。噂はあっという間に広がって
 犯人が壊れていくのに追い討ちをかけますよ。こういうのはどうです。次に犯人が茂名氏を狙うとき
 そのとき私たちがそこで医者が患者にメスを入れるように鮮やかに犯人を捕まえてございましょう。」
「そうですか。じゃあ茂名氏の意識が復活したらそうお伝えください。」
「ではこれで失礼します。」
ドアを開けて房木警部は出て行った。しかし、数分するとまた戻ってきた。
「くそ。パンクしてやがる。この村の入り口の舗装されてないところを通ってきたからか・・・
 困った。タイヤの替えが無いし今夜はどうやらこの村にとどまることとなりそうだ・・・
 この村に旅館や民宿なんかはありますか・・・」
「ないですよ。去年引っ越してしまったんで。」
「そうですか・・・」
困った顔をした房木警部に父さんはこういった。
「どうせならうちに泊まったらいかがです。」
「え。いいんですか。」
「ええ。どうせ二人きりだけなのですから。」
「ではお願いします。巡査の二人と私は徹夜で茂名氏宅とこの診療所の付近をパトロールさせます。」
「大丈夫です。どうせこの診療所は夜になると閉じるし、手術室や病室は聖域だ。私がいる限り
 聖域には誰も触れはさせない。」
「そうですか。では…」

房木警部は泊まることとなった。
父さんに言われギコはお茶などを運んだり部屋を片付けたりした。
応接間のソファーに父さんと房木警部が座っていてなんか話していた。
ギコはそこにお茶などを運んだ
「ご子息さんですか?」
房木警部はお父さんに言った。
「はい。妻は生まれてすぐ亡くなってしまったのですが・・・」
「本当に利口ですね。」
「はい。それはどうも。」
房木警部は網戸越しに外の景色を見た。
網戸の向こうはホタルがまだ飛んでいた。
風で気がざわめく音が聞こえる
「本当にここはいい自然ですね・・・」
網戸を空けて二人は外に出ていた。
「警部さん。見てくださいよ。」
お父さんは言った。
「向こうのあの茂名さんの家のあたりのススキ畑の向こうに清流があって、
 そこに妻の骨が眠ってるのですよ。」
「はい。」
「10年前に死んでしまいましたが本当に優しい人でした・・・」
しみじみとお父さんは語っていた。
「いや。実に湿っぽい話になってしまいましたな。はは。」
「それでは私明日が早いんでもう寝ます。」
房木警部は二階へと上がっていった。
「お父さん。」
「なんだ。ギコ。」
「お母さんってどんな人だったの・・・」
「ああ。とても優しいいい人だったよ。ただ病気で亡くなってしまったんだ。」
「じゃあ何であの場所がいいといっていたの。」
「ホタルが見える場所がね、いいと言っていたんだ。あの人も喜ぶ。」
「ふ~ん。」
「お前が生まれてすぐのことさ。わかるはずがない。」
お父さんとギコはしばらくホタルを見ていた。

1週間後の夕方。茂名氏は全快し退院した。
退院するとき房木警部が来ていた。
「ご退院おめでとうございます・・・」
「本当にめでたくもないですな。警部。警察は一体市民を守る力はあるんですか?
 それにいつになったら俺の命を狙う悪魔を捕まえてくれるのですか?」
「護衛を二人つけてお宅を守ります。ススキ畑には犯人は入れさせません。」
「そんなもんどうでもいい。私は帰るぞ。」
茂名氏は迎えに来た車に乗ると家に向かっていった。
「さて。私はまだいろんな仕事があるのでそろそろ・・・」
夜7時ごろだったが房木警部が帰ろうとしたときお父さんは引き止めた。
「待ってください。」
「何です。」
「少し飲んでいきませんか。」
そういってワインを取りだした。
「それはいいですね。今日の仕事はそれほどないので」
「茂名氏はかなりおびえとる。まあとりやえず退院祝いだ。」
お父さんはグラスを房木警部に渡して乾杯をした。
房木警部が飲んだ後電話がかかってきた。
お父さんが出た。どうやら茂名氏からだった。
{こんどこそ殺される。助けて欲しい。}
「だけどあなたの家は二人も巡査が守っているのですぞ。」
電話中突然房木警部がソファーに倒れこんだ。
電話を置いてお父さんは驚いた。
「房木警部!どうしましたか?」
返事がなかった
「ギコ。お前はずっとここにいろ。一歩も診療所から出るな。」
「どうして・・」
「つべこべ言うな。父さんは忙しいんだ。」
「父さん・・・」
そういってお父さんは診療かばんを持って出て行った。
ドアが閉まる音がしたと同時に房木警部が何か言い始めた。
「ギ・・コ君・・カ・・カン・フル・・をくれ・・・」
「え。何ですか?」
「カ・・ンフ・・ルだ・・」
「カンフルですか。それなら・・・」
ギコは手術室においてあったカンフル注射を一つ持ってきた
「はい。警部さん。」
「ああ・・あり・・がとう・・」
房木警部は震えた手つきでそれを自分の左腕に打った
しばらくして房木警部の異変は止まった。
「ワインの中に睡眠薬が入っていたようだ。危なく眠らせれてしまうところだった。
 ありがとう。ギコ君。」
「はい。」
「そういえば茂羅さんは・・・」
「出かけました。なんか俺にはついてくるなって。」
「まずい。やつがホシだったか。急いで俺の車に乗ってくれ。」
房木警部は診療所を飛び出すと急いで車に乗った
房木警部のクラウンは田舎道をものすごいスピードで横切っていった。
やがて車はススキ畑のほうに向かっていた。
「ススキ畑のほうに行ってどうするのです。あそこは茂名氏の家しかないんですが。」
「だから今そこに向かっている。君には危なさそうだ。ここで降りてくれ。」
房木警部は車を止めギコを下ろした。
そして車は発進して猛スピードで走っていった。

