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Snow fighters (来田)

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匿名ユーザー

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此処は・・・・何処だ?

・・・・・俺は・・・なんで此処に立っているんだ・・・?

そうだ、俺は死んだんだ・・・・。



第一章 昔、ロータリー車乗りのD、今、サンタクロースのD。






あれはあっと言う間の出来事だった。

俺はロータリー除雪車で峠道を除雪していたんだ。

成り行きで対向車を避けようとして、

ぬかるみに嵌まってバランスを崩して除雪車ごと谷へ墜ちた・・・。

・・・・・情けねえ話だよ・・・・。


─おい、そこのマヌケ野郎。なにをぬかしてんだ?

突然先程まで誰も居なかった場所から声が発せられる。

振り返ると、そこには、2メートル程の鎌を持ち、黒い長袖の服を着た男が立っていた。

誰だあんた?


・・服装でわかるだろう?
・・・・そうさ、死神だよ。



へえ、あんたがあの死神っていう奴か。話は聞いているぜ?

ま、とにかく・・・・お前は天国と地獄、どっちへ行きたい?


・・・・行けるのなら、地獄へ逝きたいね。

ほう?面白い奴だな。普通だったら天国へ逝く、って言うが・・・・・。

全くその死神とやらの言う通りだ。だが、ギコは付け加える。

生前ろくな事していないからな・・・。まず、俺が若かった頃の話をさせてくれ。

数回呼吸する分間をあけ、重い口を開けて彼は語りだした。

・・・・俺は昔、不治の病に倒れたある女性のために、『ドリフトキング』と言う頂点の座を狙っていた。

そのためにはどんな事もやった。

敵を利用し、自分に有利に事が進むように仕向けた事も有った。

味方を上手く使った事も有った。

そして頂点の座に登りついた時、孤高の寂しさと己の無力さ、そして・・・・・愚かさを味わったさ。




・・・俺は頂点に立つ事で、地位と名誉とかそう言う物がえられると思っていた。

確かにその通りだった。

だけど、


失ったものは大きすぎた・・・。

頂点に登り詰めた事で目標とする者が無くなってしまった。

それに、追う者から追われる者と立場が変わってしまった。

立場が変わった事、それはいくらなんでも大き過ぎた。

ストレスと、絶望で俺の体はドラッグを使ったようにぼろぼろだった。

それにその彼女の死がのしかかって・・・・だけど、俺は此処に居る。

彼女の一言で救われたんだ。




なるほどねえ・・・・。

死神は聞き入り、感心していた。

そして・・・・。

どうやらお前は地獄行きには出来そうもないな。

根もいい奴だし、なんにしろ・・・・お前は死ぬべき人間ではない。

どうだ、戻る気はあるか?



・・・ねえよ。第一、俺の体はぼろぼろだったんだ。生き返っても駄目だね。

そうかぁ・・・・うーん・・・・。

死神は頭をかきながら考え、こう提案した。

「だったらサンタクロースになればいい」と。

男は唖然とした。死神からでる言葉とは到底思わなかったからだ。

おいおい、待てよ。俺は爺さんじゃねえぞ?

大丈夫だ。サンタクロースに年齢制限は無い。

老若男女全てOKだ。

だからって・・・・。

ま、除雪車に潰されて自分の体が駄目になってしまった・・・・となったらかなりキツイが・・・・任せておけ。

とりあえず、名前を聞かせてくれ。

死神は名前を男に聞こうとした。

「俺の名前はD。とりあえずそう書いておいてくれ」

D・・・だな?

ああ。

OK。後は任せてくれ。ついてくるかい?

やる事がないからな。そうしておく。

男はニヤリと微笑した。

商談成立だな。俺は「フー二ア」、とでも呼んでくれ。




此処に一人、新人のサンタクロースが誕生した・・・・


第一章 昔、ロータリー車乗りのD、今、サンタクロースのD。




次回予告

猛烈な地吹雪の吹き付ける高速道路。
そこは、僅かな運転ミスが死に繋がる場所。
それを修飾するかのように、夏場よりも格段に危険になっている。
そして、その場所の氷雪、圧雪路面を意のままに駆けぬける



