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Control Light~操りの光~ (ヴァル)

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匿名ユーザー

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 ここは、いつもと変わらぬ平凡な暮らしをしている流石兄弟の家。
ここで暮らしている兄者はいつものようにFMVでソニンタンの画像を探している。その横では
弟者がやはりいつものように兄者のすることを見ていた。
 
 「ガがガがガ・・・」

 いつものようにFMVが唸りをあげる。

 「OK。ブラクラゲット」

 兄者がFMVを再起動させながら言う。

 「こう何回もブラクラを踏むとはダサいぞ、兄者」

 弟者が溜め息をついた。

 「仕方ない。このURLで今日はやめておこう」

 そういって兄者が開こうとしたURLは訳の分からない記号が並んでいた。
 
 「時に待て兄者、俺らは今まで何度もブラクラのURLを見てきているが、
  こんな怪しさ満点のURLは今まで見た事がないぞ?これはウイルスかと思われ」

 弟者が確信を持って言った。
 
 「いや、こういうURLだからこそソニンタンの画像があるかも知れないだろう?試す価値は十分にある」

 そして兄者を止めようとしている弟者を遮ってその怪しいURLをクリックした。
兄者のその行動が2人の平凡な暮らしを壊してしまうきっかけとなる事を知らずに・・・。

 その瞬間、画面から真っ黒だが眩い光が発せられた。

 「「うわッ!!」」
 
 兄者と弟者が同時に叫び、とっさに目を瞑った。弟者は光に目がくらんで尻餅までついてしまった。

 何分か経って黒い光が収まり、弟者が恐る恐る目を開けた時、兄者は既にFMVの電源を切り、座っていた椅子から立っていた。
 
 「もはやウイルスのレベルを超えているな・・・あれは一体何だったんだ?」
 
  弟者がゆっくり立ち上がりながら兄者に聞いたが兄者は返事をしなかった。

 「おい兄者、聞いてるか?」

 黒い光のショックで兄者が逝ってしまっていないようにと冗談交じりで思いながら弟者が再び尋ねる。

 「・・・貴様は何の話をしている?」

 兄者が弟者を見もせずに答えた。その口調は兄者の物ではなくゾッとするほど冷酷だった。

 「え?本当に頭が逝っちまったか?兄者?黒い光の事だが・・・?」

 弟者が呆れて言う。

 「・・・何故貴様はその光の事を知っているのだ?」

 兄者が振り返り弟者を見る。その弟者を見る目も兄者の物ではなかった。

 「何を言っているんだ?兄者が変なURLなんか開いたりするから黒い光が出て来たんだろう?
  兄者のせいで危うく失明するところだったぞ」
 
 弟者が少し兄者をとがめる。

 「さっきから言っている兄者とは・・・一体何の事だ?」

 この言葉を聞いた時、弟者は間違いなく冗談だろうと思い、クスッと笑ってしまった。

 「時に兄者、俺を混乱させようとしても無駄だぞ。何か企んでいるのか?」

 「答えろ・・・」

 兄者が弟者を睨む。

 「(少し付き合ってやるか・・・)兄者は今まさに俺が話しているAAの名だ。忘れたのか?w
  それより兄者、さっきから口調や表情が別人だぞ?黒い光のせいなのか?」

 流石に弟者は呆れの中に不審感を抱き始めた。

 「兄者なんて名に覚えはないが・・・まあいい。
  話を戻すが、貴様は黒い光を見たようだな」

 兄者はそう言うと、FMVに手を触れた。するとFMVがさっき弟者が見た黒い光に包まれた。

 「ああ。かなり眩しかったがな。それより兄者、もう冗談はよせ」

 弟者は話を切ろうとした。

 「貴様は黒い光を知っている・・・。ならば生かしてはおけない・・・消えてもらう

 兄者のもう一方の手がバチバチと音をたてて光った。

 「っ?!時に待て兄者!!黒い光を見て何があった?!」

 弟者が尋ねても、もう兄者は耳を貸そうとしなかった。
兄者が光っている手を突き出すと、その手から稲妻が飛び出して弟者を貫いた。