第三章 結末
「・・・・」
ギコは黙ったままだった。
しかしここはある場所だということに気がついた
ここは小さい橋の上で清流が流れていた。
「この清流!」
ギコはつぶやいた
「下ればこないだホタルを見たところじゃないか。」
ギコはそういってススキ畑へと入っていった。

ギコは知っていた。
この清流を下ってそれからススキ畑をくぐると茂名氏の家に着くことを
すでに外は暗くなりかけていたがギコは走った。
清流を駆け抜けススキ畑を通り過ぎるとそこは茂名氏の中庭だった。
縁側に密着しているように茂名氏の部屋はあって茂名氏がくつろいでいた。
ギコはススキの間から茂名氏の部屋を見た
(お父さんが茂名さんに何かする・・絶対に・・・)

「主人様―。主人様―。」
のーさんの声だ。
「茂羅はんが来おりましたー。」
「本当に茂羅さんか?俺の命を狙っているやつでは・・」
「どう見ても違います。私も武器を持っていますから。どうぞ。」
隣の部屋にお父さんが入ってきた。
「約束どうり鍵を閉めておきますわ。」
そういってのーさんは鍵を閉めた

「どうもこんばんは。茂名さん。相当参ってますな。これほどの厳重さは・・・」
「はぁ。」
「神経は・・・苦しいですか?」
「苦しいも何も・・・ただ怖くて・・・怖くて・・・」
「人をたくさん虐殺した男がなにを弱気に」
「人を殺した・・・馬鹿な。失敬なことを言うな。」
茂名氏は驚いた
「第一殺されそうなのは私のほうだ。」
「そう。あなたは10年前モララ帝国軍の中佐として人を殺したはずだ。」
「あ。あれは戦争だから人を殺すのは当たり前だ。」
茂名氏は怒っていた。
「殺さなきゃこっちが殺される。常識だろう。」
「いや。よーく考えて見れ。」
「え。」
「敵でもない人間を殺しているはずだ。そうだろう。」
茂名氏は考えてみた。
ある一つの記憶が浮かんできた。
「そういえば・・・」
「ほれ。私に言ってみなさい。」
「いつだったっけ・・・たしか終戦の5日前ぐらいだったかな・・・
 連合軍に押されて俺たちが壕に隠れようとしたとき・・・確か中は市民でいっぱいだったんだ・・・
 俺たちは隠れようとしてそこに入ってた人を全員銃殺したんだ。そのあと俺の中隊は俺が以外全員戦死したんだが・・・
 戦争中だからつい忘れてしまったんだが・・・仕方がないことだった。戦争だったからさ。」
「確かにあんたには仕方がないことかもしれない。あそこにはたしか4世帯の家族がこもっていた
しかし、あの虐殺事件の死者の生き残りとしては 狂い死ぬほどの悲しみだったんだ。」
「もしかしてあなたは・・・」
「そう。あの時殺された夫婦の生き残りだ!」
ギコは動揺した。
(え。もしかしてお母さんは戦争で死んだの?)
茂羅の話は続いた。
「俺はあんたを見つけ出して殺された家族の仇をとろうとどんなに探したことか・・・。
 しかし戦争は終わってしまい。あんたはふるさとに帰って行方知らず・・・
 だが俺はモララ共和国中を探し回り、ついにここにたどり着いた・・・
 しかもここは虐殺のあった清流の近くなんだ・・・あんたを殺すには最高のロケーションだ・・・
 だからゆっくりチャンスを待って・・・ついに実行したんだ。」
「待ってくれ。もちつけ。俺を殺したら殺人罪になるぞ。」
「それでもいいんだ。」
「運が悪ければ死刑になるんだぞ。」
「そうさ。できれば戦争中にお前を殺したかった!戦争は人間の一人二人殺しても罰せられない!罪にもならない!
