―――――ギコ家――――――
ここは2chシティ。
たくさんのAAと人間が共存する平和な国。
そこにある一軒の家の二階の窓から、一匹の黄色い毛並みのAA、ギコの姿が見える。
ジリリリリリリリリリッ
という目覚ましの音と共に、ギコは目を覚ます。
ギコは眠たげに目覚ましを止め、時間を確認する。
みるみるギコの顔が青ざめていく。
時計の針は8時を指している。
本当ならとっくに学校についている時間だ。
「ち・・ち・・・・」
「遅刻だぁぁーーーーー!!!!」
そう言ってギコは秒速で支度をして、階段を降りていった。
――――――ギコ家・一階――――――
ムシャムシャモグムシャ・・・ゴクン
一階の台所で、ギコの兄であるフサフサの毛をもったAA、フサギコ(通称フサ)がパンをほおばっている。そこに、
「ああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
ギコが大慌てで階段を降りてきた。
「うるせーな・・朝っぱらから騒がしいぞ、ギコ」
「おいぃっ!!何のん気にメシ食ってんだフサ!!遅刻するぞ!!!」
フサはワケワカランという表情になる。
「ハァ?何いってんだお前?」
「へ?だ、だって・・・」
フサはあきれて時計を指さす。
・・・時計の針は7時を指している。
まだ十分学校に間に合う時間だ。
「前にも言ったよな?時計はちゃんと合わせとけって」
ギコは苦い顔で頭をかき、パンを口にくわえた。
―――――ギコ家・玄関――――――
「じゃ、行ってきゃーす」
朝食を食べきったギコが、玄関を出た。
「おー、行って来い。つか、できるなら逝って来い。」
フサがそう言いながら見送る。すると、
「やぁ、ギコさん」
ギコと同じくらいの山吹色のAAが声をかけた。
「!山崎!」
ギコの親友山崎がギコを迎えに来たようだ。
「わざわざ迎えに来なくてもよかったがな・・」
「君の場合、ここまでしなきゃ絶対遅刻して・・・って今日は間にあったみたいですね」
ギコと山崎は『AA学校』というAAだけの学校に通っていて、ギコは通常あたりまえのように遅刻している。
「そういえば、今日ウチの学校に転校生が来るらしいですよ?」
「転校せぇ?んな事プリントにも書いてなかったぜ?どこで知ったんだ?」
「テストの答えを知ろうと学校に侵入した時n」
それを聞き、ギコはあきれながらも学校に向かった。
――――――AA学校・教室―――――――
「っああぁぁぁ~~~~」
学校について早々ため息をつくギコ。
「はは、やっぱ家庭がムチャクチャだと精神も疲れるんじゃネーノ?」
緑色のAA、ギコの第二の親友ネーノがそう声をかける。
「うるせぇよ・・このグチタレめ」
二人がそう話していると、
ガララッ
教室の扉を開け、担任の先生が入ってきた。
皆はとっさにそれぞれの席についた。すると先生が
「突然だが、皆に転校生を紹介しようと思う」
あまりに唐突な展開にギコと山崎以外の皆は驚きを隠せず。
「入りなさい。」
先生の一言で入ってきたのは、桃色の毛を持った少女だった。
「こんにちは。今日からこの学校にお世話になる、しぃです。よろしくお願いします」
そう言うと、彼女は優しく微笑む。
それを見た男子は、にやけてしばらくしぃを見続けた。
ただ、ギコと山崎だけは、物珍しそうに見ていた。
―――――教室・放課後――――
授業が終わると、しぃは、男子から質問責めをうけていた。
が、ギコと山崎はやはり遠くで帰り支度をしていた。
「ねぇ、ギコさん。ギコさんはあの子が気にならないんですか?」
山崎が、妙に真面目な顔で問う。
「へ?いや別に?]