 「ぐあああァァァ!!」

 10万ボルトは優に超していると思われる程の電気が体を駆け巡り、弟者はあまりの痛さに悲鳴をあげた。
そして崩れるように倒れてしまった。

 「兄・・・者・・・」

 ほぼ瀕死状態の弟者の口は、兄者の名を呼ぶ事しか出来なかった。
兄者は残忍な笑みを浮かべ、まだ黒い光に包まれたままのFMVを持って部屋を出て行った。

 そして兄者は家を出ると、真っ暗な夜の闇に消えていった。
 一人家の中に残された弟者はもう助けを呼ぶ事も出来なかった。
    
                              
 翌日、ギコは自分のPCにウイルスが来てしまった為、兄者と弟者に処理を頼もうと流石家へ向かった。

 「兄者~!弟者~!いるか~?って引きこもりだからいるに決まってるよな・・・。
  俺のPCにウイルスが来ちまったんだ。何とかしてくれないか?」

 そう言いながらギコはドアを叩いたが、兄者と弟者は出て来なかった。

 「おかしいな・・・入るぞ~!」

 ギコがドアを開けて入る。家の中はガランとしていて、兄者と弟者の気配がしなかった。

 「なんだ。アイツらまだ寝てるのか・・・」

 ギコは呆れて階段を上がり、兄者の部屋へ入った。

 「兄者~、いつまで寝てるんd・・・!!!?」

 部屋の中央に倒れている弟者を見て、ギコは絶句した。

 「弟者!!!」

 ギコはビックリして弟者の下へ駆け寄った。

 「おい、弟者!しっかりしろよ!」

 ギコが弟者に話しかけ、乱暴にゆすったが、全身を火傷している弟者の意識はなく、ピクリとも動かない。

 「そうだ、兄者は何処だ?!」

 ギコは兄者を探したが、どの部屋にも兄者の姿はなかった。
 
 「兄者の奴・・・弟者がひどい傷だってのに、何処に行きやがったんだ?」

 ギコは動揺してそのままどうしていいか分からず、電話でしぃに助けを求める事にした。

 「しぃか?頼む!今すぐ流石家に来てくれ!弟者がひでぇ傷なんだ!」
 「え?どういう事?!弟者さんがひどい傷って・・・?」

 電話からしぃの声が聞き返してくる。

 「俺にも分からないんだ。とにかく早く来てくれ!」

 
 2~3分経ってしぃが飛んできた。ギコはしぃを弟者の下へ連れて行き、状況を説明した。

 「まだ息はあるけど安心してられないわ。ギコ君、早く救急車を呼んで!」

 「分かった・・・」

 しぃの言葉にギコは何故そんな事も思いつかなかったのだろうと思いながら返事をした。

 
 ギコが電話をして数分もしない内に救急車が到着した。
 相変わらず弟者は意識が戻らず、救急車に乗せても目を開けなかった。

 流石家の近所に住んでいるレモナは救急車が止まっているのに気付き、心配してやって来た。

 「どうしたの?兄者がFMVやりすぎて頭がどうかなっちゃったの?」

 冗談交じりにレモナがしぃに尋ねるが、不安気な目だった。

 「兄者さんは何処に行ったか分からないの・・・」

 しぃはそう言い、ギコから聞いた通りの状況を説明した。

 「弟者の意識が戻るか心配ね・・・私も一緒に行かせて」

 説明を聞き終えてレモナが言う。
 しぃは頷くと、急いでギコ、レモナと救急車に乗り、救急車はサイレンを鳴らして発車した。

 「全身火傷・・・ひどい・・・」

 弟者の傷を見て、レモナが呟く。

 「大丈夫かよ・・・こんな凄い傷負って・・・」

 ギコはまだ動揺しているようだ。

 「それで、兄者とは連絡とれないの?」

 レモナがしぃに聞く。

 「うん・・・。救急車が来る前に一回携帯にかけたんだけど、電源が切られてるみたいで・・・」
 
 「全く・・・アイツ今何処ほっつき歩いてんだ?」
 
 「何かの事故に巻き込まれてなければいいけど・・・」

 3人が話している間に救急車は2ch病院へ到着した。
 救急処置室へ弟者が運ばれ、ギコ達はその部屋の前で落ち着かない様子で待った。

 20分程して治療室のドアが開き、中から治療をしたタカラ先生が出て来た。

 「安心して下さい。まだ意識は戻りませんが、弟者さんの容態は安定しましたので・・・。本当に良かったです。
  あと何分かこの病院に来るのが遅かったら手遅れでしたからね。」