 だが・・・戦争は終わってしまった・・・こうなると殺人は犯罪になる・・・こんな不都合はあっていいのか!」
「知・・知らん。俺が悪かった、ゆるしてくれ・・・」
「いいだろう。どうせ俺は復讐者だ私にも正義がある。」
ドキューンドキューン
見る限りどうもその銃弾は茂名氏を傷つけたようだ。
「や・・・やめ・・ろ・・・人殺し!」
「お前を守る人はもういない。のーさんは俺が奥の部屋に閉じ込めたし、房木警部もお休み中だ。
 お前が完全に死ぬまで・・・彼は眠り続ける・・・」
そのときふすまが開いて房木警部とのーさんが入ってきた。
「まさか。眠っていなかったのか。急ごう。」
ドキューン
その銃声は茂名氏の断末魔の声を掻き消した。
房木警部が銃を撃ってきた。
ズガーンズガーン
お父さんは見事にその銃を受けた。
「茂羅さん。なぜあなたが・・・」
「なんで主人を狙ってたんや。」
「お父さん!」
ギコもススキ林から飛び出した。
苦しい息の中お父さんは言った。
「警部さん・・・戦争なんて・・・終わってない・・・・」
「え。」
「これは・・戦争だ・・。永遠に・・戦争・は・終わら・・ない。」
「茂羅さん。ただいま救急車を呼ぶんで・・・」
「このまま・・死なせ・・てくれ・・。どうせ・・俺は・・殺人罪で死刑なんで・」
「いや。生きるんだ。あなたの復讐の目的はわかった。しかし、あなたは・・」
「お父さん!」
「いいんです・・。このまま・・妻や娘の・・ところへ・・」
「今救急車を呼んだわ。」
「ちょっと茂羅さん。待っててください。」
そういって房木警部とのーさんは部屋を出て行った。
「お父さん。何で・・・」
「さあ・・・逃げよう・・ホタルのある場所まで・・」
お父さんはぼろぼろの体で血を流しながらススキ林の中に入っていった。
「ギコ・・。ついて・・来い・。」
ギコはついていった。
ススキ林をかさこそいいながら抜けるとそこは清流だった。
あの時と同じの。
「ギコ・・死ぬ前に・・一つ・・言っておきたい・・」
「え。何?お父さん。」
「実は・・お前は・・・俺の本当の・・息子じゃないんだ・・・」
「え。嘘!」
「嘘・・じゃない。俺には・・一つの家族があった・・しかし・・10年前に・・すべて・・消された・・。
 そして・・もうひとりの生き残りの・・お前とであった・・わけだ・・・。」
「じゃあ。僕の本当の家族は・・・」
「俺も・・・知らない・・・。う・・・ぅうぅ・・」
「お父さん!」
「お前が・・やがて・・・知るだろう・・本当の・・正体を・・・
 俺は・・・罪な・・男・・だ・・。わ・・わかっ・・・て・・・く・・れ・・・。
 もう・・すべて・・・語り・・・つくした・・。もう・・何も言う・・こ・・ことはない・・・。
 やっと・・・ホ・・タルの・・場所・・・で・・・め・・ぐり・・・合えた。もう・・一度・・。」
そういってお父さんは倒れた。
「お父さん!お父さん!」
何千何万のホタルが乱舞する場所で消えた
「わかってくれ。やっとめぐり合えたんだ。」
お父さんの声が夜空から聞こえてきたような気がした。
ただせわしなく乱舞するホタル
俺の知らない自分の正体を映し出していた・・・


(続く)

CAST
ギコ   :ギコ
茂羅モラ夫:モララー
茂名氏  :モナー
房木警部 :フサギコ
のーさん :のー
つー   :つー
故・茂羅の妻:しぃ
植木屋の小木さん:おにぎり
他AA多数

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