山崎は大きくため息をつく。
「ギコさんも、『愛』ってもんを学ぶべきですかねぇ」
「愛ぃ?そんなもん学んでどうすんだよ?」
「愛のすばらしさが分からないんですか?哀れですねー。」
「・・だから何なんだよ#」
額に#を浮かべて言うギコ。
「純粋に人を好きになれる心を持てって事ですよ。その方が人として良いんです。ネーノさんを見てみなさい。あんなに幸せ・・・っていうか『萌え~~~~』って顔してますよ」
「いや、あれはただの馬鹿だろ」
他の男子と共に質問責めしていたネーノの耳がピクリと動く。
「・・時にギコくん。馬鹿というのは誰に対して言ったのかね?」
「お前だよ。ネーノくん」
ネーノの額に#が浮かぶ。
「何だと!?馬鹿はお前の方じゃネーノ!!?野良猫!!」
「#・・・何をぉ!!この狸もどき!!逝ってよし!!!!」
「ギ、ギコさん、それはいくら何でm」
山崎の言葉がそこで途切れる。
「逝ってよし・・・・」
「『逝ってよし マターリしようよ オマエモナー(字余り)』・・・ふむ」
「ふむじゃねーんだよ#!!何話の流れ無視してんのお前!!?」
「やれやれ・・・この俳句の意味が分からないんですか?これは・・」
「だからそんな事聞いてねぇぇ#!!!つーかネーノ!!もとはといえばお前・・・」
ギコがそう言おうとしたネーノは、暇そうに窓の外を眺めている。
「あーー・・・・いい天気なんじゃネーノ?」
「キエェェーーーーーーーーーーーーー#####!!!!!!!!!」
ギコはすでに目が大分アヒャっている。
そんな三人の様子をしぃが微笑しながら見ていた。
―――――大川沿い・通学路――――――
「じゃーーまた明日ーーー」
「おーーーーーー」
学校帰りで山崎やネーノと分かれたギコは、再び歩き出す。
「ふぅ・・・疲れた・・とっとと帰r」
そう言おうとした瞬間、ギコの視線が大川の中心辺りに行く。
人・・・・・・!?
バシャバシャと水しぶきをたて、溺れているようだ。
「子供!?・・・・やべぇ!!!」
ギコは荷物を置き、川に飛び込み、子供を岸に引き上げた。
「ハァッ・・ハァッ・・ゲホッ・・・」
相当水を飲んでいるようだ。
「おい、大丈夫か?」
「ハァ・・あ・・ありがと・・」
が、命に別状はない。
「ふぅ・・全く、何であんなところn」
ギコがそういいかけた時だった。
ゴポッ
「?・・・・っ!?・・・・なっ!!!!!」
突然ギコの足元に小さな渦潮が現れた。
「なんだこr・・ガボッ・・」
その渦潮は瞬く間にギコを飲み込んでしまった。
その様子を、子供が不思議そうに見ていた。
「お兄ちゃん・・・・・?」
―――――水の中――――――
ズオォォォォォォォォ
渦潮は依然としてギコを絡めとって離さない。
「(グ・・・クソ・・何なんだ・・コレ・・・)」
ギコは必死でもがくが、渦潮の勢いは弱まらない。
「(畜生・・・息・・息が・・・・)」
「(もう・・だめだ・・山崎・・・ネーノ・・)」
生きる事すらあきらめ、静かに目を閉じようとした。すると、
「(・・・・・!?・・)」
突然、ギコの体から青い輝きが。
「(・・コレ・・・あったかい・・体が・・・楽になって・・)」
その瞬間、ギコの体がその光に包まれた。
――――――山崎家・地下室――――――
「う・・う~~~ん・・・」
大川にいたはずのギコは、ある部屋の水の入ったカプセルの中で目を覚ました。
「?・・・あれ?・・どこだここ?」
そこは、周りに実験用具が立ち並び、目の前に扉がある部屋だった。
「なんで俺こんな所に・・・あれ!?ここ水の中じゃん!!やべえ!!!死ぬ!!!俺死ぬ!!!あれ?でも普通ならもう・・・」
ギコがそう叫んでいると、突然目の前の扉が開き、そこから、
「山崎!!!」
「や、起きてましたか」
冷静に返す山崎。
「山崎!!俺なんでこんなとこに・・・つかここどこだ!?」
「僕の家です。全く、驚きましたよ。ギコさんが大川に仰向けで浮いてるんですもん。あの子供が知らせてくれなかったらどうなってた事やら」
山崎があきれたように言う。
「そうだったのか・・・っていうか何で俺こんなとこにいるんだよ!!?ハッ・・・そうか!!分かったぞ!!!お前俺で実験する気だな!!?それで俺をこんな所に・・」
「そんな訳ないでしょ・・・っていうか自分が水の中にいられる事は気にならないんですか?」
ハッとした表情になるギコ。
「そ、そうだよな・・・あーー・・なんで俺は水の中にいられるんですか?」
山崎はニッコリと笑った。
「その方が回復が早いからですよ」
「はい;;?」
ワケワカランという表情になるギコ。
「やっぱりそういう反応しますよねぇ」
山崎はカプセルに触った。
「君の体には、『自然の結晶』が出来ているんですよ」
「自然の結晶ぉ?」
「どんな物にもあるエネルギー、魔力が結晶となったものです。これを持つと、その魔力の属性を自在に操れるようになるといいます。ギコさんのは『水』属性ですから、水を操ったり水につかる事で体の回復が早くなったりするわけです。でも、それができる頻度はおよそ千年に一度、ましてや人の体の中にできるなんて・・・前代未聞ですよ?」