 タカラ先生の言葉で3人の心に安堵感が溢れ出した。

 「それで弟者さんの傷の事なんですが、全身に強い電流が流れて凄い火傷を負っています・・・。
  現在意識がないのはそのショックの為ですね。ですが何故弟者さんはこのような傷を?」

 「それが、俺らにも分からないんです。家に行ったら弟者があの状態で倒れていて・・・」

 「そうですか。火傷の状態を見たところ、かなりの重傷だったので、
  よく命を取りとめたものだと、僕らも驚いてますよ・・・。
  でも後遺症が残っていないか心配なので意識が戻ったら僕に知らせて下さい」

 「分かりました。ありがとうございました」
 
 しぃがお礼を言い、タカラ先生も軽く会釈して去っていった。
 3人は弟者の様子を見に治療室へと入った。弟者は胸部に包帯を巻かれ、酸素マスクをしていた。

 「弟者ァ、早く目を覚ましてくれよ・・・」

 ギコが弟者を見て悲しげに呟いた。

 
 弟者が救急処置室から病室に移され、3人は弟者の意識が戻るのを待っていた。

 「ホントに兄者はどこに行っちまったんだ?!」

 携帯を手に文句を言いながらギコが弟者の病室へ戻って来た。

 「兄者と話せた?」

 ギコが入ってきたのに気付き、レモナが聞く。

 「いや、相変わらずでてくれねぇよ・・・」

 ギコがため息交じりに答える。どうやら兄者に連絡をするために部屋を出ていたようだ。

 「そう・・・。なんで流石家にいないんだろう・・・?」

 レモナはガッカリしたようだ。

 「やっぱり兄者さん・・・何かの事故にでも巻き込まれたんじゃ・・・?」

 しぃは少し青ざめていた。

 「・・・おいおい;兄者に限ってそんなことありえねぇだろ?きっとすぐに戻って来るって!」

 無理に元気を出して言ったギコの言葉は妙に部屋の中に響いた。

 しばらく沈黙が続き、3人が不安になり始めたその時。

 「う・・・」

 弟者が小さな呻き声を出して目を開けた。

 「弟者!!」
 「シ~ッ」

 ギコが思わずさけんでしまったのでレモナが慌てて自分の口の前に人差し指を立てた。

 「弟者さん・・・良かった・・・」

 しぃが顔をほころばせた。

 「ケガは大丈夫?」

 レモナが弟者に心配そうに尋ねる。

 「ああ・・・何とかな。それよりどうやら・・・お前達に、助けられたみたいだな・・・」

 弟者は酸素マスクを外し、痛みをこらえながら小さく微笑んだ。

 「別に礼には及ばねぇよ・・・俺らは親友だし・・・」

 ギコは顔を赤らめてモゴモゴと言った。

 「でも兄者さんとはどうしても連絡がとれなくって、弟者さんの事はまだ伝えてないの・・・ゴメンナサイ」

 しぃが兄者の事を話した途端、弟者の表情が恐怖の色に染まった。

 「え?弟者さん・・・?」

 しぃが何か気にさわる事を言ってしまったかと思いながら聞いた。

 「あ、いや・・・」

 弟者は慌てて目を逸らしてしまった。

 「そういや弟者、お前何でそんな傷を?」

 ギコが問う。

 「襲われたんだ・・・」

 弟者は目を逸らしたまま答えた。

 「誰に・・・?」

 更にギコが問う。

 「・・・・・・」

 弟者は黙ってしまった。

 「弟者?」

 ギコが不思議そうな表情になる。
それから弟者はしばらく黙っていたが、ためらいながら口を開いた。

 
 「・・・兄者に・・・襲われた・・・

                  続く

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