“高速除雪車隊”の姿が有った・・・。




第二章 黄色い守り神、星屑の詩
      ~stardust~





・・・ギコ、私は貴方が愛した場所であなたの命を奪った憎い敵と戦っている。

除雪車隊のみんなと一緒に。



その日、その時まで平凡な時の刻みが北国の何処にでも有るインターチェンジの司令室に流れていた。

その時の刻みを乱したのは積雪情報だった。

ブザーの鳴る音と共に慌ただしくなる司令室。

積雪が一定値以上になった警報音が、鳴り響いていた・・・。

同時刻、総延長10㎞少々のトンネル越えの後に通り越える最初のインターチェンジ。

此処の構内に設置されている車庫、その中に駐車された大型除雪車達のディーゼルエンジンが動き始めた・・。

「出動命令だとよ・・・・・暴れてやるぞゴラァ!!」

「OK、ギコ。久々に雪を全部飛ばしてやるからな!」

「楽しみだね!」

「モララー、妹者、今夜は徹夜だぜ!」

「徹夜は・・・・・慣れたのじゃ!」

「妹者に同じく、だからな!」

「ギコよ、追い越し車線は譲らねえぞ!」

「上等!!」

「OK!」

インターチェンジの料金所付近のランプから日本海方面へのランプを駆け上がる三台の除雪トラック。

彼等は加速車線上で時速70㎞まで加速し、そして本線へと車線を移し、巡航する。

路面は圧雪に凍結が重なった感じの状態である。

だが、全輪駆動にスタッドレス&チェーン装着なので、楽勝なのである。

後方から黄塗りのパジェロが近寄る。

無線機が声を拾う。

『ギコ、精が出るわね。頑張って!!』

「し、しぃ・・・・・」

『あ、事故には気をつけてね!』

「・・・・ああ!」

「・・・・・ギコ、俺は先導をする。後を頼む」

「判った。妹者、そう言う訳だからな」

「判ったのじゃ」

そう言うとギコは路側帯にトラックの半分を進入させ、モララーと妹者は追い越し車線と走行車線を走る。

モララーと妹者は路面に積もった雪を前部に装着されたスノープラウで路側帯へと弾き飛ばし、そこにギコが突っ込んで路外の盛り土斜面などに雪を飛ばす。

そのようにして路面の雪を毎度毎度排除して来たのだ。

路肩には走行風で巻き上げた粉雪がダイアモンドダストとなり、光を反射し、輝いていた。





いつもの容量で仕事を進め、いつも通りに除雪が終わろうとしていた。

そう、“いつも通り”終わるはずだった。

トンネルを通りすぎた時、魔物は牙を剥いた。

山鳴りと共に、地震のような振動と共に、周辺が真っ暗闇になり、何も見えなくなった。







金属の擦り合う不協和音と、激しい衝撃、それと不気味な感触だけが伝わった。









・・・・モララーが全身の激しい痛みで気を取り戻した時、彼は一瞬何がなんだか判らなかった。

そして、落ち着いてきてなんとか状況が把握できた。

先程まで高速道路を走っていたはずなのに、雪の中に自分の乗った除雪トラックの一部が埋まっていたのだ。

痛みを堪えて除雪車から降りて、さらに唖然とした。

朱色に染まった雪が積もり、ギコや妹者の乗っていた除雪トラックの一部だったであろう部品などが散乱していたのだから。

「・・・・一体これは・・・・・どうしたんだ・・・・・!?」

恐る恐る近寄ってみるモララー。

するとぐったりと倒れている妹者、トラックに挟まれているギコが目に停まった。

「ギコ!妹者!!」


「・・・モララー・・・・か。雪崩・・・・・なのか・・・・・・?」

「喋らないで待ってろ、救急箱を持ってきてやるっ」

「・・・いや、いい・・・・・俺はもう・・・・・そんなに長く持たねえ」

「どうしてだ、諦めるなよ」

「足の感覚が無いし、抜け出すのは無理だ・・・・だが妹者は・・・・奴だけでも病院へ連れてってくれ・・・・・」

「な・・・・・・?」




『──モララー、後は頼んだぞ──』



ギコはそう言い残し、意識を失う。

そして、モララーの前で意識が戻る事は無かった。

「おいギコ・・・・・嘘だろ・・・・嘘だって言ってくれ!」

だが・・・・・・。

「駄目・・・・か・・・・・・」


モララーは一息つき、こう質問した。

ギコが質問に答えられないのは判っていた。

だが、質問した。

「・・・・・・・ギコよ・・・・・しぃさんを残してどうする気なんだよ?」



「恋人を残して・・・・・死にやがって・・・・・てめえは・・・・それで満足なのか?・・・・・・いや、満足な訳がないか・・・・・」


「できる限り・・・・しぃさんを悲しませないように事を伝えてやるよ・・・・。」





そう言い残しモララーは、妹者を抱き、自分の除雪トラックに乗り込んでベットに妹者を寝せて、高速道路を彼方へと走り去って行った・・・・。

雪崩の中に除雪トラックの残骸と毛布に包まれたギコだけが・・・・・いや、ギコの亡骸だけが取り残された。

「・・・・ギコ・・・・・辛抱しとけよ・・・・・地縛霊にはさせないからな!」

モララーは悔しさを噛みしめアクセルぺダルを床に点くぐらい踏み込む。

突風で粉雪が舞い、新雪が光り輝く。

雪崩と言う災害を隠すかのように。










此処は雪に閉ざされた土地の高速道路、首都と極寒の極洋都市とを結ぶ、生命線。
そして、雪との戦いが行われる、氷点下の激戦区。


今宵もまた、雪国の高速道路を黄塗りの除雪車が駆けぬける。


快晴の夜空に浮かぶ星とは無縁の、灰色の夜空の元に。

だが地上にも星はある。

星の鼓動は地球にもあるのだから。



第二章 黄色い守り神、星屑の詩
     ~stardust~


第三章 恋人はサンタクロース
     ~GIKO&HUUNIA~



「・・・えっ・・・・・ギコが・・・・死んだ?」

「奴は・・・・・・雪崩に巻き込まれて、見つけた時には・・・・・スマン」

「そんな・・・・・・」

「・・・・奴があんたの流す涙で好きだったのは嬉し涙だけだ。悲し涙は見たくないって言っていた。・・・・・今となっては・・・・遺言代わりだがな。しぃさんよ・・・・泣くな。奴が望むのは・・・・・・悲し涙じゃないはずだ」

「・・・・そうね。・・・・・・でも、彼はまだ・・・生きているって信じたい」

「・・・なぜ」

「彼はまだ・・・・・私の心の中で生きているわ」







返す言葉が、無かった。






「・・・・・・・ここは・・・・・?」

ギコは意識を取り戻した。だが、意識を取り戻した場所は雪崩の起こった場所ではなかった。

何も無い、白い平原。

まるで、雪景色だけれども、乗っかっても埋まりもせず、まるでタイルのような冷たい感触だ。




先程まで体を蝕んでいた痛みが嘘のように引いている。

これは死んだ事の現れなのだろうか。

それとも、まだ生きているのか?


─正直、どうでもいい。どっちでも似た結果になるだろう。




「・・・・油断大敵・・・・か・・・・」


とりあえず歩く。何処へ行くかは判らない。



数分ほど歩いた時、前に巨大な建物が見えてきた。


これが死後に通ると言われる閻魔大王の居る建物だろうか。

いや、三途の川も何も通っていないのだ。

まだ閻魔の奴に会うのはまだ早過ぎるだろう。

では、一体・・・?

入り口を見つけ、疑いながらも彼は建物の中へと入って行った。

入った所に一人の男が立っていた。

黒い服を着た男、鎌でも持たせれば死神だ。

俺はすかさず声をかけた。

「誰だあんた・・・・」

「俺か?俺の名は・・・・・フー二アだ。生前は、10t平車に乗っていた」

「え、じゃああんたはトラッカーだったってか?」

「ああ、三十年以上も昔の話だ。生きているとしたら俺は白寿の辺りだな」

「へぇ・・・・・光栄ですね」

「おいおい、畏まって貰っても困るんだが」

「俺もトラックに乗っていたもんで。といっても除雪トラックだけどさ」

「除雪トラックか・・・・・雪の上は滑るか?」

「当然。斜めで除雪する事も多々有った」

「事故歴は?」

「・・・・・・雪崩に巻き込まれて死んだ」

「そうか・・・・済まない」

「いや、もっと注意していれば良かった・・・・・そんだけの話」

「お前に悪い所は無い、ただ、運がなかった、それだけだ」





「どうだ、サンタクロースになって悪夢を夢に変えてみないか?」



「悪夢を夢に・・・・・どっちも夢だろ?だったら変えるのは無理、しかも他人の夢だ、干渉は・・・・」

「確かにそうだな、だが結末が違う。それに夢の結末を変えるのも仕事の内だ」

「悪夢はバットエンドで夢オチ、だが夢はハッピーエンドで夢オチ、どっちがいいか、判るよな?」

「詰まる所、夢の再開発をしてもらいたい。子供も大人も悪夢は好き好んで見るものじゃない」

「夢を創るサンタクロース・・・か。良く分からないけどその話乗った!」

「よっしゃ、商談成立だな」






──この時、ギコと死神は、いや、誰もが知らなかった。この後戦乱の世が待っている事を。

──そして、その戦乱は地獄と化し、悪夢と化し、人々を襲う事を。


誰も知らなかったのだ。





第三章 恋人はサンタクロース



次回予告

見習いサンタとして働く奴が居る。
歴史を変えるべく動く奴が居る。
戦いに巻き込まれる奴らが居る。

歴史はリンクするのか。

第四章 戦いへと・・・・。


to be continue


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